マイホームは経済的な損得で測るものではないが、こんな計算も成り立つ

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マイホームを持つメリットは、精神的満足感を得ることと、家賃と比較したら「低金利の恩恵」で買った方がトクだという経済的なものにもあることは言うまでもありません。
ここでは、経済的なメリットのみにスポットを当てて考えてみたいと思います。

●家賃並みのローン返済で購入できるメリットって本当?
1%を割り込むような低金利の住宅ローン(変動型)も普及している昨今、その返済金額の驚くべき低さは、家賃を払うより安いと感じる買い手も多いと言われます。
でも、本当にそうなのでしょうか?
マンションを持つと、賃貸ではありえない別の支出も発生します。購入したときかかる1回きりの不動産取得税と登記料、毎年かかる固定資産税、毎月かかる管理費と修繕積立金などです。
さらに、「どうせ買うなら広い部屋が欲しい」とばかりに賃貸の場合では選ばない広さを求めてしまうので、住宅ローンの金額も家賃並みとはいかない人が大多数です。勿論、頭金の入れる金額にもよるのですが。
こうした計算を細かくして行けば、実は賃貸住宅に入るより負担が重い場合が多いものです。

●売却した時点で損得を計算してみる

ともあれ、賃貸と購入を比較したとき、総住居費がほぼ同額に納まるような買い方は、理論的には可能です。
よく、新聞や雑誌に40年、50年という長期間住み続けた場合の条件で比較したシミュレーションが出ていますが、将来も大きな金利上昇がない場合においては、買った方が借りるよりトクという計算になっています。
ところが、10年前後で線を引いて計算してみると全く違った結果になるのです。何故10年かと言えば、マンションの買い替えのタイミング(最も多い時期)だからですが、これが20年でも同じ。40年以上も売却がないとするシミュレーションは現実的ではないのです。

●10年先の買い替えシミュレーション

では、ひとつ例を挙げてみましょう。4500万円で購入した70㎡のマンションが10年先に4000万円で売却できたものとして計算してみます。

<住宅ローンを使わないで購入した場合>

10年間に支払ったお金=購入額4500万円 + 購入時の諸費用120万円 + 管理費・修繕積立金120か月分250万円 + 税金120万円=4990万円・・・(A)
売却して戻るお金=物件価格4000万円 ― 仲介手数料126万円=3874万円・・・(B)
(A)と(B)の差額=1,116万円を120か月で割ることで毎月の平均住居費とみなすことができますから、その答え93,000円は70㎡の賃貸マンションの家賃(165,000円と仮定)と比べると、半分強(56%)の負担で済むという結果となりました。

<頭金を500万円払い、ローンを4000万円組んだ場合>

10年間に支払ったお金=毎月のローン返済額145,000の120か月分 + 頭金500万円 + 購入時の諸費用160万円 + 管理費・修繕積立金120か月分250万円 + 税金120万円 ― 住宅ローン控除(還付金)250万円=2520万円・・・(C)
売却して戻るお金=物件価格 ― 仲介手数料 ― ローン残債3300万円=574万円・・・(D)
(C)と(D)の差額=1946万円。これを120か月で割ると、162,000円。ほぼ家賃並みの負担という計算結果となりました。

以上の計算は、住宅ローンを使って購入した場合に限ると、同等の賃貸マンションに住んだ場合と比較して、購入による10年間の費用負担額は賃貸とさほど変わらないということを表わします。しかし、前提条件を変えたら全く結果は変わってきます。
例えば、頭金をもっと少なくした場合や、売却額が約10%ダウンの4000万円ではなく20%ダウンの3600万円くらいだった場合などに数字を入れ替えるのです。
この場合は、賃貸の方が負担は少ないという結果になりますね。ということは、損得計算だけでマイホームを考えるなら、10年後の価格が10%ダウン程度に納まるような物件を選択しておかないと損になるわけです。金利を現状より高い設定にしたら、値上がりするマンションでないと損が発生するということになるかもしれません。

こんなふうに計算してしまうと、「購入は損だな」と感じてしまう人も多いことでしょう。しかし、原点に戻って「マイホームは経済的なメリットより精神的メリットが大きい」ことに着目すればいいのです。

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●問題は買い替え資金

話を元に戻します。
上記のシミュレーションでは、売却後の手取り資金(D)は574万円でしたが、仮に売却額がもう574万円低いという結果だったら、手元に残る資金はゼロということになります。購入時の頭金が少ない場合は、マイナスです。
そうなると、買い替え計画は頓挫するかもしれません。言い換えれば、新たに頭金を用意するとか、頭金ゼロの買い替え計画を検討することになるのです。

10年後の自分を想像したとき、所得が大幅に増える人は、預貯金も増え、かつ住宅ローンの返済額が増えても負担感はないかもしれませんが、このような楽観的な見通しが持てない人は別です。
悲観的に予想しておきたい人、言い換えれば堅実な設計をしたい人は、やはり最初の購入時に「売却価格が下がりにくい物件」を選んでおくこと、もしくは頭金を多額に入れておくことが肝心ということになります。
もっとも、買い替えの可能性が低い人は、売却見込み額がいくらになろうと関係ありませんね。でも、果たして最初のマンションに永住できるでしょうか?人生は計画通りに行かないものです。

東京圏では、10年経っても購入時の価格を30%も上回る売却額になる(つまり値上がりする)物件がある一方、半値に下がってしまう物件も現実にあるのです。どのような物件を選んだらよいかについては、「三井健太のマンション講座・物件選択の7大条件」」をご高覧いただくとして、買い替えをスムーズに進められる物件を選ばれるようお勧めします。

尚、売却額が想定以上に低いときは、売却を諦めて我が家を賃貸に出し、再び賃貸マンション暮らしに戻るという道もあることを付言しておきます。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。「無料相談」と「マンションの無料評価サービス」があります。

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