管理費の安さを謳う物件。その裏には?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

●管理費の相場は?
首都圏のマンションの管理費は、不動産経済研究所の集計によれば、次のようになっています。これは2010年に販売された新築マンションの平均データです。

◆首都圏全体:1㎡当たり224円

◆規模別
50戸未満:256円/50~100戸未満:211円/100~300戸未満:205円/300~500戸未満:209円/500~1000戸未満:234円/1000戸以上:311円
300戸未満では、規模が大きいほど割安になっていますが、300戸以上では逆に高くなっています。これは、低層マンションの多くは、戸数が少ないため割高になっていることを表わし、300戸以上が高いのは共用施設がふんだんに設けられていたり、24時間有人管理体制であったりすることが原因と分析されています。

◆階数別
5階以下:227円/6~10階未満:209円/10~20階未満:204円/20~40階未満:293円/40階以上:305円
階数別では、20階未満では、低層の方が割高になっていますが、20階以上、すなわち超高層マンションほど高いという傾向が窺えます。
超高層は、その多くが大規模で共用施設が豊富であり、エレベーターの数も多い、24時間有人管理であること等と関係がありそうです。

●安さをアピールするマンション
江東区で2012年10月現在販売中のMマンションは、3LDK 71.93㎡タイプが6800円とあります。
管理費の単価は、@94円に過ぎません。この物件は、12階建て172戸という規模。上記の平均データと比べていただければ、半分以下のレベルです。大手管理会社に委託するそうですが、どのような管理体制かは分かりません。
しかし、巡回管理にしているとは思えません。驚くほどの低い数字です。ゆえに、その安さをアピールするため、広告にはずらりとタイプ別に管理費を表示しているほどです。
これは、近隣のライバル物件が@200円をはるかに超えることを意識してのものでしょう。

同じ江東区内の144戸、15階建ての物件でも、同時に71.11㎡が7186円(単価@101円)というアピールを見かけました。こちらも、売主系列の大手管理会社が受託しています。
ちなみに、同地域にある大型の某マンションは@253円、また、最近発売された中型の物件は@296円もします。

●安さの秘密は?
安い理由はどこにあるのでしょうか? 多くの解説を見ると、「共用施設を減らしたから」となっています。
共用施設の維持には、清掃費用や水道光熱費などがかかります。フィットネスルームにマシーンがあれば、機械のメンテナンス費用もかかるのかもしれません。また、ゲストルームなどは宿泊用のリネンサービスに馬鹿にならない費用が要るはずです。
これらがなくなるだけでも経費は下がります。

それ以外には、管理体制が24時間有人体制になっていないこと、コンシェルジュを置いていないことが挙げられそうです。
なるほど、24時間体制にすれば人員が3倍必要ですし、コンシェルジュまで置けば、人件費がさらにアップするのは道理です。ここが消えると大きなコストダウンになるのです。

●無用の長物もあるが共用施設は付加価値でもある
管理費や修繕積立金が少ないのは、所有者にとって大いに助かりますが、それをそのまま歓迎していいかというと、そうは言いきれません。なぜなら、共用施設はマンションの付加価値そのものだからです。

しかしながら、温水プールやバーラウンジまで必要かと問われれば、確かにやり過ぎと感じないわけでもないのですが、こうした施設に魅力を感じて購入する人もあるわけですし、実際にあると便利と、住人評価の高い施設も少なくはないのです。

これらがバッサリと切り落とされたマンションは味もそっけもないだけでなく、コミュニティ形成の一環として必要な施設までがなくなって、果たしていかがなものだろうと疑問を感じています。
顧客の中には、子供がいないからキッズルームなどいらない、共稼ぎだからコミュニティルームでママ友を作る機会もないから興味がないと言う人がいるのは事実ですが。

●付加価値競争がエスカレートして原点に戻る?
マンションの商品開発で変えようがないのは、場所や土地の形状と広さです。良い場所、良い形・広さ等において優れた土地を取得できた瞬間、販売競争で大きなアドバンテージを得ることになります。
しかし、そのような土地は滅多に手に入りません。違いはあっても大同小異。そこで、競争に勝つための味付けが必要になってきます。
また、仮に大きな土地を得て堂々たるマンションが設計できたとしても、今度は多くの数を販売しなければなりません。つまり、広い範囲から大量の顧客を動員しなければならないのです。
この場合の差別化は大量動員のための魅力・強烈な個性を建物にすることが課題です。業者はこれらに知恵を絞ることになります。

知恵比べの結果生まれたのが、各種の共用施設です。ところが、マンションの企画や設計には特許が殆んどありません。従って、良いと思ったアイディアは直ぐ真似されます。その結果、ふたを開けてみると中身はみな同じ、差別化にならないといった実態があります。

次第にエスカレートし、とうとうバーラウンジまで登場しました。江東区に今度発売される三井不動産レジデンシャルの「パークタワー東雲(しののめ)」には、何と建物内に「Dog-run」まで可能なスペースが設けられているのです。

付加価値競争がエスカレートすると、価格や管理費、修繕費等が上がってしまいます。それでも売れる物件はあるのですが、それが重荷になってしまうケースも少なくありません。

最近、マンションメーカーは原点に返って企画を見直そうとする動きがあるように感じます。
そこから、冒頭の「管理費が安いマンション」も登場して来たのかもしれません。

マンションの価値とは? よく考えて検討したいものです。

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