マンションの通風は最悪だ

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

東京都に「リブラン」という企業があります。主に東武東上線の沿線を地盤とする中堅デベロパーですが、昔から特長の際立つマンションを企画販売することで業界では一目置かれる存在の会社です。

バイク好きの人向けや、ミュージシャンならぬ「ミュージション」という音楽家向けのマンションなどが有名です。

そのリブランは、最近「エコヴィレッジ」という名のシリーズでマンションをいくつか供給していますが、そのコンセプトが素晴らしいので紹介したいのです。といっても、私は特定の事業者に肩入れすることは主義に反するので、同社を賛美するお話しではなく、マンション購入を検討する際の視点のひとつとして紹介しようと思います。

そのコンセプトとは「風通し」と「採光」に関するものです。それだけならさして驚きもない話ですが、明確な開発思想・哲学とも言うべき筋の通った考え方が感じられ、同時に最近聞くことが減っていた不動産業界の精神性に触れる思いがするのです。
リブランは「エコヴィレッジ」シリーズと称して、通風と採光を中心コンセプトに、緑のカーテンなどを通じて夏のマンションをエアコンに頼らず涼しく暮らすための提案をいくつも行なっています。

●風は入口があっても出口がないと流れない
多くのマンションの欠点は、窓があっても風が流れないことです。つまり風通しが悪いのです。理由は簡単です。風の通り道が塞がれてしまう設計が多いからです。
例えば、居間から廊下に出るリビングドアが風の通り道を塞いでいます。ここが閉まっていれば、バルコニーから入る風が奥(玄関側)の洋室には流れて行きません。
では、いつもリビングドアをストッパーで止めておいたらどうなのでしょうか?

たとえそうしても、玄関側の洋室にある窓を開けなければ、バルコニーの窓を開けても風は通り抜けませんね。では、窓は開けられるでしょうか?
そこが中高校生の女の子用の個室だったら、窓を開けておくことは少ないでしょうね。
では男の子だったらどうでしょうか?窓を開けても、部屋のドアを閉めれば同じことです。

バルコニーから入った風はリビングドアの開いた状態のときに居間を抜け、さらに個室のドアから廊下に面した窓へと流れていくのです。

バルコニーから玄関ドアへまっすぐ抜けるようにしたらどうでしょうか?つまり玄関を半開きにするのです。それも大いに抵抗のある方法で、そうしている家庭はあまりないようです結局、密閉空間となって、マンションの場合、24時間換気設備で人工的な空気の入れ替えはできても、体に感じる風を取りこむということになると、角部屋などの特別な場合を除き、かなり難しい課題になっているのです。

●夏を基準に考える
日本の家は、大昔から「夏を旨として」造られてきました。高温多湿の気候だからです。日本家屋は、熱気がこもらない工夫がたくさん見られます。
ところが、近代建築のマンションには、残念なことにその発想が欠けてしまっています。四方が開放できる一戸建てと、2方向しか開放されていない集合住宅の差と言ってしまえばその通りですが、マンション業界は真剣に考えて来なかったとも言えます。

マンションの冬はいいかもしれません。すき間風も入らないし、両隣からサンドイッチされていることもあって、暖房効率が高く確かに過ごしやすいですね。しかし、夏は暑くて堪らないので常に冷房をつけることになります。

逆に言えば、冷房があるから自然の風を通すということを私たちは忘れてしまったのでしょう。風通しの良い日本家屋は、春秋の気候の良いときに自然の恵みとして享受できるのに、マンションでは叶わぬことになったと気付かないのです。

ところが、今年(2011年)は「節電」が期せずして国民共通の必須課題になりました。ここでマンションの風通しの悪さに気付いた人が増えたのではないでしょうか?
賃貸マンションに住み、今まさにマンション購入を検討している人たちが、「風通しは大丈夫か?」と懸念し相談して来る例が去年より増えた気がするからでもあります。

リブラン社の名誉のために言えば、大地震が発生してから俄かに「通風」や「省エネ」をコンセプトにマンションの企画を始めたものではありません。かねて人工的な室温コントロールではなく、昔の日本人が知恵を絞った風の吹き抜けによって健康的な住まい作りをしたいと工夫を重ねてきた跡があります。
「エコヴィレッジ」というブランド名も、エアコンを極力使わないで室温をコントロールし、夏、冬も快適に暮らせるエコなる住まいを目指そうと名付けられたもののようです。
他社も最近は例外なく導入している「複層ガラスの窓」で室温を一定に保つことは無論、緑のカーテンで夏の直射日光を遮り、植物の葉の蒸散作用でバルコニーに冷気をもたらす提案なども行なっています。

さて、リブランの設計の基本は、外の開放廊下を歩く近隣住民の視線を気にしないでもよいように、プライバシーを確保しつつ、風が抜ける最小限の窓や個室のドアの開閉に工夫をしていることです。
具体的には、①玄関に通風専用の小窓を設置、
②開け閉めの空間を自由に設定できる引き戸(下図のようにしたもの。参考図です)
③開放廊下側の個室の窓を開けても視線を気にせずにすむブラインド型になった格子(ルーバー面格子)
の採用などです。

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ルーバー面格子を採用するデベロッパーは多いですが、それがあれば安心というものではありません。洋室のドアが半開きにできるか、風で急にバタンと閉まったりしないかなどのチェックも必要です。

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●中廊下タイプのマンションには注意
マンションの共用廊下は、開放廊下タイプとホテルライクな中廊下タイプとがあります。
開放廊下は言うまでもなく外気に接する形で設けられ、横殴りの雨が降れば吹き込んで来るという欠点があります。中廊下タイプは室内と同じですから、そうした懸念がなく、床の仕上げを絨毯貼りにするなど、高級感のあるデザインを売り物にしたりできます。

しかし、風通しの面から見ると中廊下タイプの角部屋でない住戸(タワーマンションに多い)は最悪です。その説明は無用かと思いますが、億ション級の物件をお探しの人は別として、風の抜けない中廊下タイプのプランは避ける方が無難ということになります。

もっとも、風通しが悪くても機械的なコントロールで通風と室温が快適に保たれるなら構わないという人や、その他の魅力が大きいから気にしないという人は、今日の話を忘れてくれればいいだけのことですが。

ともあれ、風通しにはもっと関心を向けたいものです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ

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講座NO.53マンションは永住できるか?」