平均の2倍もする管理費。これをどう見るか?
- 2016.08.05
- マンションの管理問題
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
管理費は地域によって差があります。人件費の違い、電気代などの違いからです。しかし、それらに2倍もの差はありません。 ところが、マンション1住戸あたりの管理費を比較すると、2倍もの差が普通に見られます。
高くなる理由を考えてみましょう。
エレベーターを例に採ると、1基より2基にすれば、その保守点検費だけでも2倍になるわけですし、電気代も2倍かかるはずです。管理人を1人置くだけよりコンシェルジュと併用すれば、2倍の人件費が必要です。エントランスホールやロビー、ラウンジといった共用部の面積が広いと、清掃費用も共用灯の電気代も増えることは間違いありません。
ところが、戸数が2倍あればエレベーターが2基になっても1住戸当たりの費用は変わらない理屈です。共用部分の面積が大きくても住戸数に比例して大きくなる分には1住戸当たりの管理費は高くならないはずです。
ところが、現実には管理費が高いマンションとそうでもないマンションが存在します。なぜでしょう?
その理由を述べる前に、管理費の相場を見て頂きます。
●住戸面積1㎡当たりの管理費の標準は?
国土交通省の調査によれば、首都圏のマンションの平均戸数は131戸、1住戸当たりの管理費は16,127円、専有面積1㎡当たり@238円となっています(平成25年マンション総合調査)。
筆者の知る高級マンションに、平均の2倍弱、@450円/㎡という例があります。いわゆる100㎡を超える住戸ばかりで構成された全戸億ションの超高級物件です。全戸が管理費だけで毎月50,000円以上になるようです。
そこまでの高級物件ではないが億ションも混在する30戸ほどの物件で、@390万円という例もあります。
一方、湾岸エリアの大型マンション(300戸余)に、@155円/㎡という格安の事例があります。
また、湾岸の500戸余のタワーマンションで@280万円/㎡という例もありますし、文京区の40戸台の小型物件で@250万円/㎡という例があります。
このように、戸数、高さ、グレードなどによって管理費の多寡が決まって来ますが、不動産経済研究所が2010年に分譲された新築マンションを対象に調査したデータから見えて来るものがあるので、それを次に紹介します。
◆首都圏全体の1㎡当たり管理費:@211円
中古を含めた全マンションを調査した先の国土交通省の@238円より安くなっています。理由は不明です。
◆規模(戸数)別の管理費
49戸以下:256円/㎡・50~99戸:211円/㎡・100~299戸:205円/㎡・300~499戸:209円/㎡・500~999戸:234円/㎡・1000戸以上:311円/㎡
50戸未満から300戸未満までの3分類では、戸数の多いマンションほど割安になることを窺わせますが、300戸を超えるとスケールメリットは消えて、逆に戸数が多い物件ほど高い傾向が見られます。
理由は、次のように分析されます。
大型マンションは、24時間有人管理体制にしたり、共用施設を多種多様に用意したりしているため、スケールメリットを帳消しにしているのです。
◆高さ別の管理費
5階以下:227円/㎡・6~9階:209円/㎡・10~19階:204円/㎡・20~39階:293円/㎡・40階以上:306円/㎡
5階以下の低層から20階未満までの3分類も、階数が高いほど安い傾向が見て取れます。しかし、20階以上の超高層マンションは20階未満の1.5倍もの高さになっています。階数が高いほど戸数も多くなる傾向があるので、規模別の方と重なる点です。
超高層マンションは管理費が高くなると言われていますが、例えば中低層にはない「窓の掃除」という費用負担がありますし、郊外の広い敷地の大型マンションなら自走式の立体駐車場が設置できるのに対し、都心や湾岸部のタワーマンションはタワーパーキングなので、保守費用もかかるうえに電気代が嵩みます。
●小規模マンションの管理費
小規模マンションほど管理費は割高になってしまう傾向は調査データからも明らかになりましたが、小規模物件の中には、平均値の2倍にもなる高い例があります。
小規模マンション同士の管理費比較で、決定的な差につながるのが管理人を置くか置かないかの差です。
管理人を置かない「巡回方式」の管理体制では、管理員人件費が不要となり、週5日以上の日勤と比べると大きな差になるのです。
30戸のマンションで試算してみましょう。管理員の賃金を月額24万円とします。30戸で割ると、1軒当たり8000円ずつ負担する計算です。70㎡平均の面積としたら、1㎡当たり114円もの差ができてしまいます。
巡回管理の小型マンションAの管理費が@250円/㎡であるとき、同規模のマンションBは管理人を日勤させているので@364円/㎡という高い管理費になってしまうのです。
70㎡の住戸なら、マンションAは17,500円、マンションBは25,480円となります。
月々8000円、年間96,000円、10年間で96万円と馬鹿にならない費用です。
試算は1.5倍の差ですが、現実の比較はもっと大きな差異があるようです。
●管理費の高いマンションは物件価値も高い――本当か?
タワー型の大規模マンションであろうと低層の小規模マンションであろうと、管理費の高いマンションを購入する人はどのような思いで購入を決めているのでしょうか?
管理費が高いことが購入断念の理由になった人もあるかもしれません。しかし、筆者の知る限り、その割合は低いのです。
管理費が高いと販売のネックになると踏んだ物件の場合、売主は管理費を抑えることを企画段階から模索します。
大型物件では、できるだけ共用部を多く(広く)しない、エレベーターの数も減らせる限り少なくする、駐車場は台数が減っても機械式でなく平面式にする、管理体制は極力省力化する、手入れの費用が馬鹿にならない植栽スペースは最小限の面積に抑えるといった工夫を凝らすのです。
反対に、差別化された価値ある建物を目指した物件の場合、大型マンションならエスカレーターでコンシェルジュの待つロビーやラウンジにアクセスするとか、ペット同伴エレベーターは専用として設置、3階まで吹き抜けのエントランスホールはガラス窓の清掃だけでも大変そうな大きさとし、ガラス越しに見える豪華な庭園は剪定費用がかかるとしても、敢えて企画に盛り込むのです。
大型マンション定番のゲストルームは、ラグジュアリーホテルのスイートルームと見まがうほどのグレード感で仕上げたりもします。
小規模の低層マンションでは、駐車場は地下格納式で「愛車の保護と防犯も万全」とアピールします。しかし、敷地に余裕がないので自走式にはできず、機械式の地下3階までなどとします。このため、当然ながら管理費に影響を与えるのです。
エントランス周りやロビーなどの仕上げは、床も壁も天井も、手抜きなく高級素材で仕上げています。共用廊下は当たり前のように絨毯張りの内廊下方式とし、エレベーターの広さはマンションの規模に不釣り合いなほどの大きさ、そして籠の内外の表面材、照明などのスペックは高級シティホテル並みにしたりします。
全体として高級感や上質感、センスの良いデザインなどを誇る高級マンションは、その種の建物が似合うブランド住宅地や、それに次ぐ高級住宅街などに建設されます。
このような物件は、販売価格も高いものです。当然ながら、購入予定者のニーズを把握した上で企画するので、管理費も高くつく建物となります。 しかし、買い手の資金力を推定し、管理体制も手抜きはしないのです。
●高級・高額マンションは管理費が高くても問題にならない
管理費が高いマンションは、その立地条件とともに高級物件、高い価値を持つ建物である場合が多いものです。
そのような物件は、資金力(購買力)の高い、所得も多い人が購入する物件となります。
それを購入した場合、次の買い手も同じような階層と考えられるので、売却するとき管理費がネックで売れないなどという懸念は持たなくていいのです。
言い換えましょう。価値あるマンションは将来価格も高値を維持できるので、管理費を多く支払って来た分くらいは元が取れてしまうということになるのです。
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