売れ行きが気になる買い手・隠したがる売主

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションの価値評価のために情報収集するとき、一番苦労するのが売れ行きの分かりづらさです。ホームページを見ても、何戸売り出して何戸残っているのか、判明しないことが多いのです。

売主には、故意に売れ行きを隠したがる傾向があります。その隠ぺい策は、買い手を惑わしたり、誤認させることになります。今日は、この問題についてお話しします。

売れ行きが良いはずだった物件。実は・・・

少し前のことですが、「大量に売れ残っていたと知ってショックです。騙されました。何のとか契約を取り消しする方法はないものでしょうか」というご相談を頂いたことがあります。

「契約した時点では70%売れていると聞いたのに、入居して分かったのは30%しか売れていない事実です。これは詐欺なのでは?」というものですが、「売れている=評判が良い=良いマンションだ」との連想で錯覚したのですね。

逆は、「売れていない=人気がない=良い物件ではない」という図式になりますね。

人には、他人の行動を見聞きして動く傾向があります。悪いことでは、みんながやっているから大丈夫という心理です。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という交通標語そのものですね。

一生に何度もあるとは思えない大きな買い物をしようかというとき、品物に欠陥はないかと疑い、その疑いを晴らすのに「他人の行動」を知りたくなるのは、ごく普通の心理です。「こんなに沢山の人が買っているのだから、きっと良い商品なのだろう」と考えてしまうのも無理はないのです。

最終期〇次って何

上記のような買い手心理を売主は利用します。「約1000組の御来場を頂きました」や「累計200戸のご登録申込、有り難うございました。ご好評にお答えして緊急追加発売」、「1期1次、2次連続完売」などの広告が代表的です。

これは、好調な販売が進んでいることをアピールする人気物件の広告コピーです。
このようなコピーにウソはないのでしょう。

しかし、多くの物件は何百戸も一気に売れることはありませんから、契約戸数に関してはベールに包んでいることが多いものです。

売れ行きを隠すのに便利な販売手法があります。それが「分割販売」、別名「期分け販売」という手法です。

売主は売れ残りマンションというレッテルを貼られたくないので、常に「新発売」と言いたいのです。売り出したばかりなら、買い手も売れ残りとは考えないからです。「新発売」は「新鮮さ」にもつながる言葉です。食べ物ではありませんが、旬なものほど良いからです。

そこで、「新発売」を年がら年じゅう言い続けたいとなります。しかし、そこにウソがあってはいけない(法に抵触する)ので、分割販売の第〇期の新発売という手法を用いるのです。

いよいよ完売に近づくと「最終期」という文言が登場します。「最終期」は、もうなくなるよというアピールも併せ持つ魔法の言葉です。

しかし、長く販売している物件の場合、最終期とうたっても一気に完売に至らず残ってしまいます。そうなると、同じ手を再び使う必要が出て来ます。そこで、「最終期第2次」となり、さらに「最終期第3次」となるのです。

いつから販売しているの?と聞かないで

買い手は、売れ行きが気になりますから「いつ発売したのか」を知りたがります。一方、その質問を避けたい売り手は、分割販売による「いつでも新発売作戦」を採用します。

新発売の形を取れば、仮に長期戦を強いられていたとしても「人手不足でしばらく売りに出すことができなかったのですが、今回久々の売り出しです」などとと言い訳ができます。
「この物件は実物を見て頂いてから購入頂く方が良いとの会社判断がありまして、しばらく販売活動を休止しておりました」などの説明も実際にあったものです。

「どこか欠陥のあるマンションと思って欲しくない」心理は、売り手共通のものです。

売れ残っている物件が悪いものとは限らない

売れ残りマンションの中には、大手の優良な物件もよく見られます。評判の良かった物件で、順調だった売れ行きに途中でブレーキがかかったケースがあります。原因は、対抗物件が出てきて顧客が二分されてしまったというものです。

300戸を超えるメガマンションで、階数が10階建てのため工期が短く、あっという間に完成してしまったため、いかにも売れ残り物件のように見えているケースもあります。

同一エリア内がたまたま開発ラッシュ状態になってしまったために、互いに足の引っ張り合いをする結果になって売れ残ったケースもあります。

また、大変優良な企画であったが、建築コストが思いがけなく嵩み、そのせいでライバル物件より高い価格となって苦戦しているというケースもあります。

価格が高ければ、良い商品とは言えないという理屈もあります。しかし、建物のスペック等が良く、場所も悪くないことから一定の需要層に受けたものの、価格の高さが壁となって数が伸び悩むというケースもよくあるのです。

●「売れ行きが良いから良い物件」とは言えないものも

短期間に大量の戸数が完売したという物件でも「みんなが買うから良い」とは限らないケースもあります。
詳細はここで書けませんが、販売・広告戦略の巧みさで顧客の集中動員を図り、少々悪意を込めて言えば「顧客を酔わせて買わせる」評判の物件もありました。

特に悪い物件ではありませんが、ある観点から言えば決して手放しで称賛、あるいはお買い得な良い物件ではないのです。しかし、雰囲気が買い手を酔わせるのです。販売事務所(マンションギャラリー)に設けられた様々な仕掛けが購買意欲を刺激し、火を着けるのです。

しかし、「みんなが買うから良いとは限らない」――これは、頭の片隅に残してほしい知識です。

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