マンションの間取りは自分で直す「カスタムビルド」に限る

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンション購入のために勉強を始めて行くと、やがてひとつの共通点に気付くはずです。それは、マンションの間取りってどれもみな同じようなものだということです。
3LDKを基本に間取りのパターンを整理してみましょう。
①玄関を入ると左右に個室があります。
②奥(バルコニー側)に個室がもうひとつとLDKが配置されています。居間が縦長か横長かの違いがここで分かれます。(下図は横長リビング)
 tanoji-yokonaga-living.jpg

③水回り(浴室やトイレ)は中央部にあります。廊下をはさんで浴室・洗面所とトイレ、キッチンなどが分離するタイプと片側に固まっているタイプ(上図では横長リビングの方がそうですね))の違いがあります。
④中部屋(角部屋でないタイプ)は、各個室に1か所ずつしか窓がありません。部屋全体で見れば2方向にしか開放部がないわけです。居間が横型の場合、居間に接する個室(上図では和室)は窓のないものもあります。
こうした間取りを漢字の「田の字」に似ているので「田の字型」などと言う人がいます。

中には魅力的な間取りもないわけではありませんが特殊です。私は毎日図面に触れていますが、ワンパターンの「田の字型」間取りを見るたびに辟易しています。
しかし、仕方ない理由があることも確かです。詳しくは別の機会にしますが、他にもマンション(の間取り)には宿命的な欠陥がいくつもあります。
①廊下側の居室は声が外にマル聞こえ
②南向きの場合、共用廊下側の居室は暗くて寒い
③南向きに多い間口の狭いうなぎの寝床タイプ
④デッドスペースのリビング内廊下
⑤窓のない部屋や採光量が足らない暗い部屋
etc.

★図面入りで解説した記事をご覧になりたい方は、「三井健太のWEBマンション講座」をご覧ください。講座NO.55「住んで気付くマンションのダメ間取り」です。ここからアクセスできます。(http://mituikenta.web.fc2.com)

●地方都市に行くと優れた間取りが増える傾向がある
間取りがつまらないと感じるのは、主として東京のマンションの場合です。地方都市、とりわけ札幌市などで見かけるマンションには優れた間取りが多いようです。
東京の間取りがつまらないのは、簡単に言えば価格が高いことに原因があります。地方都市は地価が安いこともあって余裕のある建築計画を立てることができるのです。

★優良な地方マンションの間取りにご興味のある方はこちら(http://mituikenta.web.fc2.com/index2.html)から検索して覗いてみましょう。
お勧めはパンフレットを取り寄せることです。良い間取りが各階平面図のどの位置に設けられているかをチェックすることが勉強には欠かせませんが、そのためには断片しか記載のないネットだけでは目的が果たせないからです。

●間取りのセレクト方式が一般的になっているが・・
マンションの立地条件や設備、デザインなど全て気に入ったが、間取りだけが今ひとつというとき、売主は買い手の希望を間取り変更という形で叶えてくれる場合があります。
この間取り変更は、「メニュー方式」と呼んだり「間取りセレクション」と言ったりしますが、予め用意されたバリエーションから好みのタイプを選択する方式と、殆んど全面オーダーに近い方式、これらの中間の方式が見られます。

流し台の高さを選ぶ、ドアや床・壁の色をチョイスできる、ドアハンドルのデザインを選ぶ、といったものも含め、イージーオーダーは業界の常識になっています。
ただ、フルオーダーとなると、S&I方式(スケルトン・インフィル/本ブログの2011年3月5日で紹介)のマンションに限られ、こちらは稀少です。

しかし、いずれの方式にも申し込みの期限があり、急がないと希望が叶えられず、やりたい人は引き渡し後に一度完成した内装を解体してから工事をして下さいと言われてしまいます。
当然、その費用は買主持ちとなり、解体費も加わるため、実施するとなると結構な金額になってしまうのです。つまり、こうしたいという希望を知りながら、売主は当初の標準設計のままで工事を進めるわけです。
不合理な話ですが、一部の顧客の都合でマンション全体の工事スケジュールが狂うことを避けたいからです。蛇足ですが、引き渡し後の変更を想定して貴方の部屋だけ内装を止めておくなどということは原則としてできません。

工事は下から順に仕上げて行くため、下層階ほど工事の進捗が早く、オーダーやセレクションの申込期限も早く到来します。また、期限内の変更工事は無償のケースが多いのですが、希望内容によっては有償となる場合もあります。

●マンションの間取りは自分で直すものと考えた方が早い
間取りが気に入ったが、駅が遠いというとき駅を近くに持ってくることも、マンションの建設地を駅の近くに移動(変更)することもできませんが、場所が気に入ったものの間取りがもうひとつという場合は、その間取りを変更することは可能なわけです。そこが着目点です。設計変更が実現すれば、より満足度の高い買い物となるでしょう。

あらゆる条件が希望通りになることは殆んどありませんから、優先順位を決めてマンション選びは行なわれ、最終段階が部屋選びになるのが普通です。

例えば、予算内で「眺めの良い15階のAタイプは狭い」、「Aより広く間取りの気に入った5階のBタイプは眺めも向きも悪い」。さてどうしたものかと悩むというわけです。
そんなとき私は、Aタイプをカスタムビルド前提でお勧めすることが多いのです。
予算が大きく変えられないとすれば、眺めの良いAタイプはやや面積がコンパクトなタイプのはずです。でも、変更の仕方によって魅力的な部屋に生まれ変わるのです。
カスタムビルド、すなわち特別仕様となるため、売主によっては門前払いされることもありますが、工事スケジュールに余裕がある内なら交渉次第で可能となります。

●間取りを考えるのは面倒という人は?
S&I以外のマンションは、予め用意したプランの中からのセレクトするのが普通ですが、買主の希望を独自のアイディアで加えられれば住み心地は格段にアップします。
しかし、その考案自体が面倒と考えたり、苦手だったりという人があります。
そうした場合は、売主側であらかじめ用意したコーディネーターと打ち合わせして決めるというサービスが用意されています。

もし、そうしたサービスや対応のない物件の場合、もしくはそれを依頼してしまうと、後で購入を止めたいとき断りづらい状況になることを懸念し、それが理由で依頼をためらう人は、私に御依頼くださればいいのです。多くのケースで無料(ホームページ「三井健太の相談室」をご参照ください)のお引き受けをしています。有料になるのは、売主を訪ねて打ち合わせを代行するような場合です。

買主の意向を反映したカスタムビルドの間取りになるのは、売主の用意したメニュープランが面白くないことの証左でもあるのです。よく工夫された物件もありますが、とても稀です。

ともあれ、決まった面積の中でいかに快適に暮らすかというテーマで、かつ買主家族の希望・思い入れを実現するカスタムビルドは、プランニングを引き受ける私にとって楽しい仕事であることをつけ加えておきたいと思います。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ