迷走する買い手

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

このブログをご覧になってメールをお寄せ下さる方の多くは、これからマンションを買おうとしていらっしゃるわけですが、日々そのご質問や物件の評価ご依頼に接すると、統計をしなくても様々な傾向変化に気が付きます。

4月以降で変わったなと思うこと、それは現住所と検討物件の所在地が遠く離れていることです。

住宅選びは、行政市区や駅、あるいは鉄道沿線を選択することからスタートする人が多いものです。神奈川県在住の人が東京を飛び越えて埼玉県のマンションに興味を示すことは、親兄弟が住んでいるケースなどを除けばまずなく、通い慣れた沿線上のいくつかの駅を候補地に選ぶか、住み慣れた同市域の中で物件を見つけようとします。

これを「地縁性のある人」と呼んで、マンションの売り手は、建設地の周辺の一定の範囲に絞ってチラシの折り込み広告を行ったりするのです。

他の市域と他の沿線に住む人の中からも買い手が表れることは無論あるので、その買い手を見つけるには、費用効果を考え、雑誌SUUMOやときに新聞広告、そして必須のインターネット上にHP開設して広告媒体とします。これを広域媒体と呼びます。

広域媒体が大きな効果を発揮するのは、誰もが住みたいと思う人気の街・駅にある物件です。この数年で大きくジャンプアップした街のひとつに東横線・JR線の交差する「武蔵小杉」がありますが、この街などは、沿線住民以外からもたくさんの買い手を集めたことが知られています。

東京都内では、江東区の豊洲地区なども同様です。大規模なタワーマンションを建設分譲するたびに人気を集め、良好な販売成果を挙げたのです。

これらの地区では、大型マンションが多いせいか、広告予算の使い方も大型でした。広域にアピールできる媒体として新聞と雑誌広告、インターネット以外にも、推測ですが1回あたり100万部くらい、もっとかもしれない大量のチラシ織り込みを広範囲に実施しているのです。

買い手は一般に「能動的」なものですが、たまたま新聞を広げたら目についたチラシや、電車内の吊り広告を通勤電車の中で見たことを契機に動く買い手は、「受動的」な広告ターゲットと呼ばれます。

買い手の中には、顕在化した買い手もあれば、潜在的な買い手もあるので、後者をキャッチしたい売り手は広告が彼らの目に留まるように工夫を凝らします。

さて、最近気づいた傾向変化のことですが、武蔵小杉や豊洲のような人気エリア以外のマンションで、地縁性はないのに購入を検討している人が従前より増えて来たということです。

500戸も1000戸もあるような大規模物件ではなく、せいぜい200戸台の物件で話題を集めているとしても狭い範囲の中でのことと推察できる、普通よりは少し魅力的なマンション、そんなマンションを能動的に検討している人のことです。

勤務先が近いわけでもなく、親兄弟が住んでいるわけでもない、全く縁もゆかりもない物件に遠くから見学に行ったというのです。通勤時間が同じか少し便利になる別の路線の、広い意味では通勤圏内にあるという共通点(縁)はあるのですが、全く馴染みがないか、あっても職場の同僚が住んでいるという程度の人たちです。

このような人たちの動機はなんであったか、答えはすぐ見つけることができました。それは物件探しをしているうちに、いつの間にか知らない街に来てしまったということでした。つまり、希望する駅・街・沿線では条件に合いそうな物件がないのです。

このブログでときどき紹介するマンション市況の分析記事でご記憶の読者も多いと思いますが、近年マンションの新規販売(供給)戸数は大幅に減っているのです。筆者は「品薄感続く」という表現を使って来ました。

傾向変化は、ここに原因があると思うのです。

価格の急騰、これも過去3年の間に平均で20%も上がったことも紹介して来ました。

品物は少なく、有っても予算が届かないので、仕方なく条件を妥協したという買い手を増やしていますが、その延長上に「希望エリア」の突飛とも思えるような変更があるのではないかと感じるわけです。

感じると書いたのは、ご相談者にプライバシーに係る部分をお尋ねしないようにしているので、多くは筆者が推測するしかないからです。

筆者の若いときの転居行動を思い出してみました。

地方出身の筆者なので、初めは東京の右も左も分かりませんでした。住んでみて分かったこと、都内の職場に通勤し、仕事で首都圏内を動き回るうちに多くを学んだのです。

不動産・マンション業界に長く身を置き、マンションを生涯の研究テーマに定めて過ごして来た筆者でも、まだ一度も降り立ったことのない駅が多数あります。東京(首都圏)は本当に広いと感じます。

転居を繰り返していた若い時分、転居先はいつも考えなしでした。漠然とした希望を業者に伝え、業者の勧める物件を見学し、いつも即決でした。ただし、都区内なので、どこに住んでも通勤は大差がなかったのでしょう。これらは、賃貸住宅への転居の話です。

ところが、購入するときは違っていました。予算のことが無論あったのかもしれませんが、一定のエリアに絞って選択しようとしていた自分がそこにありました。

自宅マンションの大きな値上がりを喜んだとき、都区内から横浜市に転居を考えたこともありました。新婚当初住んだのが横浜だったので、馴染みがあって頭に浮かんだからですが、最大の理由は資金にありました。

売却したらローンの残債を清算してもびっくりするほどの大きな現金を手にすることは分かっていましたが、それを頭金にしてもサラリーマンの筆者には値上がり急な都区内ではランクアップした買い替えは実現できそうになかったのです。そこで、まだ値上がりの波が及んでいない周辺部の物件に狙いを着けたというわけです。

わが家の値上りは、同エリアの全ての物件の値上がりも起こっているので、資金調達力が特別にない限り、同エリアでのランクアップ買い替えは難しいのです。

これらの経験を通じて知ったことは、「住めば都」という古い格言の実感でしたし、場所に強い執着がなくても、予算次第で人は動けるものだということでした。

今、マンション選びで大事なことは、先入観や固定観念を取り払い、条件を一旦白紙にしてみることかもしれません。

仕事の都合上、この辺りを離れることはできないとするなら、購入物件の対象を新築一本から中古も念頭に置くとか、その中古も中々良い物がないとしたら、築浅物件から思い切って30年ものに目を向けることです。

通勤時間が1時間以内なら特にこだわりないという人なら、思い切って沿線・地域を拡大してみることが必要です。遠いと思っていたエリアが、意外に便利な駅であるかもしれません。ローカルと思っていた街が、行ってみたら思いがけなくお洒落で賑わいのある都会であったなどに気づくかもしれないですね。

今日のブログのタイトルは「迷走する買い手」でしたが、これはネガティブな言葉ではなく、マイホーム実現に辿り着く過程では迷走してみることも大事なことと言いたかったからです。

いくつかの知らない街を迷走してみれば、意外な発見をすることができるかもしれません。

 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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