第772回 「高過ぎる都心マンション。買っても大丈夫?」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

今般の価格上昇が始まって、早くも10年が過ぎました。価格が急激に上がれば、購買力との乖離が起こってマンションは売れなくなるものです。2016年頃から売れ行きは悪くなり始めましたが、2021年現在、目立って価格が下げ止まる気配もないのに、売れ行きは悪くないように見えます。  

 

*無論、価格の上昇も売れ行きも、首都圏広範に同じ傾向にあるわけではなく、地域によって濃淡があるのです。主として東京都心は高値に関わらず売れ行きは悪くないのですが、郊外は価格が高止まりする中で売れ行きは必ずしも良いとは言えない状態にあるようです。  

 

*今日のテーマは、高値の都心マンションについてです。こんな高値のマンションを買っても大丈夫だろうか? そんな疑念を抱く人たちへのお答えです。  

●高値のマンションは人気地域にある

高値のマンションは、人気地域に集中しているようです。東京23区の中でも、人気のある区は都心5区と言われています。千代田区・港区・中央区・文京区・新宿区です。少し広げると、品川区・目黒区・中野区の計8区です。

  *人気の理由は様々に言われますが、共通しているのは利便性、ビジネスの中心地や官公庁街に至近ということが共通点です。江戸の昔から中心地だった千代田区や文京区のように、各界の大物・偉人が好み、住んでいた街として語り継がれて来た街も含まれています。  

 

*明治以降に開発されて新しい高級住宅街と言われるようになった田園調布(大田区)や、成城学園(世田谷区)のような例もありますが、どちらも上述の8区には入りません。  

●高くても買い手は現れる

人気のある街は高値でもあるので、富裕層が集まる傾向が顕著です。 皇居がある千代田区、その一角に「番町(ばんちょう)」はありますが、ここは高級マンションが多数あり、価格も驚くほど高いものの、人気が低落したという声は聞きません。  

 

*歴史ある街、整然とした街並み、有名人が居を構える街といった形容には収まらない高級住宅街、そのひとつが番町です。 ここには名作と言われる高級マンションが今も燦然と立ち、穏やかな暮らしの場を提供しているだけでなく、威厳と誇りに満ちた日々を居住者に届けてくれていることでしょう。  

 

*これらの地域の中古マンションは、高値を維持し、資産価値を守っているようです。何かの事情で売却をしたいとき、その高値に胸を張り、買いに来た人も高値を当然のごとく受け入れていると言えそうです。 番町のマンションは、売り手も買い手も高値を当然のこととして受け入れ、売買が成立しているのです。  

●上がり過ぎれば売れなくなるのでは?

番町に限らず、富裕層に人気があって相場の高い街のマンションも、高くなり過ぎれば売れなくなるのでは、そんな疑念を抱く人もあるようですが、東京には信じがたいほどの富裕層が少なくないのです。  

 

*先に述べた都心5区などでは、買い手がなくて相場が下がるといった現象は起こらないと断定してもよいくらいです。  

 

*マクロのデータを見ていると、日本経済は20年もの長い間、低迷しており、国民所得も増えない状態が続いていますが、数パーセントの階層の所得は高水準にあり、購買力も低くないのです。  

 

*筆者に届く、「マンション評価」のご依頼から受ける印象として言えば、会社員で1億円を超えるマンションを検討している数も少なくない今日です。ダブルインカムの階層の中には2億円超えのタワーマンションを買いたいというご相談もときどき届きます。  

 

*無限ではないものの、購買力の高い買い手の層は分厚いようです。現状の価格水準なら売れ行きが悪化してしまう危惧もなさそうに思います。  

●都心と郊外では値動きは異なる

都心を離れて郊外のマンションの話に転じますが、郊外マンションは、購入者層が大きく変わります。  

 

*郊外の中核都市、例えば埼玉県なら大宮、神奈川なら横浜・川崎、千葉なら市川、船橋といった中核都市でもマンション開発は長年続いていますが、一戸建てが主流だった時代に遡ると、高値のマンションが売れることはなく、一戸建て(建売住宅)の後塵を拝していました。  

 

*つまり、一戸建てにはない利便性と庶民でも買いやすい価格であることがマンション商品化の条件だったのです。 住宅ローンも今ほど発達していなかったこと、頭金が3割も必要だったこと、何より金利が7%、8%と高い時代のこと、マンションは価格の安さが販売の鍵だったのです。  

 

*時代は変わり、郊外マンションの開発も盛んにおこなわれるようになりましたが、一時期は価格の高騰で都心・準都心のマンションを買えない人たちが、郊外マンションを選ぶことが当然ということもありました。  

 

*しかし、それも価格の下落によって流れは変わり、再びマンションは都心開発が主流となって行ったのです。無論、郊外に住む人たちも少なくないわけで、現住所の近くで売り出されれば、その郊外マンションを選択する人は今も現れます。  

 

*家賃の安さから郊外居住を選んだ人は、近隣の安いマンションを選択します。郊外居住に慣れた階層は、高値の都心マンションを購入することは多くないのです。  

●高値の二等地マンション

話を都心マンションに戻しましょう。 ・・・・先述の通り、高くなったマンションも、都心5区などの人気エリアに限れば購買力の高い需要層は分厚く存在するものの、全ての都心マンションが一様に売れるわけではないのです。

 

*マンションデベロッパーの中には、大型で付加価値の高いマンションを開発できない業者もあって、やむを得ず二番手の立地に小型の敷地で小型マンションを建てることがあります。 場所は悪くないとしても、建物が「もうひとつ」の最上級とは言い難い物件が誕生するのです。  

 

*最近10年に限れば、マンション業界は用地難の壁に跳ね返され、事業継続すらも困難になっているようです。そのために、二流の物件を開発せざるを得ないデベロッパーも少なくありません。  

 

*都心・準都心立地の場合、二流物件も分譲価格が安ければ、売れ行きの心配は少ないものの、明確に安いと言える物件はなく、むしろ割高と判定されるものが多いのです。建築費は一流地も二流地も大差ないので、用地が安く仕入れられても、分譲価格は相応の安さにはならないからです。  

●売れ残りマンション。値引きするか?

価値の割に高値のマンション・・・・これが都心には少なからず誕生しています。このため、都心といえども全てが人気になることはありません。 資金力の高い購買層は、購入条件も、それなりにシビアなので、条件が「もうひとつ」の物件には手を出さないため、二等地マンションは売れ残るのです。  

 

*売れ残ったマンションは、最後は値引きするしかなくなります。しかしながら、事業利益を求めるデベロッパーは、安易に値引きに踏み切ることはありません。値引きするとしても、それは最後の最後の段階です。  

 

*事業資金を融資している銀行も、昨今は以前より猶予期間を長く取ってくれるらしく、売れ残っても売主デベロッパーは大慌てすることもないようです。そのためもあって、利益を放棄して値引き販売に舵を切ることは少ないと聞きます。  

 

*売れ残る物件は、直截に言えば高過ぎる物件だからです。物件価値の割には高い・・・買い手はそう判断したために売れず残ってしまうという次第です。それでも、物件数の少ない今日のこと、長い時間を置かずに完売に至るのも事実です。  

 

*こうした実態から、売れ残りマンションといえども値引きは簡単に応じてもらえそうにないと考えなければなりません。としたら、価値あるマンションを選んで、早めの決断をしてしまうことが大事になっていると言えるのかもしれません。  

●都心マンション・準都心マンションの今後

高くなってしまった都心・準都心マンション、今後も高値が続くでしょうか?  

 

*鍵は建築費の動向かもしれません。一部の原材料が高くなっているという報道があります。また、景気刺激策のひとつとして、公共工事が今もたくさん発注されていると聞きます。

 

 *民間工事は低調が予想できるとしても、一方で継続的に進められている都市開発も都区内には多数起こっているようです。鉄道の延伸工事なども続くようです。  

 

*つまり、建築費の値下がりという兆候は見えて来ないのです。用地取得も困難な状況は続いています。2010年代、大きく減少したマンション用地が再び増加する見通しはなく、供給量の増加期待も価格安定の気配も感じられない2021年でした。 2022年、マンション市場はどう変わるでしょうか? 筆者は、大きく変転するとは考えていません。  

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

・・・無料ご質問も歓迎します。下記のメールアドレスにお気軽にどうぞ。 (お答えしかねることもありますが、先ずはお試しください) mitui@syuppanservice.com  

※三井健太の2大サービス「マンション評価サービス」と「将来価格の予測サービス」・・・継続中・・・ご利用をお勧めします。

 

まとめて4件以内*ショートコメントサービス*始めました。

見学前のご利用がお勧め。肝心の部分に限定したショートレポートです。複数の候補があってお迷いのときに役立ちます。 ショートコメントサービスの料金とお申込みは「三井健太のマンション相談室」でご確認ください➡(http://www.syuppanservice.com)  

※こちらのBLOGも是非ご利用ください。

https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ) http://sumitaimansion.blogspot.com/(三井健太の住みたいマンション)  

★★売却のご相談もどうぞ ★★ 

こちらから https://mituikenta.com/?p=3365