買いにくい中古マンションのチェックポイント
- 2015.12.30
- 中古マンション
新築マンションを購入する人の7~8割は中古マンションも検討するというデータがある一方、中古マンションを購入する人は新築に比べて少ないという事実があります。
2014年1年間に首都圏で新築マンションを購入した人は約45,000人。これに対して中古マンションは 33,000人しかありませんでした。
(新築のデータは不動産経済研究所調べ。中古は東日本不動産流通機構調べ)
これは何を意味するのでしょうか? 新築は優良だが中古には優良なものが少ないからでしょうか? そう単純なことではありません。
新築より立地条件で負けない物や、管理状態が自分の目で確かめることができる利点もあり、比較した新築マンションより規模が大きく立派に見えたりする物もあるはずです。
然るに、中古を選択しなかった理由はどこにあるのか、今日はそこを明らかにしてみようと思います。
さらに、中古マンション購入のチェックポイントを整理しておきます。 これは、これから新築を購入する人がリセールする際に役だつはずです。
●中古マンションが買いにくい5つの理由
買い手の立場で考えてみると、中古マンションが買いにくい理由は5つ挙げられそうです。
理由(1)室内の見た目が悪い
中古マンションの多くが、壁が黄ばみ、浴槽は湯あかがついている、ガスコンロは油まみれになっていたりします。こうした光景を目にすれば、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。
理由(2)外観や共用部分が古ぼけていたり汚れていたりする
レトロ好きな人もあるのでしょうが、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向があります。新しいものは良いものという先入観もあるのでしょうか、一目で古いと分かると購買意欲はがたんと落ちるのです。
室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。 定期的に清掃や修繕を実施していても、決して新築と同じようには見えません。
理由(3)設備が古い・ないものも多い
ディスポーザーは新築でも付かないものが少なくはないですが、食器洗浄乾燥機は大半が標準装備されています。中古は食器洗浄乾燥機もない物が多いのが実態です。浄水器なども中古マンションでは少ないですね。
浴槽のまたぎは、新築マンションなら450ミリ以下が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」はかなり劣ります。
テレビモニター付きのインターホンが100%普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築20年以上では白黒が多いのです。
理由(4)バリアフリーになっていないものが多い
1階の玄関ホールから住戸前までバリアフリーになっているだけでなく、室内も大きな段差がないのが最近のマンションですが、古いマンションでは共用部も室内も段差が解消されていないものが多いので、これにも抵抗感を覚えてしまいそうです。
理由(5)建物に対する不安が拭えない
中古マンションが買いにくい最大の理由はここにありそうです。 先に挙げた4つの理由はむしろ付け足しと言ってもよいほどです。
不安を具体的に言うと、次のようなものと考えられます。
① 耐震性の不安:幾多の地震経験から新しいマンションは対策がしっかりなされているが、古いマンションは十分ではないという漠然とした不安と言えましょう。
② 耐久性の不安:築20年以上の古いものを検討する人が主に抱く部分です。あと何年ここに住めるのだろうかというものです。
③ 瑕疵がないかという不安:瑕疵は「隠れたキズ」というほどの意味ですが、悪意のない売主には追及できない瑕疵担保責任のことです。まさか欠陥マンションということはないだろうかという疑問と言い換えてもよい部分です。
最近、大手仲介業者がガスコンロや湯沸かし器といった設備の瑕疵担保保証というサービスを導入していますが、重要な点は目に見えない構造的な部分の瑕疵に関するものです。入居後しばらく経って(例えば数年先に)発覚したときどうなるのかという不安です。
大抵は個人の売主から購入する中古マンションですから、瑕疵担保は免責になっていて万一のことがあっても責任を追及する先はないのです。
④ 遮音性の不安:これは新築マンションでも同じですが、古いものは最近のものより遮音性が低いという先入観が働くためと考えられます。
●国土交通省の調査による「中古住宅に抵抗がある理由」
~平成23年度「土地問題に関する国民の意識調査」から~
「中古住宅に抵抗がある理由」 複数回答
第1位:新築住宅の方が、気持ちが良いから 55.2%
第2位;中古住宅は間取りや仕様を自由に選べないから 32.9%
第3位:中古住宅の方が、耐震性や断熱性能等の品質が低いから 20.5%
第4位:中古住宅のリフォーム費用やメンテナンス費用が分からないから 18.4%
第5位:抵抗はない 15.3%
第6位:中古住宅の方が、品質に関する情報が少ないから 14.6%
第7位:中古住宅の方が、価格の妥当性の判断が難しいから 11.7%
第8位:中古住宅の方が、住宅ローンや税制面で不利だから 4.1%
第9位:「その他」+「分からない」 3.0%
●買い手の不安を解消してくれる営業マンが少ない中古取引
2010年(5年前)のこと、リクルート社が中古住宅(一戸建てを含む)購入者を対象に「不動産業者に対する購入前の期待度と購入後の満足度のギャップ」を調査しています。
それによると、次の5項目で大きなギャップがあることが分かりました。
・・・・・・・・ 購入前の期待/ 購入後の満足/ ギャップ
物件の欠点を伝えてくれること 3位/ 15位 /▲13
物件に関する知識が豊富 1位/ 12位 /▲11
構造に関する知識が豊富 9位/ 18位/ ▲9
契約を急いだりしつこくしたりしない 2位/ 11位/ ▲9
情報を包み隠さず全部公開 5位/ 13位/ ▲8
買い手の建物に対する不安は、営業マンの的確な説明によって相当部分が解消されるものですが、新築マンションほどの資料がそろっていないためもあって、説明不足になってしまいがちです。
一番の問題は、仲介業者の営業マンは物件に精通していないことです。
新築マンションの販売現場では、あらゆる角度から買い手の不安を払拭する準備・営業努力が傾倒されます。そうする理由は簡単です。営業マンの担当物件がひとつ(専任)だからです。
耐震性や耐久性などの基本構造をはじめ、建物の性能に関する説明を丁寧に行ないます。床下や壁の内部など見えない部分については、断面模型などを使ってアピールします。
ガラスの断熱性や防音サッシの性能は、メーカーから提供された模型などを使って体感できるようにしています。免震構造の効果をアピールするために、一般の耐震構造との差を模型の揺れで実演します。
これらのデモンストレーションは、モデルルームを見学した経験をお持ちの読者ならお分かりいただけるはずです。
全て、買い手に「安心感」や「納得感」を与えたい意図から用意された仕掛けです。
これに対して、中古マンションは実物を目視するしかなく、建物内部がどうなっているかなどは全く分かりません。
工事中の新築マンションを買うのと違って、実際の景色や日当たり、管理状態を確かめることができるという、一面のメリットがあるのは確かですが、それだけでは安心できません。目に見えない部分は、代わりの何かをもって説明しなければならないはずです。
その部分で仲介営業マンは頼りにならないと思う方が正解でしょう。
●だから築浅の中古に人気が集まる
古いマンションは分からないことだらけ、営業マンに尋ねても納得のいく答えが即座に返って来ない。だから、新築に向かう買い手が多いのでしょうし、中古でも「より新築に近い」物件を探そうとするのです。
しかし、中古の流通機構(REINS)に登録されている物件の中で、築5年以内は5%程度、10年以内に広げても20%以下しかないと言われます。つまり、REINSに登録されている中古マンションの80%は築11年以上だという実態にあるのです。
長くなりましたが、中古マンションを買うというのは簡単なことではないことがお分かりいただけたと思います。
●中古マンションを購入するときの拠り所は?買い手心理は?
では、中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか?
これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できず、分かりにくいテーマですが、列挙してみましょう。
①大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう
②大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう
③先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた
④内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう
⑤清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ
⑥管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ
⑦管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた
⑧売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう
⑨建物に傾斜はないようだし、東日本大震災の揺れにも耐えた物件なのだから耐震性は大丈夫だろう
大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。
ここで気付くことがあります。売主と施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。
ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、
⑩疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう
⑪住んでみて不具合があったら売ればいいさ
などと自分に言い聞かせて不安を打ち消すのです。
●中古マンションを検討するときのスタンスは?
中古マンションを買おうかというとき、買い手には、内覧の際の観察ポイント、見えない部分の指摘事項、調査方法など、一定の予備知識が必須です。
しかし、それでも十分に納得できる回答を得られない可能性が高いのです。
2000年から始まった「住宅性能表示制度」によって、建物品質に関する客観的指標が新築マンションの物件ごとに提示されるようになりました。最近は90%くらいまで普及して来たようです。
今後は、中古マンションの紹介の際に提示されることが増えて来ます。また、仲介業者が一定範囲で品質保証を行う例も出てきました。しかし、いずれも緒に着いたばかりです。
中古マンションを購入するときは、やはり買い手自身の目利きや知識が鍵を握りそうです。
●中古マンション購入時のチェックポイント・内覧時の観察ポイント
中古マンションの購入に当たり、検討すべき項目を挙げてみましょう。ここをコピーしてポケットに忍ばせ持参するといいですね。
1. 築年数と耐震性 (1983年以降の竣工物件かどうか=1981年以降の建築許可物件か?)
2. 築年数と修繕履歴 (大規模修繕がいつ行われたか。その範囲は?)
3. 分譲主・施工会社 (売主か施工会社、または両方のブランド力は高いか?)
4. 管理会社と管理体制、管理状態 (管理会社の経験・実績は豊富か?管理人の勤務日数は?滞在時間は1日5時間以上か? 清掃は隅々まで行き届いているか? 放置自転車はないか?)
5. 管理費・修繕積立金 (管理費は1㎡当たり首都圏平均の@230円より高いか安いか? 高い理由・安い理由は? 修繕積立金は築年数の割に安いことはないか?)
6. 建物規模と共用施設 (100戸以上の規模か? どのような共用施設があるか? 中庭や植栽スペースはたっぷり取られているか?)
7. 外観・玄関等のデザインとグレード感 (個性的・高級感・上質感・洗練されている・重厚感・格調高い・威風堂々・優美・壮麗などのキーワードのどれかに当てはまるか?)
8. 間取り (10年住んで行ける間取り・広さがあるか? 主寝室のプライバシーは問題ないか?家具配置はどうか?)
9. リフォーム費用 (どこをリフォームすべきか?設備機器は交換を要するか=使用期間は何年経過しているか?)
10. 立地条件・交通便 (嫌悪施設はないか?坂道はないか?歩道付きの道か?学校までの時間は?)
11. 立地条件・環境・眺望・日当たり
12. 品質保証 (瑕疵担保責任はどこまでか?仲介業者による瑕疵担保保証はあるか?
<内覧のときの観察ポイント>
以上を踏まえて、内覧時の観察ポイントをいくつか紹介しましょう。入居中のために観察を遠慮しがちでしょうが、できるだけ売主さんにお願いして見せてもらいましょう。質問についても同様です。
①ひび割れの有無を目視で探してみる・・・長く放置しておくと雨水が入り込み鉄筋が錆びて、耐震性・耐久性ともに低下してしまうからです。 外壁や廊下の天井、バルコニーの天井などに30センチ以上の長いひび割れがあったら要注意です。
仲介業者を通じて、管理組合に修繕予定はいつかと質問をしましょう。タイルの剥離も同様です。
この点検項目は、管理の良し悪しを見る重要なものとなります。
修繕積立金が十分でないためか、それとも管理意識が低い管理組合なのか、どちらにしても適時、適切に修繕を行ったマンションと、そうでないマンションでは、長い間に資産価値に大きく差がついてしまうからです。
②設備機器の耐久性をチェックする・・・ガス器具、エアコン、ディスポーザー、食器洗浄乾燥機、床暖房などは、有無を確認しつつ、何年使用しているかを尋ねましょう。 入居後すぐに新品と交換しなければならないのか、まだ数年は使えそうかの判断をするためです。
③結露の有無を調べる・・・北側に位置する個室を見るときは、明るさと通行人の足音を聞くことに加えて、窓の周囲の壁と天井に目を凝らしましょう。
黒ずんでいたり汚れがひどかったりするようであれば、冬季に結露ができやすいことを示すものであり、原因は断熱材の施工が十分でない可能性が疑われます。そして、リフォーム費用に響きます。
④床・壁・天井の表面を全体的に点検する・・・トイレや洗面所の床の表面材(普通はクッションフロアという材料で仕上げてある)がめくれていないかどうか、壁紙の張り合わせ部分がめくれて隙間ができていないか、変色していないか、傷や汚れがないかどうか、フローリングの表面仕上げ部分がはがれていたり、傷が目立ったりしている所がないかどうかなども。
リフォーム工事の予定に組み込むかどうかの判断に必須だからです。
●必ずチェックしたい修繕履歴と修繕計画
内覧とは別のチェックポイントとして重要な点がこれです。この確認には、管理会社からの「管理に関する重要事項説明書(仲介業者が管理会社から取り寄せてくれます)」をよく読むことと「管理組合議事録」の閲覧も必須です。
<修繕履歴>
「管理に関する重要事項説明書」には、いつ大規模修繕を実施したかが書かれていますが、その内容は必ずしも明確ではないので、「管理組合議事録」で何をどのように行ったかをチェックしましょう。
竣工後12年目に最初の大規模修繕の必要時期がやってきます。次は24年目ですが、専門家に診断の結果、遅れても問題ないという場合もあります。
しかし、修繕積立金が足りないために延期したかもしれないのです。そのあたりのことは、議事録を読み込むほかありません。
仲介業者に依頼して報告してもらうのが手間なしでいいですが、心配な人は議事録を保管してある場所(管理人室か管理会社)に出向いて閲覧するほかありません。
議事録を読み込むと、管理会社からの提案がなされたが実施は見送られたとか、その理由、提案を受け入れて修繕に踏み切った場合では、工事会社はどのように決めたのか、例えば組合役員に一任したとか、決定に当たっては数社から見積もりを取って、その中から組合総会で決定したのかなどの経緯が克明に記されています。
また、修繕積立金の増額提案については、議論されたが反対決議であったとか、毎月はそのままで一時金徴収を決議したなどという記録もあるものです。
ついでに、駐車場の空きが長く続き、収入が不足しているので管理費の増額を検討中といった記録も発見できるかもしれません。
<修繕計画>
国土交通省の調査によると、古いマンションでは「長期修繕計画」を立案していないものが30%近くあるのだそうです。 長期計画がないということは、行き当たりばったりで修繕を行って来たこと、今後もその方向にあることを示唆しています。
そのようなマンションは、資産価値の劣化が早く進んでしまう懸念があるわけです。
長期修繕計画書がある物件なら、それを是非とも確認しましょう。 その中には必ず「収支対比表」があるはずです。 年次ごとに必要となる修繕項目とその費用見込み額が「支出欄」に記載され、その支出を超える積立残高をキープするための年次・積立金合計と残高が「収入欄」に記載されています。
年次の積立金が変わっている(増額になっている)年があれば、その年から毎月の積立金の変更が行われる、または一時金徴収が予定されていることが判明します。
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