三井不が僅か100坪の狭小敷地にマンション建設の不思議?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

新築マンションの供給戸数ランキング(全国2011年)で第3位という大手マンションメーカーというだけでなく、過去に名作マンションを多数手がけ、大規模開発や億ション、タワーマンションなど、レパートリーも広く、いずれも上質なマンションを建てる企業として知られる「三井不動産レジデンシャル」。
その同社が、何とも理解しがたい物件を建設しました。この2月に竣工したばかりの「パークリュクス門前仲町(地下鉄門前仲町より徒歩10分・水天宮より徒歩7分)」がそれです。
敷地344.87㎡、7階建て、総戸数34戸、専有面積22.07㎡~40.05㎡(2012年2月末時点の残戸数18戸の分)というもの。
パークリュクスは、都心のコンパクトマンションで、中心タイプは30㎡台、40㎡台、50㎡台の住戸で構成されています。非難を恐れずに言えば、用地獲得競争の中でこぼれたような狭小敷地が産み落としたマンション・シリーズ。それがパークリュクスです。
業界内の用地獲得競争は、常態的に激しいものがありますが、それにしても三井不動産レジデンシャルのような大手企業が、こんなに小さなプロジェクトに手を出すのは不可思議です。
東京圏で新築マンション購入者の4分の1以上が単身者であるという昨今の市場を反映して「コンパクトマンション」を提供するデベが増えたのは周知の事実ですが、どうも用地取得難のあだ花という感がしてなりません。
勿論、同社の名誉のために補足しておくと、パークリュクスシリーズが、全部100坪前後の土地に建てられた小型マンションばかりということではありません。

コンパクトマンションの問題点を再点検してみましょう。

●コンパクトマンションの定義
業界でいつの間にか定着した定義があります。それによれば、専有面積が30㎡台から50㎡台(30~59㎡)のマンションを「コンパクトマンション」と呼んでいます。
間取りで言うと、1DK~2LDKです。

●コンパクトマンションの供給
単身者やDINKSでマンションを購入する人たちの購買力は、総じて決して低くないのが実態です。住宅資金贈与の特例税制が効果を発揮し、親等から頭金贈与を受けて購入する人も多いためですし、DINKSの場合では2人合わせると高所得者になるからです。
これらのニーズが増えたことに伴い、この10年くらいは、デベロッパー側も積極的に新規供給に取り組んできました。
この種のマンションは、ファミリータイプ混在型のマンションから、コンパクトマンションばかりで構成された純粋(オール)コンパクトマンションとを合わせると、東京23区で新規供給全体の4分の1から3分の1にも達しています。

●コンパクトマンションの問題点
純粋コンパクトマンションの共通点は、敷地面積並びに戸数です。比較的大きなものでは、1500㎡ほどの物件も見られますが、殆どが1,000㎡程度、小さなものは、既述の「パークリュクス門前仲町」のような300㎡程度の敷地で開発されていることです。
100坪程度の小さな敷地に、ペンシルのように細長い建物が12~14層で立つのです。
当然ながら戸数も少なく、20~30戸といった小戸数が普通になっています。
コンパクトマンションの一番の懸念材料は、小型マンションであるがゆえの管理費・修繕費の問題です。小型でも、大型マンション並の管理や修繕計画を導入すれば、そのコストはかなり割高になるのです。
実際には販売のしにくさを考慮して、安く設定するケースもあります。これが何を意味するかは賢明な読者はお気づきでしょう。

●貧相なマンションの将来価値は?
また、小規模マンションの場合、特に狭小敷地のペンシル型マンションは、外装やエントランス周りをどんなにデザインしても、威風堂々にはなりません。当然ながら、ゆとりがほとんどない建物です。敷地周りをふんだんに植栽でデザインすることも困難です。
つまり、貧相とは言えないまでも、立派な外観にはなりそうもなく、館内のグレードがどれほど高く造ってあっても、周辺の建物に埋もれた形にしかならないのです。

●割高な価格のコンパクトマンション
小型物件で、かつコンパクト住戸ばかりで企画すると、建築コストはどうしても高くなります。同じ敷地に80㎡の住戸を30戸つくるのと、40㎡の住戸を60戸つくった場合で説明しましょう。
面積の合計は同じでも、玄関ドアも、トイレも、ユニットバスも、ファミリータイプが30台ですむのに、コンパクトマンションの方は60台必要になるため、コンパクトタイプで固めた企画の方がコストは余分にかかります。
住戸と住戸を仕切る壁も多くなります。遮音性に配慮した仕上げを施したコンクリート壁は、単純に言って2倍必要になるのですね。これもコストアップ要因です。

●デベロッパーの狙い
30戸の物件を開発するのも100戸の物件を開発するのも手間は同じです。しかし、オールコンパクトの実り(売上・利益)は小さいのです。
このような物件の企画はどうして生まれるのでしょうか?
既に述べたように、用地難がその背景にあります。
用地難は慢性的な業界事情ですが、別の見方をすると売り地は多数あるものの、条件の良い土地の競争は激しく、必要な量(売り上げ等)の確保のためには、本意ではない土地も取得して行かなければならないのです。
本意でない土地のひとつは、事業効率の悪い小規模敷地です。小規模な土地は、当然に小規模な建物になるため、建築費その他でスケールメリットが生まれません。また、付加価値の高い物件の企画は困難です。

それでも、「コンパクト」というだけで買ってくれる単身者が存在するため、どう見ても優良なマンションとは言えない超小型マンションがつくられます。そこに大手デベまで参入していることに大いなる疑問を持ってしまいます。

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