空室率3割時代。自宅の賃貸を考える
- 2016.06.15
- マンション購入アドバイス
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
「転勤になったので自宅を賃貸することにしたが、借り手がつかない」という悩みを抱えている人が少なくないそうです。
大手生保会社に勤めていた友人がいます。彼は勤務先の系列企業が分譲した一戸建てを購入して住んでいましたが、転勤になって家族ぐるみ転居したとき、聞いてみたら、留守宅は勤務先の生保が借り上げてくれたので心配いらないのだと言うのです。
他人事ながら心配だったのは、彼の家に遊びに行ったがとき、都心から随分遠いなと感じたためでした。こんな不便な場所で、借り手はあるのだろうかと疑問に思ったからです。
会社が借りてくれるということは、おそらく同じ転勤族に会社は貸し付けるのでしょう。
賃料その他の条件は聞き出すのを止めましたが、想像するに会社が出した条件は悪くないものだったはずです。そして、エンドユーザーとなる同社の社員は会社から安く借りることができる、差額を会社が負担する、そんな手厚い処遇策を生保は持っていたはずです。
この話は昔のことなので、今は条件も変わったか、借り上げ策自体が廃止されたのかもしれません。
しかし、優秀な社員を確保したい企業は、程度の差はあっても今も類似の福利厚生制度を採り続けているはずです。
さて、このような恵まれた企業に務めていない人は、転勤のとき、自宅をどう処分するかについて前もって考えておかなければなりません。
筆者に届くご相談メール、もしくは検討マンションの評価依頼のメールに付記されるのは、「転勤時に売りやすく、貸しやすいものを条件にしているのですが、この物件はどうでしょうか?」といったものです。
過日、新聞にアパートの空室率が急上昇という記事が載りました。それによると、首都圏ではアパート(鉄骨や木造の賃貸住宅)の空室率が30%を超えて35%に達したとありました。
鉄筋コンクリート造のマンションと一戸建ては含まない統計だそうですが、この30%超という数字に違和感を覚えたのです。「アパートの空室率って、そんなに高いの?」と思った次第です。
三大新聞や日経新聞の経済欄によく載るのは「貸しビルの空室率」で、景気の状態を測るひとつの指標として注目されていますが、空室率は2016年6月の発表では4.05%ですが、概ねいつも一桁台なので、アパートが30%超とは驚くほどの差です。
何でも、入居者を募集中のアパートの総戸数の内、空いたままの部屋の割合を示すデータなのだそうですが、これだけ空室が多いと、借り手の争奪戦は水面下で激烈なものになっているはずです。
アパート建設の受注競争も激しい昨今、差別化されたアパートを建てないと30年間の借り上げを地主(発注者)に約束する業者も大変なのだろうと想像してしまいます。
新規建設が続いて供給が増える一方で、借り手が増えない状態になったら、賃料も下がるだろうし、借り手が中々決まらないアパートも増えて行くのだろう。そんな心配もしてしまいます。
東京は日本全体のトレンドと逆行するように、人口の増加(社会増)が続いていますが、それでも空室が多いのです。
これはアパートの話ですが、広い意味での賃貸住宅も同様のことが言えるのではないかと思います。相続税対策としてのマンション建設がなくなったという情報はなく、おそらく今日もどこかで建設中のはずです。
分譲マンションも、何らかの事情で賃貸に回されるケースは少なくないので、トータルの賃貸物件は数限りなくあることになるわけです。
問題は、競争力です。ありふれた建物、立地条件のよくない物件は、当然競争力に欠け、賃貸市場で負けてしまいます。勝つには賃料を下げるしかありません。
一般論として言えば、賃貸マンションとして建てられた物件より分譲マンションの方が優れているはずです。とりわけ設備が違いますし、規模も大きいのでエントランス・外観を中心に豪華に見えます。
こうした差別感が賃料の低下を食い止めてくれるものです。しかし、分譲マンション同士の競争となれば別です。
建物のグレード感、設備の充実度などで優っている方が貸しやすいでしょうし、賃料も高く取れることでしょう。
建物は立派でも、立地条件が劣れば競争に負けます。賃貸マンションを探している人に限らず、東京の人は利便性優先派が圧倒的に多いのです。
分譲となると、ある程度の長さをそこで暮らすという前提なので、家族の成長も考慮して広さ・間数を条件にしますが、賃貸マンションの場合は短期間の仮住まい感覚なので、当座住める広さがあればいい、家賃も勿体ないし、などと考え「便利な場所」が何よりも優先される傾向があると聞きます。
勿論、例外もありますが、多くはこうだと思って間違いないのです。分譲では、最寄り駅から徒歩10分で70㎡が普通でも、賃貸では駅から3分で50㎡が普通になっているものです。
このようなことを考えると、我が家はいざというとき、貸しやすいだろうかという疑問が湧いて来る人も少なくないのではないでしょうか?
そうは言っても、駅近に70㎡を求めれば予算が足らないので、仕方なく駅から10分以上も歩く分譲を選択するしかないという人もあるでしょう。
しかし、可能な限り貸しやすい条件の物件を選択するようにした方がよいのです。貸しやすい家は、「売りやすい」に繋がる場合も多いのです。
最近、分譲価格は安いが駅から徒歩15分などという新規発売マンションも目立っています。広さを求めると、駅から離れた物件になるのも仕方ないという選択を理解することはできますが、よく考えてみることが大事です。
本当に、その広さが必須条件なのでしょうか?モデルルームに惹かれているだけなのではないか? いざ売るというとき、良い条件で売れる物件なのだろうか?あるいは貸せる物件なのか?このような自問自答をしてみることをお勧めします。
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