「賃貸していたマンション」売却で気を付けること
- 2016.06.10
- マンションの売却
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
マンションを資産形成のために購入する人が増えていると、いろいろな所から聞こえて来ます。
「サラリーマンやOLが老後のために」マンションを買うという話、富裕層が相続税対策やコレクター的に買うという話、円安も手伝って国際的な割安感が強まった日本の不動産を買うという中華系の外国人投資家の話などです。
それらをグルーピングすると、サラリーマン投資家をAグループ、富裕層の投資家をBグループ、そして外国人投資家のCグループになりましょう。
ABCのうち、最近シェアを伸ばして来たのがCグループであり、東日本大震災後のマンション市場を活性化させた一大勢力に成長していると見られます。
都心の国際的に有名なアドレスである六本木や赤坂、新宿、渋谷などに建つマンションを国際的に見て割安だということで躊躇なく購入する外国人投資家が中国や台湾、シンガポール、香港などに多数いるらしく、大手の不動産仲介業者を中心に海外に支店を開設して積極的な需要掘り起こしを図っているとも聞きます。
マンション価格上昇の一因と言われている彼らですが、実需でないところに危険がはらんでいます。価格が割安なうちは需要の拡大をもたらすでしょうが、価格高騰によって利回りが低下するようなことになれば投資熱は一気に冷めてしまうことでしょう。
需要が後退すれば当然ながら価格は下落トレンドへ転換するに違いありません。
今のところ、はっきりした方向転換の様子は見られないものの、波乱要因になって行くのは間違いないように思います。
さて、今日は、投資したマンションを売却すると、大きな損失を被るかもしれないという話をしたいと思います。
●賃貸したまま売るとき
投資したマンションを空き家のままにしておく人はなく、大抵は賃貸するはずです。
転勤のため賃貸中という人もありますね。
その賃借人付きマンションを売却すると、どのような問題が起きるのでしょうか?
居住者のあるマンションを購入する人は、投資家です。投資家にとっては、購入後ただちに賃料収入が得られるのですから、願ってもない好条件と言えます。
ところが、投資家の狙いは利回りの高さにあります。賃料は確定しているので安心感が持てるとはいえ、大事なのは投資効率です。
つまり、いかに安く買うかにあるのです。
売り手は高く売りたいと考え、買い手は安く買いたいと考えます。これは、投資マンションに限りません。
しかし、自己居住が目的の買い手の場合は、住みたいと強く感じる物件ならば、髙いと知りながら買ってくれる可能性があります。
利回りが低くても買ってくれる投資家があるとしたら、そのマンションは稀少価値がとても高く、得難い物件、例えばヴィンテージ物件や将来ヴィンテージになるかもしれない別格の価値ある物件に限られるはずです。
投資家の中には不動産コレクター的な人も少なくなく、価値あるマンションを複数保有し、保有していることに満足感を得ると聞きます。購入目的が曖昧模糊としていて、引き渡しを受けてから貸すか使用するかを考えるタイプです。
宝石に例えればダイヤモンドの輝き、そのような物件は価格がそもそも高く、賃料も高いが利回りで見ると大抵は低いものです。
こうした特例的な物件以外は、単純に価格の安さが投資家にとっての優先条件になっているのです。
買い手、すなわち売却のターゲットが投資家に限られるときは、高く売れないと覚悟しなければならないのです。
賃貸付きは得策とは言えないというわけです。
●空室にして売るとき
しからば、賃借人が転居し、空室になってから売り出したら高く売ることが可能になるでしょうか。住みたい人(実需客)も対象に加わることになるのですから、高く売ることが可能です。
ただし、ワンルームマンションは除きます。ワンルームマンションを自己居住目的で購入する人は、とても少ないからです。
昔は単身者が好んで購入したワンルームですが、2000年代に入ってからは金利の低下が購買力を押し上げたために、単身者も1LDKや2LDKを選択するようになってワンルームの人気は低下したからです。
ワンルームは投資家向けの物件と考えた方が正しいのです。
さて、投資家限定よりターゲットが広がった自宅マンションは、高く売れるかもしれません。
高くという意味は必ずしも買い値を超える高値という意味ではありませんが、ここは購入価格以上で売れた場合に限っての話です。
例えば5000万円で購入したマンションを5000万円で売却することに成功したとしましょう。
正確には、取得費用と譲渡費用(仲介手数料など)を計算に加えることが必須なのですが、それらの費用も含めて利益(譲渡所得)はゼロだったとします。
ところが、税務上(計算上)、譲渡所得は発生してしまうのです。何故でしょうか?
賃貸中に不動産所得が発生したので、確定申告をして来たはずです。計算上マイナスの所得になった人も、損益通算によって税金の還付を受けられるので申告はしたはずです。
申告が何年かに渡っているとします。
不動産所得の計算は、賃料収入から経費(減価償却費・リフォーム費・金利・管理費・固定資産税・火災保険料・交通費など)を差し引き、その差額を出します。
経費の先頭にある「減価償却費」が注目ポイントです。減価償却費は、現金支出を伴わない経費だからです。
マンションの価格を土地と建物に分解し、建物部分について、簡単に言うと47年(税務上の耐用年数)で割って1年分の経費を算出します。建物代が4700万円であるとしたら、毎年100万円ずつ経費として計上できるのです。
仮に自宅を5年賃貸していたと仮定すると、500万円の減価となります。購入価格が6000万円だったとすると、5年後には建物価値が500万円減価し、土地の価値が変わらないとしたら5500万円の自宅と計算されます。
6000万円の自宅を6000万円で売却したのだから譲渡所得はゼロとはならないのです。そうです。500万円の譲渡所得が発生するというわけです。儲かっていないのに、です。
5年間賃貸していたが、購入したのは9年前だったとすると、5年を超えるので長期譲渡扱いになるのですが、ざっくりと言えば、所得税と住民税で100万円くらいの課税がなされるのです。
5年間、計算上不動産所得がマイナスになって確定申告したら所得税が還付されたという人も、5年後には納税義務が発生するかもしれないというわけです。
この話は是非覚えておきたいですね。
●自分で住んで儲けるのが一番
賃貸していた自宅に転勤から戻ったら、賃借人の退去を機に自宅へ戻りましょう。売るのはそれからがいいのです。
一旦住めば、「現に居住の用に供している不動産を譲渡」に該当することになります。この場合は計算が違って来るのです。
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があるからです。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除といいます。
適用を受けるためには注意しなければならない条件もあるのですが、記憶に留めておかれるといいでしょう。また、この特例を使うと、次の住まいを購入する際に一定期間は「住宅ローン控除」が使えないことにも注意を要します。
詳細は拙著「住みながら儲けるマンション選びの秘密」に譲りますが、マンション投資は「貸す」ではなく「自分で住む」ことが一番効率的です。
最近、ワンルームマンション投資も盛んですが、これには魅力もある反面、リスクも高い部分が少なくありません。ここでは述べませんが、「森羅万象、何事も裏と表があるものです。メリットとデメリット、長所と短所がある」のです。
人それぞれに様々な考えがありますし、思惑や期待もあります。先行き不透明な現代、将来に備えて自宅以外にマンションを求めるサラリーマン投資家も多いようです。
しかし、思惑・期待は裏切られる場合が多いと考えた方がよいのかもしれません。筆者の経験でも「そんなに巧く行かない」のが現実と覚えておくといいかもしれません。
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