向こう7年のマンション市況を展望する

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションの売れ行きが好調です。その背景には、金利や価格の先高観測(先高観)が強くなっているためと業界関係者やマスコミは解説しています。

2020.年のオリンピックも東京招致が決定し、関連するエリアのマンションの人気が沸騰しているという声が聞こえてきます。今後はオリンピック関連の建設需要が増えて、コストが間違いなく上がるという見方も間違いなさそうです。

――今日は、2020年までの長期的なマンション市場を展望してみようと思います。

●価格上昇トレンドに入った

日ごろのマンション評価サービス業務を通じて日増しに強く感じるのは、新築マンションの価格上昇傾向です。

最近1年くらいを振り返ってみると、地域相場を超える高価格の物件が増えていると感じていましたが、最近半年はその印象が強まっています。

相場の2~3割高といった相場破壊の高額マンションも目立ち始めています。

相場破壊物件は流石に付加価値もあり、スペックも高いので、差別感も歴然としていますが、中には何故こんなに高いのかが理解できない物件も増えて来ました。

プランを細部に渡って眺めていくと、ごく平凡な建物で納得できるような付加価値は何もないのです。
専有部分のスペックだけが過剰装備になっていたりします。高いと思わせないための策でしょうか?

●五輪開催まで続く?価格高騰

価格上昇の原因は、地価の高騰、建築費の高騰にあるのは言うまでもないのですが、その背景を整理すると、次のようになりそうです。

①地価の高騰・・・マンション販売が好調なので用地争奪戦が激化しています。このため、1年前に付近で取引された価格の2割高だったなどという例が増えているのです。

新聞で見る地価統計は全般的な傾向を示すもので、東京都心の商業地は前年比で+2%であったが、郊外の住宅地はマイナス3%だったなどという僅かな変化にしか見えません。

前年比で20%も30%も高くなった土地取引の実態を一般の人は殆んど知りません。

そのような高値の土地取引は、マンション用地であることが多いのです。

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。

ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーが挙って入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

マンション市況が良いときは、土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は取得しようと前向きになるのです。

今はそんなときなのです。マンション用地に限定すると地価調査の数値とは大きな隔たりが出ています。

②建築費の高騰・・・マンションの建築費は確かに上昇しています。建設工事はマンションメーカーから施工するゼネコンへ発注されますが、マンションメーカーには当然ながら予算があり、その範囲で受注してくれるゼネコンを探します。普通は「指名入札」方式で、複数のゼネコンを選抜し、見積もりを依頼します。最近の傾向は、予算内に納まるゼネコンがいないのは当たり前のこと、予算を2割、3割上回る見積もりが普通の状況にあるのだそうです。

背景には、東日本大震災の復旧需要によって職人などの人手不足が深刻な状態にあるためと言われています。今秋には、鉄やコンクリートなど資材の高騰も起き始めていると報道されました。

今後の見通しについても、建築費に関しては悲観的な見方が圧倒的です。つまり、まだまだ復興需要は続きますし、そのあとには東京オリンピック関連需要が出て来るからです。

ご存知のように、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修工事をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

また、業界人が最も興味を持っているのが、中央区晴海に予定されている選手村の住宅建設です。これは、オリンピック終了後に民間に払い下げられます。取得する民間は、これを一般に分譲または賃貸することになります。

選手村の建設費は全部で数千戸と言われる大規模なものだけに、周辺整備費も含めると数千億円にもなると見込まれています。

●五輪の影響でミニバブルも

建設需要は、オリンピック開催前年まで続くことでしょう。あと6年、東日本の復興関連もピークを既に過ぎているはずです。建設業界には一服感が出ていると予想されます。従って、5~6年先は建築費も低下傾向となるかもしれません。

さて、マンション市況を考えるとき、問題は6年間のトレンドです。建築費の高騰が続くことは間違いなさそうです。地価はどうでしょうか?

先に述べたように、販売好調が続けばマンション用地の争奪戦が相変わらず続くに違いありませんが、果たしてどこまで需要が持続するでしょうか?

カギは景気回復が握ります。言い換えれば国民所得の増加が進むかどうかです。アベノミクスが成功し、賃上げが始まれば需要の後退は起こらないかもしれません。

既に、一部の企業でボーナスや残業代が増えています。定期昇給やベースアップが伸びて来ることで購買意欲の高まりは裾野を広げて行きます。今の販売好調が持続するかどうかは、この部分にあるはずです。

今は株の上昇などで資産効果の恩恵に浴した富裕層や、一足早く好調な経営を回復した一部の大企業などに所属する人たちがマンション購入に積極的です。つまり一部の階層でマンション市場は支えられているのですが、徐々に広がりを見せることでしょう。

一方、全般的な国の動静とは別の動きに注目しなければなりません。それはオリンピック会場周辺地域の動きです。周辺地域では、高い人気を集めるマンションが増え、価格も上昇するでしょう。

その結果、ミニバブルと表現されそうな状態がしばらく続くと予想します。ただ、長くて3~4年です。オリンピック前年までは続かないでしょう。

●バブル時代の再来はあるか?

1980年代後半、株式や不動産・マンションは「上がるから買う、買うから上がる」という循環をもたらし、永遠に右肩上がりの繁栄が続くとの錯誤をもたらしました。

これがバブルでした。バブル(泡)はやがてパチンと弾けてしまいました。それ以来、20年以上もの長い間、日本は景気後退とデフレに悩まされて来たのです。

安倍政権が誕生した2012年11月以降、期待と不安が混在しなからも着実に景気回復とデフレ脱却が進んでいます。

そこへ成長戦略に当初なかった「オリンピック開催」が幸運の第四の矢となって浮上しました。ただ、国全体に広がるまでの時間はまだ見えて来ません。

マンション価格が急騰すれば需要はついて来なくなります。しかし、所得の増加を伴って来れば需要は持続します。

価格の高騰に嫌気して一気に市場が冷めてしまうか、先行きに明るい展望が開けるとともに「上がるから早く買わなくちゃ」と、買い手心理が拡大して熱い市場が2020年まで続くかは、もう少し経過を見ることが必要です。

しかし、マンション相場は少なくとも向こう5~6年間、高値に張り付いてしまう懸念は強く、その予測は固いと考えます。

5日後に「危険領域に入ったマンション市況」と題して続きを書く予定です。

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