先進設備もやがては陳腐化する――マンション選びの優先ポイントはそこじゃない

ブログテーマ:業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

リクルー社が毎年1回実施している「新築マンション契約者調査」によれば、「新築マンションのどこが気に入ったか」の設問で筆頭に挙がる答えが「最新の住宅設備」です。

販売現場では、見学者が異口同音に「やっぱり新しい設備が付いていて新築はいいわねえ」という声が聞かれるそうです。賃貸マンションにはない設備、古いマンションには少ない進化した設備が装備されているからでしょう。

例えば、玄関のプッシュプル式と呼ぶ開けやすいドアハンドルから始まり、トイレは従来あったタンク兼手洗い器が見当たらず、代わりに壁付けの小型のお洒落な手洗い器がついていたりします。
浴室に行くと、浴室乾燥機とミストサウナが付き、低い浴槽(低床タイプ)とワンプッシュで排水できる機能、自動温度調節・お湯張り機能、湯音が冷めにくい魔法瓶浴槽などの説明に感動します。
キッチンでは引き出し式の流し台下収納や、ガラストップのガスコンロまたはIHクッキングヒーター、食器洗い乾燥機、シャワーヘッドが引き出せる混合水栓といったもの、洗面所は裏側に収納棚のついた三面鏡や掃除が楽な継ぎ目なしの洗面ボウルなどがあります。

これらは、主婦の家事労働を大幅に軽減してくれる便利な機能や快適なマンションライフをサポートしてくれる最新システム、しかもそれらが皆おしゃれなデザインで作られています。感動しない方がおかしいほどです。

しかし、設備が良いマンションといっても、実は新築マンションならどこも殆んど同じ。従って、それだけに惚れたのでは、検討違いの選び方をしてしまう危険があります。

大事なことは他にあります。例えば、構造ですね。勿論、3.11大震災以来、耐震性や防災対策に関心を強め、その点を確認しようとする姿勢を持つ人が増えているようですから、それは歓迎すべきことです。セキュリティシステムを気にする人も多いようです。
一番注意して欲しいことは、間取りです。長く快適な暮らしを送る基本は間取りにあるからです。間取りの良し悪しを見抜く目を持ってほしい。私はそう思います。

キッチンと洗濯室との位置関係、洗濯室から物干し場までの動線、食堂テーブルとリビングソファの位置とテレビの置き場との関係、冬の寝具を入れる収納の奥行き、主寝室のプライバシーやベッド配置を想定した広さと縦横寸法、嵩張るコートが入るクローゼットの大きさチェックなど、住んでからストレスの溜まらない間取りであることが大事です。

何より大事なのは、日当たりと風通しです。日が入らなければ照明で補えばいいと考えますか?暑ければクーラーを回せばいいと割り切りますか?そうではないはずです。
よく「ホテルライクな内廊下」と謳っているマンションがありますが、高級感はありますが、廊下側に窓がないため通風が極めて悪いという例があります(風通しに関する記述は、本ブログの10月25日をご覧ください)。

キッチンも注意しましょう。設備だけにとらわれず、物の配置を想定してみるといいですね。ディスポーザーが付いているので生ごみ処理が簡単で人気ですが、それ以外のゴミは相変わらずダストボックスを用意して一時的に溜めることになるはずです。その置き場が考えられていない設計も少なくはないのです。

間取りの更新性、すなわち将来のリフォームやリノベーションも想定しておきましょう。子供が増えたら、子供が大きくなったら、あるいは子供が独立したら、そのとき間仕切りをどう変えられるかを検討するのです。
殆んどのマンションで水回りは移動できないことになっているはずです。その場合、うまく部屋のレイアウトや大きさを変えることができるでしょうか?ちょっと考えてみましょう。

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先進の設備も必ず陳腐化します。モノによっては契約から入居までの1年の間にもう型落ちすることすらあります。
室内の設備はお金さえかければ、大半が後からでも最新のものと交換できますが、間取りとなると限界があります。玄関や窓の位置も、大抵は水回りの位置も、また通風のための穴を開けるなどということはできません。
設備に目を奪われて肝心のことがおろそかにならないことを願います。

もちろん、何もかも理想通りにはいかないでしょう。最後の段階で部屋をどれにするかという段階になったとき、細かな部分が気に入らないと感じるかもしれません。そのときは、11月1日のブログでも述べましたが、契約と同時に売主に対し設計変更を要望し、「カスタムビルド」で「より快適な間取り」を目指すようにしましょう
間取り変更のアイディアをご希望のときは「三井健太のマンション相談室」へご相談ください。無料で、その間取りの問題点と改善案などをご提案します。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

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