旧・耐震基準のマンションは割高!?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

中古マンションの中でも価格が安いことで魅力を感じるのは、築30年を超えるような物件ですが、検討に当たっては注意しなければならないことが少なくありません。

今日は、一見格安な中古マンションについて述べることにします。

●新築のようなリノベーションマンション

中古マンションは、築40年近いものになると、レトロな印象の中に味のある建物もないことはないですが、多くはさすがに見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。

無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安があるからです。

そこで販売促進のために、専有部分だけでも新品同様にしようという策が自然に登場して来ます。つまり「リフォーム」です。

所有者が居住したままでリフォームするのは、施工の都合で制約が出て来ますが、移転してからなら思い切った工事が可能になります。

思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」です。

リノベーションマンションは、玄関ドアや窓のサッシなどを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションが誕生させます。

その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに威力を発揮します。

ご相談者の中には、「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまった人もありました。

築40年になろうかという古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。

●旧耐震基準ゆえに耐震性に不安

築30年以上、正確には1981年以前に竣工した築34年以上のマンションは、ご存知の「旧・耐震基準」のマンションです。

建築基準法の規定の中にある「耐震基準」は過去何回か改訂されて来ましたが、大きな変更があったのは1981年です。すなわち、1981年の6月以降の建築確認(許可)は新耐震基準で行われるようになったのです。

1981年の半ばに建築確認を得て、工事にかかったとして竣工は低層マンション以外、1982年以降になったはずですから、それ以前のマンションは要注意です。

●1981年以前でも耐震基準が高いマンションがあるのは事実だが・・・

ところで、1981年以前のマンションは全て耐震基準が低いのでしょうか? そんなことはないのですが、民間マンションの殆んどは基準ギリギリで建てられたと見られます。

耐震性の高いマンションを建てることは、コストアップにつながることでもあるので、利潤を追求する企業は消極的なものです。

阪神大震災のとき、昭和40年代(1965年以降)に建てられた古いビル・マンションが倒壊した例が多くあったのは事実ですが、1981年以前のマンションがすべて倒壊したわけでもないのです。

民間マンションの中にも軽微で済んだもの、被害は受けたが居住が危険というレベルまでは行かなかったマンションが多数あったのも事実です。

しかし、今後来る巨大地震に耐えられるだけの耐震性があるかどうかを素人が見分けることは不可能です。専門家に診断してもらうほかないのです。

●「耐震診断実施の有無」を確認しよう

1981年以前の中古マンションの耐震性を購入検討者が知る方法は、中古取引の重要事項と定められている「耐震診断実施の有無」を先ず確認することです。つまり、仲介業者に尋ねればいいのです。

新築・中古を問わず、不動産の取引には「重要事項説明」の義務(宅地建物取引業法35条に明記)があります。
個人がマンションを購入するような場合には、「重要事項説明書」が交付され、かつ説明がなされます。宅建業者の義務ということになっているからです。

9年前、すなわち阪神大震災以降、その項目がひとつ増えました。(平成18年4月24日施行)増えたのは「耐震診断の実施の有無」です。

国土交通省は、診断は有料なので強制することは困難と判断し、診断を実施したか実施していないかだけを説明させることにしたのです。

マンションの場合の診断は、建物全体を診断するのですから、個人でできるわけでなく、管理組合の費用で行なうことになります。

ところが、中古マンションの取引では、診断の実施が「無」となっているケースが多いという実態があります。

仮に「有」と記載したら、買い手は当然ながら結果を知りたくなります。耐震性が低いとなったら、買い手は購入を断念するか値下げ要求を強く迫ることでしょう。

そのような事態を恐れて、耐震診断に踏み切る管理組合は殆んどないのだそうです。管理組合が恐れているのは、耐震補強の工事費にあります。

結局、1981年以前の古いマンションを検討する買い手から見ると、耐震性に関しては闇の中ということになりますから、買い手は、「無」の物件を敬遠することになりそうです。

そこで、前述の「リノベーション」の登場となったのです。

●安く仕入れて高く売るリノベーション業者の物件は割高

筆者が提供する「マンションの評価サービス(無料)」で最近増えているのが、リノベーション物件です。割合としては少ないのですが、実感として増えているなあと感じています。

評価サービスのレポートには、当然ながら価格が適正かどうかという項目がありますが、リノベーション物件は例外なく割高と出ます。

表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性)は大いに疑問の老朽化マンションと言うべきリノベーション物件は、価格と価値が一致しないのです。

誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンション1棟をリノベーションしたものは別格です。 ここで注意を喚起したいのは、あくまで1戸単位で販売されるリノベーション物件のことです。1棟リノベーションは、耐震補強も実施していることが多いからです。

話を元に戻します。
リノベーション物件は、ほぼ例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手仲介業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者です。

築40年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人売主は業者に買い取ってもらう道を選択します。買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えます。

売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せる手法で販売に当たります。

ご承知のようにマンションの仲介をしても、手数料が最大で6%余しか受け取ることができません。実際は3%になることが多いのです。

これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%前後を得られます。

仕入れ価格3000万円+リフォーム工事代300万円、販売価格4000万円というのが東京都内の平均的な利益構成と見られます。

●高くても値打ちがあるとしたら

耐震補強工事が完了しているマンションに評価依頼の形でお目にかかることが1年に1件くらいあります。

補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心も得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に大きく購買意欲を上げることでしょう。

そのようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。

リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。

それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、それなりの価値はあるのかもしれません。

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