自治体の「環境性能表示」って何?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

分譲マンションの広告にたびたび登場する「環境性能表示」ですが、よく知られているとは言えないようです。今日は、このお話しをしたいと思います。

環境性能表示とは、下図のようなものです。ご覧になった記憶があるのではないかと思います。

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この表示があるマンションとないマンションが見られますが、これはどういうことなのでしょうか?
東京都の場合、「マンション環境性能表示制度」は、延べ床面積が10,000㎡超でそのうち住宅部分の延べ床面積が2,000㎡以上のマンションを対象に、建物の断熱性や設備の省エネ性などについての評価内容を「星の数」でラベル表示することを義務付けているもの。2005年にスタートしました。

横浜市では、2010年(平成22年)4月1日より、不動産広告等に建築物環境性能表示を義務付ける制度を導入しました。

建築物環境性能表示は、建築物環境配慮制度で届出が必要となる特定建築物の内、販売等を目的とした不動産広告等を行う際に、建築物の環境性能に関する情報を広告上に表示し、購入または貸借しようとする方にその情報を提供するためのものです。
横浜市の場合では、横浜市建築物環境性能表示として「地球温暖化対策」、「ヒートアイランド対策」、「長寿命化対策」、「まちなみ景観への配慮」の4項目プラス「総合評価」を5段階評価することになっています。

自治体の中で、この環境性能表示を義務付けているのは、2011年10月現在、東京都・横浜市・川崎市・埼玉県・千葉県柏市・大阪市・神戸市などに限られています。

導入の狙いはどこにあるのでしょうか?以下の3つに集約できそうです。
(1)マンションを購入しようとする人に情報を提供し、環境に配慮したマンションを選択しやすいようにする。
(2)環境に配慮したマンションが市場で評価されるしくみをつくる。
(3)マンション建築主の自主的な環境配慮の取組を促す。
これらにより、家庭部門の温暖化対策を推進することが大きな眼目なのです。

東京都の例では、「断熱性」、「省エネ性」、「建物の長寿命化」、「みどり」の4項目、2010年度からは「太陽光発電・太陽熱」が加わって5項目になりましたが、それぞれ3段階評価します。

「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に基づいてマンションの広告等に明示されることとなっています。
新項目の評価基準のみを紹介すると、「太陽光発電も太陽熱」利用の設備が設置されていなければ★はなし、太陽光または太陽熱利用設備を合計5kW未満設置していれば★ひとつ、同5kW以上なら★★、同10kW以上設置していれば★★★としています。
★が3つつけば最高ランクになるわけですが、5項目がすべて3つ星というのは滅多にありません。
東京建物の「ブリリア辰巳キャナルタワーズ」は、4段階基準の時に3項目が3つ星で1項目のみ2つ星でした。
5項目基準になってからでは、東急不動産の「ブランズ日本橋茅場町」が3項目で3つ星、2項目が2つ星となっています。

最近の例でオール3つ星(4項目基準のとき)は、東京都と東急グループ、三井不動産などの共同プロジェクト「Cross AIR TOWER(分譲中)」と、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス新宿タワー(分譲中。2012年1月完成予定)」くらいですし、5項目基準になってからは今のところ、オール3つ星は「プラウドタワー東雲キャナルコート(全600戸。2012年12月完成予定。分譲中」が第1号です。

今後は、興味を持ったマンションの「環境性能表示」をじっくり眺めてみるのも良いでしょう。
★上記の各物件にご興味のある方はこちら(http://mituikenta.web.fc2.com/index2.html)から検索できます。

●CASBEE(キャスビー)って何?
ところで、横浜市の表示マークにCASBEEという文字が見えますが、これの意味も補足しておきましょう。
CASBEE (キャスビー)とは、建築環境総合性能評価システムのことで、2001 年に国土交通省が主導し、(財)建築環境・省エネルギー機構内に設置された委員会によって開発されたものです。
地球環境・周辺環境にいかに配慮しているか、ランニングコストに無駄がないか、利用者にとって快適か等の性能を客観的に評価・表示するために使われています。評価対象となるのは、日本国内の新築・既存建築物です。

簡単に言えば、建築物の商品価値として求められるもので、これらの客観的な評価を消費者が一覧できるという意義もあるとされます。
また、近年は企業の社会的責任(CSR)が強く要求されるようになり、特に大企業では新築する工場や自社ビルの環境負荷を軽減し、高評価を目指す設計が行われています。そして、自社が社会的責任を果たしている証左として、新築・改築にあたって CASBEE による高評価を受けたことを積極的に発表し、自社の宣伝に活用しています。
地方自治体によっては、この CASBEE による評価を利用して「マンション環境性能表示」制度に転用しているというわけです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ

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