マンション選びの法則 12か条
- 2015.05.15
- マンションの資産価値
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
記事は、過去に様々な角度で書いて来た、マンションの資産価値について一度整理しておこうと思い立ってまとめたものです。
読者諸氏のマンション選びに役立てば幸甚です。
1)「高い物は高く、安い物はより安く」の法則
「安く買えば、それだけお得になる」この一見正しそうな論理は反対の結果になることがあるのです。
言うまでもなく、都心のマンションは郊外マンションより高いものです。
東京郊外の各都市にも、それぞれに働く場所があり、そこへ通勤する人もあるわけですが、首都圏住民の大多数は東京都心の職場に通勤しています。毎朝の通勤ラッシュがそれを象徴しています。
都心の職場に通う人は、できることなら自転車で通える程度か、電車でも二駅か三駅程度の近くに住まいを構えたいと思っています。
しかし、そう考える人が多いために都心の住宅価格(売買・賃貸)はうなぎ上りに高くなってしまい、安い住宅を求めて郊外へ移ることとなりました。正確には押し出されたのです。高度経済成長期、バブル経済期のことです。
バブル崩壊後、都心への回帰が幾分進みましたが、都心のマンションは郊外に比べて相変わらずの高値で、その傾向に大きな変化はありません。
都心の土地は高く、そこに建てられるマンションの価格は安くなりませんし、マンションに適した土地の売り物も多くありません。
少ない売地の取得競争は常に激しく、それが土地の価格を吊り上げる結果となるのです。
開発できる新築マンションが少なければ、中古物件にも人気が集まります。
こうして都心のマンションは、新築も高く、中古も旺盛な需要に支えられて価格は強含みとなるのです。つまり、都心のマンションは中古になっても値下がりしにくいことになります。
これに対し、郊外マンションは土地需要が相対的に少ないので、安い価格で供給ができます。中古マンションも同様で、都心ほどの需要がないので、価格は常に弱含みとなります。
都心の新築マンションの価格を100とし、郊外の新築マンションを70とします。これが中古になったとき、都心は80くらいの価格を維持しますが、郊外の中古は40くらいに下がってしまうのです。
言い換えると、「高い物件は高いまま、安い物件はより安くなる」。これが法則のひとつです。
2)バス便物件が値上がりすることはない
「高い物件は高く、安い物件はより安く」という法則は、そのまま駅近マンションとバス便マンションとの差にも当てはまります。
バス便マンションは、多くの場合で環境の良さと価格の安さを「売り」に販売されます。
バス利用の不便さは望むところではないはずですが、通勤先が近辺にあるような人を中心に、子供が喘息のために空気の良い場所に住みたいからという人や、家族数が比較的多いので広い家が欲しいという人、かつ予算が少ない需要を取り込んで販売されます。
しかし、通勤を犠牲にしてバス便を選択する人の絶対数は少ないのです。
結局、マンション販売は長期化します。バス便でも「価格訴求」や「商品企画の差」で販売が難しくないなら、売り出す例は少なくないはずです。
ところが多くのデベロッパーは、環境がちょっとよいくらいではバス便の弱点を克服できないこと、価格も徒歩物件の価格に較べて「格安・激安」でなければ厳しいという現実をよく知っています。
マンションの原価を構成する土地代と建築費の割合において、バス便マンションは土地代の比重が低いので、土地をより安く取得できたとしてもマンション価格が「激安」とはならないのです。
格安・激安にするには、建物品質も落とさざるを得ません。しかし、品質を落とすことには限界があります。
結局、価格は落としたくても十分なレベル(格安・激安)にはなりません。言い換えると、徒歩物件との価値の差に比例する価格までは下がらないのです。
バス便マンションは需要が少ないので、中古になっても同様に買い手を見つけるのに苦労することになります。このため価格は下方圧力を受けることになります。
バス便マンションは値上がりしないのです。
3)利便性と環境の良さは両立しにくいものだ
数万坪の大規模な再開発が駅前で行われると、道が綺麗になり、公園が整備され、街並みががらりと変わります。マンションとともに商業施設が誘致され、便利で環境も良い理想的な住宅街が完成します。
しかし、このような例は極めて稀で、駅に近くて環境も整備される大規模再開発のマンションは、多くの場合が工場跡地などです。
このケースは、「環境創造型マンション」として人気を集めますが、工場は都心にはなく、多くが幹線鉄道から枝分かれした鉄道の駅前か、工場地帯だったエリアの駅前になるので、利便性は良いとは言えません。
駅のそばで環境が良いマンションは、都心に近いエリアには存在しないのです。あるとすれば、旧・住宅公団の分譲マンションや現UR賃貸住宅団地の建て替え例が僅かに見られるくらいです。
結局、駅に近いマンションは、喧騒の中にあるか、既存のビルに囲まれたような位置になるので、良い環境条件を併せ持つことはないと思った方が正解というわけです。
4)再開発の人気マンションの価格は10年後のもの
再開発で誕生したマンションの中には、分譲価格が現状とマッチしない高値のものが少なくありません。再開発のグランドデザインがほぼ固まっているケースは、完成後の価格を織り込んだレベルになっているのです。
開発業者は、「再開発のグランドデザインはとても魅力がある。これなら高値でも売れる」そう踏んで、用地争奪戦で高い札を入れて土地を取得するからです。
再開発で街の魅力は倍加し、従って値上がりすると期待して多くの購入者が集まるのですが、価格は言わば10年後の価格が設定されているので、中古価格は期待ほどにはならないのです。
勿論、バス物件のように値下がりするということではなく、高値安定とでも言えばよいでしょうか、購入価格から下がる確率は低いのです。
何故なら、魅力的なタウンが完成し、そこには新築マンションはもうなく、購入した人たちも惜しんで売り出す人が少ないため、中古人気が高いからです。
5)枝線より幹線・支線より本線
幹線鉄道とは主要鉄道のことで、枝線鉄道とは主要鉄道から枝分かれしている鉄道のことと定義しておきます。
枝線には、ふたつの種類があります。主要鉄道の駅で乗り換える必要があるものと、二股に分かれる駅で乗り換えなしの直通電車も運行するものがあります。
一方、幹線鉄道は東京都心とダイレクトにつながる鉄道ということです。
駅近マンションは、高くても人気があるものです。首都圏住民は利便性を優先する多忙な人が多いからです。
しかし、幹線鉄道の駅前は既に建物が密集していてマンションが新しくできそうな空地はなかなかないものです。待っても探しても、なかなか良い物件に当りません。
そこで駅から徒歩15分も歩く物件を選択したりします。それさえも幹線鉄道では高くて買えない、または面積の妥協を強いられるものです。
その数は少なく、幹線・本線鉄道の駅のマンションの人気には敵いません。
人気の有無は、当然ながら価格に影響します。中古になったとき、その差は歴然となるのです。
6)「駅から近い」は徒歩5分までのこと
駅に近いとか遠いとかいうときの基準には個人差があります。
駅から徒歩20分を要する一戸建てなどに住んでいると、10分の立地を「とても近い」と感じることでしょうし、反対に、駅のそばの賃貸マンションに住んでいるような人は、5分のマンションを見ても何も感じないか、「少し遠い」と感じるかもしれません。
しかし、新築マンションの売れ行きを見ていると、「10分は人気がなく、5分以内は人気を博する」という傾向があります。分岐点は7分と言われています。大半の人が利便性を望んでいるということの証左です。
中古マンションとして売り出すときも同様で、駅に近いという印象は5分前後までと認識しなければなりません。
人気の有無は、当然ながら価格に影響します。 マンション価格を決する要素の一番は駅からの距離なのです。
7)マンションの価値は立地で決まる
マンションの価値を大きく左右するのは立地条件です。立地さえ良ければ建物はどんなものでも構わないというほど単純ではないものの、マンションの価値は立地がすべてと言ってよいほど比重が大きいのです。
立地が良いとは、駅に近いこと、その駅が都心や都心に近い駅であること、その駅から都心へのアクセスが良いことなどを意味しますが、先に述べたように「駅から近いとは徒歩5分以内」ですし、「鉄道は幹線・本線の駅」が条件になるのです。
他には、複数の機関が調査して公表している「住んでみたい街ランキング」の上位に入る街・駅であることや、有名な大規模公園に隣接する、大規模ショッピングセンターなどが1~2分の距離にある、一級河川や運河、海などの眺望が優れているといったことも立地条件が良いマンションと言えるでしょう。
無論、これらも駅から遠くないという条件と併せてのことです。
8)中古マンションは新築より安いとは限らない
一般に中古マンションは新築より安いと言われます。事実そうです。しかし、中には築後30年を経ても新築と変わらないか、むしろ高い値が付くマンションが存在します。
いわゆるヴィンテージマンションと呼ばれるものがそうですが、このような特別なものでなくとも、新築を上回る高値の取引が行われている中古マンションがあるのです。
新築は高いから中古に狙いをつけて探す人もいますが、中古の中で「より条件」の良い物件を求めて行くと、新築と大差がないことに気付くはずです。
優良な中古は、新築並みの結構な値段と思わなくてはなりません。マンションの価値を左右する比重が高いのは立地だからです。
9)業者が売主のリノベーション物件は割高
中古マンションは、築40年近いものになると、レトロな印象の中に味のある建物もないことはないですが、多くは見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。
無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安があるからです。
そこで販売促進のために、専有部分だけでも新品同様にしようという策が自然に登場して来ます。つまり「リフォーム」です。
所有者が居住したままでリフォームするのは難しいですが、移転してからなら思い切った工事が可能になります。
思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」です。
リノベーションは、玄関ドアや窓のサッシなどを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションを誕生させます。
その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに威力を発揮します。
「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまった人も少なくないのです。
しかし、築40年になろうかという古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。
●旧耐震基準ゆえに耐震性に不安
築30年以上、正確には1981年以前に竣工した築34年以上のマンションは、「旧・耐震基準」のマンションです。
建築基準法の規定の中にある「耐震基準」は過去何回か改訂されて来ましたが、大きな変更があったのは1981年です。すなわち、1981年の6月以降の建築確認(許可)は新耐震基準で行われるようになったのです。
阪神大震災のとき、昭和40年代(1965年以降)に建てられた古いビル・マンションが倒壊した例が多くあったのは事実ですが、1981年以前のマンションがすべて倒壊したわけでもないのです。
しかし、今後来る巨大地震に耐えられるだけの耐震性があるかどうかを素人が見分けることは不可能です。1981年以前の古いマンションを検討する買い手から見ると、耐震性に関しては闇の中で、敬遠せざるを得ないのです。
そこで、「リノベーション」の登場となったのです。
●安く仕入れて高く売るリノベーション業者の物件は割高
リノベーション物件は例外なく割高と言って過言ではありません。
表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性)は大いに疑問の老朽化マンションと言うべきリノベーション物件は、価格と価値が一致しないのです。
誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンション1棟をリノベーションしたものは別格です。 1棟リノベーションは、耐震補強も実施していることが多いからです。
リノベーション物件は、ほぼ例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手仲介業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者で、本業はリフォーム事業だったりします。
築40年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人売主は業者に買い取ってもらう道を選択します。買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えます。
売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せる手法で販売に当たります。
ご承知のようにマンションの仲介をしても、手数料が最大で6%余しか受け取ることができません。実際は3%になることが多いのです。
これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%前後を得られます。
●高くても値打ちがあるとしたら
耐震性は別として、新築マンションと見まがうようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。
リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。
それが不要というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、それなりの価値はあるのかもしれません。
10)直貼り床はローコストマンションの象徴
マンションが日本で本格的に普及する前、黎明期の昭和30年代はコンクリート直にカーペットを張り付けた構造だったようです。天井も二重になっていない例が結構多かったのです。直天(じかてん)と呼ぶ形が普通でした。
カーペット貼りは、軽衝撃音は響きにくい利点がありますが、ドスンといった重衝撃音には無防備です。
また、給水管やガス管はコンクリートに埋め込む形だったようです。電気配線も天井のコンクリート内部に埋め込んであったのです。当時は、老朽化したときの配管の交換などは考慮していなかったのです。
このようなマンション供給を続けているうち、騒音苦情に分譲主や施工会社が直面する機会が増えて行きました。
配管のルートも、耐久性を考慮して埋め込みは良くないと気付くようになっていきました。
そして誕生したのが二重床・二重天井という構造のマンションです。
水道管やガス管はコンクリートに埋め込まず、「床ころがし」という方法を採るようになりました。電線も天井裏を通す形です。
床の二重構造は、最初は細い木の角材(根太=ねだ)を何本もコンクリートの上に置き、その上に板を張って、更にカーペットを張るという方式でした。
コンクリート直ではないので、床の上で飛び跳ねても騒音は小さいはずだと考えられました。
しかし、実際は空中に浮いているわけではないので、音は伝播します。完璧に音を消すことは困難ですが、遮音性の高い材料の開発や施工技術の研究を重ねながら、何種類もの方法が試されて今日に至っています。
●直床(じかゆか)のどこが問題か
直貼り床のどこがいけないのでしょうか? 二重床にしないと階下に生活音を響かせるのでしょうか? いいえ、必ずそうなるとも言えないのです。
遮音性は、コンクリートの厚さや梁から梁までの長方形面積、施工方法、施工精度など様々な要素が絡み合って差ができるものです。
単純にはコンクリート直より、別の素材と空気層をサンドイッチした方が良いに決まっていますが、実際は違っています。二重床の方が直床より遮音性は高いことを証明するデータはありません。
直床構造の最大の問題は、将来のリフォームが制約を受けやすいということです。大掛かりな間仕切り変更を計画したときに初めて気づくという問題点なのです。
直床構造のマンションは、水周り部分のスラブを下げて空間を設け、そこに横引き配管を転がしています。 つまり、水回りを移動させる間仕切り変更はほぼ不可能なのです。
比較的築浅の段階で売却するときは問題ないですが、築20年くらいになって来ると直貼りの問題がネックとなって買い手が中々つかないという事態に直面するかもしれません。
最近、新築より安い中古を買って改造し、自分好みのマンションにしたい夢を持っている人が増えています。いわゆるリノベーションを前提にする人ですが、その種の買い手が、物件を気に入り、価格も予算以内にあるということで商談が進んだとします。
買い手候補は、間取り図を見ながら改造案を巡らせます。その過程で、管理人室に置いてある設計図書(竣工図)を見て、天井の低さや配管ルートの取りづらさなどに気付き、改造プランの実現が困難であると知るかもしれません。
その結果、購入を断念する、売主から見れば客を逃すということになります。結局、間仕切りまではしなくてよいという買い手にしか売ることはできない可能性も高い。そう覚悟しなければならないかもしれないのです。
また、直張りのフローリング材は、遮音性を高めるためにラバーのようなものが張り付けられたタイプが用いられるため、歩行すると柔らかくて沈み込む感じがあり、何となく頼りない印象を受けます。
その点、二重床は遮音性を高めるためのコストが増えますが、沈み込むようなフローリング材を採用せずに済みます。床材の選択の幅も広がるメリットが多いのです。
●問題は建物品質にある
背広にはオーダーメード、イージーオーダー、レディメードの3種類がありますが、2着で3万円のレディメードがある一方、30万円のオーダーメードがあるのと同じで、マンションも手をかければかけるほど、また個性を競えば競うほどコストは上がり、分譲価格も高くなって行くのです。
ローコストマンションは、規格型の設計にして特別な材料も部品も極力使わないこと、作業工程を減らして時間と手間をかけずに労務費を抑えることによってローコストとしていることが特徴です。
その結果出来上がる建物は、高級マンションからは遠いものです。目の肥えた人には、安物マンションに見えてしまうかもしれません。
あるマンションの広告でこんな文言(コピー)を見つけました。
「洋服のように簡単に替えのきかないのが住まいであろう。貴方の人生を纏う(まとう)住まいだからこそ、選び抜かれた生地で、仕立てにこだわり、着心地がいい、そんな住まいであって欲しい」
ローコストマンションは、この対極にあるマンションと言えます。ローコストマンションの象徴、それが直貼り工法です。
11)ブランドマンションには安心料が含まれている
欠陥住宅・欠陥マンション騒ぎが何年おきかに発生します。 その報道を見聞きした人は、自分だけはそのような住宅・マンションを掴まないようにしなければとの思いを強く抱きます。
しかし、素人にとって欠陥かどうかの見極めは簡単なことではありません。 実は専門家でも蓋をされてしまうと見抜けないものです。
何年か前に鉄筋の本数を減らした「耐震偽装事件」が起こりましたが、コンクリートの中の鉄筋を透視することは誰にもできません。
そこで、性善説(せいぜんせつ。人間の本性は善であるとの孟子の説)に従い、買い手は作り手の良心を信じて購入することになります。
雨漏りするようなマンション、地震ですぐに倒壊するようなマンションを売っているのではないと考えるわけです。
しかしながら、悪意はなくてもスキル不足や管理ミスなどで粗悪なマンションができてしまうことが万にひとつできてしまうのも事実です。
そこで買い手は「より安全な製品」を選択するための物差しとして、「大手マンション業者」や「大手ゼネコン」などの看板を用いるのです。
ブランドマンションは高いが、しばしば 「安心料だと割り切って買いました」という声を聞きます。
大手なら、しっかりと品質管理、すなわち施工過程をチェックし、欠陥マンションの発生をゼロにしてくれるだろうと、漠然としたイメージではあるものの、期待と信頼感によって商品を選択しているというわけです。
大手企業は中小にない間接部門を抱えています。一人何役もこなす中小企業と異なり、重要な業務は専門部門として独立させ、スペシャリスト人材を育成しています。価格が高いのも道理です。
品質管理に関しては、検査の専門員と独自の検査システムも構築しています。
専門部隊は徹底的な仕事をします。施工管理に当たっては検査項目を何十項目も設けており、請け負っているゼネコンの担当者が音を上げるほど厳しくチェックするといいます。
マンションの世界で特に評価が高いのは、デベロッパーでは三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスなどの大手、建設会社ではスーパーゼネコンと称される、鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店。そして、設計事務所では日建設計、三菱地所設計などと言われます。
品質管理は企業のブランド価値を守り、ブランドは品質の確かさを世に示すものと言えます。
そして、品質の確かさは住まい手の安心感につながるものです。
●それでも欠陥マンションが誕生したら?
マンション業者の多くは、基本的にゼネコンに工事を一任していますが、万一の施工ミスを防止するため、設計事務所に「監理(監督と管理)業務」を依頼し、自社の企画・建設部門の担当者とともに定期的な現場訪問を行うのが普通です。
これは昔からのことで、特に目新しい方法ではありませんが、最近10年で変わって来たのは、政府指定の第三者機関がチェックに参加する方式です。
これは、2000年に施行された法律「住宅の品質確保に関する法律」に基づく「住宅性能表示制度」を利用するデベロッパーが増えて、建設中の現場を定期的に検査するようになったからです。
マンションの品質管理は、このようにして二重三重にチェックされていますが、人間のやることです。手抜かりは万に1回にせよ起きてしまうものです。
ときどき施工ミスや欠陥マンションが明るみになることがあります。それらの事件に触れて思うのは、信用保持のために企業が多額の経済的負担を強いられること、それが可能なのは大手に限られるだろうという点です。
構造的な部分の瑕疵は法的に担保されています。中小業者でも「保険加入」が義務付けられているので一定程度は補償されます。ただ、竣工から10年を超えてしまったら、法的には業者に補償責任はなくなるのです。
ある日突然マンションが倒壊するなどということは万に一つもないと信じたいですが、巨大地震が来たときなどに、想定外のことが起こらないとは誰も断言できません。
このようなことを想像するとき、ブランドマンションに傾く買い手が多いのは当然のこととも思うのです。
分譲マンションの歴史は、まだ50年あるかなしかです。この長いとは言えない時間の中で経験を積んだデベロッパーの中には高い授業料を払ったこともあるのです。それが今日の企業活動につながり、今日の地位とブランド価値を高めて来たとも言えます。
一定期間の集中広告キャンペーンを展開するなどして一気に知名度とブランドイメージを高めるという企業戦略もありますが、本来は長い経験と多くの実績がブランド価値を高めて行くものなのでしょう。「ローマは一日にして成らず」です。
マンションの価値を検証するとき、施工がどこかも大事な要素のひとつです。素人では見抜けない欠陥が、大手ゼネコンの施工マンションなら多分ないだろうという安心感。理由はそこにあるのです。
大手マンション業者、大手ゼネコンのブランド価値は、安心という付加価値を生んでマンションの資産価値の向上に直結しています。付け加えると、売却時に次の買い手を安心させる要素として大きな意味を持つことになるのです。
12)大規模マンションは小規模マンションに優る
単棟のタワー型マンションにせよ、中高層の多棟型マンションにせよ、大規模マンションはスケールメリットがもたらす付加価値が豊富です。
共用施設が充実しており、その恩恵にあずかれるからです。
タワー型なら、絶景を楽しむことができる展望ラウンジ、両親を呼んで歓待することが可能なゲストルームなどが定番の施設です。
広大な敷地に複数の棟を配置した大規模マンションでは、敷地内公園や散策路・遊歩道、人工の親水公園などが併設されています。
子育て世代が多いエリアでは、雨の日も子供が走り回れるキッズルームや保育所を併設したものも見られます。
これらの施設は、小規模マンションでは造りえないものです。
また、規模に関係なく設けられる共用部分においても、大規模マンションは小規模マンションを圧倒します。
エントランスホールやロビーの大きさが違うのです。広いだけでも立派に見えるものですが、中には2階に設けたロビーへエスカレーターで移動する形式の大規模タワーマンションも少なくありません。
管理サービスの面では、コンシェルジュを置き、入居者の様々な利便に答える体制を整えているのも大型ならではです。
管理費や修繕積立金は割安なものが多いとされますが、管理費や修繕費が高くつくケースもあります。スケールメリットを超える過剰な施設、過剰なサービスが原因なのかもしれません。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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