定借マンションの資産価値は借地期間がカギ

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

このブログで過去に(2015年11月5日)、「安くない定借マンション」という記事を書いたことがありますが、その根拠は、地代と解体準備金という毎月のランニングコストを計算に入れると、一般のマンションの8掛け程度が妥当な価格だが、実際には9掛けくらいの水準で販売されていることを紹介するものでした。

※定借マンション=定期借地権付きマンション

一般マンションが急騰している現在、たとえ10%程度であっても安く感じられる定借マンションが人気を集めても不思議ではない気がします。

人気がどうかは別に、現在首都圏では販売中の定借マンションは8件ありますが、それぞれに悩ましい条件を抱えているようです。

言うまでもなく、定借物件は最初から余命が決まっている特殊なマンションです。借地期限が近づくに連れて価値が下落して行く運命を持っているのです。

極端なことを言えば、余命10年の定借マンションを売却するような場合、価格はおそらく二束三文になるのです。いえ、ただでも要らないと言われるかもしれません。

しかし、借地期間は借地借家法によって50年以上と定められていますが、新築で購入した人が10年後に売却するとしたら、まだ40年の余命はあるので、資産価値としては大きく下落するとは言えないのです。

だからかどうか、たいして安くもない定借マンションも人気を集めることがあります。

今日は、賛否両論が交錯する「定借マンション」について、肝となる部分をお話ししようと思います。

●定借マンションの余命と一般マンションの余命

多くの契約には期限を設けても「延長」があります。いわゆる契約更新ですが、定期借地権契約には延長がないのです。

定期借地権は事業用定期借地権など複数の種類がありますが、マンションで使われるのは「一般定期借地権」で、法では50年以上とする旨の定めがあります。そして、期限が到来したら、更地に戻して(建物を解体して)貸主(地主)に返還しなければなりません。

借地期間は50年「以上」なので、地主が70年でもいいよと言えば70年の契約もありえるわけです。実際にも、このような超長期契約の定借マンションも存在します。

定借マンションは、契約によって寿命が初めから決まっているわけですが、物理的な寿命との差はどのくらいあるのでしょうか?

日本にある鉄筋コンクリートの住宅が、居住可能な状態で存続した例としては、関東大震災以後に「復興住宅」として各地に建てられた「同潤会アパート」が有名です。16の同アパートで残っているものは既にないのですが、最後まで残っていた同アパートの築後年数はおよそ80年でした。

最も有名なのは、代官山アドレス ザ・タワー(東京都渋谷区代官山町。総戸数501戸。36階建て。2000年8月竣工。代官山エリアで唯一の超高層マンション)と、ご存知「表参道ヒルズ(安藤忠雄氏が設計した商業施設)」です。

分譲マンションは、単なるコンクリートの箱ではないわけです。説明の必要がないように、住まいとしての各種設備も必要です。設備はコンクリートほどの耐久性がないので、適切なメンテナンスを続けても更新が必要になります。エレベーターでも30年くらいが寿命とされます。

同潤会アパートも、住み続けるに必要な設備類の更新(交換)を実施しながら、80年を生き長らえて来たのですが、コンクリートか、鉄部か、電気配線かはともかく、80年が限界だったというわけです。

これから新築されるマンションも80年で寿命が尽きるとは限りません。その手前で住むに堪えない状態を迎える建物もあるでしょうし、100年は大丈夫と考えられるものもあるかもしれません。

ともあれ、物理的には50年以上、長寿命の建物で80年の耐久性はあるのだろうと想像することは容易です。ちなみに、日本初の分譲マンションと言われる物件は東京都新宿区四谷に今も辛うじて居住者がある状態で残っていますが、築後60年に達しています。

●余命わずかのときの資産価値の差は?

一般マンションも定借マンションも物理的に同じ寿命であるとしたら、それが尽きる時期が近づくに連れて二束三文になるのは同じ。一瞬そう思った人もあるかもしれませんが、一般マンションには土地所有権が残っています。換金価値はあるのです。

建物が解体され、土地がもともと自分のものでない定借マンションは、借地期限満了とともに無価値になってしまいます。そこが一般マンションと大きく異なります。

ところで、老朽化し住むに堪えない状態になったマンションは、その後どうなるのでしょうか? 廃虚と化す? ごみの捨て場に? 非行少年のたまり場になる? ホームレスの宿になる?

様々な姿が思い浮かびますが、上記のようになるとしたら、オーナーは所有権を事実上放棄したということを意味します。売るに売れない状態になって長い時間が経過したからです。

維持管理に多額の費用がかかる劣化状況を迎えたが、改修工事を行うにも積立金では足らず、一時金徴収を求めても、また毎月の積立金の増額についても合意を得られず、結局は劣化するがままになるのです。

「なんだ、それじゃあ、土地付きであっても土地なしの定借マンションと変わりないじゃないか」と思われた読者もあるのではないでしょうか?しかし、現実には違います。

●余命は維持管理によっても違ってくる

マンションの物理的な寿命は、理論的には100年以上と言われます。

ただし、詳細は割愛しますが、100年耐久コンクリートの使用と劣化対策を施した設計・施工であること、並びに長期修繕計画に基づき、必要な改修(改良と修繕)工事に必要な資金を積立てることなどが条件です。

人間は、定期的な健康診断を受け、異常があれば医師の指示に従い、日常は運動や栄養バランスを心がけることで長く生きることができます。

それでも10歳まで生きる人は稀です。その原因のひとつは、弱い体に生まれてしまったからと考えられます。

マンションも同じです。強い体で生まれ、つまり高耐久マンションとして誕生し、日常の管理と定期診断、必要な手入れを行っていれば長寿命マンションとなりますが、最初から耐久性に劣る構造で、かつ手入れを適切に行わなければ短命に終わるのです。

●維持管理に関する当事者意識が希薄になる時期

最近のマンションは、ほぼ例外なく「長期修繕計画」とともに分譲されています。

しかし、計画は管理会社の提案に過ぎません。見直しを定期的に行い更新されるものの、実施するかどうかは管理組合の決議によります。

初めのうちは、適切に実施されて行くでしょうが、何十年も経過して来ると費用も嵩むので、なおざりになる部分も出て来て、時の経過は隠しようもない状態となります。やがては「今さら」の気分が蔓延して手入れが放棄されてしまうのです。

一戸建ての家を思い浮かべてみるとよく分かります。一目で手入れを怠って来たと分かる老朽家屋が周囲に多数見られます。マンションも、いつか維持管理に対するオーナーの情熱が失われてしまうということかもしれません。

その時期がいつか、そこが問題ですが、それを読むことは不可能です。

ただ、定借マンションの場合は「どうせ解体するのだから・・・」が根拠となって、一般マンションより「メンテナンス放棄」の時期が早くやって来る可能性が高いのではないかと思います。

●人間の寿命とマンションの寿命

ところで、既に述べたマンションの寿命と人間の寿命を比べてみると、人間の寿命の方が長いケースも多い気がしてきます。

人間の寿命は80歳を超え、近い将来は90歳にもなろうかというレベルだからです。

仮に40歳で新築マンションを購入した人が90歳を迎えるとき、マンションは築50年です。まだ余命は十分あるはずです。しかし、維持管理にどこまで力が注がれるでしょうか? 快適な暮らしを続けられる状態にあるでしょうか?

定借マンションの場合なら、残り少ない寿命を静かに待つというイメージでしょうか。つまり、余命は人間と大差ないとも言えるのです。

●子に美田を残さない考えの人なら

40歳の人が新築マンションを購入し、90歳で天命を全うしたとしたら、購入したマンションは50歳です。一般マンションなら資産的な残存価値もあるので、子孫に残す意義はあるでしょう。

しかし、定借マンションの場合は契約満了が迫っているので、資産価値は限りなくゼロに近いということになります。

ということは、定借マンションを購入するときは、子に美田を残すという考えを排除しなければならないことになります。

●寿命が決まっている定借マンションの価値を左右するものは?

ここまでは、築50年くらいの段階で購入マンションがどうなってしまうかを念頭に置いて述べて来ましたが、今まさに定借マンションを購入しようという人が50年後のことまで考えているとは思えないので、次は20年くらい先に想いを馳せてみます。

というのも、購入者の多くは10年から20年くらいで住み替えが必要になって来るからです。

定借マンションの期限は契約で50年以上と決まっています。仮に50年契約だったとすると、購入から20年を経過したら余命は30年となります。

余命30年と決まっているマンションを高値で買ってくれる人はあるでしょうか?

「30年住めれば十分。資産価値がゼロになっても気にしない。賃貸マンションに住むのと比べたら、室内を好きなようにリフォームできる分がメリットだ」などとして買ってくれる人もあるかもしれません。しかし、その代わり価格はそれなりの安さを求めるはずです。

しかし、仮に70年契約の定借マンションであったらどうでしょうか? 購入から20年経っても余命は50年ということになります。50年あれば、一般マンションの寿命と大差ないと思う人も少なくないことでしょう。

であれば、価格も極端なことにはならないはずです。

契約期間が50年か70年かでは、売却価格に大きな差が生まれる可能性が大ということです。

定借マンションの資産価値を左右するのは土地の賃貸契約期間ということになって来るのです。

●定借マンションは値上がりしないのか?

定借マンションは余命が短くなるに連れて資産価値が低下して行くことは間違いないとして、単純に5000万円の物件が4000、3000と下降カーブを描くのでしょうか? 逆に、いっときでも値上がりすることはないのでしょうか?

このことについて最後に触れておきたいと思います。

一般の中古マンションの価格は、新築価格に連動するものであることが分かっています。築後20年も経つと、その時点の新築相場に対して半値くらいが中古の平均的な取引価格になります。

20年前に100で分譲されたマンションでも、20年後の新築が200くらいに上昇していれば半値の100、すなわち買い値と変わらない取引が可能となります。

無論、半値でなく7掛けくらいに評価される物件もありますが、首都圏平均では半値くらいになるのが実態です。

定借マンションの場合なら、一般マンションの100に対し80で分譲されたとして、20年後の新築が200で8掛けの160が新築・定借マンションの相場であれば、その半値の80となるはずです。80ということは買い値と変わらないことになります。

定借マンションは得難い好立地である場合が多いので、売却価格は半値の80ではなく90かもしれません。としたら、購入価格より高い価格になる可能性もあるのです。

もっとも逆のケースも考えられます。新築相場が下落すれば、中古も安く相場が形成されるので、定借マンションだけが独歩高になることはないでしょう。

その後も、余命が短いという弱点が価格の下振れになるでしょうが、それ以上にプラスの要因があれば、さほどの下落にならないケースもあるかもしれません。

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