言い値の新築から価格交渉できる新築へ

最近、新築マンションで「価格交渉をしようと思うがどのくらいまで可能か」というお尋ねが増えています。

一方、中古マンションで「価格交渉なしでイの一番に購入申込みしたい」という人にときどき遭遇します。

二つの話を同時に聞くと、「あべこべだなあ」と感じる人もあるのではないかと思います。

筆者も同様に感じます。しかし、それは常識に囚われてしまった一人だからかもしれません。

●新築マンションは売主が貼った正札のままに買うものか?

百貨店で気に入った商品の値札を見て高いと感じた買い手は、「おまけして」と交渉するでしょうか? ある地方都市では、言うだけならただと「なんぼになるの?」と交渉する人が少なくないと聞いたことがありますが、直ちに「申し訳ありません」と拒絶されるとも言います。

百貨店で値下げするのは、バーゲンセールと銘打ったときだけです。

百貨店のような所では、言うまでもなく価格に関して主導権は常に店側にあります。買い手は、店の言い値で買うしかありません。値引きをして欲しければ店が決めたバーゲンセールの日程に買い手が合わせるほかありません。

新築マンションも、百貨店と同じなのです。

最近、「次回の売り出しでは価格を見直す予定です」という売主発言をよく耳にします(ご相談者の情報です)。 販売が好調と見ると、同じ間取りで1階違いを一気に300万円も上げたり、プレミアム住戸と称する最上階などは下の階より1000万円も高い設定で売り出したりしています。

一方、販売不振のマンションでは、建物完成後に本体内にモデルルームを設け、それを数か月使用したからという大義名分(定価契約者からのクレーム対策)で300万円なり、500万円なり下げて販売する例も見られます。

どちらも、売主が情勢を読みながら価格を決めているわけです。一旦正札をつけたら、基本は売れるまで変えません。

決して個別のネゴシエーションには応じない百貨店方式、これが新築マンションの価格の在り方です。

●中古マンションの価格は「メーカー希望価格」みたいなもの

これに対し、中古マンションの価格は仲介業者との相談によって売主が決めてはいるものの、常に買い手からの値引き要求にさらされてしまいます。

この価格で売りたいのだけれど、それでは買い手が承知しないようだから、一定の幅で指値に応じましょう、というわけです。

まるで、メーカーは希望価格がありながら、実際の取引価格は小売店任せの家電商品のようです。主導権がありそうでいて実際はない、それが中古マンションの価格と言えます。

●新築で値引き交渉できるタイミング

新築マンションは、売れるまで正札は変えないと言いましたが、限度は無論あるわけで、ある時期を過ぎると、百貨店同様にバーゲンセールを実施することもあります。

その時期とは、建物が竣工する時期辺りです。その頃にディスカウント策を模索します。

先に述べたようなモデルルーム販売や、家具・カーテンなどのおまけ付き販売、キャッシュバックや値引きなど、なりふり構わない販売促進が図られます。

この段階になると、ネゴシエーションも可能になります。買い手は堂々と「おまけしてくれ」が言えるのです。

●常識を打ち破れるか?

冒頭で、筆者は常識に囚われた一人と述べましたが、無知なご相談者は「値引き交渉をしたいが可能か」と言って来ます。それを一刀両断に「今の時期に新築では無理です」と回答して来た筆者ですが、今後は改めようと思っています。

それは市況の変化との関係から、早い時期でも有効かもしれないと思い直しているのです。新築マンションの売れ行きが悪化し始めたからです。

11月20日の本ブログで紹介したとおり、首都圏の新築マンションは「発売戸数が減り、契約率が低下」しています。これは契約戸数の絶対数が減少していることを示すものです。

発売を先送りしているわけですが、工事は予定通りに進んで行きますから、いつまでも待てません。苦しいながらも販売を始めて行かなければならないのです。

例えば、第1期で売り出した50戸が思いのほか完売に時間がかかっており、第2期の発売が2か月ずれこんでしまった。その第2期も経過が思わしくないため、第3期の発売時期は全く目処が立たない。 そうこうしているうちに、竣工時期が来月に迫り、このままでは竣工時点で全体の半分も売れないぞと危機感を募らせている売主。

 このような状態に置かれた物件が増えつつあるのです。

分譲マンションの多くが2月に竣工し、3月に引き渡すパターンです。3月は売主の決算期でもあり、計画の売上を達成したいと考えます。決算はともかくも、半分が入居し、半分が未販売というマンションは、売主にとっても、また担当営業マンにとっても何かと窮屈なものです。

販売の現場は、建物本体に移行します。空室のひとつを販売事務所とし、営業マンは本体内に設けたモデルルームと、買い手が希望するモデルルーム以外の住戸を都度案内します。 そのかたわら、入居者との各種事務手続きやクレーム処理などにも追われます。

また、未販売住戸があってもエレベーターは動かさなければなりませんし、管理人は通常業務に就きます。従って、売れていない分の管理費を売主は補てんしなければなりません。

購入を検討する買い手も、表札や夜間の照明の数を数えて「売れていない」ことを悟ると、値引き要求を強めて来そうだと営業マンは戦々恐々となります。 実際にも、値引きに応じざるを得なくなります。

このような事態を避けるため、売主は竣工までに完売、最悪でも80%以上は売ってしまいたいのです。

今後は、その計画が達成できない物件が増えて来ます。竣工までに時間がまだ先という物件でも、販売が遅れている場合は内心で焦っています。そんな物件なら、値引き交渉は可能になるでしょう。

「ダメ元精神」でネゴシエーションをすることをお勧めしたいと思います。とはいえ、闇雲に当たるのも芸がないので、可能性のありそうな物件を見極める糸口を知っておいて損はありません。次で、狙い目物件を整理しておきたいと思います。

●値引き要求できる狙い目物件は?

新築マンションの販売現場は、ひたすら売れ行きを隠そうとします。何故でしょうか?

売れ行きの良いマンションは評価の高いマンションを意味するため、そうであることを願います。売れ行きの良いマンション現場の営業マンは胸を張り、どこか誇らしく見えるのです。

売れ行きの悪い現場の営業マンは、反対にどこか卑屈に見えます。

売れ行きが悪くても悪いことを認めたくない営業マンは、必死で好調を装おうとします。

売れ行きを隠す理由は、それだけではありません。良い物件は販売も好調で当然ですが、売れないのは、どこか欠点があるのではないかと買い手は疑いがちです。そこで、買い手が良い物件と信じ前向きに住戸選びなどに集中する状態を作り出したいのです。

さらには、売れないと値引き要求が出て来る懸念があるからです。売り手は主導的に強気に商談を進めたいので、販売好調・人気を博している物件と買い手に信じ込ませたいのです。

しかし、売れ行きの良さを装っていても時間が経つと破たんします。買い手としては、早い段階で売れ行きを読み取ることを意識したいものです。状況が分かれば迷いなく「値段交渉」に入れるからです。

では、どのようにして実態を探ればいいのでしょうか? まだ建物が竣工していない物件で、次のようなことを行っていれば売れ行きは良くないと見られます。

①1回当たりの売り出し戸数が少ない(1回目は多数売り出したが、2回目以降は小出し)/ ②次期販売の予告広告をしながら先着順の受付もしている/ ③再登録受付というイベントを行っている/ ④商品券サービスなどの来場促進キャンペーンを行っている/ ➄一度来場した客向けに「キャンセル住戸につき300万円減額住戸のご案内」、「オプション品の無償サービス」といったDMを送付して来た

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