第636回 「今は買い時でない気がする」のお便りが今日も!!

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

「今、買い時ですか?」と相変わらず問われます。そのとき筆者としては、「間違いなく買い時ではない」と答えざるを得ません。

しかし、いつまで待てば買い時はやってくるのでしょうか?

仮に価格が下がるとしても、下落率はどのくらいになるでしょうか?

 

ここで過去を振り返ってみます。

 

●歴史は語る

 

2008年にリーマンショックを契機に起きた世界金融危機、その後の不況に襲われた2009年以降、新築マンションの価格は低下しましたが、2012年を最後に2018年現在まで価格は上昇を続けています。首都圏平均の価格(単価)は、2012年を100とすると、2017年は133、つまり5年間で33%も上がったのです。

 

前回の価格安定期だった2002~05年は首都圏平均の坪単価は@180万円だったのですが、2006年~2012年は@210万円台に上昇しました。上昇率は約20%でしたが、今回の上昇率は、その比ではありません。

 

2013年からは@230万円台が2年続き、2015年には一気に@250万円台、2016年は@260万円台、そして2017年は前年比8%以上アップの@280万円台と駆け上がってしまったのです。

 

これだけ上がってしまうと、金利低下で購買力が押し上げられているとはいえ、さすがに届かない人も増えてきます。需要は減退し、販売スピードは鈍りました。

 

しかし、高くなっても何とか手の届く需要層も分厚く残っているらしく、マンション市場が氷河期と形容されるような事態には至っていないのです。しかし、買おうと思えば買えるのだが、「買い時ではない気がする」という疑念を持ち、慎重な姿勢に転じた人も増えているのです。

 

今後、新築マンションの価格はどう動くのでしょうか? 比較的緩やかな値上がり率の郊外ではなく、上下動の大きい23区の値動きを遡ってみましょう。

 

【2002~2004年の底値安定期】:最終年の2004年の坪単価は@220万円でした

 

➡➡【2005年~2008年の上昇期】:最終年の2008年は同@280万円

2004年からの5年で+27

 

➡➡【2009年~2012年の下落期】:最終年の2012年は同@264万円

2008年からの5年間で僅か6%の下落

 

➡➡【2013年~2017年の上昇期】:2017年は同@357万円

2012年からの5年間で+35

 

2004年をスタートして見ると、5年タームで上昇、下落、上昇という推移ですが、上昇幅は27%と35%、下落幅は僅か6%であることが分かります。

(以上の元データは不動産経済研究所調べ)

 

つまり、一旦上がってしまうと、調整局面が来ても、下落幅は元に戻るほどのものではないのです。基調としては右肩上がりが続くというわけです。以上は歴史が示すトレンドとサイクルです。

 

●今後の見通し

歴史は繰り返すと言います。今後も、どうやら同じ軌道を描きそうです。その根拠を説明しましょう。

 

新築マンションが売れなくなると、売主は販促のために値引きをします。しかし、ご存知のように新築マンションは工事中に売り出し、竣工時の完売を目指すのが普通です。つまり平均1年くらいの販売期間があるのです。

 

様々な販促手段を講じて1年で完売を目指します。この間は、期待する販売スピードがなくても、値引きはしません。値引き販売に踏み切るのは例えば80%売れたころ、つまり竣工後のことです。

 

売れ残り分の20%だけが5~10%引きとなります。プロジェクト全体の値引き率は2%もないわけです。しかも、その数字は調査会社の統計には表れません。値引きを何戸したかも、値引き率も全く把握できないのです。値引き販売は水面下でこっそり行われるからです。定価で購入した人の心情をおもんぱかると当然の措置です。

 

売れ行きの悪化は、早い段階で感じ取るものです。市場調査のデータがやがて届きます。そして、市況の悪化を確信します。そこで、次のプロジェクトの価格戦略を見直します。価格戦略は、原価戦略でもあります。つまり、コストダウン策、場合によっては商品戦略も見直します。

 

設計を見直し、利益を削らずに価格を下げる検討です。これは簡単なことではありません。設計変更に当たっては、単に図面を描き直すだけではなく、何度も議論を繰り返して最終プランを決定する、その後に許認可の取り直しの必要も出て来ます。

 

コストを下げるためには、玄関と廊下のタイル張りをフローリングに変えたりする、ドアハンドルを廉価な製品に変更したり、タイル張りの壁の一部を吹き付け塗装にしたりといった細かな金額の積み重ねまで図ります。

 

後先になりましたが、コストダウンの最も効果的な策は構造部分です。構造は、天井を低くすることなくコンクリートの量を少なくすること(二重床を止める)、デコボコ形状をシンプルなストレートな形状にする、コンクリート壁を軽量の乾式壁にするといったものが代表的です。

 

また、共用施設を縮小することも価格抑制には有効です。例えば、キッズルームやパーティールームを止めて販売住戸に変更することで、コストをさほど掛けずに売り上げを積み増すことができますから、全体の単価は下げることが可能です。

 

こうした方法によって価格抑制が少しは可能になります。しかし、この方法は「品質の低下」を意味します。2008年の坪単価は@280万円(23区平均)でしたが、その後@260万円台に下がったことを紹介しました。その時の価格引き下げの方法のひとつが「品質を下げる」だったのです。

 

2013年以降、2018年現在の品質は2009年~2011年頃より拡大しています。分かりやすく言えば、どこもかしこも魅力のないプランに成り下がってしまったのです。今後を占うと、もはや乾いた雑巾を絞るようなレベルなので、コストの下げようがないのです。

 

建築費の相場が下がることはないでしょうか?東京オリンピックの関連工事がなくなれば、建設業界は繁忙状態を脱し、建築費の上昇要因だった人件費も下がるのではないかという期待が生まれます。これについて、筆者はこう思います。

 

1954年のオリンピックのときは、代々木の第一、第二体育館などの会場建設以外に新幹線を走らせる、首都高速を建設するといった巨大な投資が行われましたから、その反動減があったことは確かです。今回の場合は、大型投資は少ないのです。国立競技場の建て替え工事と選手村の建設が目立つ程度です。

 

これらがなくなれば確かに大きなマイナスです。ところが、建設業者は手をこまねいているはずはなく、何年も前から先の工事確保に動いています。国の政策とも密接な関係がある業界ですから、安倍政権が打ち出した「国土強靭化政策」に便乗して仕事を確保することは言うまでもありませんが、民間工事では「再開発」を仕掛けることです。

 

その結果、品川駅のリニア新幹線関連工事や山手線「新・品川駅」の開設と関連工事、浜松町駅周辺開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台(第二の六本木ヒルズ計画と呼ぶ人もある)開発など、都市再開発が目白押しに予定されるに至っています。

 

また、訪日客の増加によるホテル建設の需要はオリンピック終了後も続くに違いありません。

 

こうした建設需要がある以上、建築費が下がる可能性は低いと思うのです。

 

東日本大震災や熊本地震の復旧工事、復興工事が終わって人手不足が解消され、建築費が安くなることはないでしょうか?

甚大な被害を受けた地域ですから、復興関連工事は多大なものだったはずです。しかし、これらは長い期間をかけて来たものの、一気に工事量が減るわけではなく、もう既に何割かは終了しているのです。あと、数年かけて徐々に終息することになるはずです。つまり、建築費の劇的な低下にはあまり貢献しないと見るべきです。

 

●地価は下がるか?

マンションの2大原価のうち、もう一方の土地代はどう動くでしょうか?

 

マンション用地は一定の広さがあり、かつ都心に近いこと、駅に近いことなどの条件が重要です。これらの条件を備えたマンション用地は希少で、近年は取得が極めて困難な状況にあります。首都圏全体では用地の供給がひと頃の半分に減ってしまったと言われます。郊外には、マンション向きの広さを持つ工場跡地などもあるようですが、都心には湾岸エリアくらいしか適地はなく、マンション業者同士の争奪戦が常態化しています。

 

都心ではマンション業者だけでなく土地を欲しがる法人があります。その代表格はホテル業者です。売地が出ると、マンション業者は殆ど競り負けるというのです。

 

たまに公表される再開発プロジェクトも、オフィスと店舗との複合開発であったりすると、途轍もなく高い価格になっていたりします。自治体や公益法人などの所有地、もしくは全体を少数の企業が保有しているものは比較的適正な価格で購入できることが多いのですが、多人数の地主、借地人など、権利関係が複雑に絡んだ土地ほど買収額は吊り上がることが多いので、マンション価格も高くなりがちです。

 

小規模事業者の廃業に伴って売り出される土地は最近増えているといわれますが、大抵は狭小地なので、デベロッパーが欲しいだけの数には足らず、激しい土地争奪戦の様相は変わりません。

 

地価も需要と供給の関係で決まるものですから、嫁一人に婿5人という状態が続けば高くなるのは当たり前です。売地が出ても買う人がいない(少ない)という状況にならなければ地価は下がりません。マンション業者が一斉に転業するか、ホテルもオフィスビルも過剰だから当分土地は買わないという状態が来ない限り、地価の下落はあり得ないのです。

 

郊外なら土地需要も少ないので、今でも安く取得できるかもしれません。しかし、マンションデベロッパーは、郊外は要らないというのです。駅に5分圏内なら買う業者もないことはないのですが、「郊外は売れないのだよ」とこぼすばかりで、買収に積極的ではありません。

●建築費も土地代も下がる見込みはない

マンションの2大原価がどちらも下がることがないとするなら、マンション価格は下がる可能性はないのでは?その通りです。価格を下げる最後の手段は利益の圧縮ですが、期待は持てません。なぜなら、元々利幅が大きいビジネスではないので、下げ余地は小さいのです。

 

コストダウンも、これ以上は無理というレベルまで来てしましました。表面的な部分の品質、早く言えば、モデルルームの設備・仕様を落とすのは買い手の反発が大きく、販売に重大な影響を与えるので無理だと販売現場は反対します。

裏に隠れる構造的な部分も、限界点に達しています。これ以上の品質低下は企業としても致しかねる。このような良識ある判断がデベロッパー側にあるようです。

 

ということは、しばらく様子を見るというのも、オリンピック後の価格下げに期待するのも全くの的外れになると言わざるを得ません。

 

●買いどきは今だ

筆者は、ここまでに述べた通り、値下がりはない。あっても5%程度だろうと読んでいます。しかし、保証できるわけではありません。筆者の意見に与しますか?それとも、待つことにしますか?

 

未来やチャンスなどを読む才能に恵まれた人はともかく、そうでない人は今のような時期にどこへ拠り所を求めたらいいのでしょうか?

 

考えるほど混乱するばかりという人も見られます。また、急がないとますます高くなるという焦りが先走り、現場の営業マンの口車に乗せられてしまう人もあるようです。

 

こんなときは、「買い時はいつか」を考えない方が良いかもしれません。買い時は貴方にとって常に“今”だからです。

 

見学したとき、この場所、このマンションに住みたいと感じた、その気分を大事にすることです。「買いたい」そう思ったときが買い時というわけです。そう考えれば後悔せずに済むことでしょう。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

 

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