「クチコミ掲示板」の危うさ

ブログテーマ：元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月５と１０の日に投稿しています。

「食べログ」サイトの「やらせ口コミ事件」が年初に発覚しました。美味しいと評判の店が、作為的な投稿によって上位にランクされたのだとか。ランキングが必ず上がりますから、当社にお任せ下さいと持ちかけて金を取る業者、それに乗っかった店。ウソのクチコミで作られたランキングでは、ランキングそのものの信ぴょう性が疑われてしまいます。サイト運営会社は、法的措置に踏み切るとか。

クチコミサイトは、近年あらゆる業界・商品で活用されるようになりましたが、新築マンションでも複数のクチコミ掲示板が見られます。
私も仕事柄、ときどき覗くのですが、「玉石混交の書き込みが多数」という印象を受けます。
極論を言えば、悪意や無責任の極みです。クチコミ掲示板の情報を鵜呑みにする人もいるだろうと想像するとゾッとします。

ランキングではないので、「食べログ」と同じようなことはないにしても、信用できないコメントや情報が多過ぎるのです。

程度の低い営業マンが、ライバル会社をこき下ろしているようなものも多く見られます。見る人が見れば業界人と分かる用語やフレーズで書いているので、ターゲットにされた会社の方もすぐに気付くのでしょう。最後は互いに「揚げ足とり」の様相を呈しています。醜くく、かつ恥ずかしい限りです。サイト管理者で露骨な投稿を削除しているらしいのですが、作業量からみて限界があると考えられます。

掲示板は業者同士のけんかの場ではないはずですが、とばっちりを受けるのは、真面目にマンション購入を検討している買い手さんたちです。

どんなマンションでも何がしかの欠点・短所はあるわけですが、それを針小棒大に指摘・表現してライバル物件をおとしめる意見を、それと知らずに読んだ人が、必要以上に影響を受ける可能性は低くないと思うからです。

そもそも、マンション検討者がネットの掲示板に向かうのは、売主から得られない情報、もしくは売主が故意に隠しているかもしれない情報を知りたいという動機があるためです。同じ物件の検討者同士で、互いに掴んでいる情報を交換するといった狙い・期待があるのだと思います。

ところが、掲示板に書かれた情報が悪意に満ちたものであれば、目的が果たせないだけでなく、誤解を生むことにもなります。ライバル社にしてみれば、「してやったり」ということでしょうが、実に迷惑な話です。

一方、ライバル物件が偶々（たまたま）近くにないようなケースでは、そのマンションを褒め称えるような意見ばかりが並ぶといったこともあるようです。その意見は、もちろん検討者や契約済みの買い手の立場で書かれています。しかし、それらの中に、買い手の立場を装ったダミーが書きこまれていないと断定することもできません（そうでないことを望みますが）。

次のような書き込みがありました。「最寄り駅の〇〇からは、確かに距離がありますが、バスも朝晩は５分間隔で運行していますし、健康のために歩くのもいいのではないかと思って購入を決めました。まあ、メタボ対策です（笑い）。そのことに関しては、妻も大歓迎だっだので。また、駅から遠い代わり、マンションから徒歩３分のところにある広大な〇〇公園には芝生広場もあって、子育て世代の我が家には何よりです。室内設備もハイスペックで満足できるものでした。広さ、間取り、価格のトタールバランスに優れ・・・（後略）・・・」
最後まで読んで「まるで担当営業マンのセールストークだなあ」と感じたものでした。

また、別の物件では「地元民です。50年以上ここに住んでいますが、昔と変わらないところが良い点だと思います。顔馴染みが多いですし、人情味があって、治安もよく、気さくな付き合いができる良い街ですよ。ちなみに、〇〇神社の例祭では・・・（後略）・・・」という書き込みのある一方、同じ物件で次のような書き込みもありました。「元、住民です。11年前にマル暴の発砲事件が起きたあとに引っ越しました。今でも〇〇町には、その筋の事務所があるはずです。道が昔のままで狭く、路地に連れ込まれたら怖いので、娘が中学に進学すると同時に越したのです」

このマンションは、ある住宅密集地域の再開発案件で、周囲は古い「しもた屋」風の民家やアパートもたくさん残っている、まさにこれからという地域ですが、暴力団事務所が本当にあるかどうかは知りません。もう移転してしまったかもしれないのです。しかし、その確認のための行動より先に、検討そのものを断念してしまう人がいたかもしれません。
古い街の良さを、そのまま良さとして受け取るか、それとも「さびれた町」とネガティブに受け取るか、この物件の場合は私の知る限り微妙な地域であることは確かですが。

クチコミ掲示板の意見・情報は、冷静にウソと誠を見極め、咀嚼してうまく活用することが大事です。

しかし、人は様々です。
ネガティブ情報に鈍感な人もあります。というより、知らず知らずのうちに、自分でネガティブ情報を排除し、ポジティブな情報ばかりを集めているときもあるのです。反対に、重箱の隅をつつくように粗さがしに懸命になる人もいます。

買いたいという気持ちが高揚しているときと、気持ちが後退しかけているときでは、人の意見を聞く耳も違ってしまうのでしょう。クチコミ掲示板は利用の仕方いかんで諸刃の剣になる危うさを持つものと言えるかもしれません。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室（http://mituikenta.web.fc2.com）までお気軽にどうぞ。「無料相談」と「無料マンション評価サービス」等があります。