第621回  借地権マンションの適正価格は?

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定期借地権付き、または普通借地権付きの物件がときどき現れます。それぞれ価格が一般マンション(土地が所有者)より安く分譲されます。中古マンションも同様に一般マンションより安いのが普通です。

 

どのくらい安ければ妥当なのでしょうか?お尋ねは例外なく「借地権マンションですが、適正価格は?」です。今日は、その点についてお答えしましょう。

 

●借地権マンションの土地の意味

ご承知のように、マンションの土地は建物所有者の共同所有(共有)になっています。登記上は「敷地権」と言います。一方、土地の所有権がなく借地権になっているマンションがあります。この場合は「借地権の共有(正確には準共有)となります。

 

借地権には大別して「普通借地権」と「定期借地権」があります。前者は旧法借地権と呼んだりします。「普通借地権」は、借地契約の期限が来ると正当事由がない限り更新を拒絶できないことになっています。事実上の永久借地権と言えるものです。正当事由に「地主自身で使用したいから」は該当しないこととされるためです。

 

地主から見れば、一度貸したら二度と戻ってこないという不利な契約と言えないこともないのです。そこで登場したのが新法の「定期借地権」です。この法律は、いかなる理由があろうと期限が来たら更地に戻して土地を地主に返還しなければならないと定めています。

 

定期借地の期限はマンションの場合50年以上です。50年以上なので、契約で70年などと定めることができます。

 

こうした条件を考慮したとき、借地権マンションは土地の所有権付き一般マンションに比べてどのくらい安いものであるべきかが検討課題になります。

 

●地代か固定資産税か

言うまでもなく、借地権マンションは地代を地主に払う必要があります。その代わり、建物の固定資産税は当然に納税義務がありますが、土地に関しては納税の必要がありません。

 

地代はどのくらいでしょうか?定めはありません。地主の立場では、マンションオーナーから地代を集めて固定資産税の原資とするはずです。つまり、固定資産税納付額より地代の合計額は多いと考えられます。

 

どのくらい多いかは、地主の考え方によるのですが、固定資産税の3倍というのが一般的と言われます。ある借地契約書を見たところ、地代の改定という条項に固定資産税の改定があったときは、改定後の税額×3と明記してありました。別の例では2倍というのもあるようです。

こうした事実から見て、買い手にとって借地権マンションは税金に関する限り、得なことは何もないことになります。逆に、損であるとも言えるわけです。

 

ちなみに東京都の場合、土地だけの固定資産税は専有面積70㎡クラスのマンションで年間30,000円くらいなので、地代が月額2,500円なら安いと言えますが、2倍の月額5000円とか、3倍の7,500円なら借地権マンションは損と言えます。

 

誤解のないように付記しますが、その点だけでマンションの総合価値を判断するものではありません

 

●価格の安さが借地権マンションの魅力

借地権マンションは一般マンションより安い傾向にあります。安い理由は、どこにあるのでしょうか?

 

ひとつは所有権の土地より借地権の方が、取得(買収)価格が安いことにあります。取引の実態的には7掛けとか6掛け、高くても8掛けと言われます。所有権なら10億円する土地を7億円とか6億円で取得できるのですから、新築マンションの分譲価格は安くなって当然です。

 

もうひとつは、所有権マンションより借地権マンションは心理的価値が低いことを挙げなければなりません。地代がかかる、自分のマンションなのに土地は他人のものと思うと安くて当然という購買心理が買い手に働くためです。デベロッパーとしては、安く土地を取得出来ても安く売ることになり、大儲けできるわけでもないのです。

 

結局、分譲価格は土地所有権付きマンションに比べて10%程度安いところに落ち着くようです。もっとも、最近は急激な価格上昇が全体的に起こったため、借地権マンションだから安いという印象を与えているかと問われると判然としないケースが多いようです。

 

●定期借地権の場合

普通借地権マンションは、地代と固定資産税の差、自分のものであっても土地が借りものであるということから来る心理的な抵抗感(評価ダウン)から所有権マンションより10%程度安いことが適正な価格と考えますが、定期借地権マンションはどうでしょうか?

 

先に述べた通り、期限が来たら建物を解体して地主に返還する義務を負うのです。解体する費用も掛かるので、「解体準備金」という積立も求められます。

 

固定資産税より高い地代プラス解体準備金というランニングコストがかかり、期限が近づくに連れて価値が下がり、最後は0円になるマンションと分かっているものに所有権マンションと同額を払って購入する人はありません。

 

考えるまでもなく、普通借地権のマンションより定期借地権のマンションの方が安くなければ割に合わないのです。

 

どのくらい安ければバランスするでしょうか?これは借地期間にもよるのですが、実態がどうかは別として一般マンションより20%以上は安いことが必要です。

(同規模、同グレードのマンションを類似の立地条件の場所で建設分譲した場合ということですが)

 

所有権付きマンションが5000万円の場所で定期借地権の場合は4000万円が妥当と筆者は考えます。

中古は違います。一般マンションも中古になれば値下がりして行きますが、新築時に一般マンション100で定借マンション80であっても、築20年で一般マンションの中古が仮に80であるとき、期限が短くなった定借マンションは一般マンションの20%安ではなく70なり、60なりと差が開くと考えられるからです。

 

●契約期間の持つ意味

資産価値としては、期限が到来したとき、建物は解体するので無価値、土地もそこを使用する権利を失うので無価値です。その期限が近づくほど、定借マンションの価値はゼロに向かって下落して行きます。

 

契約期間が最短の50年である物件は、20年住んで売却するとしたら「あと30年しか使えませんが買って下さい」というようなもので、それを買う人は考えるでしょう。これを買って20年住んだら売るときは「10年しか住めないマンションか。買ってくれる人はいるだろうか?」と。

 

契約期間が70年の場合は、「20年住んでも残りは50年もあるわけですから、次に買って下さる人もそれなりの価値を認めてくれるに違いない」と考えるかもしれません。

 

このような観点で価値判断をすると、契約期間が70年なら高くてもいいと言えます。その差は10%、すなわち、所有権マンションに比べて9掛けでバランスすると見てもよいかもしれません。

 

もちろん、解体準備金の額、地代などとの関係もあるので、中には8掛け程度が適正価格となるケースもあるでしょう。

 

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