第596回  修繕積立金の主な変動要因について

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。

5日おき(5、10、15・・・)更新です

 

 

マンション住まいを長く快適に、そして資産価値をできるだけ維持して行くためには、こまめな小修繕と定期的・周期的な大規模修繕が欠かせません。

 

つまり、メンテナンスをしっかりやって行くことが大事になるわけですが、近年、そのことへの理解が深まり、マンションオーナーは管理会社の提案を受け入れながら積立金の増額を図る管理組合も増えているようです。

 

先日、たまたま同時に二つのマンションの積立金残高を知りました。一方は1世帯当たり300万円と巨額なものでしたが、他方は僅か90万円と、その差は大きく、それぞれ2~3年後に大規模修繕の時期がやって来るのです。

 

財政豊かなマンションは、修繕工事を実施するに当たっては、さほど反対もなく進められるに違いありませんが、積立金残高の足りない方はどうするのでしょう。

 

不足金を臨時徴収するのか、今から毎月の積立金を増額決議して間に合うようにするのか、はたまた修繕工事を一部だけ実施し一部は延期するのか、他人事ながら心配なマンションでありました。

 

マンションの管理は管理会社にお任せということでいいのか、積極的にオーナーが関わって行くべきなのか、いずれにせよ、管理はお金のかかることであり、将来の我が家の価値に直結する問題だけに無関心ではいられないはずです。その意味から、日ごろから勉強して知識を蓄えておくことも必要なのではないか、筆者はそう考えています。

 

今日は、年々増額になる「修繕積立金」の使い道である「修繕工事」の概要について解説しようと思います。

 

以下の資料は、国土交通省の「マンション管理に関するガイドライン」から抜粋し、筆者が加筆したものです。

 

その前に、大規模修繕とはどこをどうするのかという点を整理してみましょう。

 

●大規模修繕では、どこをどうするの?

 

外壁補修

・・・タイルであれば張り替えたり、塗装であれば塗り替えたりと、足場を組んで工事をするのが一般的。 タイルを全面的に張り替えることはなくても、点検をしたうえで、剥離箇所を補修して防水処理を行います。

 

屋上防水

・・・雨漏りを防ぐため、屋上は防水処理がされていますが、長い年月で劣化するので、10数年おきに新たに防水工事を行います。

 

廊下・バルコニーの床防水

・・・ 共用廊下が外廊下の場合は防水処理がされているので、10数年ごとに防水シートの張り替え工事を行います。

 

給排水管

・・・給排水管も長く使えば詰まりや破損などの恐れがあります。そこで10数年~20年おきに交換します。材質によっては錆や腐食が起きやすいものがあり、期間は短くなります。

 

エレベーター

・・・定期点検とは別に、10数年ごとに補修工事を行い、30~35年ごとに交換工事が必要になります。

 

機械式駐車場

・・・エレベーター同様に25~35年くらいで交換工事を行います。

 

鉄部の塗装

・・・鉄はさびやすいので、5年前後おきに補修と塗装を行います。

 

●修繕工事費の変動要因

マンションの修繕工事費は、建物の形状や規模、立地、仕上げ材や設備の仕様に加え、区分所有者の機能向上に対するニーズ等、様々な要因によって変動するものであり、このような修繕工事費を基に設定される修繕積立金の額も、当然、これらの要因によって変化する性格のものです。

以下に、マンションの修繕積立金の額に影響を与える修繕工事費等の主な変動要因を示します。

①建物が階段状になっているなど複雑な形状のマンションや超高層マンションでは、外壁等の修繕のために建物の周りに設置する仮設足場やゴンドラ等の設置費用が高くなるほか、施工期間が長引くなどして、修繕工事費が高くなる傾向があります。

②一般的に建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど、施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる傾向があります。

③エレベーターや機械式駐車場の有無及びその設置場所、玄関ホール・集会室等の規模等により、修繕工事費が変動します。近年の新築マンションでは、ラウンジやゲストルーム等、充実した共用施設を備えたマンションがみられます。また、温泉やプールがあるマンションもあります。このようなマンションは、修繕工事費が高くなる傾向があります。

④建物に比べて屋外部分の広いマンションでは、給水管や排水管等が長くなるほか、アスファルト舗装や街灯等も増えるため、これらに要する修繕工事費が高くなる傾向があります。

塩害を受ける海岸に近いマンションや、寒冷地のマンションなど、立地によって劣化の進行度合いや必要な修繕の内容が異なり、修繕工事費に影響を与える場合があります。

 

⑥一般に高級な材料を使用している場合は修繕工事費が高くなります。ただし、材料によって必要な修繕の内容が異なったり、修繕の周期を長くできたりする場合もあります。

⑦外壁については、一定期間ごとに塗り替えが必要な塗装仕上げの他、タイル張りのマンションも多くみられます。タイル張りの場合は、一定期間ごとの塗り替えは必要ありませんが、劣化によるひび割れや浮きが発生するため、塗装仕上げの場合と同様に適時適切に調査・診断を行う必要があります。修繕工事費は、劣化の状況により大きく変動します。

手摺り等には、鉄、アルミ、ステンレスなど様々なものが用いられます。一般的に、一定期間ごとに塗装する必要のある鉄製のものの他、錆びにくいアルミ製やステンレス製のものもあります。近年の新築マンションでは、錆びにくい材料が多く使用されるようになってきており、金属部分の塗装に要する修繕工事費は少なくて済むようになる傾向があります。

⑨共用の給水管や排水管については、配管や継手部分の内部が腐食することから、これらを洗浄・研磨し、再度コーティングする“更生工事”や、“更新(取替え)工事”が必要になります。近年の新築マンションでは、ステンレス管やプラスチック管等の腐食しにくい材料が使われるようになり、更生工事が必要なくなり、取替え工事も遅らせることができるようになり、給排水管に関する修繕工事費は少なくて済むようになる傾向があります。

⑩近年の新築マンションの中には、生活利便性や防犯性を考慮して、さまざまな種類の付加設備 (ディスポーザー設備、セキュリティー設備等) が設置されているものが見られます。このような設備が多いほど、修繕工事費は増加する傾向があります。

⑪新築時に設置されていなくても、その後に居住者のニーズの高まりや消防法等の法制度の改正を受けて新たな設備を付加等する場合があります。

また、耐震性に劣っている場合や、居住者の高齢化に対応できていない場合は、耐震改修やバリアフリー改修等を行うことが望まれます。こうした改修工事が見込まれる場合は、所要の費用を計画的に積み立てておくことが重要となります。

 

●規模別費用の目安

左から順に、階数、建築延床面積 、1㎡当たりの単価

【15階未満】5,000㎡未満    218円/㎡

【15階未満】5,000~10,000㎡     202円/㎡

【15階未満】10,000㎡以上         178円/㎡

【20階以上】超高層マンション   206円/㎡

 

【注 1】上表は積立方式に関わらず比較がしやすいよう、30年間の月割均等にした数字です。

【注 2】16~19階未満は建築事例が少ないので除外しています。

 

超高層マンション(一般に20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にあることから【15階未満】と区別し、【20階以上】として示しています。

 

●修繕周期

 

日常のこまめな小修繕も軽視できないのですが、大事なことは定期的(周期的)な大規模修繕です。 これをタイムスケージュールとして大まかに知っておくことも大事なことと思いますので、最後は項目ごとの30年計画表を提示することにします。

12年、24年が節目と分かりますね。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

 

 

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