「終の棲家は60歳で決める」というシナリオ

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

以前のブログでも触れたことですが、人の寿命と家の寿命を併せて考えることが必要です。家は一度建ててしまえば、補修は途中で必要だが、死ぬまで住み続けることが可能。このような考えが当てはまらない時代になりました。人の寿命が大幅に伸びて、天寿の来る前に家の建て替えが必要になるかもしれないからです。
勿論、100年もの寿命を持つ家もありますから、すべての家がそうだと決めつけているわけではありませんが、マンションの場合では該当する例が多いと考えられます。
その意味で、「マンションでは永住ができない。それを考えるのは、どうやら60歳過ぎてから」というのが正解になりそうです。今日は、そんなお話をしましょう。

●存命中に面倒な建て替え問題が浮上する
仮に35歳で新築マンションを購入し、85歳まで住むと仮定したらマンションは築後50年です。既に建て替えが話題に上っている頃かもしれません。
百歳まで長生きする人にとっては、そこから15年以上(つまり築後65年まで)マンションは不具合のない状態であって欲しいもの。
しかし、そこまで健康体のままでいるのは難しそうです。仮に築50年で建て替え工事が現実的になって来たとしましょう。
そのとき、「工事中どこかに仮住まいし、完成したら戻って来るのは面倒だ。いろいろ不具合が出ていることは承知しているが、何度も大規模修繕を繰り返してきたので、このままでも十分住める。私は自分の寿命も終わりなので、当分はこのまま静かに暮らしたい」そう言って建て替え計画に反対しますか?

他の入居者の中には、中古マンションとして購入して来た若い世帯もいて、建て替えに賛成する人もあるでしょう。現在のマンション法(区分所有法)では、所有者の80%が賛成すれば建て替えが可能です。だから、あなただけ反対を唱えても、計画は前進するかもしれません。つまり、貴方の意思に反して自宅を出なければならないことになるのです。
結果的に、仮住まい先に一旦引っ越しし、完成後にもう一度引っ越し。一戸建てなら、自分の意思だけで全てを決められるのに、マンションとは何と煩わしいことか。でも、いつかそんな日がやって来るのです。人間の寿命よりマンションの寿命が長ければいいのに。

●長寿命マンション増加の傾向
50年くらいしか持たないマンションを買ってしまった貴方は、自分の天寿より先にマンションの老朽化・建て替え論議に巻き込まれ、面倒な老後を迎えるかもしれません。
しかし、最近は長寿命のマンションが少しずつ増えてきました。高強度コンクリートを使用し、水とセメントの比率で水を少なくし、また鉄筋へかぶせるコンクリートの厚みを標準より厚くした「耐久性能」の高いマンションは増えています。住宅性能評価では、「劣化対策等級3(概ね75~90年)」のマンションです。
ちなみに、建築基準法レベル(等級1)は、「構造躯体が25年~30年もつ程度の対策」。等級2は「構造躯体が2世代(50年~60年)もつ程度の対策」となっています。
等級3クラスのマンションに住めば、生きている間に建て替えの可能性は小さいかもしれませんが、そうでないマンションがまだまだ多いのが現実です。

●寿命を心配する必要のないマンションに住む
もし、マンションの寿命が50年、あなたの天寿が90年と仮定した場合、仮に40歳で新築マンションを購入したら、同時に寿命が来てしまいますね。それでは老後に面倒なことを抱え込むことになります。
そうならないためには、80歳くらいになっても十分に寿命が残っているマンションである必要があります。そこで、例えば60歳のときに新築か、中古でも築10年程度のマンションに住み替えるという対策が考えられます。
60歳になった貴方の余命が30年として、60歳で住み替えるマンションの余命は40年か50年は残っているはずですから、建て替え問題に巻き込まれずに済むでしょう。その頃には現在より長寿命のマンションが多数誕生しているかもしれませんので、実際はもっと先の話となり、天寿を全うするまで穏やかなマンションライフを送ることができるでしょう。

このように考えると、終の棲家を決定するのは60歳過ぎてからという結果になるのではないかと思います。逆に言えば、30代、40代でマンションを購入しても、そこに永住することは難しいと覚悟しておくべきなのです。

●60歳過ぎてからの買い替えは可能か?
ところで、定年を間近に控えて買い替えは可能でしょうか?そんな疑問がここで出てきます。もはや長いローンは組めませんし、組めたとしても収入が減って返済が困難になる人も多いでしょう。
シナリオはいくつか考えられます。
1)売却で手にした資金と退職金を併せて現在地に近い場所で購入する
2)同上、専有面積を小さくすることで買い替え資金を抑える
住み慣れた場所を離れたくない思いもあるはずで、そのような場合、売却価格を上回る買い物になると予想できますから、資金の準備が必要になるでしょう。退職金やそれまでの預貯金を取り崩すことになりそうですが、面積を狭くして予算を増やさないという道もありそうです。
2)都心のマンションを売却し、その資金だけで郊外の安い新築マンションを購入する
3)都心マンションの売却資金でリゾート地や田舎に土地を買い、小さな一戸建てを建てる
好立地で優良なマンションを選択すれば、中古になっても、あまり値が下がらないかもしれません。その場合は、売却資金だけで郊外マンションを購入したり、郷里の自然豊かな場所の一戸建てに住み替えたりすることができるかもしれません。
一戸建てなら、築年数の古い家と土地を購入するという選択肢もありそうです。一戸建てなら、マンションと違って修繕も模様替えも自分の意思だけで行なうことができますので、煩わしさは大幅に減りますし、好きなときに構造を補強したり、修理や模様替えを楽しんだりしながら暮らすというのも悪くないからです。

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