第610回 小規模マンションもいいなと思うこの頃
- 2018.03.05
- 低層マンション
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。
5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
大規模マンションは様々な付加価値があって優良な物件も多いのですが、大規模マンションを開発するには、敷地が広大である必要があります。
しかし、広大な敷地はざらにあるわけでもなく、あっても工場跡地のためか駅から距離があったり、環境に問題があったりします。
駅に近く利便性にすぐれた大規模マンションは、それなりに価格は高く、手が出ないと嘆く人も多く、今日も苦悩が続いているのでしょう。 迷走しつつ、到着した先に「小型マンション」という人も少なくありません。筆者へ届く評価依頼の中にも小規模マンションは多数見られます。
マンションの評価は立地と建物の2面から行いますが、建物だけに関して言えば、三井式の評価法では大規模マンションが高い点を獲得するのです。
なぜなら、評価に際しては配棟計画や空間利用計画、駐車場、駐車場以外の共用施設、外観・玄関周りのデザイン、セキュリティ、耐震性、耐久性・断熱性など、規模・高さ、省エネ・創エネ、防災設備等、遮音性能、管理人の勤務・サービスソフト、管理会社、管理費、修繕計画・積立金、間取り、天井高、設備の実装、設備機器・仕上げ材のグレード、将来の更新性といった20の項目がありますが、これらの中には小規模マンションが初めから勝ち目のない項目が少なくないからです。
この採点方式では10点満点にしたい項目も5点を最高にしており、最高100点になるようにしている関係で、実質価値が正しく反映されないことがあります。そこで、重点項目を加重してみるのですが、その結果、中から上に上がったり、反対に上から中に下がってしまったりすることもあります。
ともあれ、小型マンションでは共用施設がない分を共用部のデザインや仕様の高さ、あるいは管理ソフトでカバーしていたとしても、点数ではさほど伸びません。同様に、室内の設備、天井高、建具、仕上げ材などが高級であっても点数では大きく稼ぐことができないのです。
つまり、どう頑張っても小規模マンションは大規模マンションを超える評点を獲得することはないのです。それでも、価値ある小規模マンションは存在します。立地条件で差が付くことがあるからです。
ものの価値は機械的な採点方式で優劣をつけられないものもあるはずです。今日は一般基準では普通かもしれない評点であるにも関わらず、価値ある小型マンションというものにスポットを当ててみようと思います。
●小規模マンションの欠点
小規模マンションという定義は特にありませんが、イメージ的には20戸とか30戸といった戸数規模でしょう。 しかも、閑静な住宅街にたつ中低層マンションです。
本稿ではワンルームマンションの30戸規模を除外して述べることにします。ワンルームマンションで20戸、30戸というのはほぼ例外なくペンシル状の細身のプロポーションをしており、全く異質のタイプだからです。
●小規模マンションが好きな人
大規模マンションは、同じ屋根の下にいる何百人とは軽く会釈する程度でしかなく、天災でもなければ助け合うことも、交際することもない。我が家に帰って来た、その瞬間、ロビーですれ違う人々はみな赤の他人。ここは本当に我が家か?人間関係が希薄だなと感じる。
このような声をときどき聞きます。
そのためか、エントランスやロビーなどがいくら立派でも、展望ラウンジや敷地内公園などの共用施設がどれだけあっても空疎な感じしかしない。そう思っている人がいます。好きになれないと言うのです。
小型マンションの方が、何年かするとあの人は何号室の何とかさんだと分かるようになり、管理人さんとも親しくなって、ひとつ屋根の下の全部の人とつながっている。日ごろ交際しているわけではないが、絆を感じるのです。それに、小規模の方が、何となく落ち着いた暮らしを送れる気がする・・・このような声も聞きます。
大規模マンションは、住宅なのにオフィスビルのように沢山の人が出入りするが、小型マンションは出入りも少なく、静かで落ち着いた雰囲気が漂っているとも。
なるほど、そうか。小型マンションも見ようによっては悪くないなと気付く人もあるでしょう。かく言う筆者も、近頃そんなことを思うのです。
スタディルームやライブラリーがなくとも、近くのカフェに行けばいいだろうし、東京湾の眺望や東京タワーを望みたければ、どこかのホテルのラウンジに行けばいい。小さな子供がいる家庭は、雨天が続くとストレスが溜まるので室内遊技場(キッズルーム)がないと困るでしょうが、東京は子供のない家庭、子供が巣立ってしまったシニアのマンションニーズも多いのだから、そういう人は小型マンションでも問題ないのだろうね。
つまり、そのようなマンションを選択した人も、リセールのとき買い手がなくて困るということにはならないのです。もちろん、立地次第ですが。
●主な小規模マンション
筆者が、この1年くらいで目にした小規模マンションを以下に掲出してみます。
*グランドヒルズ目黒一丁目26戸(6階建て。「目黒」駅から徒歩6分。分譲主:住友不動産)※平成30年3月下旬販売開始予定※
*ジオグランデ元麻布19戸(5階建て。2017年12月竣工済。日比谷線「六本木」駅 徒歩9分。事業主:阪急不動産)※販売中※
*ブリリア高輪ザ・ハウス14戸(2018年8月竣工予定。JR山手線「品川」駅徒歩8分。港区。分譲主:東京建物)※販売中※
*プラウド南青山」19戸(2006年竣工。表参道駅 徒歩3分・分譲主:野村不動産)
*ザ・パークハウス 碑文谷一丁目17戸(2016年10月竣工済み。「学芸大学」駅 徒歩15分。目黒区。分譲主:三菱地所レジデンス)
*ペアシティ代々木大山 16戸(3階建て。1983年竣工 。「代々木上原駅」徒歩6分。渋谷区。分譲主:東高ハウス)
*フォレストテラス松濤 26戸(4階建て。1999年竣工。代々木公園駅 徒歩約9分。渋谷区。分譲主:森ビル)
*パークコート表参道 23戸(5階建て。1998年2月竣工。「表参道)7分。渋谷区。分譲主:三井不動産」
*グランドメゾン表参道21戸(6階建て。2017年1月竣工。表参道駅 歩8分。渋谷区。分譲主:積水ハウス)
*ザ・レジデンス目黒 20戸(3階建て(3階建て。1988年竣工。JR山手線 『目黒駅』 徒歩15分。分譲主:不明)
*有栖川ヒルズ14戸(6階建て。1991年竣工。広尾駅 徒歩5分。港区。分譲主:不明)
*フォレセーヌ御殿山 17戸 (5階建て。1996年竣工。山手線「品川」駅 徒歩11分。品川区。 分譲主:森ビル)
●価値ある小規模マンションの共通点
上記の物件には既にお気づきの読者もあると思いますが、以下のような共通点があります。
〇渋谷区・港区の邸宅地に集中している
〇低層マンションが多い
〇名庭園が借景(有栖川宮祈念公園の緑が迫る別荘地のようなロケーションと謳うのが有栖川ヒルズ)
〇小規模といえども専有面積は100㎡以上が最低だったりする
〇小規模といえども敷地が広く、充実した共用施設がるものも(プールやトレーニングルーム、ジャグジー、サウナ付きもある=ザ・レジデンス目黒。プール付き・スパ付きはフォレストテラス松濤も)
〇小規模といえども管理人が朝から夕方まで駐在している。
○ プライバシーを考慮した内廊下設計になったものが多い
●低層住宅街なら小規模マンションでも大きな存在感がある
さて、大規模マンションは言うまでもなく大きくて堂々としています。エントランスも2階まで吹き抜けになっていたりしますし、要するに門構えに風格があるわけです。
それに対し、小型マンションは対極にあるタイプで、威風堂々からは遠いと言えます。しかし、実際にその場所に行ってみると結構立派に見えるのです。大小は相対的なものですから、立派に見えるのは周囲の家が邸宅ではあっても2階建てなら、5階建てのマンションは大きな存在感を表すのです。
第一種低層専用地域でも、4階建てが可能な地域もあります。敷地の広さも関係しますが、マンションは一戸建てに比べると堂々たるものと言えるかもしれません。
また、小規模であっても賃貸マンションのような形状ではなく、外観のデザインやエントランス周りの雰囲気は全く違って見えます。高級感、上質感、格調の高さ、個性的でありながら上品、語る言葉が足りません。そこはかとなく漂う気品とでも言えば良いのでしょうか?
それらは用いる建築材料から違います。建築家でない筆者には説明ができませんが、材料の違いと複数の材料の組み合わせなどが高いデザイン性をもたらすのでしょう。それらは、何年経っても色あせない、陳腐化しない、飽きがこないものになっていると言えます。美術館、博物館のようなものもあります。
●管理費が高くつくという欠点がある
小規模マンションの欠点・弱点はどのようなところにあるのでしょうか?
管理費が高いという共通点があります。管理費が安い(普通)ものもありますが、それらは、管理人不在マンション、いわゆる巡回管理方式です。
小規模マンションの管理費は、管理人の人件費を少数のオーナーで負担するわけですから、当然高くなりますが、1㎡当たりで表わすと400円前後になっています。
80㎡なら毎月32,000円、100㎡で40,000円です。修繕積立金と合わせると毎月4万円とか5万円になるわけです。 しかし、管理費が高いことを気にする買い手はいないのです。
管理費の高さを気にする買い手は、小規模マンションを購入することはできないかもしれません。管理費が安い小型マンションもありますが、その多くは高級マンションから遠く、デザイン性も風格も、何もかも先に並べた物件とは違いがあり過ぎます。
●小型マンションを選ぶときの注意点
邸宅街でないところに立地しているもので、価格も比較的安いのですが、先々を考えると資産価値については大いに疑問を感じるのです。従って、選ぶときは次のような点に注意しなければなりません。
<立地に関して>
どのようなマンションも、利便性を無視することはできません。できるだけ駅に近いことや、環境も良いこと。両立しないエリアでは、駅に近い方が優先します。駅から少々距離があっても大丈夫という街は限られます。
<建物に関して>
本稿では低層小型マンションについて述べていますが、勘違いなさることがないよう、念のため、同じ小規模でも高層は論外になる場合が多いことをお断りしておきます。つまり、ペンシルマンションは避けたいというのが筆者の主張です。
では、低層の小規模マンションを検討するときの注意点を述べましょう。
1)デザイン性は高いか?
2)小規模なりに高級感はあるか、格調は高いか?
3)巡回管理であっても良好な管理状態を保っているか?(中古の場合)
4)ブランド価値はどうか?
5)内廊下式になっているか?
6)室内の天井は高いか?
7)ディスポーザーは装備されているか?
マンションの価値は立地条件の比重が高いのですが、同じような立地条件同士を比較するときは建物の差が問題になるわけです。その建物を見たとき、人は何を感じるか、そこが問題です。①差別化された(明確な差別感がある)物件であるか?②感動を与えてくれる(与え得る)要素がある物件か?という二つの視点で見るようにしましょう。
リセールのとき、見学に来た人が「安っぽい、賃貸マンション見たい、天井が低い、汚い、しょぼい」、そんなふうに思うのではないか。そう疑問に思うようなマンションは止めた方がいいのです。
最後のディスポーザーに関しては、小型マンションに装備されることは少ないのですが、最近の中規模以上のマンションはどれも定番になって来たので、リセール時にあった方が有利だろうなあと思う程度です。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。
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