みんなで喜べる値上がり・喜べない値上がり

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

持ち家の価値が上がることは喜ばしいことのはずですが、そうとも言えないケースがあるという話をしたいと思います。

●みんなで喜べそうな2011年・2012年購入者

最近の激しいマンションの値上がりに、筆者は暗然たる思いがして仕方ないのですが、新築マンションの価格に異常を感じ始めたのは2012年の後半からでした。

確信を持ったのは2013年に入ってからですが、2014年に入って間もなく、2013年1年間の統計数字を見たとき、その上昇率に唖然としたものです。前年比で8%も値上がりしたからです。

首都圏全体で見ると、坪単価(専有面積3.3㎡当たり価格)が2011年、2012年は@214万円、@213万円と安定していたのですが、2013年には@230万円と8%も跳ね上がったのです。

東京都区部は、2011年@268万円、2012年@264万円から2013年は@285万円に。前年比+8%。

他のエリア(東京市部、神奈川県、埼玉県、千葉県)は前年と大差ありません。つまり、首都圏の大幅な値上がりは東京23区の値上がりだったということです。

23区の供給シェアが大きいこと、単価も最も高いエリアであることから、影響が如実に表れた格好です。

ところが、2014年に入ると23区以外のエリアにも値上がりの波が来たのです。データを見ましょう。

東京市部の2013年は@191万円でしたが、2014年は@214万円に12%の急騰。同様に神奈川県が@189万円から@201万円に6%アップ、埼玉県が@169万円から@180万円に6.5%、千葉県も@157万円から@165万円に5%アップとなりました。

地域差がありますが、値上がり前の2011年~2013年にマンション購入を済ませた人は幸運でした。

この3年間で新築マンションは約13万5000戸が売買契約されたので、それだけの人・世帯が幸運だったと言えます。

●高値買いで、みんなが損する2015年?

2014年には東京23区も外周部も高値マンションばかりになってしまいました。そして2015年、新築マンションの価格は一段と値上がり色を強めています。

2009年~2013年の5年間の平均価格を相場と定義している筆者をあざ笑うかのように2014年、2015年の新築マンション相場は一段も二段も跳ね上がり、「新相場」「新・新相場」が形成されています。

同一エリアでA物件が@250万円だから、駅に近いB物件は@270万円でもおかしくないといった論理で売り出し価格が決められ、良心的と言えるような物件は見つけられなくなりつつあります。

ここで、少し脱線。マンション業界に与するわけではないのですが、上記の比較論によって売り手に大きな利益がもたらされているわけではないことを補足しておきます。

土地代と建築費の2大原価と販促費、利益を積み上げて得られる価格が従前の相場を超えてしまうので、販売が可能かどうかの拠り所として他社事例を持ち出しているに過ぎないのです。

言うまでもなく、土地を取得するときは販売価格を想定します。用地費と予想建築費をベースに採算が取れるかどうかを検討するのです。

ところが、土地取得から建築許可を取って着工に至るまでにはタイムラグがあります。大規模なもので2年から3年、小規模な物件でも半年から1年を要します。その間に市況が変化し、計画を見直す必要が生じることもしばしばです。

で詳しくは述べませんが、買った土地が10年も未開発のまま計画は凍結などということすらあるのです。

建築費が想定以上に高くなってしまい、ギリギリの利益で価格を設定したものの、「立地の割に高い」とか「設備・仕様が安っぽい」などと言われ、つまり他社比較論で「割高」と目されて売れ残ってしまい、処分策に値下げを強いられることも少なくありません。

デベロッパーにしてみると、マンション開発はリスクの高いビジネスということになります。

想定外の事態が生じて計画価格から大幅に下げて売り出すことになったなどという話は聞いたことがありません。そのようなことは万に一つもなく、良くて価格は計画通りか、計画を超える高値にならざるを得ないのが現実です。

最近3~4年は、想定していた以上に厳しい原価のアップ、すなわち建築費の高騰という現実に直面して難儀しているデベロッパーが多いようです。結果的にA物件が〇〇万円なら当B物件も〇〇万円で何とか行けるだろうと「他社比」理論を持ち出し、高値を承知で市場に登場しているというわけです。

かくして、2,015年のマンション購入者は誰もが「高値」を掴まされかかっていると言わざるを得ません。

こんなときに買ったら、何年か先に買い替えを目論んでも思惑が大きく外れて落胆することになるのでは? そんな心配が膨らみつつあるのです。

●高値で売り抜けることはできるか?

筆者が提供している「将来価格の予測」サービスでは様々な物件を扱っていますが、最近のレポートは「購入に妙味がない」という感想を添える例が増えています。

平たく言いましょう。「これなら賃貸マンションに住んでいた方がマシだった」という結論につながりそうな値下がり事例が増えつつあるのです。

中古マンションは、新築価格の動向と深く関連しています。 新築が値上がりする局面では中古も少し遅れて値が上がるもので、今はそのような時ですが、その逆も起こるわけです。

新築マンションの価格が、このまま上がり続けることはなく、どこかでピークに達し、値下がり局面に移行するときが来ます。

最近では2007年から2010年にかけて「値上がり」時期でしたが、その後2010年~2012年が「値下がり」時期でした。

売却が不運にも値下がり時期に遭遇してしまうと、思わぬ安値で手放す破目になる可能性があるのです。

値下がり時期に手放すとしても、その間の新築相場の上昇率が大きかったことにより、購入価格に〇〇〇万円もONして売ることができた人がある一方、高値掴みをしていたために売却額は購入額から〇〇〇万円も下がってしまったという人もあるわけです。

それで気付くのは、値下がり前に高く売り抜けるという方法です。新築の値上がりが続いている時期、もしくは高値安定の時期に思い切って売ってしまうということです。

しかし、自分で居住しているマンションを、このような投資家目線で処分を考えることは現実問題として可能でしょうか? 単身者ならいざ知らず、家族それぞれの生活を考えると、市況を考えて売却時期を探るというのはいかにも本末転倒のような気がします。

●高値で売れても次に買う物は一段と高いのである

よしんば売却が可能な環境にあったとしても、住み替え先はどうなるでしょう。我が家が高値で売れる市況にあるときは、買い替え先も同様に高値ではないのか。このような疑問が湧いてきます。

一般的に買い替えるときはランクアップを望みます。シニア層は子供の独立に伴い、ダウンサイジングということはあっても、立地条件を都心の便利な場所へと望めば、これもランクアップ買い替えと言えましょう。

さて、我が家が高値で売れて喜べたとしても、ランクアップの新居は、さらに高値であるはずです。ということは、高値で売れて頭金になる現金を多額に得ても、そのうえに貯金を崩して加えるか、住宅ローンを多額に組む必要が出て来るに違いありません。

家を買った効果で仕事も順調、職位が上がって所得も増え、それが可能という人も多いかもしれませんし、それでランクアップ買い替えが可能なら、それはそれで結構なことと思いますが、年齢を重ねているので、ローンが増えてしまうことには抵抗を感じる人もあることでしょう。

そのような場合は、まだ値上がりが及んでいないエリア、もしくは先に値下がりが始まったエリアの物件、または元々価格が安いエリアを選ぶという検討が必要になるのです。はたまた、しばらくの間は賃貸マンションに住んで機会を窺うという選択肢もないわけではありません。

かつて、筆者も東京の自宅が高く売れそうなときに、まだ値上がりがさほどでなく、かつ元々東京ほど高くない横浜への移住を考えたときがありました。

しかし、それは家族の反対意見(ほとんど子供の一言)により瞬間で挫折しました。結局、住み替え・買い替えは市況とは別のところで考えるべきなのだと思い知らされたのです。

自宅マンションを「底値で買い、天井で売る」などという計画は成立しにくいことなのでしょう。

●「我が家だけが高く売れる」そんな価値ある買い物を目指すのが王道

投資家のような考えが成り立たないのが自宅マンションという資産なのだとしたら、いつどのような時でも市況の影響を受けにくい買い物をしておくのが大事ということになります。

つまり、「住まいは手放すときのことも考えて」資産価値の視点を忘れないことが必須だということです。具体的には、マンションの価値を大きく左右するのは立地条件なので、建物価値もさることながら、何より優先するのは立地条件だと覚えておきましょう。

「立地条件の良し悪し」については、近いうちに整理して詳しくお話ししようと思います。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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