25年後に5倍に跳ね上がる修繕積立金に不安

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
~~~~最近は更新回数を増やしていいます~~~

マンションは一戸建てと異なり、自分が好きなときにリフォームや修繕をすればいいというわけにいきません。自分の家の一部でもある共用部に関しては、その小修繕も大規模修繕もタイムリーに実施して行かなければなりません。

当然ながら、その費用は必要の都度 徴収するということではスムーズな工事ができないので、予めプールしておく必要があります。それが「修繕積立金」です。

30年以上も前に始まった制度ですが、当初はどのくらいプールしたらよいかが分からず、管理費の10~20%程度、金額にして1000円とか2000円といった低額でした。

その後は、業界自身の学習から、次第に増額となって行くのですが、ランニングコストが上がり過ぎると販売のブレーキになるため、毎月の積立額は低く抑え、5年ごと、7年ごとに値上げして行く形とします。さらに、分譲時(引き渡し時)に基金を集めてしまうという方法との併用方式を誰かが考案し導入したのです。

購入するときの頭金と登記料などの各種費用の中に加えてしまえば、「負担感」は低いはずで、販売のブレーキにはなりにくいと考えたのです。考案者・導入企業の思惑通りになって、「毎月の積立金逓増方式+一時金徴収」という形式が定着しました。

さて、その積立金は最近5~6年くらいで相場が上がったようです。長く建物を維持して行こうとする分譲主の姿勢の表われと見てよいのでしょう。かつては「売ってしまえばあとは野となれ山となれ」の「売りっ放し」と非難されたマンション業界ですから、良い意味での変節ということでしょう。

さて、最近の修繕費の相場上昇は、国土交通省が平成23年4月にガイドラインを発表したことによるのかもしれませんが、何であるにせせよ、分譲時に設定される修繕積立金は、毎月分が1㎡当たり80~100円、一時金がその60~100倍といった値が標準的です

修繕費が高くなるか安く済むかは、建物の高さや形状、共用部分の割合、共用施設の種類、あるいは使用している材料の種類・グレードなどによって変わって来ます。

超高層マンション(一般に20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用設備として特殊なものが装備されていたりすることにより、修繕工事費が増大する傾向があると言われます。

●修繕積立金はどのくらい必要か?

管理費や修繕積立金は安いほどトクした気分になりそうですが、実は、どちらもマンションの維持には欠かせない重要な費用なので、一概に安ければいいというものではありません。

修繕積立金も必要以上に低く設定するれば、適切な時期に必要な修繕が行われないとか、大規模修繕の際に費用が足りないといった問題に発展します。一時金が臨時徴収されることになるかもしれないのです。

30年先までの長期修繕計画は、今ではほぼ例外なく販売時点で既に用意されています。エレベーターは何年で取り替えるのか、屋上の防水加工は何年周期かといったことが、こと細かく計画されているのが普通です。そして、その費用がいくら位かを見積りし、それを賄うための積み立て計画も併せて提案の形で販売時に提示されるのが普通です。

●国土交通省のガイドラインで示された修繕積立金の額

国土交通省は、マンションの階数と規模(延べ面積)によって4区分して修繕積立金の額を専有面積1㎡当たりの単価で提示しました。

これが、その金額です。

【15階未満】5,000㎡未満 218円/㎡
【15階未満】5,000~10,000㎡ 202円/㎡
【15階未満】10,000㎡以上 178円/㎡
【20階以上】超高層マンション 206円/㎡

【注 1】上表は積立方式に関わらず比較がしやすいよう、30年間の月割均等にした数字です。
【注 2】16~19階未満は建築事例が少ないので除外しています。超高層マンション(一般に20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にあることから【15階未満】と区別し、【20階以上】として示しています。

●修繕積立金の主な変動要因について

マンションの修繕工事費は、建物の形状や規模、立地、仕上げ材や設備の仕様に加え、区分所有者の機能向上に対するニーズ等、様々な要因によって変動するものであり、このような修繕工事費を基に設定される修繕積立金の額も、当然、これらの要因によって変化する性格のものです。

以下に、マンションの修繕積立金の額に影響を与える修繕工事費等の主な変動要因を示します。
(国土交通省のガイドラインより)

・建物が階段状になっているなど複雑な形状のマンションや超高層マンションでは、外壁等の修繕のために建物の周りに設置する仮設足場やゴンドラ等の設置費用が高くなるほか、施工期間が長引くなどして、修繕工事費が高くなる傾向があります。

・一般的に建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど、施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる傾向があります。

・エレベーターや機械式駐車場の有無及びその設置場所、玄関ホール・集会室等の規模等により、修繕工事費が変動します。近年の新築マンションでは、ラウンジやゲストルーム等、充実した共用施設を備えたマンションがみられます。また、温泉やプールがあるマンションもあります。このようなマンションは、修繕工事費が高くなる傾向があります。

・建物に比べて屋外部分の広いマンションでは、給水管や排水管等が長くなるほか、アスファルト舗装や街灯等も増えるため、これらに要する修繕工事費が高くなる傾向があります。

・塩害を受ける海岸に近いマンションや、寒冷地のマンションなど、立地によって劣化の進行度合いや必要な修繕の内容が異なり、修繕工事費に影響を与える場合があります。

・一般に高級な材料を使用している場合は修繕工事費が高くなります。ただし、材料によって必要な修繕の内容が異なったり、修繕の周期を長くできたりする場合もあります。

・外壁については、一定期間ごとに塗り替えが必要な塗装仕上げの他、タイル張りのマンションも多くみられます。タイル張りの場合は、一定期間ごとの塗り替えは必要ありませんが、劣化によるひび割れや浮きが発生するため、塗装仕上げの場合と同様に適時適切に調査・診断を行う必要があります。修繕工事費は、劣化の状況により大きく変動します。

・手摺り等には、鉄、アルミ、ステンレスなど様々なものが用いられます。一般的に、一定期間ごとに塗装する必要のある鉄製のものの他、錆びにくいアルミ製やステンレス製のものもあります。近年の新築マンションでは、錆びにくい材料が多く使用されるようになってきており、金属部分の塗装に要する修繕工事費は少なくて済むようになる傾向があります。

・共用の給水管や排水管については、配管や継手部分の内部が腐食することから、これらを洗浄・研磨し、再度コーティングする“更生工事”や、“更新(取替え)工事”が必要になります。近年の新築マンションでは、ステンレス管やプラスチック管等の腐食しにくい材料が使われるようになり、更生工事が必要なくなり、取替え工事も遅らせることができるようになり、給排水管に関する修繕工事費は少なくて済むようになる傾向があります。

・近年の新築マンションの中には、生活利便性や防犯性を考慮して、さまざまな種類の付加設備 (ディスポーザー設備、セキュリティー設備等) が設置されているものが見られます。このような設備が多いほど、修繕工事費は増加する傾向があります。

・新築時に設置されていなくても、その後に居住者のニーズの高まりや消防法等の法制度の改正を受けて新たな設備を付加等する場合があります。

・また、耐震性に劣っている場合や、居住者の高齢化に対応できていない場合は、耐震改修やバリアフリー改修等を行うことが望まれます。こうした改修工事が見込まれる場合は、所要の費用を計画的に積み立てておくことが重要となります。

●25年後に当初の5倍設定の例も

横浜市で、「グレーシア二俣川」という29階建て421戸の物件が今年(2016年秋)話題を集めました。間もなく完売の見通しと聞いています。

このマンションの修繕費の漸増カーブが急で、25年後は何と初期の5倍になってしまう計画なのです。筆者の記憶では、最も上昇率が高い例は25年後に7倍というものでした。5倍もたまに見かけるようになりました。こうした計画が主流になって来た印象を受ける昨今です。

ちなみに、「グレーシア二俣川」の積立て計画は次のようになっています。

<66.02㎡の住戸のケース>
管理費:20,140円(@305円/㎡・・・タワーだけに管理費も高め)

修繕積立金:6,620円(5年目まで)(6~10年目:8,780円、11~15年目14,920円、16~20年目20,070、21~25年目28.718円、26年目33,340円)/修繕積立基金541.280円

30年合計=7,288,160円=平均20,245円/月=1㎡当たり@307円・・・ガイドライン206円の約1.5倍の高さです。

●管理費・修繕積立金が高かったら買うのを止めますか?

管理費も修繕積立金も、ともに高い上記マンションの販売は好調です。この程度の高さは買い手にとって抵抗のないレベルなのでしょうか?

少なくとも購入契約を結んだ人は妥協範囲と見たことになります。高いと聞いても、交渉して下げてもらうなどということはできません。売主側で決めた管理費等が高いと知ってもどうにもならないわけです。

結局、他の面でたくさんの長所があれば、短所を消してしまうということでしょう。立地条件や間取りや、室内の設備仕様、間取り、あるいは眺望といった項目が気に入れば、短所は枝葉末節の部分として頭の隅に追いやられてしまうのです。

どうしても気になる人は、髙いと感じる部分の10年分程度を物件価格の値引きで勝ち取ればいいでしょう。例えば、平均的なマンションより5000円高いとすれば、10年で60万円ですから、交渉すれば何とかなるはずです。

しかし、収入が減る老後まで思いをいたすと、毎月の負担はより小さい方が良いはずです。管理費と修繕積立金の合計で4万円も5万円も払わなければならないことに不安を覚える人もあることでしょう。

そのような人には、次の話が役立つのではないかと思います。

●3年ごとの見直しで減額になる可能性は高い

分譲時に売主側から提示される積立て計画は、計画通りに値上げすることにはならないことも多いようです。決定するのは、あくまで管理組合であって、売主や管理会社の策定した計画に従う必要はないからですし、通常は3年ごとに計画を見直しする習慣が定着しつつあるので、そこで管理組合の目線で見直したらいいのです。

計画段階は余裕を見ているのでしょうし、管理会社としては将来、大規模修繕を請け負いたい(新たな収益源にしたい)ので、必要な支出予算を見積もり額より少し多めに計上する傾向があると聞きます。まあ、営業戦略ということなのでしょう。

修繕積立金は3年ごとに見直すことが定着しつつありますが、その結果、劇的に減額された例として有名なのは東急東横線「武蔵小杉」の駅前にある「パークシティ武蔵小杉ステーション フォレストタワー」です。

RC造59階地下3階建て 794戸の大規のマンションで、2009年4月 に完成しました。

同マンションの管理組合により開設された公式HPによれば、「修繕積立金会計について2013年に見直しを実施しています。
財務健全化の検討により実現したコストダウンも反映した結果、分譲30年後の大規模修繕時までの費用として十分と思われる途中で値上げのない一定金額に変更したそうです。

2015年現在、まだ1度も大規模修繕を経験していないため、初回の大規模修繕実施後に再度見直しを行う計画です。30年といった長い期間ですので、その間に物価の変動や自然災害等、多くの不安要因が考えられます。従って決めっぱなしの修繕積立金計画でなく、資産価値向上委員会が中心となり、その時その時に適切な計画の修正・見直しを都度行っていきます」とHP上で述べています。

見直しの前と後の数字を明快にグラフで説明していますので、転載させていただきました。

詳細はこちらで http://stationforesttower.com/property

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スタートは80円/㎡、30年後352円/㎡となっていたようです。30年後がスタート時の4.4倍です。見直しで引き渡し後に2倍になりましたが、その後は一定で、トータルは見直しによって大きく下がったことが一目瞭然です。

このような実例があることは検討中の買い手にとって励みになりますし、購入しようとしているマンションでもお手本にしたら削減を実現できるかもしれません。覚えておかれるといい情報のひとつかと思います。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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