行燈部屋を作ってしまう今どきのデベロッパー感覚

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

住宅情報誌SUUMOには、「人気3LDKランキング」という特集記事がときどき掲載されます。それによると、「2つの居室とリビングがバルコニーに面した間取り(いわゆる南面3室のワイドタイプ)」と「全居室が横並びで同じ向きの間取り(ワイドスパン横長間取り)」がベスト1と2で、「両面バルコにーのある間取り」は7位ですが、計3タイプがベスト10位の中にあります。

共通するのは、居室もリビングルームも全て窓があるということです。人気がある間取りには登場しない田の字型の一般的な間取り(図1)でも、基本的には居室に窓が付くのです。

本来、窓のない部屋をわざわざ作るという発想は、設計家にもデベロッパーにもありません。

図1 外廊下式マンションの田の字タイプの間取り
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しかし、結果的に窓なしの部屋があるマンションが最近は増えているのです。最近と言っても過去5年くらいの傾向と言うべきかもしれません。

なぜ作ってしまうのか。理由は明らかです。タワーマンションが増えたからです。

タワーマンションと窓なし居室は、どんな関係にあるのでしょうか? 

タワーマンションの多くは「内廊下方式」になっていて、玄関脇に居室をレイアウトしても窓を設けられないからです。法律の解説は割愛しますが、簡単に言えば気圧と火災の問題からできないことになっているのです。

このため、内廊下式のマンションでは図②のような間取りが誕生します。Bedroom(1)が窓なしの居室です。先に見た図1の住戸は「外廊下(開放廊下とも言う)方式」のマンションに出て来る間取りです。

図② 窓なし居室のある内廊下式マンションの間取りutirouka-andon.gif

これは有名なタワーマンションの1タイプです。南面3室タイプの人気間取りとも言えるのですが、惜しむらくは1室に窓がないことです。

タワーマンションでも次の図③のような全室窓付き間取りもあります。しかし、これは角住戸です。タワーマンションの内廊下タイプでは(外廊下タイプのタワーも例外的にある)、中住戸は窓なしの居室ができてしまうものと承知しておかなければならないのです。

図③ タワーマンションの全室採光・角住戸

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内廊下式でないのに、何故か窓なし居室付きの物件も見られます。図④の洋室(2)がその部屋です。

図④ 外廊下式マンションの窓なし居室

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この住戸は外廊下式のマンションで見つけたものです。なぜ、こんな間取りができてしまうのか、理由は不明ですが、玄関側にエレベーター塔か階段室か、またはL字型のマンションで一方の棟の壁が迫っているといったところでしょう。こういう場合も窓が設けにくい法規制があるのです。

脱線しますが、上図④をよく見ると、玄関脇の部屋に窓があるので外廊下式のマンションということは明らかなのですが、よく見ると、「サービスルーム(納戸)」と表示されています。

これは、壁や階段室が目の前にあるなどの理由で、法的な基準を満たすだけの光を取り込めないため、居室として認められないことを表しています。

ここで疑問を持たれた読者がいらっしゃると思いますが、窓があっても暗いからという理由で納戸と認定され、仕方なくサービスルームという表示にしたのに、一方では窓がないのに居室(洋室)と表示していいとはどういうことでしょうか?矛盾していると思いませんか?

その説明を付記します。

窓なし居室の扉に注目していただくと、いずれも引き戸になっていますね。図②の場合は、他の2居室が開き戸であるのに対し、窓なし居室は引戸です。

これが法の基準のおかしなところで、引戸なら開けた状態にしておけばバルコニー方向から自然採光が届くので、「居室」と認めるが、開き戸ではバタンと閉まってしまうからダメだというのです。だから、窓なし居室は必ず引戸、窓付き居室はどちらでも構わないということになっています。

●窓なし部屋をどう使いますか

辞書で行燈部屋の意味を調べると、「行燈部屋とは、光がほとんど入らない部屋のことです。
もともとは遊女屋などで、行燈や布団を収納していた薄暗い部屋のことをこう呼んでいたことから転じた」とあります。

ここまで「窓なし居室」と表現して来た理由がお分かりいただけたと思います。行燈部屋は何となく暗いイメージがするからです。

しかし、イメージだけでなく実際にも暗いのがマンションの行燈部屋です。つまり、引戸を閉めれば昼でも真っ暗、全開しても薄暗い部屋が多いのです。

次の図5なら、引き戸が3枚なので全開すればまだマシですが、ほかは全開しても暗い部屋と思われます。

図5 開放感のあるな窓なし居室
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窓なし個室どう使うかは、なかなか悩ましいものです。

営業マンは、「窓なしの方が落ち着きますよ。書斎とか趣味のお部屋にどうでしょう」などと言いますが、あまり納得感のない話です。

上図5のマンションをお買いになった人は、家族構成も夫婦だけで将来も家族が増える見込みはないということから、洋室(3)を最初からダイニングルームと位置付けていました。しかし、このような買い手は少数派のはずです。

●理想的なマンションはないものだが・・・

窓なし居室の間取りを作らないですむ方法はないものでしょうか?

筆者も間取り作りには一家言(いっかげん)持っている方なので、「こんな間取りをよく世に出すものだ」などと独り苦言をつぶやいているのですが、そうなってしまう業界事情も理解できないでもないだけに、心境は複雑です。

とはいえ、マンションという商品は場所という替われないベースとのセットなので、建物企画が悪くても売れてしまいます。早く言えば、どんなものでも場所さえ良ければ売れるので、「ここは良くない」と売り手が自覚できる部分があっても、そこに目をつぶって商品化してしまうのが現実です。一般消費財ではありえない話です。

買い手も、ここが良くないとか足りないとか認識していても、マンション購入に当たっては、妥協せざるを得ないという実態があります。完璧はないのだからと言い聞かせ、売り手も優先順位をつけて選びましょうと誘います。

マンション・不動産というものは数に限りがあり、最上階の東南の角の住戸といったらその立地では唯一無二なのです。大げさに言えば、世界でひとつだけの商品を選択しようとするわけです。

しかし、このマンションにはこれしかないのだからと言われても釈然としないのも事実でしょうし、売り手に文句のひとつも言いたいに違いありません。「もっとちゃんとした間取りを作れよ」と。

ともあれ、行燈部屋付きは間取りの人気度が低いのも事実です。「寝るだけだから暗くて構わない」などと割り切らないで欲しいと筆者は秘かに願っています。行燈部屋不買運動に発展すれば、マンションメーカーも作るのを止めるでしょうから。

まあ、そんなことにはならないでしょうが、最近のデベロッパーの姿勢を見ると「○○だから仕方ない」が幅をきかせてしまっている。そんな気がするのです。胸を張って「悪くないプランでしよ」と言える間取り作りに、真摯に向かって欲しいと心から願うところです。

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