価格が上がっても買えてしまう人が多数。それは何故?

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

巷間、話題にのぼる高額マンション、その立地条件や広さ、グレードの高さに溜め息をつきながら、一体そんな高いマンションを誰が買うのだろうと思ったことはありませんか?

筆者にご相談下さる方の中に、「3年ほど前から、現住所の近くで気に入るマンションが販売されないものかと、新築・中古を問わず広告などに注意を払って来たが、価格が随分上がったように感じます。我が家の予算では、もはや買えるものはない。そんな印象さえあるのです。こんなふうに価格がどんどん上がってしまったら、マンションを買える人はいなくなってしまうのでは?」などという疑問を持たれる方もあります。

価格が上がったら、予算を増やすか、希望エリアを諦めて価格の安いエリアに求めていくほかありません。

ところが、近年マンションの立地は都心に回帰していると言われます。都心部は安くなっているのでしょうか? そんなことはないはずですね。

価格上昇と都心回帰は一見、矛盾する現象です。もしかすると、価格が上がっても買い手の購買力がそれ以上に高まっているということなのでは?

今日は価格上昇と購買力の関係についてお話ししようと思います。

●ますます上がる新築マンションの価格

2015年7月25日の日経新聞で「東京の工事費の上昇が止まらない」という記事がありました。 原因は工事量が多く、人手が足りないからです。 ゼネコンにとって、建設労働者という専門職の確保は死活問題です。

そこで、人材囲い込みのためには日当を上げるしかないと各社とも判断している模様で、その上乗せ手当が一段と増額になる見込みであることを記事は伝えています。

建築費が上がれば、マンションの分譲価格も上がることは自明の理です。

建築費に関しては下がる材料は今のところ見当たりません。まだまだ震災復興需要は続きますし、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資が増えたことに加え、これからは東京オリンピック関連需要が出て来るからです。

オリンピックは、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

また、マンション業界が最も興味を持っているのが、中央区晴海に予定されている選手村の住宅建設です。これは、オリンピック終了後に民間に払い下げられます。

取得する民間は、これを一般に分譲または賃貸することになりますが、選手村は全部で数千戸と言われる大規模なものだけに、周辺整備費も含めると工事費は数千億円にもなると見込まれているからです。

建設需要は、オリンピック前年、プレ五輪開催時まで続くことでしょう。あと4年、東日本の復興関連もピークを過ぎているはずですから、建設業界には一服感が出ていると予想されます。

仕事が減れば、ゼネコンは儲からないと言われるマンション工事も請けざるを得ないでしょうが、そうなる時期は5年先からと見るほかないようです。

マンションの原価を構成する土地代の方はどうなるでしょうか?

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。

ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーは挙って入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして取得しようと前向きになるのです。今はそんなときですが、マンション販売が低調になると在庫が増えてしまうので、仕入れ(土地取得)にブレーキがかかって来ます。

そうなれば、地価も下がる可能性が出てきます。しかし、土地はマンション業者だけが買い求めるわけではないのです。住宅街の土地なら建売業者が、倉庫や資材置き場の跡地なら物流センターなどとして、手を上げる買い手があるので、地価が急落するとは考えられないものです。

しかし、景況が悪化し、企業が設備投資を手控えるようになると地価も下落するはずです。景気は今後どうなるでしょうか? いろいろな意見があります。悲観論もある一方で楽観論もあります。

株式市場に激震が走った8月下旬も、9月9日には安堵の日(1300円超の大幅な上昇)を迎えることとなりました。しかし、今日は再び400円の値下がり。乱高下を繰り返しています。

不安要素もあるのは確かですが、極端な不況に陥ることはないはずです。

こうした背景を睨みながら考えてみたとき、ごく簡単に言えば、マンション販売は極端な落ち込みなく当分は持続して行きそうに感じます。

ちなみに、不動産経済研究所が毎月発表する新築マンションの月間契約率(当該月に売り出した新築マンションが月末までに売れた%)の推移を過去1年遡って見ると、2014年1年間は10月・12月を除き70%を超え、年明けの2015年1月以降も、1月74.9%。2月74.5%。3月79.6%。4月75.5%。5月71.1%。6月78.7%。7月83.7%と、好不調の分岐点と言われる70%超を維持しています。

●高値のマンションに手が届くわけは?

販売が好調を維持していますが、2013年以降、マンション価格は急上昇して来たのです。2013年は前年比で8%、2014年も前年比で6%上昇、2015年半期も前年同期比6%上昇となっています。

ということは、2102年比で20%も価格が上昇したということになるのです。

価格が上昇した分を買い手はどうやって埋めたのでしょうか? 

細かなデータは割愛しますが、理由は次のようなものです。

1)住宅ローン金利の一段の低下で購買力がアップした
2)株価の上昇による資産効果(親が子を援助する金額が増えた)
3)富裕層が投資目的で購入した(株価の上昇と相続税の増税対策も背景にある)
4)外国人投資家が東京のマンションに注目し多数購入した(国際的な比較では東京のマンションは割安との背景がある)
5)景気回復によって一部の大企業で定期昇給とベースアップが行なわれ購買力が上昇した
6)景気回復とともに成長企業で中間管理職が増え、同時に年収が増加した
7)女性が働きやすい環境を整える企業が増え、世帯所得が下がりにくくなった

この7つの要因のうち、この2~3年だけの変化とは言えないものもありますが、敢えて挙げたのは、それが顕在化した(買い手となって販売現場に登場して来た)からです。

この分析をご覧になって、どう感じられたでしょうか? これはごく一部の恵まれた特殊な人たちのことであって、マンション価格が上昇しても買えるのは何故かの説明になっていないのでは? そんな疑問を持った読者もあるのではないでしょうか?

そうかもしれません。しかし、そもそもマンションを購入する人は、人口もしくは世帯数に対する比率で言えば、ごく限られた人たちなのです。

次で、その説明をしましょう。

●マンション売買は世帯数の僅か0.5%の市場に過ぎない

首都圏では、新築マンションが毎年50,000戸前後発売され、ほぼ50,000戸が売れています。この50,000戸という数値はどのようなレベルなのでしょうか? 首都圏3000万人の人口を考えると実は驚くべき数字ではありません。それを正確に見て行きましょう。

首都圏の世帯数は、1423万世帯(2005年国勢調査)となっています。
(内訳)東京都・・・575万世帯
神奈川県・・355万世帯
埼玉県・・・263万世帯
千葉県・・・230万世帯

新築マンションの販売戸数(2011年~2013年の平均)は次の通りです。販売戸数=需要は、世帯数に対して何%に相当するかを計算したものが( )内の世帯数比です。 

※はピークだった2005年の戸数

(内訳)東京都・・・・・・・・26,902戸(世帯数比0.47%)
神奈川県・・・・・・・11,521戸(世帯数比0.32%)
埼玉県・・・・・・・・6,106戸(世帯数比0.23%)
千葉県・・・・・・・・4,330戸(世帯数比0.19%) 
首都圏合計・・・・・・48,859戸(世帯数比0.34%)

※84,148戸(世帯数比0.59%)

注目すべき数字は、世帯数比の%です。年間50,000戸前後の需要は、比率で見れば高々0.5%なのです。中古マンションや一戸建て住宅まで加えても年間に1%前後の世帯が買い手となるというわけです。

新築マンションに戻しましょう。価格が上がっても、それを買える人が0.5%あればいいのです。この少数需要が市場を支えてくれていると言えるのです。

先に述べた7つの理由は特殊な少数の人たちかもしれませんが、それで説明が付いてしまう。これがマンションの市場なのですね。

「自分には関係ないことだ。だから価格が上がってしまったら買えなくなるに違いない。また、自分が何とか買えたとしても、転勤などで売りたいと考えたとき、自分のような恵まれない需要階層は高く買ってくれないのでは?」このような疑問を持つ人も、上記の説明で少しは楽観できるのではないでしょうか?

もう一度言いましょう。マンション市場は、限られた狭い世界のことなのです。その世界には高くなっても届く人たちが何万人と存在します。

補足します。

所得上昇は統計数値では伸びていない、つまり全体的には増えていない昨今ですが、定点観測のように一定の階層にスポットをあててみると着実に所得が伸びている層が存在します。

会社員で言えば、商社や生保・金融大手、その他の成長企業、上級公務員。勿論、無名の企業に勤務する人でも、社内では出世して給与が5年で3倍、5倍になった人は少なくないはずです。会社員以外では勤務医、IT企業の若手経営者、株長者と言われる人たちが該当します。

また、親からの資金贈与を受けられる人、更には一流企業などに勤務し二人で稼ぐ世帯所得の多いDINKSなど。 

これらを合計すると何万人にもなるのが、この首都圏の姿なのです。

急激に価格が上がったり、住宅ローンの金利が急上昇したりすれば、影響が全くないわけではありません。しかし、ここで述べたかったことは、マンション価格の上昇が起きても、それを苦にせず購入できる階層が何万人もいるということです。

よく考えてみると、「昭和の時代、所得は低く、住宅価格も安かった。今日、住宅価格の高騰は著しいが、それを買う能力も高くなった。そして毎年、何万人とマンションを買う人がいる」という事実の中に私たちはいるのです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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