リノベーション済みマンションが増えている

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
~~~~最近は更新回数を増やしていいます~~~

物件の評価のご依頼を新築と中古とに分類すると、このサービスを開始した当初は新築が圧倒的に多かったのですが、最近は中古マンションの評価をご依頼くださる人が増えて新築に肩を並べるくらいになりました。

最近(今年になってから)気付く点は、中古物件のご依頼の中に「リノベーション」済みのが随分増えて来たことです。何割に達したかはカウントしていないのではっきりしませんが、多くなったなあと感じる昨今です。

今日は、その要因と背景について述べようと思います。

●新築マンションが減っている

先ず、その背景は新築が減っていることを挙げなければなりません。

※供給(発売)戸数の推移

2005年(約10年前)・・・84,118戸
2006年(約10年前)・・・74,463戸
    (2007年~2011年の平均:46,033戸)
2012年・・・・・45,602戸(2006年比▲39%)
2013年・・・・・56,478戸(2006年比▲25%)
2014年・・・・・44,913戸(2006年比▲40%)
2015年・・・・・40,449戸(2006年比▲46%)
2016年(上半期)14,545戸(前年同期:18,018戸▲19%)

※2008年以降、新規発売戸数は激減し、停滞が続いています。2016年も年末までに35,000戸前後と低迷することでしょう。

新築マンションの停滞は、中古マンション市場を活性化させることとなりました。そのことを次に見て行くことにしましょう。
  

2011年~2015年の成約件数を計算してみたところ、2011年が28,871戸、以後→31,397件→36,432件→33,798件→34,776件となっています。

2016年も1~9月の累計で27,872件に「達しており、このペースで行けば年間トータルで37,000件に達すると見込まれます。

中古市場が、このように成約件数が増え、実は価格が上昇傾向にあるのですが、その原因を辿って行くと、新築市場が影響を与えていることに気付きます。

 「新築を探しても条件に合うものがないので、仕方なく中古も視野に入れています」このように考えている人が着実に増えています。その結果として、中古マンションの人気は高まり、価格上昇を招いているというわけです。

 中古は、売り出しても買い手が現れなければ、「売却を諦める」か「価格を下げる」しかないのですが、売り出してすぐに買いたいとする人が多数現れれば、売主は強気になって価格交渉には一切応じないといった姿勢を見せます。そうして、価格は徐々に上方へ振れて行くのです。
 
●中古の在庫量は常に過大

新築マンションの在庫は2016年9月末で6,120戸となっています。異様に新築が少ないとお感じになるかもしれませんが、発売済みの売れ残り戸数であって、いわば氷山の一角みたいなものです。

つまり、隠れ在庫が大量にあるのです。その数を把握したデータはありませんが、一定期間(例えば1年間)で見れば、市場に出る、つまり発売された数の中でしか購入することはできないので、隠れ在庫の数を知ったところで無意味です。

今年も年間に売り出される新築戸数は40,000戸(35,000戸前後)には達しない見込みです。

他方、2016年9月末現在、市場に出ている中古マンションの戸数は首都圏全体で42,704戸もあります。これだけの数が毎月平均3,000戸前後の成約によって瞬間的に減るのですが、同時に新規の売り出し(REINSへの新規登録)が毎月3,000戸前後あるので、ほぼ常に40,000戸以上の在庫となります。

新築マンションの発売戸数は毎月平均3,000戸以上ですが、物件数で見ると150件前後しかありません(ちなみに、2016年9月の発売戸数は3,424戸ですが、1物件当たりの売り出し戸数は20戸もありません。従って、物件数は170戸強でした)

中古も同じマンションの中から同時に複数売り出しというときもありますが、多くは1戸のみです。従って、中古は40,000物件、40,000戸以上の在庫の中から検討することができるのに対し、新築は170物件の中の数戸、仮に5戸としたら850戸の少数の中から選ぶしかないことになるとも言えるのです。

こんな比較はナンセンスとご批判を受けるかもしれませんが、言いたいことは、中古の方が品数は多いということなのです。玉石混淆であって、玉は少ないという人もあるでしょうが、数が多いからこそ玉も隠れていると言えます。

●中古の成約数が増えれば、高経年マンションも増えるのは当然

中古マンションを検討する人の多くは築浅を望みます。ところが、近年は古く汚い中古を買ってスケルトン状態にしてから好みの間取りと好みのインテリアに改造したいという、いわゆる「リノベーション」志向の買い手が若い人を中心に増えて来ました。

この現象が、高経年マンションにも一定の人気が集まる傾向を生み出しているのです。

ここに業者は目をつけました。業者とは主に不動産業者ですが、建売業者もリフォーム業者も加わって来ました。

そもそも、古いマンションをリノベーション前提で個人が買うというのはたやすいことではないからです。

中古マンションを買ってリフォームするのは、プランニング、工事費の見積もり、業者選定、発注などの各段階において、打ち合わせを繰り返し行う必要があるため、その時間とエネルギーは膨大で、中々大変です。

それらが不要で、代金決済後すぐに入居できることが「売り」のリノベーションは、多忙な買い手にとっては有り難いシステムと言えます。

リノベーションしてから内覧会(オープンハウス)を挙行すれば、少しくらい高くても売れるはずだと確信した業者が実行に踏み切りました。そして成功します。そうなると追随する同業者が増えます。リスクはあるが、うまくいけば仲介手数料だけのビジネスより妙味があるぞということになったわけです。

仲介の場合、その大半はオーナーが入居中の期間に内覧するわけです。売却して得た資金がないと買い替え先のローンを組めないことが多いので(つなぎ資金という方法もあるが)、転居できないからです。

この状態では、見学者を感動させることは難しく、何組、何十組と案内があっても簡単に決まらないのが仲介営業の実態です。まして、築年数40年などと黎明期の古~いマンションは耐震性の問題もあって、売ることはとても難しく、価格を思い切って下げないと買い手を見つけるのが困難です。

売れずに困っているところへ、買い取り業者が現われます。安いけど確実に買ってくれる相手がいるとなれば、最後は観念して安く手放すというのです。

ちなみに、買い取ってリフォーム後に転売する「買い取り転売」の実績はどのくらいに達しているかという調査が矢野経済研究所によって行われ、先ごろ発表されましたが、それによれば2016年~9月の3か月間に全国で1,811件(月平均600戸余)が成約されたと推計しています。

中古マンションを業者に売却するということは、安く叩かれることを意味していますから、業者から見て仕入れは簡単ではないはずです。しかし、築年数が古くなればなるほど、共用部の老朽化、デザインの陳腐化なども重なるので、売れないものです。勿論、築30年、40年ともなれば途中で設備の交換もしたでしょうが、売却時には使い古されているのが普通です。

売れない中古は、業者の手に渡る。これは自然の成り行きかもしれません。そうした物件が業者によってお化粧直しされると、たちまち売れてしまうといいます。

見た目がいかに大事かのエピソードでもあるのですが、買い手の立場では、新築のモデルルームと見まがうほどの美しさに、つい舞い上がってしまう人も少なくないようです。

●業者の新しいビジネスモデルに定着しかけている

リノベーションはおいしいぞと業界内で噂が広がり、大手マンション業者も進出して来ました。5件に1件は損することもあるらしいのですが、リノベ―ションは儲かるビジネスだというわけです。

三菱地所レジデンス、東急不動産、大京、住友林業など、思い浮かぶだけでも有名どころが実績を重ねています。

リノベーションという用語も広く流布して来ました。新聞、週刊誌、業界誌、WEBサイトで頻繁に登場して来ます。業者自身が「買い取ります」のPRを盛んに行うようにもなりました。

この結果、個人オーナーも仲介以外に買い手を探すチャネルの存在を知るところとなりました。そうして、単に売れないから焼け気味に安く売却するオーナーだけではなく、居住中に内覧者が何人もやって来てプライバシーを覗かれるのがいや、近隣の人に知られる噂されるのがいやなどといった動機で業者に売り渡す例が増えているというのです。

買い手が付きにくい旧・耐震マンションだけでなく、新耐震の築15~25年マンションも業者に売却する人が増えているようです

●割高なリノベーション済みマンション

このような背景と理由によってリノベーション済みのマンションは増えて来ましたが、買い手から見て分かりにくいのが適正価格です。高いのか高くないのか判断に迷うのです。

一般に、リノベーション物件は割高なものが多いことは明らかです。業者が大きな利益を目論むためです。

 中古マンションを仲介しても手数料は最高で6%少々、3%程度にと留まることが多いのですが、個人の所有者から安く買い取り、フルリフォームして付加価値を高めれば儲かると考えての事業化、それがリノベーションだからです。

今のところ、リノベーション済み中古とリフォームなしの中古を峻別した市場データは存在しません。このため、筆者の「評価サービス」も適正価格の判断のための調査時間が増えています。とまれ、できるだけご期待に応えて行きたいと考えています。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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