軍艦島の集合住宅と同潤会アパート

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

過日、長崎の軍艦島(ぐんかんじま)という無人島に高層の集合住宅があることを紹介するテレビ番組がありました。東大の教授が解説する、純粋に住宅の歴史研究の一助になるような番組と感じて(それだけではなかったのですが)、筆者は釘付けになりました。

●軍艦島の集合住宅

軍艦島は、その歴史や外観が軍艦に似ていることから付いた島の通称で、 長崎市の端島(はしま) のことですが、この島に残る廃墟住宅には実に興味深いものがあります。

先ず、フリー百科事典のWikipediaから抜粋引用して紹介します。(筆者 加筆訂正)

軍艦島は明治時代から昭和時代にかけて海底炭鉱によって栄え、最盛期の1960年(昭和35年)には5,267人が居住、人口密度は東京特別区の9倍以上、83600人/km²と世界一に達した。

炭鉱施設・住宅のほか、小中学校・店舗・病院・寺院・映画館・理髪店・美容院・パチンコ屋・雀荘・社交場(スナック)などがあり、島内においてほぼ完結する都市機能を有していた。

端島に残る集合住宅の中には、関東大震災の復興住宅として建てられた「同潤会アパート」より10年も古いものがある。7階建の30号棟は1916年(大正5年)の建設で、日本初の鉄筋コンクリート造の高層アパートとされる。

30号棟を皮切りに、長屋を高層化したような社宅など、次々に高層アパートが建設されたが、狭い島内に多くの住人を住まわせるため必要に迫られていたためだった。

高層アパートの中には売店や保育園、警察派出所、郵便局、パチンコ屋などが地下や屋上に設けられたものもあった。
(何やら、東京湾岸で現在建築中の大規模タワーマンションを彷彿とさせます)

どの建物にも人員用エレベーターは設置されておらず、また浴室設備は大半が共同浴場だったそうです。トイレも多くが落下式で、水洗式は半数ほど、炊事場は閉山まで共同のところが多かった。

鉄筋コンクリート造の技術が未熟だったため、配筋計画の問題のほか、建材の入手難から海砂を混ぜていたこともあって、劣化が進んでいる。

張り出しベランダは、その設計に不備があったため亀裂が入り、鉄パイプの支柱で補強されていたが、その後は支柱も消失し、崩落するのは『時間の問題』と見られる。また、小中学校校舎は波で土台の土が削られ、基礎杭が剥き出しになっている。

古い鉄筋コンクリート建造物が取り壊されることなく手付かずのまま放置されていることから、建築工学の観点からも経年劣化に関する貴重な資料として注目されている。

―――マンションの最後はどうなるのか、言い換えると今のマンションの耐久性は実際にどのくらいあるのか、果たして私たちは何年マンションに住み続けることができるのか、そんな疑問と課題に軍艦島は先駆的事例もしくは教訓として答えてくれている気がします。

今日は次に紹介する同潤会アパートとともに、マンションの将来を考えてみたいと思います。

●同潤会アパート

同潤会アパ―トという名前は聞いたことがあると思います。大正時代末期、関東大震災で東京圏が破壊されたとき、復興住宅として建設された、当時は珍しい鉄筋コンクリートの集合住宅のことです。東京都内と横浜市の各地に建てられ、全部で16か所だったようです。

Wikipediaによれば、近代日本で最初期の鉄筋コンクリート造集合住宅として住宅史・文化史上、貴重な存在であり、居住者への配慮が行き届いた、きめ細かな計画などの先見性があったようです。

電気・都市ガス・水道・ダストシュート・水洗式便所など最先端の近代的な設備を備えていたと言います。中でも、大塚女子アパートなどは、完成時はエレベーター・食堂・共同浴場・談話室・売店・洗濯室、屋上には音楽室・サンルームなどが完備されていて、羨望の最先端居住施設であったと記載されています。

居住者として想定されていたのは主に都市の中間層(サラリーマンなど)だったが、職業女性向けのアパートや、スラム地区対策(不良住宅改良事業)として建設されたアパートもあったそうです。

これがマンションの草分け的な建築物と言われ、最近まで残存していたこともご存知と思います。現在、上野下アパートが建て替え中で、これが最後の建て替えとなるようです。

マンションと言っても当時は賃貸でした。財団法人同潤会が建設したので、「同潤会〇〇アパート」とネーミングされたのです。同潤会江戸川アパート、同潤会代官山アパート、同潤会青山アパートといった名称でした。

その後は払い下げられて、持ち主が移転。同潤会は解散して今はありません。払い下げは今風に言えば分譲ですが、中古マンションとして売られたことになります。

建て替えられた中で一番有名なのが、安藤忠雄氏の設計としても知られる、原宿の「表参道ヒルズ」です。

最後の上野下アパートは「ザ・パークハウス上野(銀座線・稲荷町駅」128戸)」として現在分譲中です。128戸のうち事業協力者住戸52戸を含むとありますから、建て替え前の所有者が少なくとも52人いるのでしょう。

分譲マンションが日本で最初に登場したのは、昭和33年(1958年)のことで、第1号は新宿区の「四谷コーポラス」か、川崎の「小杉アパート」だと言われていますが、同潤会アパートは、それより30年以上も前に民間の手によって建設されたことになるのです。

同潤会青山アパートは完成が1926年だったそうですから、表参道ヒルズになる直前まで約80年間、使用され続けてきたのです。つまり、鉄筋コンクリートの住宅は、結構丈夫で長持ちするとも言えるし、何百年も続く寺社建築などの例と比較したら、なんだそれしか寿命がないのかという見方もできるわけです。

●マンションの寿命

建物は、その用途や、どれだけ建築にお金をかけたか、メンテナンスをどのようにしてきたか、といったことによって寿命の長さが異なり、ひとくくりに寿命何年とは言えないのですが、住居としての寿命がどのような要因で変化するかという点には着目しておかなければなりません。

軍艦島は、一切のメンテナンスがなされていないため、テレビで見た限りでも将に朽ち果てる寸前という印象でした。コンクリートの柱や床スラブが大きな口を開け、そこから中の鉄筋が顔を出している姿が映像に映し出されていました。

読者の過半は東京近辺に居を構えているはずなので、「同潤会青山アパート(現、表参道ヒルズ)」の建て替え前の姿をご覧になったことがあると思います。

確か4階建の建物でしたね。住んでいる人はなく、店舗として使われていました。

ジーンズショップや、婦人物のブティック、輸入雑貨の店などが、まるで森の中に隠れて商売を営んでいるという風情で、別世界の趣を感じたのは筆者だけではないと思います。

これが、かつてアパートだったことは形状から十分想像できましたが、住宅として使用していくことは既に無理な状態だったのです。

コンクリートの箱として見れば、まだまだ使用できるが、設備がなにしろ不足していました。

テレビのない時代に建てられたから、当然、共同視聴アンテナがありません。個別ばらばらにアンテナを買って来て取り付けるしかないのです。 エレベーターもありません。 戦後建てられた公団・公社住宅でも5階まではエレベーターのないものが多数ありましたが、やはり不便です。

電気の容量も足らないから、しょっちゅうショートしていたに違いありません。

20数年前の比較的新しいマンションでも、BS放送が見られないものがあります。そのようなマンションでは、個別勝手にパラボラアンテナを調達してきてバルコニーに取り付けて放送を楽しんでいるようですが、美観がよろしいとは言い難いですね。

これらの事実を見ると、マンションの寿命はコンクリートの頑丈さなどで決まるものではないことが分かってきます。 

メンテナンスも重要です。軍艦島のように長年放置すれば、コンクリートといえども地震で亀裂が生じた部分から雨水が浸透して内部破裂が起こり、耐震性も劣化します。

コンクリートほど寿命が長くない機械設備や配管類などの更新(交換)が必要になるので、その工事のしやすさと、新しい設備を導入したいときの対応なども予め検討することが求められます。

住戸内のリフォーム・リノベーション工事のしやすさといったことも重要です。

●長期優良住宅の登場

こうした課題は、管理会社の仕事というだけではありません。分譲する会社が、このことを認識しているかどうかが大事になるのです。

分譲会社は、販売してしまえば終わりと考える一面も否定できませんが、そうでないことを強く意識して設計することが求められるわけです。

そうした観点から、長く住めるマンション造りが意識されるようになり、30年ほど前に「センチュリーハウジングシステム」という考え方が生まれました。センチュリー、すなわち100年間住み続けられるマンションの在り方が議論され建設省から構想が発表されたのです。

その後、研究が進み、今は「長期優良住宅」と名を変えて、その建設促進策が講じられています。そのおかげで、一戸建て分野では事例が増加しています。ところが、残念なことにマンションでは適合する(国土交通省の認定を受けた)事例がまだ数えるほどしかないのです。

つまり、大半のマンションは寿命が依然として変わらないのです。コンクリート躯体は頑丈で本来は100年近くの耐久性があるとしても、外壁と屋根の防水工事を周期的に行い、設備や配管類も定期的な修理と交換を実施して行かなければ耐震性も耐久性も低下し、安全性と居住性が損なわれます。

さらには、美観を損ない、不衛生、不便、不快な住まいとなってしまうのです。

購入者において、自分が住んでいる間に発生する問題ではないからと無関心でいられるのは新築マンションを購入する場合だけです。それでも長く住めば、いずれは無視できない問題になって来ます。

技術革新の波が今後どのようにやって来るか分からないからですし、老朽化が進んでも快適に住めるマンションであり続けるために、知恵と費用負担が求められるときが来るからです。

新築マンションを買い、10年か20年かで手放す場合なら無関係かもしれませんが、次に選択する住まいが中古マンションとなると無関心ではいられません。そうなる可能性は誰にでもあることです。

このような心配をするようになったのは、人の寿命が伸びて来たことと関係があるのです。人生90年代がそこまで来ています。下手なマンションを買ってしまうと、自分の寿命よりマンションの寿命が先に来てしまうことになりかねません。

では、どのようなことに気を付けるべきでしょうか? 長寿命の物件を選べばいいのでしょうか?長期修繕計画があるマンションならいいのでしょうか? コトはそう単純ではありません。

何年そこに住むことになりそうか、中古を選択する場合では、その築年数が何年くらいの物件か、設備や配管の改修・更新がいつ行われたか、こうした点に思いをいたしながら長く快適に住んで行ける物件を選ぶ必要があります。

具体的には都度のご相談の中で明らかにしていくほかありませんが、このブログでも可能な限りの答えをお送りして行こうと思います。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

★三井健太のマンション相談室は、マンション購入のお悩みにお答えするサイトです。

★「無料の未公開情報」や「マンションWEB講座」など、お役立ち情報も多数掲載されています。

★ 「住みながら儲けるマンション選びの秘密」追補版第2回 データを拡充して改訂!! 
・・・既にご購入頂いている方には無料でお送りしています。「購入済み・追補版送れ」と書いてお申込みください。

★無料進呈「住んで気付くダメ間取りと名作間取り・特選50」

本書はマンションの間取りの実態(欠点)を知って頂くとともに 様々な制約のある中で工夫を凝らし完成させた秀逸な間取りプラン、「名作間取り」に触れて頂きながら目を肥やして頂くことを狙いに編集したものです。

そこで得られた知識は、良い間取りを選択するときやカスタムビルドの間取りを自らつくるときにも大いに役立つはずです。

また、少なくとも、住んでからダメ間取りに気付いて後悔することがないようにするための一助ともなるはずです。
お申込みは上記URLからどうぞ

★新築も中古も物件検索はこちらが便利➔➔➔➔➔➔➔➔http://mituikenta.web.fc2.com/index2.html