新興企業と2014年の供給ランキング

どのような業界でも、企業の繁栄は永遠ではありません。 いつかは衰退の時期が来るもので、企業によっては荒波に押し流されて廃業・清算の憂き目を見るものです。

そして、業界地図は塗り替えられ「再編」されて行きます。

マンション業界も、栄枯盛衰と無縁ではありませんでした。ここで歴史を紐解くつもりはありませんが、最近ではリーマンショック後の2008~2010年にかけて中堅マンションデベロッパーが数多く倒産しました。

2015年の今、倒産企業の中には支援企業の協力を得て、再建中の企業もあります。しかし、往時の勢いはなく、細々ながら事業を継続しているという印象に留まります。

そんな中、倒産企業とは対照的に元気な新進気鋭のデベロッパーが台頭して来ました。これも世のならいですが、今日は、そんな新興の成長企業について語ろうと思います。

●新興デベロッパーの台頭

新進気鋭のデベロッパーとはどこを指しているか、読者の中には全く見当もつかない人もある一方、名前を聞けば「あ~あそこか」と気づく人もあることでしょう。

ここで具体的に社名を挙げるのは憚りますが、もちろん複数です。創業から20年前後が共通点です。

仲介業からマンション分譲に進出した企業、建売販売からマンションへ手を広げた企業、異業種からマンション分譲に参入して来た企業、大手マンション業者のOBが独立開業した企業などです。

この流れは昔から変わりませんが、新興デベロッパーを分類すると、事業ノウハウを有している企業と資金だけが豊富でノウハウは何もない企業とに大別されます。

事業ノウハウを持たない企業は、業界の先達、すなわちマンションの販売専門会社やゼネコン(長谷工コーポレーションが筆頭)との提携によって事業を推進しています。

ノウハウを有する企業は、マンション業界に身を置いた経験者が経営トップにあり、元の所属先で学んだ実務と経営手法を元に独自の経営方針を打ち出しています。 

仲介業などを続けながら横目でマンションデベロッパーの様子を窺い、その欠点やリスクを研究した結果から独自の経営方針を持つという企業も見られます。

その独自の経営方針があったからこそ業績を伸ばしているわけです。 彼らは、その方針や経営戦略に自信を持ち、さらなる成長軌道を歩まんとしています。

しかし、筆者はこれらの企業群の中の一部に「ある種の嫌悪感」を抱くのです。

●成長企業の商品戦略

多額の借入金を必要とするマンション分譲業者は、銀行との蜜月の関係がなければ存続しません。しかし、リーマンショックを契機とする世界金融危機が銀行の態度を一変させました。一方的に融資を打ち切られてしまったのです。

勿論、変わりない関係を保っているデベロッパーも多数あるわけですが、どちらかと言うと独立系の企業、創業者が社長という企業が三行半を突き付けられました。

そんな業界事情を傍目で見て来た人たちが今の新興デベロッパーのトップなのでしょう。

ある企業の社長は、資金が長期間寝てしまうような事業には手を出さないと語ります。

マンション開発は、土地を買ってから販売が始められるまで1年以上、長いと2年も3年もの時間を要します。融資銀行から見れば焦げ付きリスクが高いことになります。

そこで、銀行からの信用を保つためにも、融資を受けたらすぐに返済し、返済したら再び借り、借りたらすぐ返すという回転を重視する経営を目指していると語っています。

一言で言えば、開発に時間のかかる案件、大規模物件には手を出さないという方針だと補足しています。

大規模物件を好まない買い手も確かに存在するので、小規模物件の開発は意義があるのかもしれません。

しかし、筆者が嫌悪感を抱く理由は小規模だからではなく、魅力を付加させて「小粒でもピリリと辛い」優れた商品を目指したマンションでないことにあるのです。

回転を急ぐあまり、十分に練られた企画とは言えないからです。

大手デベロッパーが手を出さない悪条件の土地を取得して開発した商品が多いのも特徴です。

悪条件とは、例えば敷地が変形のため異形の建物、三方を既存ビルに囲まれている閉塞感の強い建物、ワンフロアに3戸くらいしかない細身のプロポーション、いわゆるペンシルマンション、容積率その他の建築制限をギリギリでクリアしたため天井が低く梁が目立って穴倉のような個室や共用部が目立つ建物、隣接のビルから簡単に侵入されてしまいそうな敷地境界ギリギリに建てられた建物などです。

これらは、モデルルームやパンフレットで理解できるものもありますが、素人には建物が完成するまで気づかないような面も多く、完成したときの落胆が大きな代物ばかりです。

このようなマンションでも、ある意味の欠陥に気付かず買ってしまう人も少なくありません。また、気付いてもメリットにばかり目が行ってしまい契約してしまうのです。

メリット、そう価格の安さです。 安さが大きな魅力で、ついつい手を出してしまったという後悔の弁を述べる買い手がたくさんいます。

大手や一般のデベロッパーが手を出さないような土地は、売り値が安くなるのが普通です。一般的な企画のマンションが採算に乗らないとなると、どこも買ってくれないことになり、価格は大きく下がるというわけです。

そのような安値の土地を取得し、名もない中小工務店に安く工事を請け負わせ、安く分譲する。そうすれば、利幅は普通に確保できて、会社は成長するという図式なのです。

●粗悪な商品を買った顧客はどうなるの?

売主が儲かっても、買い手が損をするようでは企業の存在意義はありません。しかし、おおでを振って勢いよく活動している企業が存在します。

有名企業の多くが、創業当初は大なり小なり誰かを泣かせたものという歴史上の事実を否定するものではありませんが、ことマンションという高額な買い物をする買い手の身になって考えてみると、粗悪な商品を買ってしまったら悲劇というほかないのです。

粗悪な商品を提供して儲ければ会社は大きくなり、やがて立派な商品ばかりを提供する一流企業に成長したとするなら、初期の買い手の犠牲の上にのし上がった企業ということになります。

そんな犠牲はまっぴらごめんです。しかし、今日も犠牲になってしまう買い手は後を絶たないのです。

新興デベロッパーが全てそうだとは思いませんし、事実そうでないデベロッパーも存在します。しかし、「安い」と感じたら、黄信号です。そんなときは、「より慎重に」検討するべきと進言します。

●2014年供給ランキング(全国)

ところで、2014年の事業主別「供給戸数ランキング」が今年も発表されました。

これは長年マンション調査を続けている「不動産経済研究所」がマスコミ発表したものです。

以下、全国ベースの戸数ランキングをご紹介します。

(順位)(事業主名) (供給=発売戸数)
1 住友不動産 6,308戸
2 三菱地所レジデンス 5,300戸
3 野村不動産 4,818戸
4 三井不動産レジデンシャル 4,638戸
5 東急不動産 2,550戸
6 大和ハウス工業 2,289戸
7 プレサンスコーポレーション 2,273戸
8 大京 2,018戸
9 タカラレーベン 1,551戸
10 名鉄不動産 1,474戸
11 東京建物 1,455戸
12 一建設(はじめけんせつ)1,330戸
13 阪急不動産 1,256戸
14 あなぶき興産 1,253戸
15 新日鉄興和不動産 1,184戸
16 近鉄不動産 1,163戸
17 エヌ・ティ・ティ・都市開発 1,081戸
18 大成有楽不動産 1,076戸
19 伊藤忠都市開発 1,043戸
20 日本エスリード 902戸

昨年は全体で供給戸数が前年比21.0%減、最大市場の首都圏も20.5%、近畿圏も23.8%も減少したため、事業主別の戸数は軒並み減少、ランキング順位も大きく変動しました。住友不動産は初の1位でした。

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