液状化対策に取り組むマンション

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

液状化の心配がある場所でマンション用地を取得するというのは、デベロッパーにとって大きなリスクを負うものです。
何故なら、大きな建築コストがかかることになりかねないからです。
液状化の心配がある土地は買わないのがデベロッパーの採る最善の策です。しかし、知っていながら敢えて購入する場合もあります。その土地のロケーションが素晴らしいとか、スケールメリットが出せそうな場合とか。

土地を購入したらデベロッパーが真っ先に行なうのは、地盤調査です。購入する前に周辺のデータを集めて地盤の強弱を既に把握はしていますが、それでもあくまで近傍のデータに過ぎませんから、敷地内で地盤調査(ボーリング調査と言います)を実施します。
その結果を踏まえて「杭の長さ」を検討します。液状化が懸念される場合においては、「地盤改良」を行うかどうかの決断を迫られることになります。

●ボーリング調査と地盤改良の実際
固い地盤を支持層と言い、そこまで杭を打ち込んで安全性の高いマンションの設計を行ないます。場所によっては50mもの長い杭を必要とします。
固い地盤・支持層とは、N値50以上が5メートル以上続く地層を言います。

N値とは、63.5キログラムのハンマーを落下させて鋼管パイプを30センチメートル沈ませるのに必要な落下階数(打撃数)のことです。
固い地盤であれば何十回も落下させることになるわけですから、N値の数字が大きいほど固いことを意味します。

ここで問題になるのが「地盤改良」を行なうかどうかです。支持層まで杭を打ち込めばマンションが傾いたり沈降したりはしないわけですが、地表に近い軟らかな地盤に埋め込まれた
上下水道管が地盤沈下で破損する危険があります。また、駐車場などの敷地内空地部分などで不等沈下が目につくこともあります。

これらを防ぐには、ゆるい(軟弱な)地盤を骨材や砂で締め固めたり、すき間ができやすい小石を敷き詰めて水の逃げ場をつくったりすればよいわけです。
問題はどの辺の深さまでやるかということです。50メートルの深さまではコスト的に到底できません。そこで、地盤改良に踏み切るとしても、ライフラインの通るすぐ下あたりまでで止めるというのが現実的なのでしょう。

●杭は折れたりしないのか?
マンションの地下深くに打ち込まれた杭を想像してみて下さい。場所によっては支持層まで50メートルもの長い杭が打ちこまれているマンションがあります。
杭の周りにある土が液状化によって緩み、頼りない状態になったと同時に水平方向から大きな力が加えられたら、杭は折れてしまわないのでしょうか?
答えは、「折れることはなくても破断することはあり得る」のだそうです。
そこで、マンション地盤の液状化を未然に防ぐために、まず地盤調査段階で建物の支持層となる地質や中間層に、液状化の可能性がある砂質があるかどうかを慎重に判断します。
その上で、液状化の恐れがあると判断した場合には、支持層の深さや建物荷重等により、より経済的で効果的な各種対策工事(密度増大工法・固結工法・置換工法・水位低下工法等)を比較選択します。
阪神大震災の時、人工島の六甲アイランドやポートアイランドでは、これら液状化対策の効果がはっきりと証明されています。

ところで、阪神大震災以降、首都高速道路の橋脚に鉄板を巻きつける工事をしていた光景を見た記憶はあるでしょうか?今度近くを通ったら気を付けて見てみましょう。
鉄板を巻くという措置は耐震性の強化策として実施したものですが、これと同じことをマンションの杭に施したら液状化が起きたときに横(水平方向)からの力を受けても杭は安全です。現実に「鋼管杭」を使った建物は多数存在します。

しかし、鋼管杭は腐食する可能性があります。そこで、腐食を想定した肉厚が考慮されます。それでも当然ながら耐用年数はあります。「腐食しろ」を厚く見積もれば、その分だけ耐久年数は長くなるということになりますが、コストはそれだけ高くなります。
ともあれ、鋼管の腐食が進行しやすい場所は、塩分の多い地下水が分布する海岸近くということになりそうです。

●マンションの杭工事
次に、実際にマンションではどのような杭工事が行なわれているかを見ておきます。
杭基礎に用いられる杭は、コンクリート杭か上述の鋼管杭がほとんどです。
コンクリート杭は工場などで作られたPC杭(既成杭)などを回転圧入方式やハンマーで打ち込む方式の「既製コンクリート杭」と、予め掘削したボーリング孔にコンクリートを流し込む「場所打ちコンクリート杭」に分かれます。
場所打ち杭とは、現場で組んだ円筒状の鉄筋(鉄筋の籠のようなもの)を掘削した地盤の中に落とし、後からコンクリートを穴の中に流し込んで固め、杭を形成するものです。
昔は、PC杭をハンマーで打ち込む方法が主流でしたが、「かーん、かーん」という騒音があまりにも大きいため、今ではほとんど姿を消しています。

高層マンションなどの重い建物で杭工法を採用する場合は、ほとんどこの場所打ち杭工法を採用しています。

ところで、東京都庁のある西新宿に建つ超高層マンションは杭がないと言ったら驚くでしょうか?つまり、地盤がとても固いため、重い建物が杭なしで支えられるというのです。杭がいらない「ベタ基礎」という、面で支える工法を採っているのですが、これはちょっとした驚きです。
興味のある方は、この下から「ザ・パークハウス新宿タワー」を検索し構造をチェックしてみて下さい。

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