第660回「老朽化インフラの補修に3兆円投資」の影響

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

政府は、タイトルの政策投資を決めたようです。老朽化したインフラの補修を中心に公共事業を増やすというのです。これは、消費税の増税がもたらす景気後退を防止することに狙いがあるのは明らかですが、それ以上の効果があるような気がします。

 

2018年12月5日の報道新聞報道によれば、来年度の一般会計予算で、公共事業関係費は7兆円にするとしています。アベノミクスの3本柱の1本は公共事業ですが、過去5年は年間6兆円に抑えてきたのだそうです。2012年までは5兆円以下だったところを積み増したのですが、6兆円に抑えていた理由は財政再建に配慮したためです。その規律を破り、2019年から3年間は1兆円増やして7兆円ずつにするというのです。

 

このニュースに触れて思ったことを書きます。結論を先に述べると、「建築費が下がる可能性はなくなり、伴ってマンション価格が下がる見込みは遠ざかった」という話です。

 

●建築費の高騰とマンション価格

マンションの工事はマンションデベロッパーから施工するゼネコンへ発注されますが、デベロッパーには当然ながら予算があり、その範囲で受注してくれるゼネコンを探します。

普通は「指名入札」方式で、複数のゼネコンを指名して見積もりを依頼します。過去数年間の傾向は、予算内に納まるゼネコンがいなくて当たり前、予算を2割、3割上回る見積もりが普通。そのような状況にあります。

 

背景には、東日本大震災の復興需要によって専門職・建設労働者の人手不足が深刻な状態にあるためと言われています。

建築費の高騰は、マンション価格の上昇につながりました。ご存知の通り、新築マンションの価格は2013年から高騰し続けています。2013年は前年比8%も急騰したのですが、2014年はやや収まったかに見えたものの、2015年は9.6%上昇。2016年も僅かながら上昇。そして、昨年は8.4%も上昇したのです。2017年の首都圏全体の新築マンション価格は、2012年比で33%も上がってしまいました。

 

今後の見通しについても、建築費に関しては悲観的な見方が圧倒的です。つまり、まだ東日本震災の復興需要は残っていますし、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資が急増しているうえ、東京オリンピック関連需要が本格化しているからです。

オリンピックは、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、選手村5600戸の建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

 

建設需要はオリンピック前年まで続くことでしょう。しかし、3年後には東日本の復興・熊本地震関連も終盤に差し掛かっているはずです。建設業界には一服感が出ていると予想されます。従って、3年先には建築費も低下傾向に転じるかもしれません。

このように発言することがありました。

 

しかし、一方ではオリンピック後も建設業界は繁忙を極めそうに思うとも発言して来ました。理由は、品川駅のリニア新幹線関連工事や山手線「高輪ゲートウェイ駅」の開設と関連工事、浜松町駅周辺開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台開発、「虎ノ門ヒルズ駅」の開設、首都高日本橋エリアの地下化工事など、都市再開発が目白押しに予定されているからです。

また、東京五輪後も訪日客の増加が見込まれているので、ホテル建設の需要も続くに違いないと考えていたからです。

これに、冒頭の公共事業を増やす政府方針が決定すれば、予想の根拠が分厚くなります。

 

こうした動静を見ていると、当分、建設業界の繁忙は維持されることでしょう。建築費の大幅な低下はないと見なければなりません。従って、マンション価格の下落予想は立てにくいのです。

 

●用地代も下がらない

用地取得がたやすくなって廉価なマンション用地を各社が次々に仕入れられるようになるとも思えません。

マンション用地が市場にあふれ、選り取り見取りの状態にはないからです。このブログで何度も触れてきましたが、マンション用地は一定の広さと交通便や環境などの面で高いハードルがあります。

歴史を紐解けば、マンション用地の買いやすい時期もありましたが、今は厳しい用地難にデベロッパーも苦悩しています。2013年からの価格上昇は、はじめは建築費の高騰だけが要因だったのですが、次第に用地費の高騰が重なっています。

さほど条件が良いとも言えない土地すらもなかなか入手できず、条件の良い土地は奪い合い状態になって高値で仕入れるしかない状態になっているのです。

 

●売れ行きが悪くなっても強気なマンション業者

2016年1月から新築マンションの売れ行きは、データ上ではっきりと低迷状態を見せるようになりました。詳細は以前も書いたので繰り返しませんが、好調な販売実績を残しているものは少なく、各社とも悪戦苦闘の状態を続けているようです。

 

竣工後の売れ残りマンションも目立ちます。値引き販売も少なくありません。

しかし、毎月の価格動向を注視していると、顕著な値下がりの傾向は見られないのです。価格が上がったら、手が出ない人も増えて売れ行きは落ちるのが当然の成り行きですが、マンション不況とか氷河期などと言われた時代に比べると、急激な落ち込みにはなっていないのです。

 

まあ、辛うじて命脈を保っているというのが筆者の印象です。

新築マンションの供給数が大きく減って、品不足状態にあるため、都心・準都心など好立地のマンションは高くなっても手が届くダブルインカム層の増加もあって何とか売れていく状況にあるのです。

 

「売れ行きが悪くなっても強気なマンション業者」と書きましたが、正確ではありません。利益を確保するには、やむを得ない価格なのです。売り出してみて、だめなら、どこかで値引き販売に踏み切るなどの策を講じますが、それまでは採算ラインを死守しようと頑張っているのが実態です。

 

幸い、新築マンションは売り出しから目標の竣工完売まで1年、長いものでは2年もあるので、それまでは定価(採算価格)で頑張り通すことが可能になっています。新築物件が少ないので、買い手も方々を歩き回っても結局はたどり着くはずだ、そう信じて販売努力に懸命となっているのです。

 

2019年以降も、高値の土地を買い、高値の建築費を払って高値で販売にかかるというマンションが全般的な姿になると思わざるを得ません。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

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