見下ろされる家・見下ろす家

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

年が明けてから、第1種低層住居専用地域内の3~4階建てマンションと接する機会が集中しました。

机上の物件評価レポート作成だけでなく、現物を見に行くことも何回かありました。

一方では、季節要因ですが完成内覧会の立会いが集中し、30階以上の高層階にお邪魔する機会も何回かありました。

低層と超高層、それぞれのマンションを見て改めてマンションの価値を考えさせられたので、今日はタイトルのような視点で書こうと思います。

●見下ろす家

言うまでもなく超高層マンションの上階は、将に摩天楼に住むような気分を味わえる家です。

東京都心で言えば、遠くに富士山を眺められるものもあり、近くではレインボウブリッジや東京タワー、スカイツリーなどを、また湾岸エリアなら北向き住戸で銀座の夜景を視界に納めるものもあります。

30階以上のお宅にお邪魔すると、大空だけがリビングルームの窓に映り、その開放感はある種の感動を与えてくれます。

東京湾やそこにつながる運河も開放感をもたらしてくれます。前面がすぐリバービュー、オーシャンビューというロケーションのマンションでは、将来もその景色の良さが変わらないだろうと思いながら、ほんの数分ではあるもの、うっとりとした気分を味わいます。

20階以上の部屋からなら、眼下にたくさんの14階以下の普通の中高層マンションや一戸建てを見下ろす景色に快感を覚えるという人もあるかもしれません。

ご存知のように、マンションは上階へ行けば行くほど価格が高くなります。その理由は、眺望や日当たりが良いからだとされています。

その通りなのですが、実は優越感が味わえるからでもあるのです。

昔からお屋敷と呼ばれるような豪邸は高台に建っているものです。武家屋敷も多くは高台や山の手と言われる土地に建てられて来ました。防衛上の場合もありますが、偉い人ほど高い所に住みたがるものです。

庶民は羨望と憧憬の念を抱きながら高台の家を見上げて来たのです。

超高層マンションの中にプレミアムタイプの住戸が何室か設けられますが、その部屋は必ず最上階とその下の2~3層にあります。専有面積も桁違いで、天井は高く、設備・インテリアのグレードも別格です。

中には、エレベーターまでが専用という差別化された物件もあります。当然ながら価格も桁違いに高いものです。

数億円は当たり前ですが、単価をはじくと平均が@500万円の物件でプレミアム住戸は@800万円、@1000万円と、これまた別格です。それでも購入する人が現実にあるので、事業主も臆することなくプレミアムタイプを企画し、買い手を待つのです。

その種の買い手は、初めから一般住戸には目を向けません。

価格が高いから良いものに違いないと思う。広い(200㎡は優にあるものも)からいい。専用エレベーターを使って地階から他人の目に触れることなく玄関に辿り着くことができる。窓の外は大空。プライバシーは完全に保護される。

このようなことに価値観を持つ買い手がやって来ます。

●見下ろされる家

翻って、タワーマンションの低層階だけでなく、一般の中高層マンションは、都会のどこにもプライバシーなど完璧に保護された家・マンションは存在しないと言ってよいでしょう。

眺望にしても、ビルとビルの隙間からでも海やレインボウブリッジ、東京タワーなどが見えれば満足な人も多いことでしょう。

そんな中、個人的には強い抵抗を感じるマンションがあります。それは半地下・地下住戸です。

冒頭で述べた「第1種低層住居専用地域内の3~4階建てマンション」によく見かけるタイプです。

抵抗を感じるのは、見下ろされる家の典型だからですが、具体的に言えば、公道に面している場合に限るのですが、通行人の視線が集まるからです。通俗的に言えば、家の中がいつも覗かれてしまうということです。

カーテンで隠せばいいという意見もあるかもしれませんが、家は無防備にリラックスして過ごせるような造りが理想だと思うのですが、いかがでしょうか?

地下住戸にはテラスがあり、その前に専用使用権のある庭が続くという形になっているものです。庭を隔てて道路があり、境界線上には必ず生垣を設けて通行人の視線を遮断しようと工夫されています。

ところが樹木の間には隙間があるので、ついつい先を見ようとしてしまうものです。

庭では夏なら子供がビニールプールで水遊びをしたりしているのでしょうし。大人はゴルフのスイングを練習したりするのかもしれませんが、視線を奥へと移せばリビングルームまで見えてしまわないかと他人事ながら心配になってしまいます。

まあ、立ち止まって中を覗く通行人はいないでしょうが、心理的には抵抗が小さくないはずです。

その分が価格の安さという特徴を持つ住戸として販売されています。逆に見れば、安くしないと売れないのが地下・半地下住戸だということになるのです。

広い庭がありますよ。日当たりも問題ありませんよと売主は主張しますが、それでも価格が弱気なところに本音が透けて見えて来ます。

●なぜ地下住戸をつくってしまうのか?

ところで、なぜ地下住戸をつくるのでしょうか? これは容積率の関係です。

1種低層住居専用地域は、容積率が100%しかないことが多く、本来は一戸建て住宅を建てるべき場所として指定されています。

例えば100㎡の土地に床面積100㎡の住宅を建ててよろしいという、容積率100%制限地域なのです。

同時に建蔽率の制限も厳しく40%か50%なので、100㎡の敷地に40㎡で1階をつくると、2階に40㎡、3階に20㎡と積んで制限の100㎡の家を建てることとなります。

一戸建てならこれでもいいですが、マンションがこれでは採算が取れないのです。

中高層のマンションを建てられる場所は、普通200%の容積があります。1000㎡の土地に2000㎡のマンションを建てることが可能です。2000㎡のマンションを平均66.6㎡で区分したら、30戸のマンションができます。

1種低層住居専用地域の場合は、容積率が100%なので半分の15戸しかできません。ということは、1軒あたりの土地の取得費には2倍の差ができます。

容積率100%の1種低層住居専用地域といえども、200%地域の半値の土地代なら、1軒当たりは同額の原価になりますが、実際はそこまで安く手に入りません。

地価の高い東京では、マンションの建設原価に占める土地代の比重が大きいので、1住戸あたりの土地代が少しでも下がるように工夫をするのが常です。

容積率200%なら、199.9%まで建物面積を伸ばすのです。簡単に言えば、10億円の土地を100戸で除すると1住戸あたり1000万円になりますが、110戸造れば909万円ですみます。

僅か10万円弱といえども軽視できないのです。説明が難しくなるので割愛しますが、最終価格に影響する金額は100万円くらいになる場合が多いのです。

同じ金額で買った土地の容積率が、片方が150%で他方が200%としたら、分譲価格は大きな差となります。そこで何とか建物面積を増やそうとするのです。それが地下住戸の正体です。

実は、一定面積まで地下住戸は容積率のカウントから外してよいという特別な規定があるからです。

地下住戸は、防水や湿気対策など工事費が地上建物より高くつくのですが、それでも容積率を超える住戸をつくるメリットの方が上回るのです。

●地下住戸の選択は慎重でありたい

地下住戸は見下ろされる家です。プライバシーの問題のある場合が多いのです。顧客心理的には、「豪雨のとき大丈夫か」「湿気はないか」などのネガティブな要素もあるため、あまり高い人気を集めるものではないのです。

何年か経って売りたいとき、思ったほど高値では売れないと予想した方がいいと言えます。

もし、地下住戸を前向きに検討するときは、今日ここに述べた点を念頭に置いて慎重に臨みたいものです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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