11月の新築マンション市場 「欠陥騒ぎはどこ吹く風」

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

1か月前のブログで「マンション販売に陰りあり」という意味の話をしました。

9月と10月の販売戸数が大きく減少したこと、さらに契約率も低下したことが根拠でした。

この傾向は続くと見ている筆者ですが、そんな予測をあざ笑うかのようなデータが昨日発表されました。

継続調査をしている不動産経済研究所は、2015年12月14日、11月の新築マンション市場についてプレス発表しました。

それによると、価格が大きく上がり、販売戸数も増えたうえに、月間契約率が9月・10月の2か月連続の60%台から82.1%と急上昇したというのです。同社の分析によれば、都心を中心に高額物件の売れ行きが好調だったためということでした。

前2か月と一転して、まるで突然変異のような驚きの数値です。

データを整理してみましょう。

◆発売戸数・・・9月2430戸/10月2921戸/11月3496戸(前年同期比4.8%増)
   
・・・・1月~11月累計=34,260戸(前年同月比:▲3.6%)

 ※今年3,000戸を超えたのは7月に続いて2度目。12月は駆け込みで増える傾向があるのですが、同社の予想では7000戸になるとか。としたら、41,000戸余になりますが、昨年は44,913戸だったので、年間では前年比9%ほどの減少となります。

 「供給戸数が停滞」という状況は変わらないと言えそうです。

◆1戸平均価格・・・6328万円(10月5364万円、前年同期比+21.1%)

    (1戸平均価格が6000万円を超えたのは、バブル末期の1991年以来24年ぶりとのこと)

※同研究所の分析では、都心を中心に高額物件が好調だからというのですが、都心を中心というなら他の地域もという意味なので、ブロック別の数字を見てみました。

◆ブロック別1戸平均 (東京23区 8244万円:前年同期比+29.1%)   (東京市部 4604万円:同0.5%ダウン)  (神奈川県 4631万円:同+13.2%)(埼玉県   5084万円:同+31.8%)  (千葉県 4543万円:同+13.2%)

※東京市部(都下)を除き、全ブロックで大幅な価格アップになっています。特に23区と埼玉県の上がり方が尋常ではありません。

●坪単価は@287万円(前月比+14.3%。前年同期比+14.8%)

坪単価を見ると、こちらも高い上昇率を示しています。前年同期比もさることながら、前月比も同様に上昇。億円未満の一般的な物件も都下を除いて値上がりしたことを裏付けています。

◆ブロック別 坪単価 (東京23区 @382万円:前年同期比+22.9%)(東京市部 @202万円:同1.0%ダウン)  (神奈川県 @210万円:同+12.0%)  (埼玉県 @230万円:同+28.9%)   (千葉県 @199万円:同+19.5%)

何故、こんなに急な上昇率になったのか? データが入手できないので正確に分析することはかないません。もう少し様子を見て行こうと思います。

●月間契約率・・・9月66.0%/10月68.8%/11月82.1%

また、価格がこんなに上がっても契約率が低下しなかったのは一体なぜか?こちらも正確な分析は困難です。

億ションクラスの物件は、価格が上がっても需要動向は大きく変化しないのが普通なので驚くに当たらないのですが、ほぼ全域で一般物件の価格も上昇し、それでいて契約率が上がってしまうというのは不可思議な現象です。

販売がこんなふうに好調だと、売り手はますます強気になって、それこそ図に乗って価格抑制の努力をしなくなってしまわないか、まあ、そんなことはないと思うのですが。

新築に限れば、価格上昇はまだまだ続くというのが筆者の見解ですが、上昇するにしても緩やかになって欲しい、そうでないと買いたくても買えない人がますます増えてしまいます。

10月に発覚した「杭の欠陥工事」事件は、慎重な購買態度に変化したと感じていただけに、契約率の上昇数値との間に矛盾を感じざるを得ません。将に、「欠陥問題などどこ吹く風か」という印象すら受けるのです。

●売れ行きの二極化が進んでいるが・・・

11月の異様さを別にして考えてみると、こんな物件でも売れてしまうのかという驚きを禁じ得ないことがあります。そうした現象の多くは「立地条件の有利さ」にあります。

また、立地条件はさほど良いわけではないが、価格抑制に成功し「お手頃価格」で販売できた物件も好調ぶりを示しています。

他方、建物としては中々の優良物件に関わらず、販売に時間がかかっている例もたくさんあります。しかい、そのような物件も、初期は好調でした。

途中から息切れして長期化している原因は、戸数が多いからと分かっているのもあるのですが、中規模物件で価格もさほど高くないのに残っているという例も少なくありません。

最近2~3年の価格の高騰は、買い手に慎重な購買態度を促す結果となり、良い物件には高いと感じつつも買い手が集まり、立地もプランも、さらに価格も中途半端な物件は販売不振に陥るということなのかもしれません。

言い換えると、販売好調物件と販売不振物件とに二極化していると見られます。

しかし、それでは11月の全般的な好調の説明にはなりません。11月は高いながらも優良な物件ばかりが集中したのでしょうか?その確率は低いはずです。おそらくはこうでしょう。

9月、10月に発売を予定していた物件を先送りした新規発売物件、なかんずく分割販売の2期以降の発売ではなく、市場に初登場した純粋の新規物件が11月に一斉に売り出した結果、発売延期の間にため込んだ顧客によって初期の好成績を収めることに成功したのです。

断定はできませんが、その可能性はありそうです。

念のために付言すると、「月間契約率」というのは、当月に売り出した住戸数の何%が月末に売れたかを示すもので、初期の販売スピードのみを表すデータなのです。

つまり、その後の売れ行き不振を示すデータは把握されておらず、表面在庫のカウントはしているものの、隠れ在庫(=未発売在庫)は分からないのです。しかし、建物が完成してしまってから販売中という物件が多数あることは事実です。

●先行きの市況は?

11月の異様さを別にしたら、価格の高騰が続けば契約率も低下するのが常識であり、需要放れを起こして市況は低迷します。

価格の先高観が買い手をして買い急ぎに走らせるときもありますが、今はそんな時期ではありません。つまり、市場が「買い一色」に染まっているわけではないのです。

言い換えると、「購買態度はまだら模様」です。 詳細は割愛しますが、様々な見方、考え方、行動があると言えます。

今後を展望したとき、価格の高騰は続き、市況は間違いなく悪化します。つまり売れ行き不振状態がやって来ます。そうなれば、売り手は特別な販売促進策を講じるでしょう。買い手にとって、値引き交渉を有利に運べるチャンスがやって来るのです。

それにしても、11月の各種データは理解に苦しむところです。

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