危険領域に入った市況。購買態度は?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンション販売が絶好調と伝わって来ます。9月の新規発売戸数(首都圏で5968戸)は5か月連続で前年同月を上回ったと継続調査の不動産経済研究所は発表しました。

契約率も83%と絶好調でした。このところマンションメーカーを喜ばせる状態が続いています。
(10月は駆け込みの反動減があったと見られますが、調査データはまだ届きません)

好調の背景には、消費税の増税による駆け込み需要や価格の先高観があるとされます。一部には金利の先高観もあると見られます。

「今を逃すと当分買えなくなりそうで焦っています」や「急がないと手が出なくなりそうだ」などという声が私のところへも直接聞こえて来る昨今です。

このような状況下、どのような購買態度が望ましいかを考えて行きます。

●価格の上昇は確かだが・・・

前回の記事でも述べましたが、東北の復興需要が本格化して以来、ゼネコン業界は繁忙状態にあると見られ、職人不足が慢性化しているとのこと。そのことがマンション建設のコストアップを招いていると言います。

マンションメーカーの多くは、2006年から2008年にかけて起きた価格急騰の結果、販売不振に陥り、値引き処分を余儀なくされたという苦い経験を持ちます。需要が離れたのです。その記憶が鮮明な今、簡単にコスト上昇を受け入れるわけにいきません。

ここで詳しくは述べませんが、コストダウンの策を模索しながら市場に受け入れてもらえるよう、賢明な努力を続けていると見られます。

しかし、その努力の限界を超えてしまったのでしょうか。地域ごとに相場を見ていると、信じがたいほどの高値物件が次々と登場しています。

●価格上昇を予測し購入を煽る売り手

販売現場では、営業マンの多くが「値上がり必至の状況です。今を逃すともっと大変なことになります」などと、顧客の購買意欲に火を着けようと熱く語ります。

営業マンの役割は売ることなので当然ではありますが、焦らされる検討者が増えています。その雰囲気が私のところまで伝わってきます。

ここに消費税増税の問題も絡んでいます。来年3月までに引き渡しが可能な物件の場合では、現行の5%物件であることを力説しているはずです。

●中古マンションも上がり出した

販売好調は在庫の不足につながります。マンションごとに見ると、例えば10戸の残があるとしても、買い手から見ると検討できるのは2戸か3戸しかない、あるいは1戸しかないかもしれません。
予算の範囲で希望に叶う広さ、間取り、階数、向きなどの条件が合致する住戸は少ないからです。
品薄感が日増しに強まっている感じがします。

僅かな数の中からの選択を迫られても、そこで決断できなければ、検討者は一度絞り込んだ物件探索を再度拡大するしかなくなります。その範囲は中古物件にも及びます。

日本人には新築信仰が根強くあるらしいのですが、その新築に条件の合う物がないとなれば中古へ向かうのは必定です。

そうして中古市場で需要が増大すれば、価格は上昇傾向を示すようになります。その兆候は昨年あたりから見せ始めていましたが、今春からは明白なメッセージとなって来ました。

●価格が上がると市況はどう変わる?

価格が上がり過ぎると、やがて見切りをつける人が増えます。つまり需要の後退です。既に述べたとおりです。ただ、そこへ至る過程では、買い急ぎ心理を生みます。

「以前はモデルルームご来場から契約に至るまで平均して2か月くらいの時間を要していたのが、最近は2週間でお申し込み、契約という流れになっています」と某マンションの担当者が明かしてくれました。

「価格が上がりそうだ」から「価格の上昇トレンド顕著」に相場が変わり、「そろそろ買う時機だ」から「急いだ方がいい」に買い手心理が変わって来ました。
そこへ、買い手をして「やはり」と思わせる新聞報道「マンション販売絶好調」が拍車をかけます。

販売好調に気を良くしたマンションメーカーは、はじめは慎重だった価格決定も次第に甘く、強気に転じて行きます。

ゼネコンとの交渉も粘りがなくなってコストアップを受け入れて行くのです。そうなるとマンション価格高騰に拍車がかかって行きます。

「上がるから買う、買うから上がる」という循環が出来上がります。それがどこまで進むかは別として、売れ行き好調と価格上昇の市況はしばらく続くことになりそうです。

●人気物件と不人気物件の二極化。今まさにそのとき

販売が好調といっても、1億国民が花見酒に酔ったバブル期とは違って、まだ冷静な買い手は多いのです。その証拠に、どんな物でも売れてしまうという所までには至っていません。

地域相場を崩壊する驚きの高額マンションも、それが駅上だったり、駅前再開発エリアであったり、あるいは供給の少ない人気の街であったりすると、買い手は殺到します。

「東京市場はやはりBIGだなあ。こんなに高くても優良物件には買い手が多数集まる」と改めて感じさせてくれる現象です。ただし、これは都心・準都心の限られた物件でのことです。

郊外では低額化に成功した物件が好調なものの、やはり高値の物件は苦戦する例も多いのです。

郊外マンションは、沿線需要、地元需要に限られてしまうため、もともと集客量に限界があります。価格が上がれば購買予算の下部層が足切りされて需要の絶対量をさらに減らすためです。

郊外の超大型物件となると、そのプランに魅力はあるものの、価格が高いとどうしようもないところがあって、苦戦が続いています。

話を戻して、都心でも小型物件には特筆できる魅力に乏しく、価格が上がったことで支持を失ってしまった例が散見されます。例えば、スーパーマーケットが「品物は前と変わりませんが、値段は今日から上げます」などと言ったら、たちまち売れ行きが悪くなってしまうようなものです。

今は、人気物件と不人気物件の二極化が鮮明なときです。

●希望条件から遠ざかる傾向へ

価格が上がれば予算を増やさない限り、当初の希望条件は変更を強いられることになります。

次のような妥協を迫られそうです。

①三流ゼネコンの物件へ

コストアップを回避したいマンションメーカーは、予算内で工事を請け負ってくれるゼネコンを懸命に探そうとします。その結果、普段は起用しない二流、三流のゼネコンへ発注することになるのです。

二流、三流のゼネコンが粗悪な建物を建てるというわけではありませんが、買い手から見れば不安になるものです。購入を決断するに当たっては、慎重にならざるを得ないでしょう。

②無名ブランド物件へ

比較的マシな立地にあることや、間取りが良いこと、価格が大手物件に比べて安いことなどから興味を惹かれる物件に遭遇します。ところが、そのような物件は殆んど聞いたことがない売主や中堅以下の売主であることが多いのです。

③広さの妥協

場所も妥協できないし、この物件に代わる物件はない。ただ、欲しい広さは予算をオーバーする――このようなケースでは、階数を下げて眺望を諦めるとか日当たりの悪い住戸を選択するしかなくなります。

しかし、広さを妥協すれば、希望が叶うということもあるはずです。

10年くらい住める広さを前提にすれば、この選択がチャンスをつかみ取ることとなるでしょう。

④郊外へ・バス便へ

マンションの価格は建築費だけが左右するものではありません。場所を妥協すれば予算内に納まる物件と巡り合えるはずです。

広さや間取りは譲れないが予算も増やせないとしたら、場所の希望条件を変更するのが手っとり早いのです。

あまりお勧めはできませんが、その道を選択する人が増えることでしょう。

⑤中古へ

平均すれば中古は新築より安いのは確かです。しかし、中には新築並みの価格で取引される中古の人気物件も東京には少なくありません。

新築が高くなる過程では中古に目を向ける人が増えていきます。結果的に中古も値上がりして行くのですが、丹念に探せば程よい物件を見つけることができないこともないでしょう。

⑥小規模マンションへ

大手業者が企画開発するマンションは大型が多く、建物プランは魅力的です。存在感が際立ち、各種の共用施設や敷地内ガーデンなどが充実、マンションの顔であるエントランス周りは内外とも大きく豪華です。

設備面においてもスケールメリットを活かした「ディスポ-ザー」や「非常時の自家発電装置」などが組み込まれます。タワー型を除き、駐車場は機械式ではなく自走式の立体駐車場が用意されたりします。

300戸、500戸といった大型マンションが珍しくない首都圏では、本来なら工事費もスケールメリットが出ておかしくないのですが、冒頭から述べている建築費高騰は、そのメリットを帳消しにしてしまう勢いなのでしょう。

付加価値の高い大型物件ゆえに、少し高くなるのは仕方ないと割り切ることもできますが、価格の高さは納得の範囲を超えてしまった感じがします。

結果的に、予算を変えず広さと立地条件の妥協もしないとなると、行きつく先は付加価値のない小規模物件になります。

ワンフロアに2戸か3戸しかなく、全体で30戸足らずのペンシル型の物件が都心では数多く見られます。敷地面積に注目すると、大抵300㎡前後です。準都心の物件でも50戸未満の物件が少なくありません。

こうした中小型マンションは、これといった特長は何もありません。二流以下のゼネコンが施工し、売主も無名であったりします。価格が安いというだけの物件なのです。

●当面2年の予想シナリオ

以上、見てきた市場の観察は短期的なものですが、整理すると次のようになります。

①価格上昇トレンドが顕著になった
②価格の先高観から慌てる買い手が増える
③販売状況は、当面は人気・不人気の二極化へ向かう
④品薄感から中古マンションへ向かう買い手が増え、中古も値上がりする
⑤希望条件を妥協する必要が出て来そうだ
⑥買いやすい物件はノンブランド、郊外・バス便、小規模となる

では、この傾向はどのくらい続くのでしょうか? 少し待ったら価格上昇も止まり、市況の過熱感も小康状態になるでしょうか?

●適切な購買態度は?

上記の市場展望を前提にしたとき、買い手はどのようなスタンスで購入を検討すればいいのでしょうか? ゆっくりしていたら買い損ねるかもしれませんし、そうかといって焦って失敗したくもない。

2年くらい待ったら落ち着いて探すことができるという保証もありません。前回述べた長期展望のいかんによっては、当分諦めることが必要になるかもしれません。

まことに悩ましい時期です。このようなときは、検討物件ごとに吟味するほかないのかもしれません。

先ずは、「高値つかみなのではないか」や「この建物は大丈夫か」などと自問してみましょう。また、結論を急がせる営業マンの言葉は無視しましょう。

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