第758回「中古マンション・安心マニュアル」第4部/リフォーム

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

タイトルにあるように、以下は「中古マンション」を検討する買い手の立場に立ち、注意点と選び方を細部に渡ってまとめたものです。

マンション購入を考える・選ぶ段階にある読者の安心につながる指針となるよう、日ごろの活動の中から気付いたことの集大成です。 今日は前回に続く「第4部」として、リフォームについて解説します。

 

●リフォームとリノベーション

リノベーション住宅という言葉を時々目にする昨今ですが、これはどのようなものでしょうか?

 

*リノベーション(Renovation)とは、既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりすることです。中古マンションの室内、外装を大幅に改修して新築時のようなスタイル・雰囲気にして再販売されるマンションを言います。

 

●リフォームとの違い

原状回復のための表面的な修繕、営繕、不具合箇所への部分的な対処を行うリフォーム(Reform)に対し、機能、価値の再生のための改修や、住まいの包括的な改修が「リノベーション」と定義されています。

 

*リフォームは、煙草のヤニなどで変色した壁紙を張り替えたり、絨毯の床をフローリング材に変更したり、せいぜいキッチンを旧式のタイプから最新式のシステムキッチンに交換したりする程度の小規模な工事を指します。

 

*一方、リノベーションとは、補修工事するところまでは同じですが、リフォームとの大きな違いは、建物の持つ初期の性能以上の新たな付加価値を付け加え再生させることであり、スケルトン状態(コンクリート躯体まるだし)から水廻りの移動・配管工事・間仕切り変更・建物用途の変更(事務所を住宅にする)等のことをさし、工事の規模も大きくなります。

 

*マンション全体でリノベーションするような場合があれば、これに耐震性の向上が加わることもあります。

 

*単なるリフォームにとどまらないリノベーションは、間仕切りや仕様・設備にあらかじめ制限されてしまう(売主の方針)新築マンションと違い、選択肢の多彩さと設計の自由度の高さが大きな魅力です

 

*尚、古い事務所ビルや倉庫をSOHOや住居に用途変更し、不動産価値を一気に高めることをコンバージョン(Conversion)と言います。入居率が低下してしまった古い社屋ビルや店舗、倉庫などの物件を、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)や住居として再生するのが代表的なものです。

 

●リノベーションマンション購入時の注意点

築年数が古く、室内設備が旧式で陳腐化している、お風呂が狭いなどのマンションは、思い切って全部取り替えて新築同様の部屋に生まれ変わると素敵ですね。しかし、そうするとき、注意しなければならない点も少なくありません。

 

*どんなに内装を新築同様にしても、見えない部分は古いままということです。耐震性、設備、特に給排水管の寿命などをチェックしなければなりません。知らずに購入して、後で多額の修繕費がかかってきたら困ります。十分に調査してから購入するべきでしょう。特に長期修繕計画がどうなっているか、積立金は計画どおりに残高があるかなどを確認することが必要です。

 

●リノベーション住宅に取り組む企業は増加傾向?

ワインやクルマのように、住宅もヴィンテージが人気です。外国の人や、アーティストばかりでなく、若い人を中心に、古い日本家屋でスローライフを満喫したり、古いマンションを自分の趣味で手を入れたり、住まいも楽しむ時代になってきたのでしょう。しかし、問題も出てきています。

 

*かっこいいから、聞こえがいいからと安易に飛びついた結果、不明確なリフォーム契約でトラブルが起きていたり、住んでから不具合が発覚したりしています。そこで、不動産流通業界の有志により、一般社団法人「リノベーション住宅推進協議会」が2000年5月に誕生しました。「誰もが安心してリノベーション住宅を選べるように、既存住宅がきちんと流通する世の中にしていきたい」との趣旨で活動を開始しています。

 

*協議会は、「リノベーションに関する技術や品質などの標準化、普及浸透の事業などを行うことにより、安全で快適、かつ多様化するニーズに対応したリノベーション及びリノベーション住宅の提供を図り、既存住宅の流通活性化に寄与することを目的とする」と謳っています。

 

*協議会は、協議会の定める技術基準に基づく品質確保と情報の開示、保証による安心が付加されたリノベーションを「優良なリノベーション」とし、普及に努めようと活動していま。

 

*住宅のストック数が世帯数を上回って久しい日本ですが、今後の課題として浮かび上がっているのが、30年を超える老朽マンションの大規模修繕問題です。大手不動産業者は、建て替えや耐震性の向上を含めて大きな市場になって来ると読んでおり、取り組みに積極的です。

*これは、どちらかというとマンション全体のことですが、一方では築年数の長い中古マンションの大胆なリフォーム、すなわちリノベーティブなマンションの普及も進むと予想できるのです。これに伴って、業者の数も徐々に増えているようです。

 

●業者所有のリノベーション住宅は疑問

業者が所有し、売主となってリノベーションマンションを販売している例が増えています。これは手間がかからずに済み、室内は完全に新築同様で、設備も新築マンションのモデルルームと見まがうほどですから、人気が高いと聞きます。

 

*しかし、これには問題が感じられます。業者が元の所有者から一旦買い取り、業者のセンスでリノベーションしたものですから、当然ながら業者の利益がオンされます。その結果、この種の物件は割高なものが多いのです。

 

*一目惚れして買いたいと思っても、そのとき少し冷静になって、価格が適正かどうかを検証することが大事です。

 

●リノベーションとは?

リフォームの分野にリノベーションという概念があります。リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」です。壁紙や床の材料を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更といった大掛かりな住宅改修のことを意味します。

 

*元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、30年前にはなかった設備を装備し、さらに間仕切りを大きく変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。

 

●リノベーションの楽しみ

筆者は、白紙の段階からマンションの設計企画や、ある程度固まった基本プランの改良企画に加わった経験が多数ありますが、その仕事は、とても楽しいものでした。

 

*親の家を増改築したときも、フリーハンドのラフな図面ながら、2階建て住宅を設計しました。このとき、遊び感覚で2週間ほど楽しんだ記憶があります。

 

*マンションの場合、排水管(竪管=たてかん)の位置によってキッチンやトイレなど設備の位置が自動的に決まって来るという恨みがあるのですが、それでもリノベーションする楽しみは大きいと思います。

 

*一度やってみると分かりますが、間取りのレイアウト、収納の工夫、床・壁・天井の仕上げ材・設備機器・ドアハンドルなど金物類の選択まで、百人百様の楽しみがあることでしょう。

 

*昔の話ですが、ある有名知識人の講演会とセットで「このキャンバスに描くのはあなたです」というキャッチフレーズの「間取りのアイディア募集」をしたマンションメーカーがありました。そのとき、講演会当日に集まった手書き図面は予想を超えて大量なものでした。私は、間取りに関心のある人がこんなに大勢いるんだなあと驚いたものです。

 

*リノベーションに踏み込むつもりで中古マンションを購入するのであれば、一定の制約があるとはいえ、新築マンションではできないような「オーダーメードマンション」ができる喜びは大きいはずです。

 

*築浅の中古マンションも、場所によっては、新築と変わらないと高値に驚かれることでしょう。そこで、思い切って築後30年くらいの古いマンションを探し、リノベーションにチャレンジするのも一考に値すると思うのです。

 

*尚、念のため付言すると、耐震性の問題から1981年以降に建築確認を取ったマンションに絞った方が無難でしょう。竣工時期で言い換えると、1982年か1983年以降の物件です。

 

●満足度が高いリノベーション

洋服に例えると、マンションは言うまでもなく既製服です。間取りが個性的なマンションもありますが、どこを見ても同じような間取りが多いのが実態です。好みの間取りを見つけても場所が気に入らないとか、場所はいいが、今度は建物全体が貧相で好きになれないなど、なかなか思い通りにはならないものです。

 

*そんな葛藤から辿りついた選択が大胆なスケルトンからのリノベーションです。マンションですから、排水管の位置によってトイレの位置は変えられないといった制約はあるものの、ある種、注文建築の楽しみを味わいながらリノべ―ションするというわけです。

 

*制約が様々あってパズルを解くような計画ですが、それも楽しみと言えるようで、その結果でき上がった自宅マンションは満足度100%といったところでしょうか?

 

●満足度100%の住まいも資産価値のプラスにはならない

こうして手に入れた満足度100%のマンションには、それなりの費用がかかっています。スケルトンからのリノベーションとなると、最低でも500万円は必要で、1000万円を超える例も少なくないと聞きます。

 

*何年かして売却するとなったとき、見学者に対し、「〇〇〇万円かけたのです」などと力説する所有者があります。「だから、本当はもっと高く売りたいのだ」という主張、いや恨み節です。

 

*費用の掛け過ぎは、買い手の知ったことではありません。マンションの価値は、間取りや設備も大事ですが、もっと大事なことは立地条件ですし、マンション全体の価値、例えば規模(スケール感)や共用空間なども含めて総合的に判断されます。室内にかけた費用がそのまま価値(売り値)の上昇とは行かないのです。

 

●中古のリノベーションで気を付けたいこと

中古マンションを探している人の中に、あえて築30年クラスの年代ものに限定している人があります。

 

*狙いは、安いからというだけでなく、大胆なリフォームをして好みの間取りにしたいという願望があるからです。しかし、貴方のこだわりも他人には関心のないことです。

 

*こだわりは、他人にとって意味のないことであったりします。人間には個人的な好みというものがあります。好き嫌いと言ってもいいでしょうか?それゆえに、あまり個性的な間取りにしたり、奇抜なカラーやインテリアで飾ったりした住まいも、別の人からは嫌われてしまうことがあるのです。

 

*たまたま同じ趣味の人が見学に来てくれたら幸運ですが、そうでないことの方が確率的には多いのです。従って、こだわりもほどほどにしておかないと、仇となりかねません。

 

*マンションは永住と決めない限り、購入するときから売却のときを念頭に置いて選択することが大事です。

 

●リフォームが可能か否かの検討

購入前にチェックしておきたいことを整理して大きます。

 

壁式構造の場合の注意点・・・・・壁式構造のマンションは、室内壁でも外したり穴をあけたりできない部分があります。一般的な「ラーメン構造(柱と床、壁で構成されたもの)との大きな差異です。

 

②二重サッシへの変更は可能だが、複層ガラスの変更はできないと認識しておかなければなりません。

 

床の構造(二重か直貼りか)・・・・・コンクリート面と室内の床材の間が空洞になっているのが二重床構造です。これに対し、コンクリート面に直接床材を乗せた直貼り構造も少なくありません。

 

*直貼りのマンションはリフォームをするとしても、間仕切りの変更はほぼできないと思っておいた方が良いでしょう。

 

給排水管の位置確認・・・水回りの移動がたやすいマンションもないことはないのですが、ほぼ90%以上のマンションで移動はできないと思っておく方が安全です。

 

●中古マンションの購入契約の前に

中古マンションを購入してリフォームする場合の準備事項を整理しておくと、次のようになるでしょう。

 

①リフォームの範囲を決める・・・・・どこまで手を入れるかを決めておくことです。

 

②変更案、リフォーム案を早急に決めて予算を把握する・・・・・・仲介業者にリフォーム業者を紹介してもらうか、あらかじめリフォーム費用の概算費用をインターネット上で検索して調べ、把握しておく(筆者からも資料の提供可能)

 

③リフォーム代を住宅ローンに組み込めるかどうかも確認しておく・・・・・仲介業者に尋ねれば事足りるはずです

 

④売買契約から引き渡しまでのスケジュールを検討するとともに、リフォーム工事期間、リフォーム代金の支払い、ローンの実行時期とのタイミングなどの検討が必要です。リフォーム工事にかかれるのは、売主さんから引き渡しを受けてからです。引き渡しは当然ながら、代金支払い後です、つまり住宅ローンの融資実行後です。

 

⑤リフォームローンとセットで組む場合は、リフォーム代金相当額の融資実行は後になります

 

・・・・・・・以上のようなスケジュールを組んでから契約に応じましょう。仲介業者には、経験の浅い担当者も少なくないので、トラブルにならないよう、しっかりスケジュールを組んで売買契約を結びたいものです。

 

●内覧は2度以上が必須

契約に当たっては、品物をよくチェックしておくことが大事です。特に、売主さんが居住中の物件を購入する場合は、家財が邪魔して不具合やキズに気付かず買ってしまいかねません。

 

*中古マンションの取引は「現状有姿(あるがまま)」が前提です。平たく言えば、キズや汚れがあっても、それを受け入れて買うというのが原則なのです。

 

*とはいえ、売り手が居住中の場合は、家具・家財の裏に隠れていてキズや汚れがあっても見学時は気付かないことが多いのです。購入するかどうか未定の所見では隅々まで見せてもらうのは気が引けます。 しかし、契約で内諾段階になれば、念のため隅々まで見せて欲しいと伝えて、2度目の内見に出かけましょう。

 

*家具。家財を大きく動かして見せてもらうことは難しいものですが、2度目の内覧は1度目より細かな部分に気が付くでしょう。「空室になってから見学したら、まさかのキズや汚れを発見」という事態もないこともないのです。トラブルの種は契約の前に発見しておきたいものです。

 

 

・・・第4部はここまでです。次回、第5部をお楽しみに。

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