第663回 長期売れ残りマンションを買う勇気と不安

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

 

本稿は竣工後1年を超えて売れ残っている新築マンションを検討している人向けのメッセージです。

 

●「値引きするから」の誘いに心乱れて

最近の事例を紹介しましょう。

竣工2年になろうという現在、まだ販売中。このような物件を、このままの価格で買うのは損ではないかと感じながら営業マンの説明を聞いていたが、気乗りしない態度だったからか、最後になって「今月中のご契約をご承知いただければ、200万円までお値引きをさせていただきます」と提案してきたのです。

どうしたものかと思い、連絡しました。

このようなメールが届きました。

 

「選んだ理由はこうです」と5つ挙げてくださいました。

➀予算に無理のない物件である/②専有面積が77㎡と比較的広い/③23区にあって、駅から徒歩10分の距離/④ブランドマンションで、大型である/⑤200万円引きするというので得な気がする

 

ただ、竣工から2年経っているという不人気物件を購入することに不安があるとも書いてありました。

 

●なぜ売れ残ったのかを考えてみると

ブランドマンションで大型、プランも悪くない。それが1000戸もあるなら、ときに売れ残ることはありますが、戸数は300戸程度、23区内の物件としては大き過ぎることはありません。駅から徒歩10分なら遠すぎることもないので、考えられる理由は価格が高いことですが、当該マンションの駅の相場を調べてみると決して高くないことが分かりました。

ただし、これは単純比較なので、駅からの距離と環境の違い、建物価値の差などを勘案して行くと当然ながら割高という場合もあります。

 

2年も売れ残っているケースで考えられるのは、「環境が悪い」か「谷地にある」、「駅力がひどく劣る」といったことですが、見落としがちなのは環境の悪さです。環境の悪さとは、貧民窟のような老朽化したアパートが近くに並んでいるとか、音と匂いの気になる古い工場がある、駅からのアプローチが狭く混雑する道路である、国道を信号待ちしながら待つ必要があるといった環境的に問題のある立地条件です。

こうした土地を買ってしまうことは大手でもあるのです。

 

各停しか止まらない最寄り駅に着いたとき、駅前が寂しく、しかも田舎然としているなと感じ、続いてアプローチ上に感動する要素は何もなく、退屈な徒歩10分を経てたどりついた現地周辺も狭小戸建て住宅と零細な町工場が点在するだけの何の変哲もない場所に、完成したばかりの新しいマンションが浮かび上がっています。

 

このとき、自宅を出て現地に到着するまでに抱いていた買い手の期待は駅に着いたとき既にしぼみ、購買意欲も後退しています。辛うじて思いとどまったのは、新築マンションが大きく綺麗で敷地内ガーデンなどが目についたからです。

 

上記は、過去の複数物件の感想を合わせた架空のマンションを表現したものです。物件を特定されないようにしたかったことに加え、売れない理由はこのような点にあるという例示をしたかったためです。

 

●価格が安くなれば買いなのか?

何百万円か値引きするからどうかと言われて、後退していた意欲が盛り返すということがあります。ただ、値引き金額が問題です。その程度でいいだろうか?そんな疑問が湧いて来るからです。

 

答えを先に言うと、2年も経って完売しない物件は10%以上の値引きがなければ買わない方がいいと考えます。環境が悪いとか駅から遠いとかの売れない理由も、価格が安ければ、これらの欠点や弱点を相殺してくれるものなので、それが2年もかかって完売できない状態は、価格が高いということを裏付けているのです。

言い換えると、どんな悪条件のマンションでも、価格が安ければ買おうとする人は必ず現れるものです

 

そうした人が大量に現れないから売れ残っているのは、「安くない」からです。

「売れない」と「価格が高い」は一対の問題です。

 

では、10%以上安くなったら買ってもいいのでしょうか? 答えは微妙です。なぜなら、100円の品と150円の品を将来同時期に売却したとき、前者は80円になり、後者は180円になるといったことが起こるからです。駅から遠く環境も良くない売れ残りマンションはリセール時も買い手は付きにくいので、いやでも値を下げる必要に迫られます。

結局、安く買ったつもりでも売却価格は一段と下がり、残念な思いをすることになるのです。

 

駅から遠くても安ければ買おうとするが大勢いた時代がありました。時代は変わって、昨今は駅に近くないマンションは売りづらい傾向が強まっています。インターネット上で様々な情報が流されるようになったせいでしょうか、買い手の研究が進み、駅から遠いマンションは売りづらいという認識が定着しつつあるからでしょうか。

 

高くても都心、高くても駅近と信じる(希望する)人が増えれば、都心・準都心の駅近マンションには「嫁一人に婿5人」状態が生まれ、駅から10分もかかる郊外マンションは、反対の「嫁5人に婿一人」となって、売れ残ることになるのです。これは、リセールのときに買い手が付きづらいことを暗示していることでもあるのです。

 

新築時に売れ残ってしまうようなマンションには重大な欠点、弱点があると思った方が良いのです。そのようなマンションを安値に釣られて手を出しそうになったときは、飛びつかずに一旦足を止めてよく考えた方が良いでしょう。

それでも前向きな姿勢があるなら、大胆な値引き額を要求しましょう。早く売りたがっている売主は、10%以上の値引きも仕方ないと覚悟しているに違いないのです。ダメで元々くらいのつもりで、大きな金額を口にしてチャレンジしましょう。

 

2019年1月~3月は、決算期を前にしてマンション業者の多くが販売促進に拍車をかけるときです。「買うから●●●万円にして」と言ってみることです。

 

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