希少価値ある低層マンション

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

タワーマンションが何かと話題となる昨今ですが、対照的な低層マンションにも注目してみました。
一般に、低層マンションとは5階以下を指しますが、ここでは都市計画に規定する「第1種低層住居専用地域」にある4階以下のマンションと定義して話を進めます。

●4階以下のマンションの数は?

住宅検索サイトSUUMOで「東京都内・第1種低層住居専用地域」の新築マンションを検索すると52物件の存在が確認できました(2014年4月10日現在)。 掲載物件の総数は563物件なので、9.2%ということになります。

52物件をつぶさに見て行くと、第1種低層住居専用地域と他の用途地域(1種住居や2種住専など)にまたがっているケースが含まれています。従って、中には5階建て・6階建ての物件も少なくありません。

それでも、低層マンションの稀少性の高さがお分かりいただけるのではないかと思いますが、4月10日のブログで紹介した「200戸以上の大型マンション」の物件数は首都圏全体で9.9%でしたから、それに匹敵する希少性があると言えます。

ただ、正直な感想を言えば52物件とは想像以上の多さでした。

一種低層住居専用地域には大きく3種類あることは意外に知られていないのですが、建ぺい率・容積率の制限で区分すると3種類あるのです。

60%・150%に指定されている場所と、50%・100%の場所、さらに厳しい場所は40%・80%となっています。

一種低層住居専用地域のマンションはたいてい60%・150%のゾーンに建てられますが、普通に考えれば、戸建化される場所です。
ところが、最近は規制緩和の流れの中で設けられた容積率の緩和規定(一定面積以内ならば地下住戸は面積計算から除外)を活用し、地下階をつくって4層の建物にします。そうすることで採算性を確保できるようになったのです。

言うまでもなく、土地代が同じとするなら、30戸建てるのと40戸建てるのとでは、多く建てた方が1戸当たりの土地代が安く済むわけで、販売可能な価格に近づくのですね。

●低層住居専用地域内での建築制限

そもそも一種低層住居専用地域とは、都市計画法で決められた用途地域のひとつで、2~3階建て以下の低層住宅のための良好な住環境を保護することを目的とした住居系の地域なのです。

一戸建ての住環境としては最も優れているとされ、住宅以外に建てられるのは、高校以下の学校、図書館、銭湯、診療所、老人ホーム、保育所などに限定されています。

店舗などとの併用住宅を建てる場合は、住居部分が全体の2分の1以上で、店舗等の広さが50平方メートル以内に限られるのです。

また、建物の高さを10m以下に、または建築基準法55条2項の緩和規定(=規模や空地率)によっては12m以下に抑えなければならないという「絶対高さの制限」があります。

12m地区なら地上4階が建設可能ですが、10メートル地区では3階建てが限度です。しかし、地下に住居をつくることで4階建て(地上3階・地下1階)のマンションが可能になります。

先に紹介した52物件の中には、地下住戸を設けたと思われるものが多数含まれています。

第一種低層住居専用地域でマンションを計画するのは、どうしても割高になるため適さないと考えられて来ましたが、既述のように規制緩和がマンション建設を促進しているのです。規制緩和の政策が功を奏したとも言えます。

筆者が意外に多いなと感じたのも道理です。

●低層マンションの立地
東京都内の閑静な住宅地は、すべて第1種低層住居専用地域に指定されていると考えてよいのですが、主な地名を挙げてみましょう。

山手線の内側では、渋谷区広尾3丁目、渋谷区東2丁目、渋谷区元代々木町、渋谷区上原2丁目、文京区千石2丁目、文京区本駒込6丁目、城南五山と呼ばれる品川区東五反田3丁目(島津山)、同5丁目(池田山)、北品川5丁目(御殿山)、北品川6丁目」(八つ山)、港区では、高輪4丁目のわずかな一画、文京区は本駒込6丁目(大和郷=やまとむらと呼ばれるところ)などが有名です。

千代田区や中央区には「第一種低層住居専用地域」は存在しません。

山手線の外周では、世田谷区用賀一丁目、世田谷区上北沢1丁目、世田谷区代田6丁目、目黒区下目黒6丁目、目黒区青葉台、目黒区上目黒などがあります。

マンション建築が事実上不可能と思われる40%・80%制限の地区では、「世田谷区上野毛2丁目」、同「尾山台1~2丁目」や大田区「田園調布3丁目、中野区上鷺宮3丁目、杉並区浜田山3~4丁目、同「高井戸東1丁目」などが挙げられます。

こうした地区は、多くの場合、閑静で緑濃い高級住宅地という風情やイメージがあるものです。庶民にとっては、こんな所に住みたいと思っても遠い存在の場所であると言えます。羨望の街なのです。

このような地区でマンションが開発されることは滅多になく、先の事例はいずれも羨望の街のはずれに当たる、隣の「普通の街」にまたがって建てられたものが多いのです。またがっている方が、規制が緩くなって採算がとりやすいのでしょう。

●低層マンション地域の魅力・デメリット

低層マンションの建つ街の魅力を整理してみましょう。

① 面積当たりの人口が少ないので落ち着いた住環境になっている

② 幹線道路に面していないので静かな環境が保たれている

③ 近辺に特別な公園がなくても、一戸建て住宅の庭の緑が連続しているので街全体が緑に囲まれている

低層マンションの建つ街のデメリットはないのでしょうか? それは、最寄駅から徒歩5分以内にある地区は皆無に等しいという点です。

ご承知のように、マンションは駅から10分圏内に建つことが多いものですが、一戸建ては駅から10~15分といった距離にあるものです。低層マンションは、その一戸建てエリアに建てられるからです。

都市計画では、駅の周りは「商業地域」と「近隣商業地域」、その外側に「中高層住居専用地域」さらにその外側に「低層住居専用地域」と線引きされているからです。

勿論、例外もあります。駅自体がローカルな私鉄沿線の場合です。要するに、「商業地域」と「近隣商業地域」の面積が狭いので、一番外側の「低層住居専用地域」までの距離が近いのです。

ということは、買い物や飲食などの楽しみが少ない、言い換えれば「何もない街」というわけです。

●低層マンションの建物としての魅力・デメリット

駅から遠い、または近くても駅の周りに何もないような街であっても、低層マンションにはそのデメリットの大部分を補ってくれるかもしれない「建物の魅力」があります。

それはどんな点にあるのでしょうか?デメリットと併せて整理してみましょう。

① 建蔽率制限が生み出す空地の魅力

空地率が高くても、その半分は駐車場というケースも多いのですが、高級マンションでは、地階に車を格納する設計とし、空地は中庭などの緑地スペースとしています。

高木のシンボルツリーを要所に植え、低木の植え込みや花壇を配しています。マンション全体が植栽で囲まれ、長く美しいマンションとして存在感を示すという例が多いと言えます。

② 壁式構造になることがある

構造的には柱、梁のない壁式構造となっている事例も少なくありません。壁式構造はデコボコがなく、すっきりした室内空間を創造してくれます。また、耐震性も一般のラーメン構造より高いとされます。

デメリットは以下のようなものです。

① 大型マンションになることは少ない

ちなみに住友商事が分譲中の「クラッシイハウス上北沢(世田谷区)」は敷地面積が7045㎡もありますが、全戸数は95戸に過ぎません。これが商業地などであれば、500戸くらいの超大型マンションになってしまうのです。 95戸でも、低層マンションの中では大きい方です。

大型マンションでは、当たり前の共用施設が、建物規模が抑えられてしまう低層マンションでは最小限になってしまいます。

② 眺望は隣接一戸建ての屋根くらい

言うまでもなく、タワーマンションとは対照的に、眺望が殆んど期待できません。一戸建てに住む人は眺望など初めから期待していないのと同じと言えましょうか。

価格は高くなりやすい

地下住戸を設けることで採算が取れるようになったとはいえ、実は地下住戸には通風や採光の確保のための設計が必要なので何かと工事費が嵩むものです。結果として、全体工事費も割高になるのです。

住宅街から大きな用地は中々出てきませんから、工事費のスケールメリットもなく、従ってコストダウンは至難の業なのです。このため、分譲価格が高くなりがち、または品質的に劣りがちと言えます。

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低層マンションには駅から遠い物件が多いものの、その環境や規模、建物プラン次第では検討してみてもよいのではと思う物件をたまに見かけます。ただ、駅まで徒歩10分までが許容範囲であることを断っておきます。

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