「値上がリしないマンション」を敢えて購入する人のために

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

このブログでは再三に亘って「リセールバリューを考慮して買いましょう」と述べて来ました。価値が持続するマンションの条件についても、何度か言及しました。

その条件のひとつは立地条件ですが、購入時の価格から下がらない、むしろ値上がりするマンションの条件はと問われると、都心にあるとか、駅に近いといったことになります。地域的には人気沿線や東京都内などの限られた物件になり、非難を恐れず言えば、郊外や地方都市のマンションは、最初から条件を満たしていないといっても過言ではありません。

そのようなマンションを選択するしかない人、例えば、学校も勤務先も地方にあるなどの人のことですが、「値上がりしないと分かっているマンションを購入する」人のために述べておきたいと思います。

●リセールバリューの観点はなぜ必要?
将来のことは誰にも分からないのですし、売却するかどうかも分からないのに、将来のリセールバリューを論じるのは「絵に描いた餅」になりかねないというご批判もいただきましたが、将来のことが分からないからこそ、いつでも処分が可能な、言い換えると資産価値の下落リスクが小さいマンションを選択するべきだというのが私の主張です。

しかし、現実問題として郊外や地方都市を選択するしかない人はどう考えたらいいのでしょう。都心の一等地のマンションは中古になっても値下がりしないが、郊外のマンションは必ず値下がりするような言い方をされたら、きっと気分を害することになるでしょう。

埼玉県内に勤め先があるので自宅も県内に構える方が良い。そのような人は勿論たくさんいるわけで、埼玉県に住み東京都心に通勤する人ばかりではないのです。それも承知しています。では・・・

●マイホームには金銭で測れない価値がある
郊外に親が住んでいたら、その親の近くに住むことで親孝行ができるかもしれません。
山や森、野原、河川など自然の姿が残る郊外に住んだら、子供に命の大切さを教えることができるかもしれないし、クルマの往来などを気にしないで走り回る元気な子供を育てることに役立つでしょう。
都心なら持てないクルマが、駐車料金が安い郊外なら持てるので、家族でドライブを楽しむ機会も増やせるかもしれません。
都心から離れていると通勤は痛勤になりかねないが、その代わりに休日はONとOFFの完全な切り替えでリフレッシュができることでしょう。

このようなメリットは金銭の多寡では測ることができません。ある知人は、郊外に移転した私立の女子高に子供を入れるのを機にマイホームを郊外に求めました。そのおかげで子供は部活にも勉学にも励むことができ、高校3年間を有意義に過ごすことができたそうです。

このような例がたくさんあると想像します。これらは皆、経済的尺度では測れないメリットです。幸福と言い換えても良いでしょう。たとえ何千万円の損をしても、後悔することはない価値があるのではないでしょうか。

●高く売れないマンションの処分をどうする?
転勤で地方都市に移住した折に念願のマイホームを購入した人がいます。仮にAさんとします。Aさんは、それまでの狭くて古く、綺麗とは言えない社宅を脱出したのです。ところが、入居して3年で再び転勤となったのです。
そこで、マイホームを処分することを検討したのですが、何と購入価格の30%ダウンという査定結果に愕然としました。購入時に入れた頭金の分が吹っ飛ぶ計算です。そこで、賃貸も検討しました。幸い、毎月のローン負担分くらいの賃料が楽に取れる見込みでした。

しかし、Aさんはショックでした。ようやく貯めた頭金でしたから、次にもう一度マンションを購入するときの頭金を貯めるのは自信がありません。子供の教育費がかかる年齢に近づいていたことも理由ですが、そもそも貯蓄があまり得意な家庭ではなかったようです。

将来、マイホームのある都市に戻って終の棲家にするつもりもありません。好きな街でしたが、夫婦とも故郷ではなかったからです。できたら、次の転勤のときには転勤先に関わらず東京近郊に購入したいと考えていたのです。

しばらく貸しておいて、折りを見て売却するという選択も考えたそうです。しかし、私は思い切って売却を勧めました。というのも、売却金額が更に下がりローン残債を下回るような事態になったら、銀行との清算に当たって持ち出しが必要になるからです。
ローンは返済していくうちに残債務は減りますが、そのスピードに加速がつくのは後半です。最初の10年~15年はあまり減らないのです。その減り方を超えて売値が下落する恐れがあるからです。

助言する私としては、人さまの財産にケチをつけるような言い方に抵抗がありましたが、下落の懸念がないと断言できるマンションではありませんでした。いえ、マンションは立派な建物のようでした。ただ、立地条件に疑問があったのです。
もし、悪い予想通りになったら再び貯金を失くすことになりかねません。それを嫌って先送りすれば、終の棲家を買う時期が遅れ、住宅ローンを定年までに終わらせるような計画も立てにくいことになりそうです。

築3年と新しい物件なので、私は査定価格を大幅に超える高値で様子を見ることを提案しました。半年間、空室のままとし住宅ローンを払い続ける前提です。結果は、5か月後に買い値の15%ダウンの金額で売却に成功しました。
5か月分の住宅ローン合計が50万円くらいでしたから、その分を計算に入れても嬉しい結果となりました。仲介手数料を払っても手元にはいくらかのまとまった金銭が残ったのです。

この例は30%ダウンの数字から出発していますが、ご相談の事例では入居後10年経って、価格が半分になったというのもあります。お答えはケースバイケースですが、これから購入するという人へお伝えしたいのは、やはり「できるだけ資産価値の下落リスクが小さいマンション」を選択するべきということです。
地方や郊外の「より価値あるマンション」の目利きこそが重要ということになるのです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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