「ホテルライクな内廊下」表現に惑わされないで!

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションの共用廊下は、ご存知のように開放廊下(外廊下ともいう)と内廊下の2種類があります。
内廊下を採用したマンションは、広告やホームページに「ホテルライクな・・・」と謳うのが一般的です。

内廊下には短所もあるのですが、概ね外廊下より優れているというイメージが定着しているようです。そのイメージをつくって来たのが、「ホテルライク」というコピーでした。ホテルライクと聞くと、何となく高級そうに感じるからです。

しかし、ホテルもいろいろです。シティホテル、観光ホテル、ビジネスホテルと分かれますし、グレードも大きな幅があります。「ラグジュアリー」と付くと、文字とおりの「贅沢」な高級ホテルとなります。
ホテルライクと聞いて、読者の皆さんは、どのようなホテルを真っ先にイメージされるでしょうか?

いずれにせよ、「ホテルライク」に悪いイメージを抱く人は少ないように思いますし、購入(検討)マンションの内廊下を勝手に「こんなふうかな、あんなふうかな」などと詮索する人は多くないように感じます。

●ラグジュアリーホテルの廊下ではない

年初から今月にかけて、内覧会の立会い業務が集中する中、完成したばかりのマンションに赴くたび、様々な感想を持つこととなりました。

建物の規模、デザイン、間取り、設備、部屋からの眺望など、それぞれのマンションが全て異なる顔を持っていることを改めて思うのですが、その中には落胆させられることもしばしばです。

大手マンション業者の物件であり、かつ高額な物件であるとき、「えっ」と驚くことさえあります。事前に評価していた物件なら別ですが、内覧会の立会いのときに初めてお目にかかる物件の場合は、先入観が落胆の度を大きくします。自分が買ったわけでも住むわけでもないのですが。

選択されたご依頼者は、ほどなく入居となる喜びに溢れ、一種の高揚感に浸っているときですから、水を差すような感想はご法度なので、筆者としては口をつぐむ苦しさを味わう瞬間でもあります。

「ホテルライクといっても、ここはセルフサービスの安値のビジネスホテルだなあ」と思うとき、少しく切ない気持ちになるのです。

そんなことから、内覧会での室内の検査と指摘(ダメ出し)が仕事なので、そこは無論きちんとこなしますが、廊下を含む共用部分は対象外ということもあって、見て見ぬふりをすることにしています。

●「ホテルライクな内廊下」の仕様には大きな意味がある

立地条件や間取り、その他の面も気に入っていたら、チープな内廊下であったとしても大きな問題とは考えない人が多いと思います。少なくとも、そのことで購買意欲が後退する人はいないかもしれません。

しかし、完成して内覧に行ったとき、イメージとの開差が大きいか、想像通りであるかでは気分に違いがあります。やはり、出来上がりのイメージをしっかり把握しておきたいものです。

内廊下の仕様には、実は大きな意味があるのです。

床の仕上げはタイルカーペット(50センチ角ほどの四角形のカーペットを、タイルを張るように敷きこんで行くもの)が多いのですが、カーペットの質には差があります。無論、価格も下と上では10倍もの開きがあるとされ、高いものは高いものなりに上質な感じに仕上がります。

また、色の組み合わせとパターンによる柄も、センスの良い模様になったり派手な模様になったりもします。

床だけではありません。壁の仕上げも様々です。塗り壁か、ビニールクロス張りかの違い、或いは上下半分ずつ素材と色を変えて、例えば下半分は板張り、上半分がクロス張りなどとしたものもあります。これは是非チェックしておきましょう。

天井の飾りも無視できません。内廊下は、閉鎖的な空間なので空調も大事です。言い忘れましたが、廊下幅も、天井の高さも確認しましょう。

室内は、後から所有者の好みで改装することができます。限度はありますが、センスの良さで上質に、或いは高級感ある住まいに変えることができるわけです。しかし、共用部分は簡単に改造するというわけには行きません。

売却のとき、見学者が廊下を見て何かを感じます。簡単に言ってしまえば、「高級そうに感じる」か「安っぽいイメージに映るか」です。鈍感な見学者もあるでしょうが、目に映るものは強烈な記憶に残るものです。

うがった考えかもしれませんが、このような場所のディテールに気配りしたマンションは往々にして他の部分でもこだわりのある設計をしているものです。

こうした印象や感想は、中古市場における見学者、すなわち購入検討者の購買心理に影響を与えます。

以前、このブログに「マンションは全体を見て買うもの(2013/9/20)」という記事を書きましたが、その中から一部を引用して補足しておきます。

自分の家、それはイメージ的・感覚的に言えば「マンション全体の姿」を表わすのです。意識しているかいないかを問わず、マンションは1住戸の広さや間取り、階数を選択しているようでも、実は全体像を見ながら選んでいるものです。

仲介業者に案内されて買い手が我が家にやって来るときを想像してみましょう。

家に近づいて来ます。営業マンは、「あれが物件です」と見え始めた外観を遠くから指さすことでしょう。そのとき、いかにも立派な姿なのかありきたりの外観なのか、はたまた賃貸マンションと変わらないような貧相なデザインなのかなどが評価されそうです。

玄関に着きました。エントランスの豪華さに驚くのか、さらに、御影石の床やモニュメント、高価そうなソファやチェアがロビーに置いてあることでちょっとした感動を与えるのか、それとも飾り気もなく広さも最低限度の機能本位のエントランスとロビーなのかなどが評価されることでしょう。

人は物を買うとき、機能性を外すことはありませんが、同時にデザイン性も含めます。つまり、色が良いとか形がいい、恰好いい、個性的だといった感情を購買の決め手にしているのです。これは、マンションに限ったことではありません。

「あれが我が家です」と知人に示す場面があるとしたら、奥ゆかしい日本人は、自慢の言葉を押し殺しながらも、「どうだ、立派だろう。恰好いいだろう。すごいだろう」と心の中で叫びます。

そのような外観や玄関やロビー、ラウンジなどを持つマンションは、相手を感動させ、購買意欲を高め、従って価格が強含みとなることは間違いありません。共用廊下も、例外ではありませんね。

マンション購入者は、何となく全体像を見て買っているのだとしたら、ここを意識して選択しておけば有利に売却することができるということでもあります。

是非、内廊下の広さや仕様にも気を配りましょう。

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