第757回「中古マンション・安心マニュアル」第3部・マンションの管理

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

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    さて、本日のテーマですが、タイトルにあるように、以下は「中古マンション」を検討する買い手の立場に立ち、注意点と選び方を細部に渡ってまとめています。 マンション購入を考える・選ぶ段階にある読者の安心につながる指針となるよう、日ごろの活動の中から気付いたことの集大成です。 今日は「第2回」をお届けします  。

 

 よくある質問のひとつ、小型マンションの管理問題です。先日もこんなメールが届きました。

   「36戸のマンションを検討していますが、管理が巡回方式(週2回)とのことです。不安なので営業担当に確認したところ、最近は顧客要望で管理費を削るために巡回管理も珍しくない。また、大手のセキュリティシステムがあり、管理会社の24時間365日のコールセンターもあるから大丈夫ですよと言われました。本当でしょうか?」と。 ・・・・何やら、怪しい答えのように感じます。今回は、マンションの管理の良し悪しについて、管理形態とともに解説します。  

●巡回管理方式の不安

上記の「顧客要望で管理費を削るため」という回答は正しいのでしょうか? それはともかく、巡回管理は戸数の少ないマンションに多く採用され、古くから普通に見られる管理方式です。

マンションの管理とは、所有者の資産を管理することでもあるのですが、ともすると「管理会社任せ」のきらいがあります。 そのためか、巡回管理に潜む問題がクローズアップされることは少ない気がするのです。

最近は買い手側に「管理」に関する意識の向上が見られるようですが、まだまだ管理費が高いか低いかの観点に留まる側面も少なくありません。

・・・・・先ず、巡回管理の問題点にスポットを当ててみました。  

※小型マンションでは普通の巡回管理

管理人を常駐させれば、小型マンションの場合は1戸あたりの管理費が高くなり過ぎます。例えば、管理人に月平均25万円の給与を支払うとしたら、25戸のマンションでは戸あたり1万円の負担となります。100戸のマンションなら2500円ですむわけですから7500円も高くなる計算です。  

 

高級マンションの場合なら、購入者も高額所得者になり、その負担増をさほど気にも留めないことでしょうが、中間層向けのマンションでは毎月のランニングコストが負担感を強め、販売に支障が出るため、コスト抑制の選択として「巡回管理方式」に落ち着くのです。  

※巡回管理員の仕事

ところで、管理会社から派遣される巡回管理者は実際にどこまでの仕事をこなすのでしょうか?  

巡回管理員は、担当マンションにやって来ると、まず管理組合と書かれたポスト中の郵便物を回収して内容をチェックします。次に、マンション内を屋上から地下室まで一周して、設備の故障箇所はないかを目視で調べ、それが一通り終わると、管理人室で各種報告書や議事録等を整理して、キャビネット内にファイリングしたりします。  

また、季節の変わり目には共用部の照明の点灯時刻を変更するためにタイマーをセットし直し、廊下の蛍光灯で切れていたものを交換し、掲示板の掲示物を張り替えるという作業もあります。これで、巡回管理員の仕事は終わりです。 通常、これらの作業に30分から1時間ぐらいかかるそうです。

尚、清掃は清掃人が行なうもので、巡回管理員の仕事ではありません。  

※巡回管理のデメリット

では、巡回管理のデメリットはどんな点にあるでしょうか? それは、災害発生のとき、例えば急な大雨で共用エントランスが冠水したときなどに居住者が自ら掃除をしなければならないことや、不審者が侵入しても注意する人がいないこと等が挙げられます。  

 

東日本大震災でエレベーターが非常停止したとき、管理人が常駐していたマンションでは速やかに復旧の手配やら住人に対する告知などの活動がなされ、住人の不安が解消されたという報告がありますが、管理人がいないマンションではどうだったのでしょうか?   

 

巡回でも問題ないのなら、どこのマンションも巡回になるでしょう。そのような動きがあるという話は聞いたことがありません。   ・・・・・管理人が常勤していなければ、管理は乱れるものです。規約があっても、守らない人がいる。それが現実だからです。 ・・・・・管理人は常に目を光らせ、ゴミを拾い、自転車置き場を整頓し、軽微な修繕箇所に気付いたら手直しの手配をする、不届きな入居者がいれば規約や共同生活のマナーを遵守するよう注意を促す。  

 

マンションの管理人とは、管理組合から委託された番人なのです。 こうした行動を通じて、マンションを「長く綺麗に保つ」ようにするのが管理人の仕事です。   

管理人がいつも居るのと、たまに回ってくるだけとでは、同じ年数でも明らかに「綺麗さ」が異なります。マンション管理は、清掃人が決められた周期でやってきて綺麗にすればいいというものではないのです。巡回では限界があるはずです。   

 

管理人がいなくても、日常生活に支障はありませんが、長い目でみると、資産価値の劣化が早い。それが、巡回管理マンションの一般的な傾向です。  

※入居者から追い出された不届きな賃借人

巡回管理でも綺麗なマンションがあるとしたら、入居者のモラルが高く、お互いに気をつけながら自ら管理するという意識が徹底されているためと考えられます。

筆者はかつて、都内の某マンション(今ではヴィンテージの部類に入る有名な高級マンション)にオフィスを構えていたときがあります。分譲マンションですが、オーナーが賃貸に出したのです。

勿論、本来の用途は住居ですからオフィス使用は禁止です。オーナーも筆者も暗黙の了解の中で賃貸契約をしておりました。

ところが、そこには半年も居続けることができませんでした。理由は、オフィス使用が他の入居者の知るところとなり、管理人に通報されたためです。  

 

管理人は毎週のようにやって来ては「事務所として使っていませんか?」と尋ねるのです。その度にスタッフは「いいえ住まいです」と言い続けましたが、あまりに執拗な訪問に音をあげることとなったのです。

想像するに、通報した住人の誰かが、「あそこは間違いなく事務所として使っているはずだから見てきて頂戴」と管理人のお尻を何度もたたいたのでしょう。

 

室内に侵入することはできないため、玄関先で質問を繰り返すしかないのですが、それでも効果はあったというわけです。管理人が常駐していなかったら、こうは行かなかったでしょう。  

 

もう築後30年になりますが、今もそのマンションは管理状態が良く、市場価格は近隣の新築マンションに並ぶ高値で売買が成立していると伝えられています。

 

話を元に戻します。

管理の良いマンションは、入居者間のコミュニケーションも良いものです。互いに他人の子供に注意・指導しても問題が起きないような良好な関係が出来上がっていたりします。

自分の財産は他人(管理会社や管理人)任せにしないで自分で守る、こうした意識がないと、こうはなりません。 

この意識が欠落し、管理会社任せにしている巡回管理のマンションは、寿命が縮むと思って間違いないのです。   ・

冒頭の質問の答えにある 「24時間警備やコールセンターなどの存在は、本来の資産管理という観点からは無関係」 と言って差し支えないでしょう。  

※巡回管理のマンションは劣化が早いかも?

1日に数か所を巡回するだけの巡回管理では、どうしても見逃してしまうところが多くなります。 綺麗なマンションは高く売れますが、汚れた印象が強いマンションは見学者が失望し、購入に踏みきってくれないかもしれません。そうなれば、売却価格を下げざるを得ません。つまり、共用部の汚れ、見栄えの悪さは資産価値の低下につながるのです。  

 

電灯切れのような、目視ですぐ分かるようなことより、ちょっとした補修個所、例えば鉄部の錆びや植栽の枯れ、外壁の亀裂、タイルの剥離などを目ざとく発見することが建物の劣化を防ぐ管理人大切な仕事なのですが、これが巡回管理の場合おろそかになるのは否定できません。  

 

特に、外壁の亀裂は毛細血管のような細いすき間に雨水が浸透して内部の鉄筋を腐食させます。鉄筋が錆びると膨張して爆裂を起こす原因となります。こうした劣化が進めば、気付いたときには多額の修繕費用が発生する事態になっているかもしれないのです。  

そこまで行かないまでも、人の顔にできるシミやソバカスと同じく、放置すれば老化現象が目立つようになるのです。  

※綺麗な道にはゴミは落としにくい

初めから綺麗な場所にはゴミをポイ捨てしにくい。これは人間心理ですね。マンションの共用部もそうです。 ホテルのエントランスやロビー、廊下などのように、いつも綺麗な状態のマンションは汚れにくいものですが、その反対のマンションは汚れ方が加速しがちです。 巡回管理のマンションには、劣化が早まる危険があると覚悟しなければなりません。  

 

静かな住宅街にあり緑の環境が気に入って購入した「低層の小型マンション」、駅前の便利さに惚れて買った「ペンシルビル状の高層少戸数マンション」、こうしたマンションを選択した人は、入居後の管理に並々ならぬ関心を払い続けることが大事です。

 

それも、自分一人ではだめで他の多くの住人とともに自分の資産を守る意識を高く持ち続け、自ら活動することも必須と言ってよいでしょう。あるいは、管理費を値上げしてでも管理人を少なくとも半日以上は定置させる契約を管理会社と結ぶべきです。

 

・・・こうしたことが面倒と思う人や、管理費の値上げの合意を取りつけるのは難しいと思うなら、巡回管理のマンションは避けるべきと言えるかもしれません。  

●管理の良し悪し。その見極め方

マンションなど集合住宅で生活していると、多かれ少なかれ、他の入居者とのトラブルに悩まされるものです。特に、マンションの共有スペースのマナーについて悩んでいる人もあると聞きます。

 

 駐車場や駐輪場の使い方、ゴミの出し方、エントランスやエレベーターの利用法。 その他、ペット禁止のマンションに関わらず動物を飼っている、音楽活動などをしていて音がうるさい、廊下へ荷物をたくさん出して物置化しているなど、トラブルの種は無数にあるのです。  

 

こういったトラブルを避けるためのマナーについては、住民個人のモラル任せというのが現状です。分譲マンションなどは、一度購入してしまうとマナーに問題がある住民がいても、残念ながらすぐに引越しというわけにはいきません。

 

その意味で、購入前に住民の様子はチェックしておきたいところです。共用部分がきれいに使われているかどうかなど、下見はしておいた方がよいでしょう。  

●修繕履歴と修繕計画のチェックは必須

最近はどのマンションにも策定が進む「長期修繕計画」ですが、その期間も考慮する必要があります。25年、30年単位の修繕計画が立てられていた場合も、それ以降の修繕費用については計画に含まれていないことがあるからです。   

 

また、古い分譲マンションになると、そもそも修繕計画という概念そのものがない場合もあります。 また、修繕計画がされているのは一部のみで、共有部分すべての修繕計画がされていないケースなど、物件によって内容は様々なので、事前に良く調べておきたい点です。  

※チェック項目

チェック項目を挙げておきましょう。

①管理費の滞納者はいないか

②修繕積立金の残高は1戸平均100万円以上あるか?

③管理費・修繕積立金の値上げ予定はないか

④管理会社交替の履歴はないか  

●カネ食い虫の機械式駐車場に注意

敷地の狭いマンションには、いくつもデメリットがあるものですが、そのひとつに駐車場の問題があります。とりわけ、商業地に建つマンションは、容積率の高さを活かして敷地面積の割には戸数が多いのですが、その代わりに駐車スペースがほとんど取れないという欠点があります。  

50戸のマンションに駐車台数が3台などという例は少なくないのです。それでも、駐車場の要らない人、もしくは近隣で空き駐車場を見つけられる人ばかりが買ってくれたら、事業主側に問題はないのでしょう。

 

東京都心では、確かにクルマ離れが進み、戸数に対して30%以下の駐車場割合でも支障なく販売が進むようですが、さすがに2台しかない、3台しかないとなると苦戦することがありますから、売主は企画段階から機械を導入して台数を増やそうとします。少し大きな計画になると、いわゆるタワーパーキングシステムまで導入している例を見かけます。  

 

こうしたマンションは、メンテナンスに関する事業主の考えをよく確かめてから購買を決定するようにしましょう。「私はクルマを持たないので関係ない」ではすまない問題をはらんでいることを知っておく必要があるからです。次で、その理由を説明しましょう。  

●マイカーを持たない人も注目したい機械式駐車場

マンションの価値を長持ちさせるには、適切なメンテナンスを行なうことですが、それには当たり前ですが、費用がかかります。日常の管理や軽微な補修にも費用がかかり、長期的には大規模修繕を実施するための費用が必要です。   

その費用の多寡は、マンションの設計によって差が出ます。例えば、共用施設が多種多様にあるほど嵩みますし、エレベーターの本数が多ければ、その維持管理費用(メンテナンス費と電気代)はその分だけ増えます。

 

中でも駐車場は、自走式か機械式で大きく変わってきます。 機械式駐車場は、狭い敷地に多くの駐車スペースを確保しようとして生まれた苦肉の策ですが、この維持管理には莫大な費用がかかるのです。 

 

定期的な点検費用は無論、10年ごとの部品交換費用、20年先には機械全体の交換費用がかかります。

 

機械駐車は、ピロティ―(建物の1階部分)に設けられるケースと、敷地の隅に雨ざらし状態で建設されるタイプがありますが、後者の場合は、より多くのメンテナンス費用がかかるのです。雨ざらしでは、寿命も短くなることでしょう。  

 

通常、駐車場収入は長期修繕費として通常管理とは別会計にして積み立てているものですが、機械を更新する費用(1台あたり200~300万円)までは考えられていないケースが多いと聞きます。

 

 計画に組み入れると、毎月の積立額が大きく跳ね上がることになるため、分譲時には無視しているのでしょう。何年か経ってから問題が表面化し、対策に頭を抱えている管理組合が多いのだそうです。

 

しかも、元々が数少ない駐車場なので、空けばすぐに順番待ちで埋まるかというと、さにあらずで、空いたままになるケースもあり、その分が収入不足に直結するという事態も抱えていると聞きます。  

 

背景には、クルマ離れのトレンドがあるのでしょうが、東京都心では、交通網の充実からクルマが必須とする人が少ないうえ、駐車料金の設定自体がそもそも高いためもあり、クルマを持たない風潮が生まれたのです。

 

2段式駐車場の半分が空いて収入が半減しても、維持管理費は減りませんから、ますますメンテナンス費用、更新費用は捻出が困難になります。   

 

不足分はどうなるのでしょうか?駐車場は共有財産ですから、メンテナンス・機械交換費用は全所有者からの臨時徴収か、毎月の積立金増額で解決するしかありません。 所有者の少ないケースなら実現する可能性は高いでしょうが、その逆の場合では、意見がまとまらず解決策が見出せないままに時間が経過するということになるかもしれません。  

 

空きスペースを入居者以外に貸し出す事例もありますが、それは新たな問題を招きます。管理組合による「賃貸事業」とみなされ、駐車場全体の収入が課税対象になってくるからです。

 

こうした問題から、古いマンションでは機械式駐車場を撤去してしまった例もあるのだとか。

 

撤去後のマンションで普段利用していた人たちは、近隣で駐車場を確保したのでしょうか。この際だからとクルマを手放した人もあったかもしれません。

・・・第3部はここまでです。次回、第4部をお楽しみに。

 

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