未完成マンション購入のリスク

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

工事中にマンション販売は行なわれます。ご承知のとおり、いわゆる「青田買い(売り)」が常識です。自分が買いたい部屋とは異なる間取りのモデルルームを見て、出来上がりを想像しながら購入を決断しなければならないというわけです。
この販売方式は、随分昔から採用され、かつ定着してきました。しかし、これは買い手から見て大きなリスクを伴うものでもあります。そのことを改めて考えてみました。

●イメージが違ったから解約したい――は通用しない
建物が完成すると、必ず「完成内覧会」なるものが挙行されます。そこで、以下のような落胆を味わう購入者は少なくありません。
①内装のイメージがモデルルームと大きく違った
②玄関側の個室がとても暗かった
③個室に梁が目立ち、そのためか部屋が実際以上に狭いと感じた
④共用部の玄関やロビー、外観などが想像より安っぽい印象だった
⑤心配していた道路や鉄道騒音が、想像以上に大きいことが分かった
⑥最上階のルーフテラス付きを購入したが、テラスに出る際、踏み台が必要と分かった
etc.

これらの問題に気付いて落胆し、同時に契約キャンセルを強く希望する人も実は結構あるのです。しかしながら、それには手付金の放棄を覚悟しなければなりません。

私に届くご相談の中には、どうしたら手付金を取り戻せるかという類のものが年に数件含まれていますが、これはきっと氷山の一角なのだろうと思うのです。

●質問を忘れさせるほどの魔力を持つモデルルーム
大型マンションの販売センター、通称「マンションギャラリー」「マンションパビリオン」に行くと、「シアタールーム」という名のミニ映像ルームに案内されます。
「シアタールーム」では、周辺の環境案内や眺望写真をはじめ、建築計画を完成予想図などとともに声優さんのナビゲーションで紹介されます。
次に縮尺50分の1くらいの大型完成模型を展示する部屋に誘導されます。
ここまでは助走ですが、完成するマンションの全体像がインプットされ、高揚感が高まって行きます。最後は、モデルルームです。ここへ来ると、映像イメージだけだったマンションが、実物との遭遇で現実感を伴ってきます。購買意欲はピークへと一気に加速します。

モデルルームは素のままではなく、いろいろな化粧を施して購買客を待ち構えています。
家具・インテリア備品から、各種小物を使って飾りつけながら、夢のような生活イメージを、物件によっては大袈裟に演出しています。

実は、このモデルルームがくせ者なのです。ベッドやソファなどの家具を置くのは序の口です。多くのケースで4LDKを2LDKに改造してリビングルームを大きく見せる事例がよく見られます。
また、基本設計にないオプション、例えば食器洗い乾燥機や外国製のお洒落な水栓金具、キッチンセットと同じ表面材で造作された食器棚、調理台のワークトップを天然石に変更、壁面に造り付けられた飾棚や壁面収納、玄関に設置された鏡扉の収納、バルコニーの床を覆い隠した大判のタイルなど。これらは、ごく普通の演出です。

新築マンションのモデルルームには、魔力がありそうです。その演出と最新の設備に心を奪われてしまい、肝心なことを聞き忘れてしまうからです。経験者なら、想像いただけることと思います。
販売センターには、モデルルームの演出をはじめとして、購買意欲を掻き立てるための仕掛けが多数用意されており、その中身は強力な販売ツールとして見事なものがあります。
仕掛けは別にしても、古い賃貸マンションなどに住んでいる人から見ると、モデルルームの設備の新しさやインテリアデザインなどは感動的でさえあるようです。思わず感嘆の声を上げてしまう人も少なくありません。

モデルルームは、クルマと同じでスタンダードではなく、最もデラックスなタイプを展示するのが普通です。極端なケースでは、そのマンションにたった1戸しかない、広くてルーフテラス付きなど最高の部屋をモデルルームとしていることさえ少なくありません。
そんなモデルルームを見せられたら、舞い上がってしまっても不思議ではありません。冷静さをなくし、見た眼の豪華さと、表面的な“売り”の部分のみが頭に焼き付けられて帰途につくこととなります。売り手の思惑にまんまと嵌まるのです。

ところが、建物が完成した時に行われる入居者検査(完成内覧会)で、購入した実際の部屋を初めて見ると、大抵の人が一瞬「あれっ?」と思うのです。
化粧した姿しか見てない女性が、突然スッピンで現れて見紛う、あの一瞬です。
図面で見た部屋の実際はこんなものかと、落胆がそこに生まれます。しかし、図面通りに完成しているので、文句の持って行きようがありません。錯覚していた自分が悪いのです。
中には、天井の高さがモデルルームとは明らかに違うなどど、クレームをつける購入者もいますが、大抵はそれも錯覚に過ぎないのです。
子供部屋の梁が大きく出っ張っているようなケースも、図面上はきちんと表示されていますから、業者に落ち度はないのが普通です。図面をよく見なかった自分が悪いという話で終わります。
モデルルームの残像は強烈に記憶に残るもので、ある程度は仕方がないのですが、そこに、売り手側の意図が明確にあるのは間違いありません。

●売り手のクレーム対策は万全?
買い手の殆んど全てが、図面を見慣れた業界人ではありません。見落とすこともあるはずである。
ところが、素人に対し「ここは梁がありますから、梁下から床までの高さは1900ミリしかありません。梁が内側に30センチほど出ておりますから、こちらの部屋とは、同じ6帖でも、だいぶ狭く感じられることでしょう。これらの点を予めご承知おきください」などど、説明する営業マンはいません。
質問すれば答えてくれますが、聞かれない限り、都合の悪いことは黙っているもの。後でクレームをつけられても逃げる手はきちんと打ってあるから心配ないと、売り手は落ち着いたものです。小さな字で、どこかに断り書きしてあったり、寸法の表示も抜かりなく記載しておいたりするからです。

モデルルームは着飾った娘さんが写真館に行って撮って来たお見合い写真のようなもの。しかも、欠点は修整してあるから、実際に会ったときとギャップはかなり大きい。そういった性格のものと認識しておく必要があるのです。
マンションに限らず商品というものは、その価値を高く見せるために展示方法に工夫を凝らす。言うまでもないことです。だから、マンションの展示に演出を施すこと自体、何ら文句をいう筋合いはありません。だが、程度問題ということは言えるかもしれません。

●モデルルーム演出の実態を整理してみると
ここまでに紹介した、モデルルームの展示法を整理してみましょう。
1.存在しない間取りを展示している
(特定タイプの一部を設計変更。例えば4LDKを2LDKに改造。これにより、狭い部屋の実感を隠すことが可能になる)
2.オプション品を多数装備し、価格表に記載のない高価格商品を展示している
(有料オプションの食器洗浄機やIHクッキングヒーターに交換したり、ワンランク上級の金物や仕上げ材を使用したり)
3.価格には含まれていませんと断り書きをしてはいるが、家具・インテリアが絶妙に配置され、夢見心地にさせる演出を一段と強化している
4.大抵は、当該マンションの中で「専有面積の広い少数タイプ」を展示して
いる

ざっと、この4点が特徴です。マンションが完成してしまえば、モデルルームは建物本体に移行するので、上記の問題は一部消えます。
しかし、完成してから販売しているマンションは売れ残りなので、何らかの問題があるということでもあるのです。一方、間取りだけが気に入らないというケースでは、完成していないマンションの方が設計を無償で変更してもらえるという点で都合がいいのです。

●リスク回避の方法は?
さて、マンション業者の商品展示方法を批判してばかりでも仕方ないので、買い手としては、錯覚に陥らないための方法を自衛手段として講じるしかありません。どうすればいいのでしょうか?
答えは、売れ残りの完成マンションを探して見に行くことです。そして、目を肥やすと言いますか、感覚をつかむという訓練を自らに課すほかにありません。
見学に入ったら、漫然と見るのではなく、図面と睨みあわせながら粗探しをするのです。もちろん予算に近い部屋を見るのが大事です。マンション情報サイトを当たれば見つかるはずです。

柱や梁の出っ張りが、いかに部屋を狭く見せるかが分かることでしょう。廊下幅の寸法、キッチンの広さ、リビングダイニングの広さなども「素」の状態で見ることが可能になります。
家具も何もない部屋を見学指定するのがコツです。

完成マンションは、同時に玄関やロビー、エレベーターなどの共用部分、共用設備も見ることが可能になります。広さやデザイン、セキュリティシステムなども体感できることでしょう。
買う気のない見学は相手の業者さんにとって迷惑な話ですが、見せてくれるのは間違いありませんから、「参考まで」と断っても良いでしょう。

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