第755回 「中古マンション・安心マニュアル」 第1部

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

タイトルにあるように、以下は「中古マンション」を検討する買い手の立場に立ち、注意点と選び方を細部に渡ってまとめたものです。 マンション購入を考える・選ぶ段階にある読者の安心につながる指針となるよう、日ごろの活動の中から気付いたことの集大成です。   今日はその1回目です。  

●新築か中古か?

首都圏の新築マンションの供給が停滞しています。このため、新築にこだわって探している人は買いたいものに出会えない状態が続いています。価格も、急速に高くなりました。   新築が目立って高くなって来ると、割安感のある中古マンションへ人気が移って、その中古までも値上がりし出すものです。 既に中古も上がっています。

 

 値上がりが新築価格の上昇率とほぼ同じになっています。   実は、中古マンションの東日本不動産流通機構(REINS)への登録件数、すなわち新規売り出し件数は増えているものの、新築マンションの供給数の落ち込みをカバーしているほどでもなく、低水準のまま推移しています。  

さて、2021年上半期の現在、新築も中古も価格上昇傾向は続いています。 このため、物件選びは相変わらず厳しい環境にあると言えます。   新築マンションを購入した人の80%は中古も併せて検討しているという調査データがあります。しかし、新築マンションほど中古マンションを真剣に検討しているかは疑問です。ネット検索をしてみた程度という人も多いようです。  

 

実は、新築に比べ中古マンションの売り出し戸数は約7倍もあるのです。 ただし、中古マンションは築年数が20年を超えるようなものも多数あるわけですから、7倍もあると言っても、検討したい物件がいくらでもあるというわけではありません。

しかしながら、圧倒的な品数があれば気に入る物件に辿り着く可能性は低くないないはずです。 とはいうものの、中古マンションには購入しづらい壁が立ちはだかっているのも事実です。その問題について先ずは整理してみました。

●中古マンションが買いにくい5つの理由

買い手の立場で考えてみると、中古マンションが買いにくい理由は5つ挙げられそうです。

理由(1)室内の見た目が悪い 中古マンションの多くは、壁が黄ばみ、浴槽に「湯あか」が着き、ガスコンロは油まみれになっていたりします。 こうした光景を目にすると、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。 これらを補って余りあるもの、例えばバルコニーから見える景色が感動的であったりすれば印象は変わるはずですが、そのような幸運には滅多に出会えないものです。

 

理由(2)外観や共用部分が古ぼけていたり汚れていたりする

レトロ好きな人もあるのでしょうが、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向が強いと言われます。新しいものは良いものという先入観につながっているのでしょうか、一目で古いと分かる中古マンションの購買意欲は高まらないのです。   室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。定期的に清掃や改修を実施していても、新築時と同じ状態に戻ることは決してありません。

 

  築後30年過ぎたマンションを見学に同行したときのこと、少し前に各住戸の玄関扉をそっくり交換したらしく、綺麗なものでしたが、玄関前の床は昔のままでした。 掃除はしてありますが、壁際は黒ずみ、まだらに変色したままだったのです。   また、外壁がタイル張りのマンションでは、換気孔の周囲が黒ずんでいたり、白っぽい汚れが鼻たれ小僧状態になっていたりという建物も多いのです。 こうしたものを先に見てしまうと、売り出し住戸に到着する前に気持ちが萎えてしまうことでしょう。

 

  理由(3)設備が古い・ないものも多い

ディスポーザーは新築でも付かないものは少なくないですが、食器洗浄乾燥機は大半が標準装備されています。 しかし、中古は食器洗浄乾燥機さえもない物件が多いのです。

浄水器も中古マンションでは少ないようです。

浴槽のまたぎ高は、新築マンションなら450ミリ前後が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」はかなり劣ります。

テレビモニター付きのインターホンが100%近くまで普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築30年クラスは殆んど白黒です。  

結露ができにくいことで知られる断熱効果の高い複層ガラスのサッシは、築20年未満の比較的新しいものを除くと、中古マンションには見られないものです。  

また、設備ではありませんが、天井が低いのも中古マンションの欠点です。最近の新築マンションは2500ミリ以上が大半になっていて、2400は稀な部類ですが、中古マンションの多くは2400ミリです。 それ以下も少なくありません。   居住者の背丈にもよるのですが、天井高は開放感を随分違ったものにします。

 

理由(4)バリアフリーになっていないものが多い

マンションの1階から住戸前までバリアフリーになっているだけでなく、室内も大きな段差がないのが最近のマンションの標準です。 ところが、古いマンションでは共用部も室内も段差が解消されていないものが多いので、これも見学時に抵抗感を覚えてしまう要因です。

 

理由(5)建物に対する不安が拭えない

中古マンションが買いにくい最大の理由はここにありそうです。先に挙げた4つの理由は、むしろ付け足しと言ってもよいほどです。   不安とは、具体的に言う次のようなものです。

 

◆耐震性の不安 : 幾多の地震体験から、新しいマンションは対策がしっかりなされているはずですが、古いマンションは十分ではないという漠然とした不安を持つ人が多いようです。  

◆耐久性の不安 : 築30年以上の古いものを検討する人が抱くことですが、あと何年ここに住めるのだろうかというものです。  

◆瑕疵がないかという疑問と不安 : 瑕疵は「隠れたキズ」というほどの意味ですが、悪意のない売主に対しては追及ができないのが「瑕疵担保責任」です。   欠陥マンションではないかという疑問と言い換えてもよいのですが、中古の場合、売主は責任を負わないのが原則です。代わりに、大手仲介業者は、ガスコンロや湯沸かし器といった設備の瑕疵担保保証というサービスを導入していますが、重要なのは目に見えない構造的な部分の瑕疵です。   購入してから、しばらく経って(例えば数年先に)発覚したときはどうなるのかという不安を抱く買い手は多いようです。

 個人の売主から購入する中古マンションには、瑕疵担保は免責されていて、万一のことがあっても責任を追及する先はないのです。   しかしながら、建物の不具合が生じて購入の目的が果たせないといった深刻な問題に発展することはまずないと言って過言ではありません。  

 

◆遮音性の不安 :これは新築マンションでも同じですが、古いものは最近のものより遮音性が低いという先入観が働くようです。

*  *  *  *  *  *  *  *

  中古など考えられないという人は別として、ある種の割り切り方に立てば、中古も選択肢のひとつにはなるはずです。 今は、積極的に中古を検討するべきときなのです。上記の問題や不安を抱えながらも、それをクリアして行けるならば、予算を下げて購入することができるかもしれません。

 

もしくは、広い家を手にすることが可能かもしれませんし、立地の良い物件と遭遇する可能性も高くなるでしょう。 また、リフォームに思い切って資金投下することも可能です。少なくとも室内だけは手垢が消え、見違えるように綺麗な住まいを手に入れることが可能になるでしょう。  

●新築信仰は中古不安の裏返し

優良な中古マンションは、市場に出るか出ないうちに買い手がついてしまうと言われます。しかし、これは例外です。 大半の中古は、長く市場に停滞しています。 つまり、中古マンションの売れ足は遅いのです。 その原因のひとつは、売り方の差(※)にもありますが、最も大きな原因は買い手の建物への不安が払拭しきれないことにあります。

 

※新築マンションは、大々的な広告宣伝と華やかな商品展示(モデルルーム等の演出)によって顧客動員を図ります。 特定マンションは販売員を大量配置するなど、専従態勢を敷きます。その結果、短期間に100戸、200戸と販売が進むのです。   これに対し、中古マンションは物件個別の宣伝は殆んど行ないません。販売員も1物件を専属的に売ろうとはしません。より売りやすいものへと意識も行動も移って行くため、並みの中古物件は中々売れません。 

1戸だけの中古が3か月経っても売れないのは、普通のことなのです。  

 

新築マンションの販売現場では、あらゆる角度から買い手の不安を払拭する準備・営業努力が傾倒されます。たとえば、こうです。

①耐震性や耐久性などの基本構造をはじめ、建物の性能に関する説明を丁寧に行ないます。

②床下や壁の内部など見えない部分については、断面模型などを使ってアピールします。

③窓ガラスの断熱性や防音サッシの性能は、メーカーから借りて来た縮小版の実物モデルを使って体感できるようにしています。

④免震構造については、一般の耐震構造との差を模型の揺れで実演してくれます。

 

これらのデモンストレーションは、モデルルームを見学した経験をお持ちの読者ならお分かりいただけるはずです。全て買い手に「安心感」や「納得感」を持ってもらうためです。  

 

これに対し、買い手から見ると、中古マンションは実物を目視するしかなく、建物内部がどうなっているかなど全く分かりません。このため、「この建物は大丈夫か?」という疑問や不安が拭いきれません。  

 

工事中の新築マンションを買うのと違って、実際の景色や日当たり、管理状態を確かめることができるという、一面のメリットがあるのは確かですが、それだけでは安心できないのでしょう。  

また、新築マンションでは最長10年のアフターサービスと定期的な点検なども行なわれますが、中古はアフターサービス期間内でも、所有者が変われば分譲主からの保証を受けることができないのです。瑕疵担保についても同様です。対象者は、あくまで分譲時の買い手に限られるからです。  

 

自分が購入した後に、これまでに表面化しなかった欠陥が出てきたらいやだなと思っても、対策はありません。 「現状有姿(げんじょうゆうし)」という、買い手の「見たままの実物取引」が中古売買の常識なのです。見えない部分に関して個人売主は全く関知しないというわけです。

  引き渡し後3か月以内なら、修理や交換に応じるという瑕疵担保責任を明記する売買契約もありますが、その範囲はコンロや給湯設備などに限るのです。 これでは買い手が不安を拭いきれないのも道理です。  

●購買者の不安心理

物を買う人の不安心理は3つあると言われます。

①購入する品物への不安②売主への不安、そして③営業担当者への不安です。  

「この品物を買っても大丈夫か、期待する効果は得られるか、欠陥商品ということはないか、万一の場合、売主は返品や交換・修理などに応じてくれるか、この売主はそもそも信用できるか、担当者の説明に誇張やウソはないか」などのことです。

 

  購買を決断するときの心理は・・・・「立派な品物のようだ。期待する効果・利益も上げられそうだ。 売主は信用できそうだから、万一の欠陥・不良はないだろうが、万一あっても交換や修理に応じてくるはずだ。 この売主の社員なら説明にウソもあるまい」です。  

 

これを、中古マンションを購入しようというときに当てはめてみましょう。上記の期待する安心感は生まれるでしょうか?甚だ心許ないとは言えないでしょうか? そうです。営業マンの対応にウソはないと信じられや場合でも、その営業マン自身が紹介物件の基本構造などに必ずしも精通しているわけではなく、事実や目視で確認できることのみを情報として提供してくれるに過ぎません。  

●中古マンションを購入するときの拠り所は?

では、中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか? これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できないのですが、例示してみましょう。  

 

①大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう

②大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう

③先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた

④内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう

⑤清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ

⑥管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ

⑦管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた

⑧売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう  

 

大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。 ここで気付くことがあります。売主と施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。 ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、

⑨疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう

⑩住んでみて不具合があったら売ればいいさ

 

などと自分に言い聞かせて買い手は自ら不安を打ち消すのです。  

●新築マンションと中古マンションの比較

新築マンションと中古マンションの違いを大まかに整理してみましょう。詳細はそれぞれ後述します。

 1)新築と中古の基本的な違い

★新築マンション・・・誰も住んでいない住居に住める

★中古マンション・・・汚れた家に住むという感覚  

 

★新築マンション・・・一定期間は、補修など無料のアフターサービスが受けられる

★中古マンション・・・アフターサービスや瑕疵担保責任がない  

 

・・・・構造や設備の差・・・・

★新築マンション・・・社会的に求められる住宅品質の高さが確保されている (最新の法律が適用され、最新の住宅機器が装備されている)

★中古マンション・・・1981年以前の旧耐震基準によるものもある。設備も当然古い

 

  ・・・・・検討方法・物件の確認・・・・

★新築マンション・・・工事中の売買契約の場合、日当たりや眺望が確認できない。 モデルルームから受けるイメージと実際の購入住戸との間にギャップがあり、失望させられることがある

★中古マンション・・・日当たりや眺望など実物の確認ができる  

 

…・・室内の変更工事・・・・・

★新築マンション・・・間取りのセミオーダーや設備、カラーなどのセレクトができる場合がある。

★中古マンション・・・自己負担でリフォーム・リノベーションをかけるほかない

 

・・・・・客観的評価・品質保証・・・・・

★新築マンション・・・住宅性能評価書が添付されることが多い

 ★中古マンション・・・住宅性能評価書がないため、客観的等級が分からないことが多い。品質保証者のようなものはない  

 

・・・・・管理・・・・

★新築マンション・・・管理状態が確認できない。入居時に一時金徴収がある

★中古マンション・・・管理状態が確認できる。入居時に一時金徴収はない (数年後に一時金徴収が行なわれるケースはある)  

 

・・・・・手数料・・・・・

★新築マンション・・・仲介手数料が要らない

★中古マンション・・・仲介手数料が必要になる

 

  ・・・・価格・・・・・

★新築・・・価格が高い

★中古マンション・・・価格が安い物が多い (新築並み、新築以上の高値をつける物件もある

 

 2)物件代金以外の費用の差で大きいのはどっち?

中古では「仲介手数料」が必要になり、新築では「修繕積立一時金」が必要になる点が大きな金額差です。 仲介手数料は物件代金の3%余なので、7000万円の物件を買うとき、別途210万円の費用が必要です。

 

新築の場合、仲介手数料は不要ですが、修繕積立金を用意しなければなりません。物件によって差が大きいのですが、東京圏では、大まかに言って80~120万円ほど中古が高いのです。  

 

3)中古マンションのデメリット

*不具合があったとき・・・何かあったとき、問題解決を迫っても、売主も仲介業者も逃げることしか考えないと考えておかなければなりません。 売主は個人の場合が多いので、瑕疵や不具合があるかもしれないことを承知で買わなければならないのです。

住戸内では天井や壁にシミが付いていないかどうか、できれば収納スペースの天井裏まで確認する必要があります。コンクリートの建物でも雨漏りすることがあるからです。それが実際に雨水の跡であれば、修繕が行われていたとしても将来に不安が残ります。  

 

*修繕費の追加徴収が突然やって来ることがある・・・計画的に行われて行くマンション修繕といっても、物件によっては無計画な例もないこともないのです。購入時に、計画書の有無や積立金残高の確認作業は欠かせません。  

 

*親しい友人ができにくい・・・(中古の場合は、既に家族同士のグループができていたり、もう既に子供同士のグループがあったりします。中古で購入すると、買い手は新参者となり、仲間に入って行きにくいものです。 露骨に新参者扱いはしないでしょうが、運次第です。最初は苦労するかもしれないと思っておいたほうが良いでしょう。  

●築30年を超えるマンションのリスク

30年を超えるような古いマンションは、新築価格の相場に対して半値以下か、高い物でも6掛けくらいで購入できるものです。リフォーム費用がかかるとしても、新築マンションに比べて楽に買うことができるメリットがあります。  

メリットがあればデメリットがあるのが世の常です。このような築年数の長い中古マンションの場合、どのようなデメリット(リスク)があるのでしょうか? あくまで一般論と断って、そのリスクをお伝えしましょう。

 

①耐震性に不安がある 1981年に改訂された建築基準法の「耐震基準」を満たしていない可能性があります。旧基準のマンションは危険であると言っても、必ず倒壊すると言うわけではありませんが、万一、震度6強といった巨大地震が来たらと考えると怖いですね。

 

②そもそも寿命の短い物件が多く、住んで行くに連れて不具合が頻繁に起きるかも

最近の新築マンションは、高強度コンクリートを採用し、かつ耐久性の高い工法を用いて75~90年の耐久性を謳う物件が増えています。 これに対し、古いマンションは耐久性で劣るものが多く、メンテナンスを怠ると、築後40年ほどで真剣に建て替えを検討しないといけない状態になってしまうと言われています。

雨漏り、結露、タイルの剥離、給水の異常など、不具合が度々発生したりするためです。 築30年以上の古いマンションを買ってしまうと、そこから10年もしないうちに煩わしい問題を抱え込むことになるかもしれないのです。

 

  ③修繕費の残高不足が起きる可能性が高い 古いマンションは、適正な時期に大規模修繕を実施することが大事です。積立金が少ないことを理由に、応急措置ばかりを続けていると、その度に費用が何度も発生し、トータルでは高くつくのです。   管理組合が問題意識を共有し、必要な費用の積立を計画的に行なっていればよいのですが、古いマンションにはそうでないケースが多いようです。  

 

最近の新築マンションが、分譲時にまとまった「修繕積立基金」を一時金として預かる方式を採用し、10年後、20年後など、段階的に積立金を値上げするような計画を立てているのとは対称的な中古マンションが多いのです。  

修繕費が枯渇していれば、新たに徴収するか銀行から借入れして毎月の返済分を管理費の値上げで対応することになるかもしれません。 修繕費が少ないマンションは要注意です。  

 

④賃貸住戸の比率が高いため、管理状態が悪化する恐れも 最初は自己居住用であったものが、時間が経つと転勤その他の事情・理由で転居する人が増えて行き、そのあとを売却するだけでなく、賃貸するオーナーも増えて行きます。 「分譲マンションなのに賃貸マンションのようだ」・・・このような感想を述べるオーナーが多いのも、古いマンションの特徴です。  

 

賃借して居住している人は、自分の家ではないので管理意識が高いとは言えません。居住モラルが低いマンションもあります。 モラルが低いマンションは、整理・整頓・清掃が乱れて綺麗な状態を保つことが難しくなります。それがマンションの雰囲気を悪くしてしまったりもします。 

 

当然、価値が低下します。 更に、どこか遠くへ行ってしまったオーナーは、保有マンションの現状を見ていないため、管理に熱心になることはなさそうです。   こうしたことが、メンテナンスの軽視と実施の遅れにつながり、マンションの寿命を一層短くしてしまう恐れがあるのです。

 

  以上のような懸念があれば、古過ぎる中古マンションには、長く住めないかもしれない、資産価値も低下する、そう覚悟して購入することが必要と言えるでしょう。  

●中古購入で割り切るべきこと

①耐久性の違い 古いマンショの場合、コンクリートの耐久性は、最近の新築に比べて短いと考えなければなりません。既に築後何年かを経過したからという意味だけではなく、そもそも新築時から耐用年数に差があるからです。  

最近の新築マンションのコンクリートの質が向上したうえに、劣化を遅くするための施工法を採用する例が増え、住宅性能評価で「劣化対策等級 3 」のマンションが7~8割を占めています。

劣化対策等級3の建物は概ね90年の耐用年数があるとされます。   これに対し、中古マンションでは、概ね50年の耐久年数しかなく、「劣化対策」が不十分な建物が多いと見なければならないのです。

 

  ②基本構造の違い 最近の新築マンションと大きく違う点は、上記の「耐久性」以外に「窓の大きさ・サッシの高さ」、「柱の室内張り出し」、「バルコニーの大きさ」などに見られます。  

見ただけで分かるもの、最低限メジャーで計れば簡単に分かるものについては、見学に出かける前に、間取り図を見てチェックポイントを自分なりに決めておくといいでしょう。  

 

③基本性能の違い

*二重床か直床(じかゆか)かは重要なチェックポイントです。直床構造は、リフォームする際に、レイアウト変更はできないと見なければならないからです。  

 

*一枚ガラスの窓か複層ガラスの窓か、これは軽視できない点です。複層ガラスは、その名の通り、複数のガラスで構成され、ガラスとガラスの間に空間(中空層)をもたせたガラスのことです。ガラスとガラスの間の空間を確保するため、スペーサーと呼ばれる乾燥剤入りの金属部材をガラスとガラスの間に挟み込んで、その間に乾燥空気を封入してあります。

断熱効果が高いガラスとされます。2000年代に入り、省エネ機運の高まりなどから新築マンション、一戸建て住宅への普及が進んでいます。 2000年以前のマンションは、1枚ガラスと見なければなりません。  

 

④中古マンションが安いとは限らない 中古は新築に比べれば安いのは確かですが、どのくらい安いか、そこが問題で、周辺の新築より安いものの、その差異は物件によって幅が大きく、築年数だけではなく、スケール・高さ、建物の付加価値、ブランド、間取り、階、向きなどが売買価格に影響を与えます。  

その中でも、環境の良し悪しは大きく影響します。まるで森の中に建っているようなたたずまいであるとか、借景ではあっても公園の前に建っているといったものは高値で買い手が付くものです。   中でも、敷地内にある樹木と敷地内公園の緑が建物を囲むようになったマンションの価値は高いものです。

 

三井不動産は広告の中で「経年劣化」ではなく「経年優化」というキャッチコピーで敷地内の緑化に力を入れていると喧伝しているものがあります。   建物は古くなっても、樹木が育つに連れて全体としては美しさが増すので、三井不動産は外構計画にも力を入れて行きますという宣言だったのでしょう。 

  多くのマンションで、敷地内にシンボルツリーが植えられていますが、その本数、面積には大きな差があります。買い手自身の目で確かめながら物件選びをしなければなりません。  

 

⑤中古購入で割り切るべきこと「現状有姿」取引 中古マンションの取引は「見たまま」、すなわち「現状有姿」というのが常識とされます。売主は不動産業者ではなく個人なので、責任追及が困難です。

 新築マンションに見られる「品質保証制度」もありませんし。「瑕疵担保責任」もありません。   とはいえ、それらがなくても大きな問題は発生しないので、買い手が被る実損はまずありません。

 

 従って、取引に当たっては見える範囲の破損や故障を容認するか、修復してもらうかを売主と交渉すれば足りるのです。  

 

厄介なのは、雨漏りと隣室や上階からの音漏れです。雨漏りは、マンション全体の問題なので買主個人に補修費等が発生しないとしても、音漏れは解決策が見つからないことが多いのです。  

 

このような瑕疵(隠れたキズという意味)のある中古マンションを掴まないためには、売主に尋ねるほか、1度ならず、2度、3度と時間帯も変えて見学してみるほかありません。  

 

⑥瑕疵担保責任の範囲 『瑕疵担保責任』という言葉を聞いたことがない人も少なくないようです。簡単に説明しておくと、売主は、瑕疵のある土地・建物を引き渡したとしても、売主としての義務は履行したことになり、不履行責任を負わないのです。  

『瑕疵』とは、売買契約を結んだ時点で買主は知らなかった・知り得なかった場合(善意無過失)をいいます。 内覧や重要事項説明などを通じて、すでに知っていた場合や、ちょっと注意して見たら分かるような内装の汚れやキズ、経年劣化による付帯設備の故障は『瑕疵』とは言いません。

 

  また、売主が瑕疵の存在を知っていたかどうかは問われません(無過失責任)。 瑕疵担保責任は「売主が買主をだましていたから罰を与える」という趣旨ではなく、「代金をもらって売る以上、物件の品質には最低限の責任を負いましょう」といっているに過ぎないのです。

 

  瑕疵があることを知っていて契約したのなら買主の自己責任ですし、「内覧でよく見ていなかった」とか、「そんなにすぐ壊れると思わなかった」とかという言い分は認められないのです。 

言換えると、中古マンションの売買は、あくまで『現状有姿渡し』が原則である――ということなのです。

 

  しかし、そのような結論は、瑕疵のある土地建物を引き渡す売主と、瑕疵の存在を知らずに売買代金を支払う買主との間に経済的な不公平を生ずることになります。 このために、法が特別に定めた責任(法定責任)として設けたのが瑕疵担保責任です。  

しかしながら、先述のように「瑕疵」とは隠れたキズというほどの意味ですから、売主が「知りませんでした」と言い切れば、責任を追及することはできません。

 売買契約を締結した後も、残代金支払いの時に建物を再点検しておくことが大事です。  

●情報収集の仕方

中古マンションの情報収集はどのようにするのがいいのでしょうか?  

第一は、複数のサイトで検索することです。SUUMOやHOME‘Sなどの紹介サイト複数と、三井のリハウスや住友不動産販売、野村不動産アーバネット、東急リバブルといった大手仲介業者のHPから丹念に検索をかけて行くのが面倒でも最良の策です。

 

  第二には、意中の物件があるような場合ですが、上記業者に希望条件を付して探索依頼の申込み登録をしておくことです。 これを済ませておけば、熱心な担当者から物件の紹介メールが頻繁に届くはずです。  

 

第三の方法は、駅前不動産などの店舗を尋ねて希望を伝え、紹介を待つ方法です。 おそらくは、一週間もしないうちに物件紹介があるはずなので、良さそうな物件があれば速やかに内覧希望を伝えて具体的な検討を始めるといいですね。   仲介業者の担当者も予算や条件、好みなどが鮮明になっているので、仮にひとつ目がダメでも、「よ~し、次はストライクを狙うぞ」と良い物件を紹介してくれるものです。  

●最後はフットワークが決め手

新築志向の強い日本人ですが、最近は最初から中古と決めてマイホーム探しをする人も増えていると聞きます。

 ところが、中古に目を向けてみたものの、中々優良物件が当たらないとこぼす人も少なくありません。

  中古物件は、実は新築より市場に出ている住戸数は多いのです。ところが、玉石混淆なので条件に合いそうなものがたちまち見つからないとこぼす買い手も多いようです。根本的な問題がどこかにあるのかもしれません。

 

  ところで、WEBサイトに出ていない物件が水面下で取引されることはあるのでしょうか? 業界ルールでは、不動産流通機構が運営するネットワークシステムの「REINS(レインズ)」に登録し、物件情報を業者間で共有することになっています。 (登録しなくても良いケースもあるのですが、ここでは説明を簡略化するために登録するとしておきます)  

 

売却希望者と媒介契約(売りを委託する契約)を締結した不動産仲介業者は、物件情報をREINSに登録します。このネットワークによって、業者なら自社が媒介契約を結んでいない物件でも自社顧客に紹介することができるのです。  

買い手から見たら、どの業者の門を叩いても、同じ情報を得ることができることになっています。

 

 しかし、これは建前で、実際は委託された物件をREINSに登録せずに水面下で売買を成立させてしまう例があると聞きます。 また、登録しても、他社から問い合わせがあったとき、「売れてしまった」や「商談中」などと偽って物件を渡さないというのです。これを「物件情報の囲い込み」と言うようです。

 

  これでは、公平な情報共有はできませんね。どうして隠そうとするのでしょうか? 理由は、両手取引をしたいからです。 仲介手数料は、買い手から3%+6万円、売り手からも3%+6万円を上限として受け取って良いことが宅建業法で定められています。仲介業者は売りの委託を受け、買い手も自社で見つければ売買当事者の双方から手数料をもらうことができます。  

ところが、ネットワークに登録したために他社に買い手を決められてしまうと、売り手からの手数料しか入らないことになります。これでは、収入は半分になってしまいます。 もし、媒介契約を締結する前の段階で購入希望者の目処が立っていたら、売却委託を受けると同時に収益が約束されるようなものです。  

 

そこで、業者は「このマンションが売りに出たらすぐに知らせます」と買い手を先に探す営業(宣伝)をします。 事前に買い手が集まるような物件は、大半が人気物件です。そばを通りかかった買い手が、「ここに売り物が出たら教えて」とメールや電話で適当な仲介業者に希望を伝えて来ます。

 

  こうして「購入予備軍」が多数リストアップされて行くような優良マンションなら、他社が入り込む隙を与えないで売買を成立させることが可能になるのです。 仲介業者の担当から見れば、資料を送るだけで終わってしまうような顧客よりは、直ぐに「見たい」と反応してくれる顧客を歓迎するものです。

 

  他の担当者、もしくは他社に決められてしまわないうちに内覧の約束をすれば、「商談中です」と牽制するなどして最大限の物件キープに尽力してくれます。 (中古物件は、早い者勝ちなのです)  

 

とはいえ、オープン情報ですから、内覧の日が先になればなるほど売れてしまう確率が高くなります。 優良な物件ほど物件をキープすることが難しいので、できるだけ早く行動することが必要です。   内覧した結果、前向きに検討することはできない(気に入らない)となっても、動きの早い買い手には担当者も熱心に物件を探索して紹介をしてくれるものです。

すなわち、フットワーク良く動くことが大事であり、幸運を掴むコツでもあるのです。

  (第1部はここまで。次回は岱2部をお送りします)

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