マンション名の不思議

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

毎日どこかのマンションをチェックしていると、物件名を見ただけで「あ~あれか」と分かるものですが、中古マンションになると一瞬「あれっ、どんな物件?」と思い出せないことも少なくありません。

似たような名称の物件があるからです。それでも、ブランドと後ろか前に付く街や駅の名称によって思い出せることもあります。

三井不動産レジデンシャルのパークコートやパークマンションなら、高級ブランドなので数も少なく、殆んど「あれだ」と分かります。

ところが、複数の企業の共同事業の場合は、独自の物件名としているので中々思い出せないものです。

最近話題となった大型物件「桜上水ガーデンズ」や、30年以上前の億ション団地「広尾ガーデンヒルズ」などは直ぐに分かるものの、あまたの共同事業マンションの名称は時間とともに記憶から去ってしまいます。

「ザ・フォレストレジデンス」、この名を聞いて直ちにどこにあるマンションかを分かる人は地元の仲介業者を除くと、業界人でも多くないでしょう。一時話題になった物件ではあるのですが。

これは千葉県流山市の物件で最寄り駅はつくばエクスプレス線の「おおたかの森」です。7年前に竣工した524戸の大型マンションなのです。

地名・駅名・街の名が冠されていないと、どこのどんなマンションか全く分かりませんね。

最近1~2年の販売物件では、「キャピタルゲートプレイス」、「BAYZ TOWERS &GARDEN」、「グランドミレーニア」、「インペリアルガーデン」、「東京ハント」、「GLOBAL FRONT TOWER」、「ミッドアオアシスタワー」、「クレストシティレジデンス」、「DEUX TOURSドゥ・トゥール」、「ソライエ・プレミアムテラス」、「ザ・スカイクルーズタワー」「リヴァリエ」「アクアビスタ」etc. 

これらの中には、現在も販売中のものがあるので、ピーンと来る人もあるでしょうが、場所が分かりませんね。

マンションには事業主のブランド名と建設地の地名か最寄り駅名の組合せになるのが定石です。敢えて、その定石をはずしたマンション名にはどのような意図があるのでしょうか?

●マンション名は場所を知らせる重要なフラッグ

「プラウドシティ新川崎」という物件が2015年3月現在販売中です。この名前から、誰もが横須賀線の「新川崎」を最寄り駅とする物件と思うことでしょう。ところが、実際は南武線の「鹿島田駅」が徒歩8分で、「新川崎駅」には13分もかかるのです。

新川崎駅と聞けば、横須賀線が通っていて東京通勤者なら「便利でいいな」と思うでしょう。一方、南武線の鹿島田駅をマンション名に冠すれば、都区内通勤者は乗り換えが伴うので関心を持たないはずです。

一方、鹿島田と聞いて関心を持つのは南武線で川崎市内に通勤する人たちです。

売主は、販売ターゲットの中心を東京通勤者に据えるか、川崎通勤者に据えるかを検討し(実はすぐに判断できてしまう)前者に定めたのです。ゆえに、「新川崎」を冠したに違いありません。

川崎より東京通勤者が圧倒的に多いこと、沿線需要の絶対数でも南武線より横須賀線の方が多いからです。

「東京通勤者のみなさん、新川崎のマンションですよ。品川・新橋・東京まで直通ですよ。是非ご検討ください」と売主はアピールしたいのです。

マンションの購入を検討するとき、買い手はどこで買うかを考えます。住み慣れた沿線、住み慣れた街が一番多く、次いで通勤に便利そうな街・駅などを描くはずです。

ゆえにマンション名は広告効果を狙って駅や街の名を冠するのが定石とされているのです。

それが、上述のようにどこか分からないネーミングにしてしまう。一体どういうことなのでしょうか?

●逆転の発想でネーミング

先に挙げた場所不明マンションのネーミングは、敢えてそうしているわけですが、集客に苦労する立地である場合が殆んどです。

聞きなれない駅やアドレス、イメージ的に使いたくない駅やアドレス、都心から遠く離れた駅、沿線人口の少ない支線の駅などが最寄りの物件なのです。無論、例外もありますが。

マンション探しに懸命な人は広告を見て、一瞬「どこだろう」と興味を持ち、次にその広告を凝視することでしょう。場所がどこかを知らせない広告は違反なのでどこかに必ず記載されていますが、そこに辿り着く前に目立つ写真や絵が興味を引きます。

そして、場所は全く考えもしなかった所だけど、価格の安さに惹かれて「見学に行ってみよう」となったり、間取りが面白い「資料を取り寄せてみよう」となったりします。こうして場所を隠すことで、立地に無関心だった購買層をキャッチすることに成功します。

ネーミングの妙と言えましょうか。

ところで、この得体のしれないネーミングで本来の需要、メーンの沿線需要と建設地周辺の需要はうまく確保できるのでしょうか? 心配は要らないのです。これら地縁と言われる需要層には、マンション名以外の素材を使って場所が特定できる広告を作成し、アピールするからです。

インターネットのポータルサイトなら、駅名や地域、沿線などで検索をかければネーミングがどうでもヒットする仕掛けになっているので、関心客を取り逃がすことはないはずです。こちらからも問題はないというわけです。

場所のイメージが良くない建設地の場合、例えば東京23区で最も人気のあるとされる港区ですら、麻布や青山、白金、六本木などと海岸〇丁目では大きな差があります。

そのような建設地の物件は、「ベイエリアも変貌しつつあるものの、昔のままのイメージを持っている人もあるはずだ。最寄り駅の田町を関するのでは平凡だし。国際的なイメージと物件のスケール感を出せないか?最近は外国人も買ってくれるから。それに日本人だって、グローバルなネーミングに好感を持つのでは?」このような検討を重ねて「GLOBAL FRONT TOWER」という名が誕生したのかもしれません。

これは筆者の単なる妄想なのですが、中らずといえども遠からずではないかとも思います。

●誇大広告の禁止に触れる懸念も

少し話は飛躍しますが、マンション・一戸建て販売には様々な法律の網がかかっています。

とりわけ、広告には厳しい規制があるのです。 法律では「宅地建物取引業法」、「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」が、法律ではないものの業界の自主基準である「不動産の表示に関する公正競争規約」もあります。

中心は「誇大広告の禁止」であり、購入者・消費者に誤認を与える恐れがある表現を厳しく取り締まっているのです。

駅から10分の物件、実はバスで10分のことだった、100坪の土地付き一戸建て、敷地の半分は傾斜(崖)地で使えない土地だった、新宿駅まで20分、でも駅までは徒歩20分、このようなウソが昔はたくさんあったようです。

それによる買い手の誤認とトラブルを防止するための法規制が古くから業界を拘束して来たのです。

お気付きの読者も多いと思いますが、マンションのモデルルーム分譲では、そのモデルルームを何か月間使用したかまで表示することを義務付けしています。数か月間モデルルームとして使用したので家具をサービスするのですと明示しなければならないというわけです。

これもご存知のことと思いますが、駅からの距離を何分と表示するかも80メートルを1分として換算することが決められています。しかも四捨五入ではないので、駅から20m、25秒で着く場合も0分は禁止されています。

ビッグターミナルからのアクセスする物件の場合、どこを起点とするかで時間距離は簡単に数分変わってしまいます。そこで、〇〇出口から〇分と表示することとなっています。

どの道を通るかでも時間が変わりますが、これは最短ルートを表示すればいいのです。注意しなければならないのは、小学校です。子供の脚で〇〇分というのはないからです。

小学校まで15分とあったら、子供の脚なら30分かかると思わなければなりません。

また、「地域最安値」や「絶対にお買い得」、「最高の商品」など、根拠のない断定的な表現も禁止されています。

マンション名の話に戻りましょう。最寄り駅がAなのに、遠い方のB駅を冠してもいいものでしょうか? 誤認させるではありませんか?そんな疑問をお持ちになったかもしれません。これは問題ないのです。

不動産公正競争規約では、ネーミングに関して次のようなことが定められています。

①公園、庭園、旧跡などの名称を使用する場合は、それらが当該施設から300メートルの範囲内にある場合に限定する。

② 駅名を使用する場合は、施設の最寄駅の名称だけを使用できる。

物件までの距離がほぼ同じであるときは、どちらの駅名を用いてもいいことになっているのですが、明らかに遠い方の駅名を使ったら違反なのではないかと筆者も心情的には思うのです。

しかし、どうやらこれは許されているようです。

プラウドシティ新川崎のケースは、「当該物件の所在地において、慣例として用いられている地名又は歴史上の地名がある場合は、当該地名を用いることができる」とあるので、鹿島田駅が最寄りでも「新川崎エリア」とひとくくりで見られるエリアにあれば使ってもいいということなのでしょう。

不動産は広告だけでなく商品の説明においても、重要事項として明記された項目が多数あり、正確に説明をしなければいけないことになっています。 それを法律に明文化して取り締まって来たのです。

しかし、今でもしばしば誤解を招く実例があるようです。マンション業者の全てが法令順守の営業をしていると信じますが、販売の前線では法に触れないスレスレの所で誤認を与えそうな説明が日常茶飯事に行われているのも事実なのです。

買い手は自己防衛のための理論武装をすることが求められます。時代は変わりましたが、それだけに学ぶことも多いのが現実と言えましょう。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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