2年先に完成のマンションに警戒感。ミニバブル崩壊か?

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

小規模マンションでは建物が完成してから販売を始める例も見られる一方で、完成が2年後というタワーマンションの販売例も少なくありません。

大規模で競争力の高い人気マンションで、最近ちょっとした異変が見られます。完成までの2年間に社会・経済環境がどう変化するか分からないので購入の決断ができないと、申込みキャンセルが相次いだというのです。

●経済変動とマンション市場。歴史を辿ると・・・

経済がグローバル化した今日、世界のどこかで何か事件が起こると、たちまち「〇〇ショック」という言葉が一人歩きを始め、動揺が起こります。

日本国内でも、他国で大きな事件や経済変動が起こると、安全資産と言われる円が買われ、急激な円高になります。 円高は国内の輸出型企業の採算悪化を招くことから、日本株の多くが売られて大幅な下落となり、連日TV・新聞紙面を賑わせます。

昨年の「中国ショック」、つい最近の「英国ショック(EU離脱)」、少し遡ると8年前の「リーマンショック」が記憶に新しいところです。

これからも、私たち国内に住む者には想像もできない大事件が突然に起きて驚かされ、たちまち株価や為替の急激な変動を巻き起こすことでしょう。

問題は、それらが一過性の投機的な動きに留まらず、景気後退や先行きの不安感を募らせ、日本国民の縮み志向を助長することにあります。

今、田中角栄ブームなのだそうですが、角栄さんが首相の職にあったころ(1972年~)、角栄さん持論の「日本列島改造論」が全国各地で不動産価格の上昇を招き、土地バブルを引き起こしたことをご存知でしょうか? 

それこそ山の中の土地までが値上がりすると信じられ、土地投資ブームが起きたのです。その頃は、一国の総理がビジョンを示せば国民はそれを信じ、そこに便乗した関連業界の商魂が各種のブームをけん引した時代でした。

土地バブルも将にそうでした。全国に新幹線網を張り巡らせ、高速道路が日本を縦断するという未来予想図は、地方の工業化を促進し、過疎と過密の問題と公害問題を同時に解決するという構想によるものでした。 

それが、国民を「1億総不動産屋」と言わしめる土地ブームに巻き込み、山林原野に至るまで地価の暴騰をもたらしたのです。

直ぐあとの19373年、第四次中東戦争をきっかけとして起きたオイルショックは、物価と経済に決定的な打撃を与え、「狂乱物価」と呼ばれるインフレを招きました。

オイルショックは日本中にパニック状態を引き起こしました。

トイレットペーパーや洗剤など、ほとんどの物資の買占め騒動、デパートのエスカレータの運転中止などの社会現象も発生しました。また、省エネ対策の一環として深夜の電力消費を抑制しようと、ネオンの早期消灯やテレビジョン放送の深夜放送休止などの処置が取られたのです。

物価上昇は建築資材にも及びました。地価の高騰に加えて建築費も急上昇したため、マンション価格は暴騰しました。筆者の記憶では、都区内の新築マンション価格は僅か1年で20%以上も高くなるという異常事態でした。

1980年代に入ると、日本製品の脅威にさらされていた米国が円高誘導を画策します。当時,アメリカは巨額の財政赤字や高金利を背景にドルの独歩高を通じて膨大な貿易収支の赤字を発生させ、世界的な対外不均衡が問題になっていたのです。なかんずく、日本の円は安過ぎるとやり玉に挙げていました。

そして、ニューヨークのプラザホテルで開かれた先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議 G5で討議されたドル高是正のための一連の合意事項をG5声明として世界に発信しました。「プラザ合意」と呼ばれました。

プラザ合意によって、急激な円高ドル安に市場は大きく動きました。日本の輸出産業は大打撃を被りました。

そこで、日本政府・日銀は国内景気の冷え込みを懸念し、大幅な金融緩和政策を採りました。その結果、お金が市場にあふれ、金融機関は不動産と株式投資に貸し出しを増やすほかなく、貸し出し競争が激化しました。

こうして生まれたのが「バブル経済」でした。

設備投資が増えて物がたくさん生産され、その販売によって企業も個人も潤い、企業はさらなる設備投資を増やす。個人は消費生活を楽しむ。この連鎖は「右肩上がり」の経済を形つくるとともに、それが永遠に続くと錯覚するに至ります。

これを「楽観の錯誤」と言い、英国の経済学の書物に登場して来る言葉だと聞いたことがあります。

日本国民は1980年代後半、まさに「楽観の錯誤」に陥り、我が世の春を謳歌しました。当時はやった若者文化、「お立ち台パフォーマンス」に象徴されるディスコダンスのように、誰もが踊り狂った時代でした。

輸出産業が不振に陥り景気が後退することを懸念した中曽根内閣(1982年~1987年)は、これを打破する内需拡大策に「民活」という手段を使います。

国有地の活用に民間資金を使う、言い換えれば国有地を提供するから不動産業者、建設業者はうまく活用しなさいと指令を発したのです。

開発に伴う各種規制を緩和するとともに、民間の活力を導入して都市開発を目指したのですが、これにより都区内の一等地にあった国有地を民間に払い下げました。民間企業はマンションを開発、これを分譲して大いに利益を上げたのです。

一等地のマンションが安く分譲されるというので、山手線の駅そばのあるマンションでは、分譲開始初日、何千人もの購入希望者が長蛇の列をなし、その写真が週刊誌に掲載されるなど大いなる話題となりました。

●アベノミクスとマンション市場

バブル経済が崩壊してから約25年、デフレに悩む日本経済の転換を意図して、黒田東彦・日銀総裁は就任と同時に物価上昇率2%の目標を掲げて大胆な金融緩和策を打ち出しました。

一方、安倍内閣が打ち出したのは、アベノミクス(経済重視政策)と呼ばれ、三本の矢で表されます。

三本の矢とは、?日銀との連携による異次元の金融緩和策、②国土強靭化策と称する公共投資の増加策(機動的な財政出動)、そして③成長戦略(規制緩和など)ですが、政策発表から3年以上経過しました。

しかし、国民を熱狂させたでしょうか?2016年に打ち出したスローガン「一億総活躍社会」のフレーズに国民は踊り出したでしょうか?

一時期は、株価が上がり資産効果も表れましたし、円安が進み輸出産業は利益を増やしました。景気は上向きになったのは確かです。税収も増えました。効果を踏まえて、政府は大企業に圧力をかけ、賃上げを誘導しました。賞与が増え、ベースアップを実施する企業が増えました。

また、円安は外国人の訪日旅行者を増やし、インバウンド消費を伸ばすことに貢献しています。

しかし、日本人の消費は伸び悩み、GDPはめざましいプラスの数値を示すに至っていません。金融機関も貸し出し先がなく、金融緩和の効果は限定的です。

消費はGDPの6割を占めますが、「消費より貯蓄」の傾向が強いのです。国民が将来に希望が抱けないことに原因があると分析されています。先行きが不透明というより、先行き不安ということなのでしょう。

日経新聞2016年7月9日には「消費 再びデフレ色」の見出しで、デフレ脱出を図る政府・日銀を失望させています。

デフレが続く経済、その中にあってマンション・土地の不動産だけは最近3年余、インフレ色をくっきりと見せました。 2年前にタワーマンションの購入契約を結んだ人は、2年後の建物完成期に5割も値上がりしたと喜んでいます。ちょっとしたバブルがマンション市場では起こったのです。

この3年、マンション価格は首都圏全体で20%も上昇しました。ただ、供給戸数は増えず、2005年頃に比べると半分です。これは、需要のすそ野が広がらなかったことを意味します。極論すれば、特定の少数派によって市場を形成されていたのでした。

筆者は、アベノミクスが成功して景気回復が着実に進み、先行きに光明が見えなければ需要は伸び悩むと考えていました。端的に言えば、賃金上昇が中小企業まで拡大することがマンション市場の本格回復の条件と見ていました。

しかし、期待は淡いものでした。「上がるから買う。買うから上がる」のバブル期に起きた循環に至らないうちに、失速しかけています。

●価格の下落が起こっても・・・

今買うのは2年後に逆のことが起きるかもしれない。そう考えているわけでもないようですが、2年先の完成マンションを契約することにタメライを覚えるという声も聞こえて来ました。

世界経済と無関係ではない国内景況、漠とした不安心理、そのようなものが模様眺めに態度を変化させているのでしょう。

バブル末期、高値のマンションを契約した数百人が、2年後の建物完成の直前に手付金を放棄して大量解約したという事件がありました。

バブル崩壊によって高値売却が叶わないと知ったためか、それとも手付金を捨てても、それ以下の価格で買える優良な物件が近所で発売されたからか、今となっては正確な理由が分からないのですが、この先そんなことが起きないとも限りません。

何が起こるか見通せない世の中ですが、大事なことは「住まい購入の目的は何か」を忘れないことです。マンション選びは、資産価値の視点も重要ですが、優先する条件は「住まいの快適性」です。

通勤の便、生活環境、便利な住宅設備、心地よい室内空間、耐震性能やセキュリティシステムがもたらす安全性と安心感などが豊かなマンションライフに結びつきます。

マンションの資産価値が目減りしても、売却しなければ含み損を抱えるだけですみます。つまり売らなければ損も得もないのです。転居の必要が起こっても、売らずに賃貸でしのぐこともできるでしょう。

売却損を出すことになって「経済的な利益」は得られずとも、マンションライフが「精神的な利益」をもたらしてくれたら、その買い物は間違いではないはずです。

蛇足ですが、売却損が出ても賃貸マンションで暮らすことに比べれば実は損でもないボーダーラインがあります。そんな試算が「高値買い」になりがちな購入の決め手になることも多いのです。

 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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