管理人はうるさいくらいがいい

ブログテーマ:業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

物件調査に都内の中古マンションを訪ねたとき、管理人がバルコニーの手すりに布団をかけて干していたらしい住人と玄関先で問答をしている場面に遭遇しました。どうやら、何度も注意しているらしく、その時、何度目かの自宅訪問だったようでした。

そもそもマンションの管理人とは、どういう立場の人なのだろう?そんなことを、ふと思いました。

賃貸マンションや企業の社宅・寮なら、所有者(大家・貸主)の代理人的な立場で入居者を取り締まる人なのかもしれませんが、分譲マンションは少し複雑です。なぜなら、所有者は入居者本人なのですから。

理屈をこねるのはやめにして一足飛びに答えを出してしまうと、「管理人は、身分としては管理を委託した管理会社に属するものの、所有者が間接的に雇っている共用部分の管理者」ということです。

間接的とはいえ、所有者が雇用している使用人とするなら、昔ふうに言えば、使用人は雇い主につき従うもので、反抗することはもとより、意見を述べるなどはとんでもない立場にあるはずです。

ところが、それではマンションの管理人は務まりません。委託された業務の中には、管理人は法の番人という側面もあると考えられるからです。

ここでいう法とは、管理規約というマンションの憲法のことです。バルコニーの手すりに布団をかけないで、エントランスロビーで子供を遊ばせないで、ペットをエレベーターに乗せるときは必ず抱きかかえてください、自転車を玄関前に駐車しないでください、ロビーで煙草を吸わないでください。玄関ドアは室内塗装面を除いて共有部分に属しますから勝手に飾り物を張り付けないで下さい etc.

このような共同生活のルールは、マンションの価値を維持していくうえで大変重要なことです。手すりに布団をかけないとするルールは美観を損ねるからですが、売却するときに見学者が満艦飾のマンションを見て高級マンションと感じるかどうかに関わる問題でもあるのです。
ペットを飼えるマンションが当たり前になっている今日ですが、ペット嫌いの人もいるのですから、そのような人への配慮としても大切な「ペット飼育規則」が設けられています。その規則が守られていないマンションと知ったら、売れるマンションも売れなくなってしまうかもしれません。

管理規約とは、マンション所有者の財産の一部でもある共用部分のハード面を管理する方法に関して定めてあるだけでなく、その使用に関するルールも定めたものです。それによって、円滑な共同生活を支援するとともに、共同財産の価値を長く維持することに狙いがあるのです。

社会生活はルールに基づいて営まれています。ルールを守らなければ秩序が乱れます。しかし、ルールを守らない人がいることも事実です。そのために罰則が設けられたり、警察が取り締まったりするわけです。

これは、「自分もうっかりルールを忘れた行為に走ってしまうかもしれないから、そのときは遠慮なく叱ってくださいよ」と法の番人を自ら雇って戒めているとも言えます。無論、その給与は税金という形で負担しているわけです。

マンションも同じです。不届きな入居者がいれば規約や共同生活のマナーを遵守するよう注意を促す。マンションの管理人とは、所有者の集合体である管理組合から委託された番人・目付役とも言えるのです。

このような意味からすると、雇われ者という感覚の管理人や、所有者はお客様という意識の管理人では雇った意味がありません。

昔、近所の老人が家の子もよその子も差別なく叱ってくれたという時代がありました。そのような小うるさい老人のように、居住者のルール違反を指摘してくれる管理人が望ましいのです。

一時期、筆者は都内の有名マンションに住んだことがあります。そのとき、ルール違反をしていると見なされ、管理人が何度も訪ねて来て、疑いの目を向けられた経験があります。というのも、事務所として使っていたからです。

筆者の仕事内容では、来客も少なく、スタッフも大勢いたわけではないので、事務所としての使用も発覚するはずはないと高をくくっていましたが、どこかで知られるところとなったのです。

家主(所有者)も同じことを思い、事務所使用を認めて貸してくれたのでしたが、甘かったというわけです。そのマンションの規約は事務所使用を禁止していたのです。

都区内には、事務所使用を可能としているマンションが多数あります。そのマンションの状態と、筆者が注意を受けたマンションの状態を比較すると、その差は月とスッポンほどです。もう築後30年を超えましたが、そのマンションの価値は今も全く下がっていないのです。

その差は管理人の質の問題だけではありませんが、管理人の力に負うところもあるのは確かと思うのです。入居したら、管理人の動向に注意してみましょう。そして、適任でないと判断したら管理組合として委託先へ抗議しましょう。

口うるさいくらいの管理人になってもらうか、別の管理人を派遣してもらうか、主導権はこちらにあるということを覚えておきたいものです。