使わない施設やサービスが多い。管理費が無駄では?

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションには区分された専有部分・専用設備と、管理人室や廊下、階段、エントランスホール、エレベーター、受電設備、共視聴用TVアンテナといった共用部分・共用設備があります。

共用部分には、上記の付随する必要最低限のものに加えて、集会室やオーナーズラウンジ、ゲストルームといった共用施設、宅配ボックスや防災設備、カメラ付きインターホン設備などが付加されるのが一般的になっています。

しかし、これらの付加施設・設備は稼働や維持管理に費用がかかるので、使いそうにない買い手から見れば「管理費等が高くなる」と歓迎しない向きも少なくありません。

また、マンションの管理サービスで面は、管理人と別にコンシェルジュや警備員を配置している例が見られます。これらのサービスはなくてもいいのではないかとか、あるに越したことはないが、管理費が無駄にならないかといった疑問を抱く買い手があります。

今日は、共用施設と管理サービスの意義について考えてみました。

●使い切れないほどのメニューでも

携帯電話でもパソコンでも同じですが、たくさんの機能が用意されていても、その過半は使いこなせないというか、不要なものが多いというか、「これとこれだけあれば十分」などと、普段使いしている機能で満足している人が大半ではないか、そんな気もします。

高級ホテルには、必ずコンシェルジュデスクがあって誰かが待機しています。利用する人はどのくらいいるのでしょうか?

百貨店にも来店客をサポートする買い物コンシェルジュという職種があると聞いたことがあります。子供の託児所をつくり、客がゆっくり買い物を楽しむことができるように保育士やベビーシッターを配置している例もあるようです。

しかし、利用している人の割合はきっと少ないはずです。僅かな人が、困ったとき初めて、「これがあって良かった」と感動する、あるいは感謝する程度なのではないかと思います。

利用者は買い物客の0.1%以下では?そんな想像をします。しかし、僅か0.1%しかいない利用者のためであっても、きめ細やかなサービスを用意することによって百貨店の価値が上がると考えられているのでしょう。

●マンションの共用施設と管理サービスの価値

マンション建設のプランナー(デベロッパーの企画部門)が考え、提供する共用施設と管理サービスにも同じようなことが言えるのではないでしょうか?

新築マンションの建築概要を見ていると、「集会室」がないマンションも少なくない昨今ですが、実は一番必要なものかもしれません。

大勢が集まる年一度の定期総会は、収容人数の関係から自治体のホールなどを借りるにしても、毎月のように実施される役員会のためにはマンション内に「集会室」があった方が便利ですし、費用も少なくすみます。

集会室は、コミュニティルームやキッズルームなどとも呼ばれ、ママと幼児の集いの場所や雨の日の幼児用の遊技場としても使われます。パーティや各種イベント開催に利用されるケースも多いようです。

人気があるのは「ゲストルーム」で、親兄弟を招いたときの寝室として使われます。ゲストルームは、ホテルのスイートルームか、スーペリアスタンダード級の立派なものが多いようです。

ゲストルームは旅館業法に抵触しないような運営が求められるのだそうで、宿泊できる人の資格(所有者との続柄)とか、利用料(実費程度)、連泊限度などが管理規約で定められています。

人気があると書きましたが、物件によって差があるようで、大型連休以外は週末でも空いているマンションもあれば、予約が半年以上先まで一杯という人気マンションもあると聞きます。

部屋数も少なく、狭いマンションのこと、呼ぶ方も来る方も気楽に訪問できるゲストルームの存在は有り難い施設と思います。

サービス面では、「コンシェルジュ」がタクシーの手配や長期旅行の際の窓の開け閉め、家事代行やハウスクリーニング業者への連絡などを所有者の秘書代わりにやってくれるというもので、パソコンが苦手な人や多忙な人には重宝です。

こうした施設やサービスの中には、「自分は利用しないから必要がないし、管理費が高くなるだろうから興味ない」という人がありますが、そう割り切って良いものでしょうか?

●共用施設と管理サービスが管理費に影響する度合いは低い

共用施設をひとつ増やすと、価格はどのくらい高くなるのでしょうか?

集会室を例にとって説明しましょう。集会室は普通、1階に設けられます。住居としては条件の悪い位置の区画を選んで集会室とします。

仮に70㎡の集会室とし、平均70㎡の住戸50戸のマンションがあるとします。そのマンションの平均価格が5000万円とすれば、50戸で25億円の販売価格になります。これが採算の取れる下限としましょう。

仮に集会室を取り止めて住戸として販売することにすれば、25億円÷51戸で、1戸平均4900万円になり、100万円の価格引き下げ効果が表れます。

逆に言えば、集会室を設けると100万円高くなってしまうというわけです。

次に、集会室を設けることで管理費や修繕積立金は毎月いくら上がるのでしょうか?

清掃費や集会室の備品、水道光熱費などが必要になります。長期的には集会室の内部に設置したコンロなどの交換、床・壁の張り替えなどが必要になるでしょう。試算は困難ですが、1軒当たりのプラス金額としてはさほどのことにはならないはずです。

しかし、集会室もゲストルームも、あるいは展望ラウンジやフィットネスルームといった共用施設が複数になったらどうなのでしょうか? それとで同じことです。そのくらい充実した物件は戸数も多いので、1軒当たりにしたら大した金額ではないのです。

それでも、それらをバッサリと切り捨てれば、管理費も修繕積立金も目立って安くなる場合もありそうです。実際にも、管理費や修繕積立金の安さを強くアピールしている新築物件をときどき見かけます。

●共用施設と管理サービスが充実したマンションの総合的な価値は?

管理費を安くするためには、共用施設を削り、共用設備も最低限に抑えることが必須です。

例えば、先に述べたような共用施設は一切設けず、エントランスホール、ロビー、廊下といった必須の共用面積を最小とするほか、設備的にもエレベーターを最小限の数で間に合わせる、備蓄する防災備品もなく、植栽もなくせばいいのです。

サービス面では、管理人にコンシェルジュを兼ねてもらう、あるいは管理人を置かない「巡回方式」にすれば、管理費は安くなるでしょう。

しかし、これらの施設・設備が充実したマンションは、付加価値の高いマンションとして市場は評価します。

例えば、ゲストルームや展望ラウンジがあれば、「遊びに来ないか。来るなら予約するから」などと親しい人との付き合いを深めやすくするに違いありません。

また、コミュニティルームではママ友をつくることや、フィットネスルーム、スタディルームといった施設では、住民との触れ合いのきっかけにもなるはずで、いざというとき(災害時など)に役立つはずです。

2階まで吹き抜けの天井高と複数のソファを配置したラウンジ併設のエントランスホールを設ければ、ガラスの清掃だけでもお金がかかりそうに思いますが、視覚的には高級感・豪華さ・差別感などにつながり、誇れる我が家と思えるはずです。

友人・知人を招待したときなどに「すごいね」や「かっこいい」などの賞賛の声を聞いて誇りを感じる場合もあるでしょうし、誰も呼ばないにしても密かな自慢となることでしょう。

このようなことを考えて行くと、やはりマンションの価値を高める要素になるのは確かと思えるわけです。

●「共用施設が少なく管理サービスも最小限」とする条件では選択できない

マンション探しにおいて優先する条件は立地条件でしょうし、何より予算が先に来るはずです。これらが条件に当てはまるものであり、モデルルームを見て気に入ったというような場合で、管理費等が高いと感じる物件であるとします。

しかし、管理内容を見直せとか共用施設を削れとかは要求できないわけです。買い手に選択権があるとしたら、間取りプランやカラーバリエーションのチョイス、設備機器や床の仕上げ材のオプションくらいまでです。

共用施設と管理内容は買い手には選べないのです。どうしても気に入らないのであれば、管理内容だけなら、入居後に組合活動を通じて変更を実現するほかありません。

残念ながら、共用施設と管理サービスを優先してマンションを選ぶというのはほぼ不可能です。

しかし、それらがマンションの付加価値になると確信できれば、むしろ歓迎すべきものと考えられましょう。

簡単に結論づけると、管理費等が他のマンションより毎月1万円高い物件であっても、10年後に120万円高く売ることが可能なものなら問題は小さいはずです。

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