第573回「優良マンションから売り物が大量に出るわけは?」
- 2017.08.30
- マンション市場
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昨今(2015~2017年)、有名・優良マンションに売り物がどっと出て来る現象に遭遇します。
「勝どきザ・タワー」「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」、新豊洲の「SKYZタワー&GARDEN」、同「BAYZタワー&GARDEN」、汐留の「東京ツインパークス」、「富久クロスコンフォートタワー」といった物件がとりわけ目立ちます。
共通点は「大規模タワーマンション」だということです。
これは異常事態です。平時は、有名マンションほど売る人は少ないものです。売るのは惜しいと考えるためです。戸数が多いので、売り物も多くなって当然とも言えるのですが、筆者の印象では多過ぎるのです。
ちなみに、「勝どきザ・タワー」はSUUMOせ検索すると、2017年8月29日現在、13件の売り出し中物件が見られます。汐留「東京ツインパークス」では、リハウス店だけで売り出し中の物件が14件もあります。44㎡のワンルームから198㎡の3LDKまで、内11件が億を超える(最高5億円)売り出し期価格となっています。
「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」は45.65㎡4580万円から71.23㎡7800万円まで6件、「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」では16件(5400万円~1億5900万円)も売り出されています。
湾岸を離れて、チェックしてみましたが、「富久クロスコンフォートタワー」にも野村不動産アーバンネット店だけで14件の売り物がありました。1LDK5580万円~1億4500万円とあります。
これらは、現在売り出し中の戸数に過ぎないので、過去1年を遡ったら全部で一体どのくらい売り出され、取引が行われたことでしょうか?
●「住んでみたら問題が見つかった。だから売る」のではない
中古マンションの検討者から、「何か問題があって売り物件が多いのでは」というご質問がよく届きます。同一マンションの中に検討中の住戸以外にも多数の売り物があることに気付くためでしょう。つまり、欠陥や何らかの問題点があるマンションなのではないかの心配からのお尋ねなのです。
ここに掲げた物件は、おそらくそんな欠陥や建物外の問題は何もないはずです。
仲介業者でない筆者でも、売却の希望理由を知る機会はありますが、それぞれに「なるほど」と思わせるものが窺えます。
上記の物件と離れて少し紹介すると、「転勤命令が出たため」、「距離があるので大丈夫と思ったが住んでみると高速道路の音が意外に近いので不快である」、「子供が大きくなって手狭に」、「営業マンの押しに負けて買ってしまったが、駅の周囲に店が少ないので不便と気付いた」、「環境重視で買ったが通勤時間が長く苦痛である」、「前のビルがどのくらい迫って来るか心配だったが予想以上に近いので住むことなく売ってしまうことにした」、「子供が独立したので都心の便利なマンションへ住み替えたい」等々。
こうした一般的なもの以外には、「欠陥マンションだった」という理由も考えられますが、欠陥マンションかどうかは最近なら全てインターネットの掲示板に書き込まれてしまうので、事前に検討者は直ぐ気付くものです。
騒ぎが収まるまでは売るに売れずということもあります。欠陥であることを隠して売却することはできないので、売りに出す人は少ないのですね。騒ぎが収まって問題が解決してから嫌気していた人が売りに出すということはあっても、ずっと後のことですし、その数も多くはないというのが過去の欠陥マンションの経過を見ていた筆者の実感です。
そうでないマンションがあるかどうかは寡聞にして知りません。
●ミニバブル現象
少し前まで、湾岸エリアを中心に「マンション投資ブーム」が起きました。中国人の爆買いの一種で、国際的に割安とされた東京のマンションに投資する外国人が増えた(流行した)ことに加えて、2015年から税率が上がった相続税対策として日本人富裕層がタワーマンションの高層階は有利という情報を得て買いまくったからです。ある種の「バブル」状態になったようで、世間は「ミニバブル」と呼びました。
この間に東京オリンピックの誘致が決まった2013年秋以降、会場になる湾岸エリア(晴海・有明エリア)はマンション購入者の注目を集めました。そして、販売中だったマンションの売れ行きが急に伸びて事業主を喜ばせたのです。
「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」は、2012年4月の発売で、しばらくの間は売れ行きがぱっとしなかったのですが、竣工間際の2013年秋以降は販売スピードが急速に伸びました。そして、竣工の2013年11月には883戸完売のメドが立ったのでした。
2013年8月に売り出した隣地の「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」も予想外のスピードで完売したと聞きます。
ミニバブル現象は湾岸に留まらず各地のタワーマンションに波及しましたが、このとき投資目的ではない人も将来の値上がりを期待して各地の駅前タワーマンションなどに向かったのです。
価格は売り主の強気を誘うこととなり、初期の計画を上回る値上げを決めたり、販売途中で値上げしたりした企業もありました。その当時、投資対象にされた物件においては自己居住狙いで真剣に検討していた買い手から、「検討中に値上げすると半ば脅されながら慌てて買った」という声も多数聞きました。
ともあれ、ある種の熱狂の中で購入したマンションの多くは今から見れば安い買い物であったことは確かです。投資目的で買った人は、賃貸目的というよりは、「キャピタルゲイン(転売利益)」が狙いだったのです。それが僅か3~4年で、引き渡しから2~3年で売却し利益を狙っているというわけです。売り物が多いのは、そのせいです。
中には「オーナーチェンジ」の売り物件も散見されます。賃貸してしまったからです。賃貸していた人でも、たまたま空き家になったので売り出すことにしたという話も聞きます。
当初はもっと長く持つ予定だったが、思いのほか値上がりしたこと、ピークアウトが近いことから売るなら今だと考えて売り出す人が次々に出て来たとうことらしいのです。
筆者の知人は、賃貸にも出さず機をうかがっていたようで、「新築未入居」のキャッチフレーズで売却にかけ利益を得たのです。仲介業者の中にも、5戸、10戸とまとめて購入して転売したという情報も伝わって来ました。
その昔、「土地ころがし・マンション転がし」が大流行したことがありましたが、そのミニ現象が直近で起きていたということです。もう沈静化したようなので他人事ながら筆者も休心しています。バブル的な動きで被害を受けるのは、いつの時代もマイホームを求める人たちだからです。
ともあれ、有名・優良マンションから売り物が続出している現象の原因は「投資ブーム」にあったと言えそうです。
●家は売らなければ損も得もないのです
値上がりして喜ぶのは投資家だけです。一般居住者は自宅が値上がりしても何も関係ありません。
バブル期のことですが、購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いた人も少なくなかったのです。しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。
一方、売却した人は、高値に驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかにありませんでした。
売却した場所の近くは同じように値上がりしていたからです。売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったのです。
反対に、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の値下がりを体験して悲哀を味わうこととなりました。何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかったからです。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知ったのです。いわゆる追い銭が必須でした。
その金額の大きいこと。結局、売却を断念した人も多かったはずです。これは含み損を抱えてしまったものの、損失が確定しないで済んだというケースです。
つまり、売却しなければ損も得も表面化しないことを意味します。
●「利益確定売り」という居住者の大胆な判断
最近のご依頼で急に増えた「将来価格の予測サービス」に、筆者は嬉しい悲鳴を上げています。もともと休日に無縁な筆者ですが、最近の作業量は半端ではなく寝る暇もないほどです。
多くは、従来通り「買ってよいマンションか」と「それを10年、15年先に売るかもしれないが損(利益)はどのくらいになるか」というマイホーム検討者からのものですが、中には3年前に購入した人、居住して2年しか経っていない人などからのご依頼も増えています。この現象に、時代を感じます。
購入して間がないのですが、「今売るのがいいか。それとももう少し先がいいか」ということを考えているので、先の予測数字を知りたいというご依頼です。売却動機が書いてあって「思いがけず高値で売れそうなので売ってしまおうか」というお考えを持つ人が少なくないのです。
売ったあと、住む家はどうするのだろうか?そんな疑問を抱きますが、ひとつの答えがありました。それは、売って当分実家で暮らすという単身者の行動でした。独身寮に入るという人もあったかもしれません。ファミリーの場合の答えはありません。
湘南ライフに憧れているという人が都心のマンションを売却し、茅ケ崎のマンションを購入した人にもお会いしました。価格差が大きいだけに、ひょっとすると多額の現金を手元に残しつつ買い替えを成功させたのかもしれません。これは例外的です。
結局、一時的な利益に目がくらむのかどうか、「利益確定売り」という行動に出る人もありそうです。売った後に別のマンションを買うのでしょうか?我が家が高く売れても、同時期の買い替え先も(地方や郊外に移住する場合を除けば)高いはずで、そうする意味があるのかどうか、理解に苦しむところです。
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老婆心ながら、こうした売却では譲渡益が多額に発生したはずなので、譲渡所得から3,000万円の特別控除(自身で居住していた場合)を受けたとして、新たに購入する住宅をローンで購入したとき、住宅ローン控除が使えなくなる場合があるのです。大丈夫だったのかどうか。
後になって何人かのご相談者に「大丈夫か」とメールを送ったのですが、連絡がないままなので、今も気がかりです。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。
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